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幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

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☆ss「Esperanza after-青と金-」金造&青

 志摩家と宝生家の確執。
 その実態は、実は世間に囁かれているほど深刻ではなかった。
 代々続く当主間のライバル意識が蚊帳の外の他人にそう見せているだけで、代々本家の勝呂家大好き体質は共通だったし、どちらとも甲乙つけがたいナンバーツー争いもその実態を大袈裟に見せていただけだ。余談だが自発的にナンバースリーの位置にいた、三輪家の人数的衰退が抑制力にならなかったせいもある。
 つまり平たく言えば、それなりに仲は悪かったかもしれないけれど、基盤は仲間意識があって根本的には仲良しという前提があってこその対立だったと言える。それを実証するように、仏の道を守りながらも戦闘集団である明陀の僧正両家で一代のうちに常に一組共闘関係になる者がいた。親兄弟の思惑さえ飛び越えたように強く結びつく友情があった。
 青い夜以降、しかしやはり志摩家と宝生家は対立関係にあるというのが、新しく明陀に関わった正十字騎士団での認識だった。志摩家宝生家、両方の子弟をを預かり教育した正十字学園でも、かの次期当主同士は、その当時の祓魔塾の一番手二番手を常に争っていた。 
 しかし学園にとって意外だったのは、その次世代というかぶっちゃけ志摩金造と宝生青の奇妙な関係に他ならなかった。
 
 京都出張所には二人体制の夜勤というものがある。青はリュックサックに夜勤の準備を入れてそれを背負っていた。
 出張所の夜勤は夏の日が翳りだそうとする十八時から始まる。申し送りがなければ定時までの人間と言葉を交わすことはほとんどない。
「おはようございまーす。」
 詰め所に顔を出すとパイプ椅子に背中を丸めて座っていた金造が顔を上げた。
「よお……親友。」
「おう。きたで相棒。」
 青はリュックを机の上に下ろして金造の向かい側のパイプ椅子に座った。家で昼寝はしてきたし夜勤の途中で交代で仮眠も取るが、来た早々は手持ち無沙汰になるのはいつものことだった。青はリュックから趣味のミリタリー関係の雑誌を取り出す。先に来た金造は音楽関係の雑誌を読みふけっていたようだ。
 しばらくするとぷしゅっと音がする。青がふと金造のほうを見ると、金造は缶を開けていた。缶飲料は缶飲料でも、ビールだった。
 あんまりあっていいことではないが、夜勤という名目の当直ではよくアルコール類を持ち込む祓魔師もいた。祓魔師の出張所という名目上、二十四時間体制なので当直は当然のように置かれているが、正十字騎士団に所属してからは強力な結界を施されているので、悪魔の侵入などほとんどない。というか京都という街の構造そのものが大きな結界になっているので、夜勤がしゃかりきに一晩中働くという事態にはならない。
それは不浄王がまだ封印されていたときからそうだった。不浄王自体が公には左右の目を残して消滅していたことになっていたので、そこまで厳戒体制がとられていなかった。夜勤が夜勤らしく機能していたのは、不浄王事件の前ぐらいだった。
 夜勤での唯一の義務・モニター確認も不要のものになっている。夜勤・当直はぶっちゃけお泊りになっていた。
しかし勘違いしてはいけない。夜勤・当直を真面目に見回りまでして真面目にこなしていた者もいる。騎士団から除名になった宝生蝮だったり、志摩柔造だ。
 長々と続いたが、京都出張所にとって夜勤というのはたいしたことはないという前提を書き連ねただけだ。そうしないとこれから起こることで、金造と青が非難されかねないからだ。
 金造と青はよく夜勤がかぶる。そして二人の夜勤での勤務態度は前述したような、平均的な勤務態度だった。青はごくごくとビールを煽る金造を特に気にすることなく、リュックの中を漁っていた。二本目のぷしゅっという音が静かな部屋に溶け込む中、青はほれと両手で二つの袋を金造に掲げて見せていた。
「なんや。ポテチか……。それがどないしたん?」
「どないしたんて。ポテチは油で揚げた芋やろ。アルコール摂取するときはな、油もんで胃にコーティングしてアルコール吸収を穏やかにするほうがええんで。」
「そんなアホな俺でも知っとる豆知識わざわざありがとな。」
「ツマミにどうぞ。のりとコンソメどっちがええ?」
「ほんなら、のり。」
 金造が手を伸ばすと青がのりしお味を持っていた手をふいっと引っ込める。
「ほんまにのりでええんか? のりはな、気がつかんうちに歯にひっつくことがあるんで。」
「ほんなら、コンソメでええわ!」
 ほんとはお前がのりしお味を食いたかっただけやろとツッコミながら金造はコンソメ味をひったくった。高校時代から青が二種類食い物を用意して金造に選ばせて食わせるというのが恒例になっていた。しかし高確率で金造は青の本命を選んでそれで辞退してもう片方を食うということまで恒例になっていた。金造は若者らしくないちびりちびりと言った感じでポテチを摘んでいる。その姿が鬱屈した内面を窺わせる。青は金造の近況の、とりあえず今一番気になるところを問いかけた。
「金造。姉様とうまいことやれとる?」
 ん? と金造はコンソメ味を食べながら青を見る。
 志摩柔造と宝生蝮が結婚してからひと月弱が過ぎていた。蝮はほぼ一日中志摩家で本人いわく仮初の主婦業に従事しているのだが、家が近所なので青と顔を合わせることはある。改めて金造にそんな話を振らなくても、姉の様子は姉本人から聞かされているはずだ。
 だから青が心に掛けているのは、金造のことだった。
 青は金造が小学生の頃から金造の兄に対する片思いの聞き役だった。その片思いが当然のように失恋に終わり、しかも自分の姉がきっかけの終焉だったので、申し訳ないとは思わないがその後の金造が心配だった。
 青と金造は志摩家宝生家の上部同士の確執とは関係ないところで、幼馴染で親友という関係にあった。だから青は敢えて金造の込み入って複雑なところに簡単に踏み入れられる。親友同士であり、祓魔師になってからは数々の作戦をチームを組んで戦ってきた。明陀の「青と金」はある意味名物コンビだったのだった。
「青と金」の金のほうは少し俯きながら呟く。
「ちゃんとうまいことやっとるよ。一緒にご飯作ったり、洗いもんしたり、お布団ひいたり、お風呂はいったり。」
「お風呂入っとるんか。姉様と。」
 あの人は男兄弟おらんからそういうころ麻痺しとるんかと青はぼーっと思った。
そういう自分も志摩家の兄弟とは普通に風呂も入ったこともある仲だった。しかし男子を含めた他人と一緒に風呂に入っても何の抵抗もないのは、宝生家三人姉妹のうち指揮官気質の蝮と兵卒体質の青で、真ん中の参謀かたぎの錦は潔癖症な性格なので、金造の話したこのことを聞けば引きつけを起こして寝込みかねないと、青は二番目の姉には内緒にしておこうと固く心に誓った。要するに青は世間の女子が思うよりも、金造の話すことはそんなドン引きして深刻には捉えていなかった。兵隊に男も女もあるかというのが青の信条だった。
 当たり障りない話というか、当たって触っているだけの話を切り出した青は、まあ大丈夫かと少し安堵した。
しかし間髪いれずに金造が嗚咽を漏らし声を詰まらせ始めた。
「う、ううう……。」
「……やっぱりしんどかったん?」
 金造はめそめそ泣きながらビールを啜りポテチを摘む。青はのりしお味を開けながらやってもうたと反省した。
「元気出せや金造。なんなら私の乳揉むか?」
「そんなもんで元気になる思うんか! でも、ええわ。揉ましてもらうわ。」
 青は身を乗り出して胸を張る。その胸に無造作に金造は手を伸ばし鷲摑みにする。
「お前姉ちゃんより乳でかいんが取り柄やなあ。」
「私の乳は筋肉やから。私は宝生家唯一の武闘派やからな。」
 ぼそっと青は自慢げに呟く。姉二人といるときはテンションが高くなるが、青は基本的な性格は淡々として朴訥なところがある。
 そしてその馬鹿さは半端ない。志摩家随一の馬鹿・金造と甲乙つけがたく、切磋琢磨するレベルの馬鹿だった。そして己の骨肉に対する思いも二人とも大自然や宇宙に例えられる規模だった。
だから大好きな姉が志摩家に嫁入りして当たり前の幸せを掴んだことは、正直嬉しい反面、その幸せは親友の失恋というか兄への思いの挫折を礎に築かれたのが、青にとっては金造に少し申し訳ないところだった。
 金造は思い出したように言う。
「俺ばっかりめそめそしてあれやけど……、お前の姉ちゃん横取りしたようなもんやな。志摩家が……。」
 青はえっ? というように首を傾げた。
「私は気にしとらんよ。」
「ええっ。でもお前の大好きな姉ちゃんやないんか?」
「あのなあ……。」
 青は金造に乳を揉まれ続けながら金造に呆れていた。自分の兄に失恋した金造は、青のことも同類項だと思い込んでいるのだろうか。
「あの姉様にそんな性的なこと、恐れ多くて思うなんてこと出来へんやろうが。お前と一緒にすな。いうか。姉様に乳揉ませて言うたら、もの凄く怖い顔させたことあるし。寝込みを襲うて揉んだら、無茶苦茶どつかれたし。」
「どつかれるわ。そら……。つか思いまくりやろ。性的なこと。」
「えー……。でも私は普通に姉様が結婚して良かった思うし。裏やとえげつないって噂の騎士団から、除名よりきつい罰貰わんですんだし。あとは金造が姉様が義理の姉弟として上手いこといけば、私にとっちゃ言うことないんやけど。」
「青。お前……。」
 今の状態の金造にとっては心に染み入るような言葉だった。だから不覚にもまた涙が毀れる。一朝一夕の親友関係ではない。死線すら乗り越えての戦友でもある。
二人の通り名、明陀の「青と金」は、金造の中で柔造の存在と同等なくらいに大切なものだった。悪魔との戦闘において神がかるような戦闘を繰り広げ、騎士団の中で新参者だった明陀の地位を確固たるものにしたのが、僧正家の命令系統に従って戦う下っ端の存在だった。青も金造も自らのことを「鉄砲玉」と揶揄しあいながら、敵の中に切り込む祓魔師同士だった。
「なんや。金造。まだ泣いとんか? ほら、元気出せや。パンツ見せたるから。」
「どうせたいしたパンツ履いとらんくせに……。ええわ。見せてもらうわ。」
 青は躊躇なく隊服の裾をまくって金造にパンツを見せた。その年頃の娘にしては少し地味すぎるベージュの無地だった。
「すまんなあ。こんなことなら紐パン履いてくりゃあ良かったなあ。」
「お前紐パンもっとったんか!」
「持ってなかったような気がするわあ。」
「フィクションかいっ。ええわ。今度俺が買うたるわ。」
「おおきに。エロいのにしてな。」
 青は裾を下ろさないまま金造と話していた。金造がいいというまでパンツを見せていようという心遣いも窺えそうだが、この状況ではただのコントのツッコミ待ちだった。
「やっぱ赤か黒が基本かなあ? 名前にちなんで青にしてもらいたいところなんやけど。」
「何が?」
「パンツ。」
 金造は裾をまくったままの青を目の前にして腕を組んで考えこんでいる。音楽家やからなこいつと青はやはりパンツを見せびらかす格好のまま金造を眺めていた。なんかイマジネーションでも頭の中でこねくり回してるのかと、人が見たらシュールな格好のままぼーっと考えてみた。
「なあ金造。ええ加減元気になって? そうせんと裾も下ろせんわあ。」
「裾くらい勝手に下ろしてくれてもええから。」
「じゃあそうするわ。」
 青は裾から手を放した。パンツはあっけなく裾の長い隊服の下に隠れた。
「恥ずかしい真似させてすまん。」
「いや。別に。」
 ふと青は気がついた。二缶目を飲み干したはずなのに、金造は三缶目を開けない。
「金造。もうビールあらへんの?」
「うん。」
「まだ飲みたいんやない?」
「飲みたいけど……。」
 青が言いたいことは大体見当はつく。失恋して落ち込んでいる金造に今日はとことん付き合ってやるつもりらしいので、このあと近くのコンビニでも行ってビールの買い足しに行くと言いたいらしい。
「ほな。行って、こようか?」
 出て行こうとする青の袖を金造は握った。
「なんや。一人にするんか俺のこと。」
「すぐ帰ってくるやん。」
「あおぉ……。嫌や。ひとりにせんといて~。」
 なんだかわけのわからんスイッチの入った金造だった。泣きじゃくるように青に縋ってべそべそと泣いている。青はよしよしとその金髪頭を撫でてやる。
「しょうがないなあ。ほら。」
 青は再び隊服をまくってパンツに手を掛け、それをするすると自分の両足から抜き取った。
「これを私やと思って。」
 生温かいパンツを金造の手に握らせる。
「……」
 唖然としている金造を尻目に青は部屋を出て行った。それを少しぼやけた視界で見送りながら金造は一人呟いた。
「青。お前言うやつはほんま……。」
 手の中の青のパンツを鼻元に近づける。
「青の匂いがするわあ。」
 当たり前である。
 いつも馬鹿な自分と一緒になって他人から笑われてくれた。
 「青と金」。所詮、仇花の意味で付けられた束の間になりかねない二つ名。
 お互いだけがお互いの理解者だった。
 いつ「青」や「金」だけになるかもわからない。
 
 それでも青はみっともない「金」に優しくしてくれた。
辛いときには乳を揉ませてくれた。
悲しいときにはパンツを見せてくれた。
かけがえの無い大切な親友。
それが金造にとっての青だった。
 
 金造はその友情にひとしきり涙を流し枯れ果てて我に返ると、とんでもない事実に頭が過ぎった。
「青のパンツ、びしょびしょにしてしもうた。」
 ただ濡れているだけではない。鼻水もかんだ覚えもあるので、なんだかにゅるにゅるのパンツになっていた。友情のパンツの成れの果ては、友情に感極まって出てきた液体によって、なんだか如何わしいパンツになってしまった。
 どうしようと対策を思いつく間も無く、青が帰ってきた。
「ただいま……。」
「すまん青。お前のパンツ、えらいことにしてしもうた。」
 青は恐る恐る金造が差し出す自らのパンツを見る。
「さ、寂しいから泣いたんやないんやで。その、お前がおらんでも……お前のこと考えたらほっこりとしたから泣けてきたんや。」
「ほうか。パンツ役に立って良かったわ。洗えばどうにかなるから、そないな気まずそうな顔せんといてな。」
 青はビールとツマミと入れ替わりに自分のパンツを入れて口を縛った。パンツをぐちゃぐちゃにした自分を咎めないなんて、なんて漢らしいんだろうと金造にはこみ上げてくるものがある。
「お前、家に帰るまでパンツ履かんで大丈夫なんか?」
「いやあ。ノーパンをそこらの連中に自己申告せなあかんわけでもないし。」
 そうやろうなあ。戦闘時のこいつの隙の無い体捌きを思い返せば、なんかの拍子に服がまくれて丸見えどころかチラ見えもありえんやろうと金造は思ったが、備え付けの冷蔵庫(家庭用よりかなり小さめ)に一緒に買ってきたペットボトルのお茶とビールを入れようと金造に背を向けて上体を屈めた青を見て、金造はいきなりわあと声を上げた。
「なんや金造。いきなり吠えなや。」
「やて、そんな格好したら見えるやんか!」
「お前。こんだけ長い服着とんやから見えるわけないやんか。」
「そやかてお前ノーパンやんっ。」
「お前そんなこと意識しとんか? 中学生やないし、姉様と風呂はいっとるってさっき言うとったやんか。」
 青はあかん靴紐解けとったわと呟きながら足を上げてパイプ椅子に座りだした。
「うわああ!」
「うるさいなあ。」
「お前が、俺の繊細な神経を、レイプしとんや!」
 青は困り果てたような顔をしてパイプ椅子にきっちり足を揃えて座る。
「どや。こうしとったら大丈夫やろ? ほんま手が掛かる子やな。」
 青は腕だけ伸ばして金造の頭をよしよしと撫でる。金造は顔を赤くして青の顔を見返す。
 青は金造の潤んだ目元を指先で拭ってくれた。金造の胸がきゅうんと締め付けられる。青のあまりものに動じない薄情そうな目が、まるで自分を見守ってくれているようだ。
「なあ、青……。」
「なんや? 金造?」
 金造はもじもじと恥ずかしそうにそれを口にした。
 
「俺、パンツだけ履いてない女と一緒に同じ部屋におるのは初めてなんや。」
「ふうん。そうなん?」
 
 青はやはり動じない。自分がノーパンになった原因の張本人の口にする無神経っぽい言葉にも。金造としては自分が恥ずかしい思いをしていることや、青が恥ずかしいことになっとるんやでということを伝えたつもりが、彼女にとってはただ状況を言っただけに過ぎなかったようだ。
まるで青々とした森の中でひっそりと葉陰に温度も感じさせず瞼のない目で虚空を見ている青い蛇のようだった。
「俺……俺なあ……。」
「うん。」
「俺、お前のことな……」
「うん。」
 何が言いたいのか自分でもさっぱり分からない。だけど青は延々と相槌を打ってくれる。親友だから。相棒だから。
「青。ずっと俺と一緒におってな。」
「ええよ。」
 まだまだ明陀の「青と金」の絆は切れることはないらしい。
 
 





金造と青は親友です。

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HN:
柴仲達
性別:
女性
職業:
会社員
趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

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