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幸福雑音

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☆☆リクエスト企画「廃獄ラブソング」勝燐

 嵐のような女子三人組が去ってから、勝呂と燐は呆然としたまま教室の床に座り込んでいた。女子達は口々にごめんなさいと言っていたが、ごめんなさいで済んだら警察はいらんのやと勝呂は心の中で一人ごちていた。しかし去り際の朴の五割り増しの笑顔が怖くてそれは言葉では言えなかった。気配もなく自分の背後に忍び寄ってきた朴の手練ぶりを見せられていたので、ただものではないということだけは分かっていたからだ。今後はどんなことがあっても敵に回したくなかった。
「……。」
「……。」
 教室の外の廊下を通る塾生も講師も誰もいない。だから暗い教室の中の床に座りこんでいる男二人は、取り残されたように世界の片隅に放置されたままだった。
「そろそろ帰ろうか?」
 勝呂は燐に呼びかけてみるが別にそれは燐を急がせているわけではない。女子たちの傍若無人な所業が互いに身体に精神に堪えていた。忘れよう宣言してもなかなか忘れられるものでもない。そして何よりも無言の燐の勝呂に向けられる視線が、勝呂をその場に引き止めていた。
 勝呂はそれを察して言う。
「燐。お前。なんかまた変なことを考えとるやろ?」
「別に……お前を責めるようなこと思ってねえし。」
「そうか?」
「言っただろう。俺も勝呂もあいつらに対して、あれはしょうがなかったんだって。」
 勝呂は燐の肩に手を置くと、少し距離を詰めた。だけど眉間に皴を寄せた無愛想な顔をする。もちろん燐に見せるためわざとだ。
「いや。そんなことは分かっとるんや。俺が訊きたいんは、お前が今頭ん中で考えとることや。」
「……。たいしたことじゃねえから。それに、今話すことでもねえし。」
 ぶっきらぼうに言うが、勝呂を見つめる目は少しも逸らされることなく凝視していた。明らかに今の自分の状態を勝呂に気にしてくれと言わんばかりに。そして、念を押すように続ける。
「不謹慎だって叱らないって約束してくれるなら、話せるけど。」
「つまり。不謹慎なことを考えとるんやな。」
 叱らない約束は出来る。しかし何故、目の前の馬鹿は確認を取っているのだろう? それにも答えは出ている。昨日や今日の付き合いではないのだから。
 教室は照明は点けられていない。お互いの輪郭がぼんやり見える程度だ。そして薄暗闇を透かしてお互いを窺っているような状況。でもいつも慣れた相手の気配で、相手が何をしているかは悟れる。燐はずっと勝呂を見ていた。そして勝呂に何か言おうとしている。勝呂からの許可が出たならば、燐は当たり前のように口を滑らせるだろう。
「勝呂ぉ。」
 唐突に燐の甘えるような声が勝呂の耳をくすぐる。吐き出される息が首筋に当たったような気がした。
今は勝呂と二人きりで誰もいない。そして、適度に羞恥を覆い隠せる視界。そんな条件が揃ってしまえば、甘えたがりの燐から出てくる発想は予想がついた。
「あー。ああ。ああ、ああ、ああ!」
 勝呂はひとしきり首を縦に振りながらやけくそになって、相槌で燐の次の言葉を遮っている。
「わかった! わかった。」
「俺何も言ってない。」
「ほんでもわかったわ。そないな、はしたない顔しよって。」
 別に燐の表情がはっきり見えているわけではないが、なんとなく察せられた。
「杜山さんや神木に触りまくられたせいで発情しとんやろが。お前は。」
「発情って猫や犬かよ。さわりまくられたのは勝呂だって同じだろ。」
「俺は頭ん中で般若心経唱えとったから平気や!」
 否。勝呂は正直に言うと平気なわけではなかった。事実、後ろから抱きつかれて胸を弄られたので、背中に当たる朴の胸の柔らかさを感じてはいた。
 しかしそれを燐に悟られるのは駄目だと思った。この馬鹿は勝呂のことを真面目だと言う割には、それとは正反対の行為を強請ってくることがある。「勝呂は真面目だから」という建前のせいではっきりと要求はしないが、燐の本音はやはり真面目とは言いがたい。それでも女がきっかけでその真面目だという誤解が解けるのは、いかにも露骨で誠実ではなかろう。そこがやはり勝呂竜士の真面目たる由縁だった。
「平気? 本当に?」
「お前は俺に何言わせたいん?」
「俺だって、しえみや神木相手にああいう形だったけど、かなりドキドキしたし。なんていうかあいつら、けっこう乱暴だったし。だけどそれがかなりいいかもって思っちゃったし。だけどそれを思うと、勝呂には申し訳なくてしょうがないし。」
 言わなくていいことをペラペラと口にしている。敢えてツッコミを入れるのも野暮だったが、勝呂は言わずにはいられない。
「申し訳ないって。いや。お前は、泣きそうな顔してた割には、かなり楽しんどったいうことやろ。ああもう。」
 乱暴なんが好きなんかこいつは。暗がりの中なのに勝呂は手の平で顔を隠す。変な妄想をしてしまった。
「勝呂は、気持ちよくなかったのか? 女子の手って小さいし。ぎゅっとされてもあんまり力入ってないし。それがなんとなく。その……。そういうのって全然かんじなかったのか? 勝呂は?」
「いや、そりゃあそうやけど。女子からあんなことされたんやから。普通の男やったら気持ちええくらい思うても仕方ない。やけどな。お前は神木と杜山さんやったから、まだ叫んだりするような余裕あったやろうけど。」
 勝呂は思い出した感触を反芻してぶるっと身体を震わせた。
「俺はあの朴さんやで。お前が前回一発で腰砕けになった、あの朴さんや。そんな人に抱きつかれて胸揉まれたんやで。俺ちゃんと立てとっただけでも奇跡やと思うたわ。そうや。まるで、耳元で誰かにこのまま身を任せてしまえ、そうすれば楽になれるんやと、囁かれとるようやったわ。」
「気持ち良かったんだ。要するに。」
「うわあ!」
「楽しんでたんだ。勝呂も……」
「ちゃうわ!」
 とんだ墓穴だった。洗いざらい言い訳という名の懺悔だった。燐の切なげな眼差しが否応なく勝呂の胸を突きしている。
「朴相手に気持ちよくなっちゃったこと、気にしなくてもいいから。ぶっちゃけちゃうけど俺は、女子二人がかりだったから、怪我させちゃいけないとかも思って抵抗出来なかったんだ。おまけにお前が見てるし。恥ずかしくて。でも、しえみがマジで無邪気に楽しそうに、なのに、時々気持ちいいとこに手がいくから。お前が見てるのに、俺こんなに気持ちよくっていいのかなって。……神木は痛いばっかしだったけど、だけど。」
「なんや?」
 燐は勝呂の反応を窺っている。
「ちょっと想像しちゃったんだ。お前に対して俺が抵抗したら、あんなふうにされちゃうのかなって。」
 勝呂は後ろにばたんと倒れて、再び起き上がる。引きつったような笑い声を上げていた。
「それは変態の発想や。お前の場合ただのうかっり気持ちええって思ってしまっただけで、話は終わるやろ。そこまで考えるわけ?」
「そこは俺を責めるとこなのか? あいつらにやられてる最中でも、俺はお前のこと想像してたのに。」
「いや! その発想が変態やから。」
 燐は猫背になってしゅんとしていた。勝呂は相変わらず両手の平で顔を隠して、今は小刻みに震えている。
「俺は変態でしょうがない奴だけど。そんな俺のこと、勝呂は嫌?」
 うっと勝呂は詰まる。それでも顔を隠す手はどけない。
「女子にああいうセクハラされて、だけど妄想は男のお前相手で。そんな俺は嫌なのか? 軽蔑もんなのか? お前にとっちゃ。」
 勝呂の手の平の隙間からくぐもった声が漏れる。
「気には、なるなあ。そういうのは。個人的に。」
「そっか……。やっぱり。」
 燐は半ば落ち込みかけていた。そして床に尻をぺたんとつけたまま、尻と足で身体を移動させて後ろを向こうとしている。その肩を勝呂は掴む。
「あのなあ。燐。さっきから言うとることを纏めると。お前は俺に激しく乱暴にされたい、いうことかな?」
 燐は眉間に皴を寄せたあと、こくんと頷いた。
「されたいけど。さっきお前に変態って言われたし、あいつらにされた時も怖いって思わなかったわけじゃないし。」
「でも気持ち良かったんやろ? 感じたんやろ?」
「うわっ。そういうこと言わせる……。お前は真面目なんじゃないのかよ。」
 勝呂はいつも言われて聞き流している真面目の三文字に何故かこの瞬間だけはカチンときた。
「俺からいままで真面目やいうことを申告した覚えはあらへん。お前が勝手に決めつけとっただけや。ほんで、今までの俺のそういうとこがが物足りん思うてたんやろ?」
「……。」
 燐が泣きそうな顔になって無言になる。すぐに噛み付いて反論してくると高を括っていた勝呂が思っていたより、燐の反応が淡白で大人しい。
「あ、あのなあ。燐?」
 ほんの少しだけ焦る。結論を出すのを急ぎ過ぎたのかと。真面目でへたれで進展がないことを残念がられてはいなかったが、それと同時に期待もされていなかったという現実も突きつけられた気分だった。
『どうせ俺は朴さんのようにテクニシャンやあらへんわ。童貞やし。真面目のレッテル貼られてるし。それさえもどうにかしようと努力してきたわけやなかったし。経験値を上げようにも燐以外と浮気する気あらへんし。そないな理由で浮気したら最悪やし。でも朴さんやったら、そないな理屈は言い訳やと一笑するやろうな。』
 なんだか弱気な自分が背後で泣き言を言っている。勝呂はそれを聞き流そうと必死だった。「ごめん。言いすぎやった。」と言って結論を覆すのは容易い。しかしそれでは何かが終わる。
「……勝呂ぉ。」
 自分の一人思いに没頭して燐を置き去りにしていたことにはっと気がついた。そういえば、こいつ発情していたんじゃなかったのかと思い出すが、それも自分の思い過ごしかと疑ってしまう。
「あ。なんや?」
「物足りないって思ってたわけじゃねえよ。勝呂が俺に優しいのを、一方的に真面目だと決め付けていたのは、済まなかったって思ってる。実際俺は怖がったこともあるし、京都に行く前までは正体がばれちゃいけないって思って、お前にそういうことされるの困るって言ったこともある。」
 勝呂は数ヶ月前の燐の不自然さを思い出す。甘えて自分を挑発してくる癖に、決定的な恋人同士の行為を拒絶していた燐。その原因にわざと目を逸らしていたような数ヶ月だった。燐は情けなさそうに続ける。
「だから勝呂は俺に気を遣っていてくれたんだって。わかっていたんだ。なのに茶化すように真面目だからって言われたら、腹立つよな。」
「そこまで重く捉えんでええから。」
 殊勝な言葉とは裏腹に、燐は勝呂に接近してくる。
「乱暴にされたいっていうのは無いわけじゃない。んと……やっぱり俺、勝呂が言うとおり変態なんだ。」
 燐の吐息が勝呂の肌に触れる。
「どうしたら、ええんかな?」
 勝呂の問いに燐は口ごもっている。「されたい」のはどうやら確定だが、なにやら迷っているようだ。その迷いが気になっているうちは、勝呂は真面目のレッテルどおりの男でしかないのかもしれない。
 
「わかった。言う。」
 
 勝呂にばかり要求するのはフェアじゃないと馬鹿なりに思ったのだろう。燐が重い口を開いた。そして立ち上がる。勝呂はそれをぼーっと見上げていた。
「俺、お前から逃げようとするから。お前は後ろから俺を捕まえて。」
 脱兎の如く燐は机の間を走り出す。勝呂は一瞬呆けたがはっと我に返り、燐の背中を追いかけた。燐が教室の立て付けの悪い扉に手を掛けて勝呂を振り向く。勝呂は燐に追いついて、扉にどんっと手を置いた。扉にはまっているガラスが震えて不穏な音を立てる。
「追いついたで。」
 急に動いたせいで心臓が不自然に高鳴っていた。燐の腕を掴んで強引に扉から引き離す。
「どうしよう。それから先は考えてなかった。」
「それで済む思うとんか、お前は。」
 そう言いながら勝呂は燐の腰を掴んで引き寄せる。燐はあっと声を上げた。言いだしっぺの法則もくそもなく、今日この時も煽るだけ煽って放置されるのは想定内だった。
 後はまる投げされるんだなと勝呂はぼんやりと思った。
 頭の中で激しくとか乱暴にとかテロップが流れ出すが、そんなものに踊らされるのは良くないと理性がブレーキをかけようとするが、腕を強く掴まれて燐が上げた短い声が一瞬でそれを吹き飛ばした。
「あっ……。勝呂。い……」
「痛いんがええんやろ。」
 抱きこんで馬鹿の頭にゴリゴリと自分の頭を擦り付けて至近距離で見つめる。
「あ。あう……。」
 燐が困ったように上目遣いでいながらも勝呂から目を逸らそうとしている。
「もう付き合って五ヶ月や。」
「そんな、経ってた?」
「なんなら日単位で言ったろうか? 今日でお前と付き合って百四十一日や。」
「こまか!」
「そんくらい細かく覚えておかないと、お前と一緒にいた毎日がめまぐるしすぎて、記憶が飛んでしまいそうなんや。そういや。お前におとんのことで殴られたこともあったなあ。」
 燐は黙って勝呂の頬を撫でる。
「あんときは……」
「ええんや。」
 勝呂は燐を腕の中に抱き込む。何かを予感しているかのように燐の身体はがちがちと音を立てそうなくらい固まっていた。身体の中に溜まったものを外に吐き出そうとするように燐は深く息をついた。
頬に当たる尖った耳が勝呂を挑発するように熱を帯びていた。ゆっくりとそれに口を近づけ前歯で食む。
「ぎゃっ……。」
 あまり色気のない短い悲鳴が燐の口から上がる。
「もうええんやろ。お前に手出しても。付き合って五ヶ月やし、お前にもう隠し事はあらへんし。」
 燐はもぞもぞと勝呂の胸板に顔を擦り付けている。
「んなこと言ったって、学校が始まって二週間くらい経ってるじゃんか。その間なーんにも手出してこなかったじゃんか。」
「いやまだちょっと暑かったしな。俺汗かきやし。」
「なんだよそれ。俺は女の子じゃねえから、そんなの気にしねえよ。」
 勝呂は燐の背中に回していた手を脇に移動させる。そのまま裾を出しているシャツを掴んでたくし上げた。シャツの隙間から入ってきた手は勝呂が言うとおり汗ばんでいた。それは彼のいう体質のせいなのか、それとも別の理由があるのか燐には分からなかった。ただいつものよりその手は強引に燐の肌をまさぐっていた。
「ほら。あんまり気持ちええもんやないやろ? 汗でべたついとる男の手なんか。」
 勝呂の手から与えられる生々しい感触に耐えようとするように燐は勝呂に抱きつこうと腕を伸ばしたが、勝呂はそれを許さず燐を扉に再び追いやる。
「勝呂。抱きついちゃ駄目なのか?」
 涙目で燐は勝呂に訴える。勝呂の手は燐の身体の両脇から差し入れられ、上と下で燐の胸と尻の肉を遠慮なしに触っている。勝呂は「駄目だ」と燐に告げた。
「今日のところは最後までやらんといてやるわ。やけど、俺だって女子に負けたままや嫌やから。」
 ちょっとだけ泣かせてもええやろ。
勝呂は今までの甘やかしぶりが嘘だと言わんばかりに執拗に燐に意地の悪いことを言った。
「杜山さんにどこ触られて気持ちよかった?」
「覚えてねえよ。」
 勝呂はわざとらしく燐の胸の一点を凝視する。そこにそっと手を触れると燐の身体に電流が流れたようにびくんと震えた。胸部にあるそこだけ色彩が異なった部位で、普段はそれがあるということさえ忘れるような部品だった。燐のそこも勝呂の目に薄暗闇の中でわずかに判別出来るくらいでしかなかったが、指の腹で触れてみれば周囲の皮膚とは違う感触を主張している。
「す、勝呂ぉ。」
 湿った指でそこを撫でていると、だんだんと燐の声音が甘いようで怯えたような色を帯びてくる。やっぱりと勝呂は確信する。
「嘘やろ? お前は覚えとってもよう言わんだけやろ。気持ちええとこ言うてもここしか無いよな。ほらここ。どういうんかな? ここは?」
「う……うう……。」
 勝呂は燐の胸の突起を摘んで指の腹で擦ったり押しつぶしたりしている。その度に燐は喉の奥で堪えるように声を上げた。
「ほら。言うてみいや。彼氏の前であられもなく女に触られて感じとったんやろ? 懺悔や思うて言ってみいや。お前の気持ちいいここはなんや?」
「ち……ち、あう……。」
「ち。ってなんや?」
 燐は消え入りそうな声で何かを呟いた。それに勝呂は聞き耳を立てたが、現実として聞き取れなかった。だから正直に聞こえないと勝呂は言う。
「嘘だぁ……」
「本当やもん。もう一回聞こえるように言うんや。ほれ。……もっとこうしたら言えるんやないか?」
 勝呂は今にも泣きそうな燐に底意地の悪い笑みを見せて、たくし上げた燐の胸に今度は自分の口を近づける。燐は勝呂の湿った下の感触にびくりと身を震わせた。胸の突起は片方ずつ勝呂の指と舌に苛まれて、恥ずかしげもなく硬くなっていた。
 しばらく燐を弄んだあと、勝呂は急に口も手も放して燐を見下ろした。
「まだ言えんのかな。強情なんは俺に対して何かあるんやないか?」
 わざと脅すような言葉を選ぶ勝呂。燐は絶え絶えに息を吐きながら、首を横に振った。
「これで終いでするで。燐。そやから正直にどこが気持ちよかった言ってみい?」
「一箇所しかしてない癖に。」
「なら尚更言えて当然やろ。気持ちええとこなんて。」
 燐は再び勝呂に縋ろうとしたが、勝呂はそれを許さず燐の手首を掴んでそれを拒んだ。身体も精神も追い詰められて燐は、無意識に涙を頬に伝わらせてしまった。
「あぐっ……。ち……ちくび。気持ちよかったの……。」
「なんや。言えるやないか。ほんまにとろいなお前は。」
「うわあ! 勝呂のあほう!」
 燐は馬鹿力で勝呂の拘束を自力で解いた。勝呂は一瞬虚を突かれたように後ろに倒れこむ。そこで抵抗に遭うとは思ってもみなかった。燐はいつも以上に大人しくて無抵抗だったので、つい調子に乗りすぎたのかもしれない。燐は倒れた勝呂の上に馬乗りになる。
「馬鹿。バカ。ばかーぁ! なんでそんなに急に意地悪になるんだよ!」
「お前はえげつないのがええって言うてたやん。」
「そんなスケベジジイみたいな迫り方してくるとは、思ってなかったんだもんっ。」
「え? あかんかったん?」
「えげつない、っていうか。ちょっとワイルドっぽいぐらいで良かったのに。なんだよ。恥ずかしいこと言わせんのが、お前の趣味なのかよ!」
「せやかて。お前がまる投げするから。」
 お互いの脳内のイメージというか、シチュエーションがいまいち合致していなかったらしい。勝呂はこんなところで意思疎通がままならなくなるとは思わなかった。
「あのなあ。俺はエロ本かて表紙くらいで中身はまともに見たことないんやで。」
「なんだよ。無理させちゃった俺が悪いって言うのかよ。」
「責めとるわけやない。そうか。お気に召さんかったか。スケベ親父っぽいのは。」
「そうだよ。今度は歳相応にしてくれよ。」
「お前ももうちょいアドリブ利くようにしてな。」
 燐は涙をぼろぼろ零しながら、「うん」と勢いよく頷いた。自分がはっきりと要望を言わなかった結果が「スケベジジイな勝呂」だったので、この失敗が余程骨身に染みてしまったようだ。
「勝呂ぉ。」
 燐は今度こそ勝呂に抱きついた。
「うわあ。燐!」
 すぐに引き剥がされそうだったので、燐は根限りの力で勝呂にしがみつく。
「はな……離せえ!」
「なんだよっ。もう意地悪すんなよ。」
 勝呂の手が床をばたばたと叩く。
「お前の乳首勃っとるから。胸に擦れて気色がええんや!」
「はあ? なに! 勝呂がたたせたんだろ!」
 燐はお返しとばかりにぐりぐりと勝呂に胸板を擦りつける。
「ああ……。あー……。やめい!」
「はあっ。勝呂? 気持ちいいのか? 俺の乳首?」
「乳首乳首言うなっ。」
 燐は今まで流していた涙を引っ込めて、くすくすと身悶える勝呂を嘲笑う。
「なあ? 俺と乳首と朴のおっぱいどっちが気持ちいい?」
 実はかなり燐も朴の名前を聞いてやきもきしていたらしい。
「……お、お前。」
 燐はにっかりと満面の笑みを浮かべて、「よく出来ました」と勝呂の頬にキスをした







けいりんさん散々お待たせいたしました。実はもうSQで先が見えてきたし、雪ちゃんは生存しているし、勝呂たちとの和解も先延ばしにならなそうなので、この一連のssは京都編後ということに急遽設定変更しました。
一応違和感のないようにしたつもりですが、何かありましたらご連絡ください。というかこれから勝燐は何やっても原作の設定に反しようがないんだなとにやにやものです。今回はちくびまでしか進みませんでしたが。
リクエストありがとうございました!

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☆『完全鬼畜杜山しえみ』勝燐+女子(朴出)

 数日が経った。
 が、結局、出雲は何も行動出来なかった。自分が躊躇してしまうのは想定内だったが、それ以外の原因があった。
『杜山しえみ。あいつがいるから奥村燐に近づけないじゃないの。』
 前の席でのほほんとしえみは燐と笑いあっている。同時に塾に来なくても、しえみが前の席を陣取っていると、後から来た燐が自動的に隣に座るのだ。
『あの二人の間に割り込めないことはないけど。絶対あの女は私がいつもと違う行動をとれば首突っ込んでくるわね。』
 それも出雲の考えすぎだったが、なきにしもあらずな可能性だった。朴の顔が過ぎる。
『朴とのこれからの関係の為なら……。でも。』
 強引にしえみの横から奥村燐を掻っ攫うか? いや待てと出雲は思う。
『杜山しえみを抱き込めれば。』
 少し本来の形からずれてしまうが、マンツーマンより二対一のほうがやりやすいのは確かだ。
『杜山しえみの思考回路は読みにくいのよね。』
 勝呂に対して策士を気取っていた割には出雲は弱気だった。
『ひきこもりの世間知らず。友達関係に餓えていたわよね。ということはそれを餌にすれば、ってええええ。私いっぺんあいつをパシリ扱いしたじゃない! いや。そのあとあいつは気にしてる様子ないし。大丈夫、よね。』
 前回同様しえみの好意を利用しようとしているのだが、出雲は何故かふんぎりがついたように頷いた。
『朴。本当にもう少しだから。』
 本当は朴はそこまで本気で、出雲にそれをやって欲しいとは思っていないことには気づいている。私のほうが朴のことを好きな気持ちが大きいから、朴に躍らせれているのは仕方ない。踊らされている身なりに本気になって、朴に見せ付けてやりたい。私はこんなことが出来るくらいに、あんたのことが好きなのよと。
 
     *   *   *
 
「燐はよく勝呂君と残って勉強してるよね。」
「なんだ? お前は勉強はできるほうだろ。」
 塾が終わって燐としえみは暢気に話をしている。
「こう言ったら悪いかもしれないけど、友達と勉強するのって楽しかったりする?」
 燐は少し目を逸らして口ごもる。燐にとっては半分くらいは勉強というのは方便なところもあるからだ。
「あー……。楽しいっつうか。」
「うーん? じゃあさあ。私も居残り勉強してみようかな。」
「え?」
 突然しえみが言い出したことに必要以上に燐は驚いた。しえみは家の庭の手入れがあるからと、塾が終われば早々に引き上げるのが常だったのに。しえみはそんな普段を忘れたかのように燐に告げる。
「家で一人だと集中できるけど少し寂しいんだ。だから燐も今日は一緒にしてくれるよね。ね? 燐?」
 燐は視線を泳がせつつも「別にいいけど」と歯切れ悪く言う。平静は装っているが、やはり動揺は隠せないようだ。いくら燐自身に勝呂という存在がいても、女子からのそういう誘いは嬉しいらしい。そわそわしている燐を横目に、しえみは教室の後方んびいる出雲にちらっと笑いかけた。出雲はそれからそっぽを向く。
 燐はそんな女子同士の目配せに気を配れないまましどろもどろに言ってみる。
「俺は勝呂に教えてもらってばかりだから。」
 つまり教えるほうはからっきしだと、教える立場ではないと暗に断りを入れているばかりだった。そんなところでも見栄を張れないのが燐の素直だといえばカッコイイが、情けないところだった。
「いいんだよ。別に燐に教えてもらいたいわけじゃないから。ただ、一緒に勉強してみたいだけだもん。」
「あ。ああ……。そう。」
 最初から期待されてないとはっきり言われてしまった。
「じゃあ勝呂も一緒に。あいつ教え方上手いから。先生役は流石に要るだろ。」
 ふと燐と勝呂の目が合う。位置的に勝呂は向かい合って話しているしえみの真後ろにいるので、しえみから勝呂は見えない。自分の名前が聞こえた勝呂が二人の後ろに近づく。そして声をかける前にしえみが勝呂君は要らないと言った。
「いや。勝呂君は要らないよ。二人で勉強しよ。」
 勝呂は立ち止まる。その肩が少し下がっているのが燐には見て取れた。そしてその肩を志摩が叩くのも見えた。
「ああ……。」
 燐は勝呂らの背中を見送る。そして宝も山田も出て行った。こちらをちらりと窺った出雲も教室を去っていった。教室には燐としえみの二人きりが残った。
 
「……。勉強、始めよっか。」
「うん!」
 しえみはいい声で返事をしたが、何故か席につく様子は無い。仕方が無いので燐は先に席につこうとしたが、それをしえみに止められた。
「燐。ちょっとまって。」
「なんだよ。」
「ちょっと私の前に立って後ろ向いてくれる?」
 無垢な目でしえみは燐を見つめている。しかしその身振りは少しぎこちない。言葉のイントネーションというか、雰囲気がまるで、台本通り喋っているという感じだった。それにも違和感を覚えたが、燐にとってはトラウマになっている出来事に重なる。
「しえみ。なんで後ろ向かなきゃいけないんだ?」
「えーっとね。内緒にしなきゃいけないから、理由は話せないの。」
 しえみの口からそれを聞くと、嫌でも一週間前のことを思い出してしまう。朴によるあの落花狼藉を。自分の尻を蹂躙したあの手の感触を。
『朴のことさえなけりゃ。しえみに背中を見せられるんだけどな。』
 再度の女子による後ろ向いてが、燐にとっては戦々恐々もののトラウマだった。この状況は明らかにあの光景をなぞっている。
「なんにもしないよ。燐。」
「嘘だ!」
「私を、信じて。」
 燐はしぶしぶ無邪気なしえみの眼差しに促されて後ろを向く。
しかし間髪入れずにすぐに振り向く。
「あっ。」
「ふはははは。やっぱり触ろうとしてるじゃねえか。なんだよその手。」
 燐の尻の近くにしえみの白い手があった。思わず哄笑があふれ出る。
「ははは。なんだよ、お前ら。お前もかよ、しえみ。俺の尻を撫で回して。俺を辱めようってかよ。はははあっはああ。女なんて信用出来ねえ。」
「ひどいよ燐。フェイントなんて、お利口さんのやることだよ。」
「うるせえ! 女子の間で流行ってんのかよ! モテナイ男子を釣ってセクハラがよおおおおおお!」
 燐は吠えた。あたかもモテナイ男子を代表するかのように。しかもしえみは悪気無しに馬鹿認定までしてきた。モテナイのも、馬鹿なのも、重々承知の自覚する以前の付き合いだ。しかししえみ含めた女子達は、追い討ちをかけるようにそんな哀れな男を嬲ってくる。精神を。あってないような尊厳を。自尊心を。
「ぜってえお前は、雪男相手にはしねえよな? こんなこと!」
「じゃあ、雪ちゃんにもやる! だからもう一回後ろ向いて!」
「そういう問題じゃねえんだよ!」
「駄目なんだよ、燐。」
「やるほうが駄目だろ。こんなこと!」
 
「そんなことないわ!」
 
 何かの気配が後ろから迫る。出雲が燐の背後に立っていた。
「か、神木……。なんだよ。お前は、出て行ったんじゃないのかよ?」
 燐は青ざめる。しえみばかりか、出雲までも燐の尻を狙っているのか。
「お前ら。どうして?」
「うっさい!」
 出雲は嫉妬と憎しみを込めて燐の前に回って指を突き出す。
 
「この、泥棒猫!」
 出雲の咆哮が教室に轟く。燐は思わず後ずさりその場から逃げ出そうとしたが、しえみがその手首を掴む。
 
『奥村はな、猫みたいなんや。』
 いつか勝呂が語ったのろけ話だった。
 
「あんたみたいなねえ、ちょっと可愛いだけの男になんで朴が手を出すのよ! あんたなんかっ。」
 再び出雲は背後に回る。そして間髪いれずにしえみが燐をえいっと押す。
「あ……ぎゃああああああああああああああ!」
 いつかの叫びと同じ声。尊厳を踏みにじられた者の上げる悲鳴。
「このっ。このっ。このっ。」
 触れるというよりは鷲摑み。
「ぎゃああ! ぎゃああああああ!」
 出雲の頼みを引き受けて達成したしえみではあるが、その後はどうすればいいのか分からない。
「えーと……。うーんと……。神木さんが燐の尻を揉んでるから。私は、そうだ。燐の胸を揉んでみようかな。」
 尻ばかりに気を取られている燐は、前方ががら空きだった。しえみはすんなりと燐の胸板を揉む。
「えいっ!」
「ひゃああああああっ!」
 尻を胸を二人掛かりで揉まれる。しかも同年代の少女達に。これは天国か地獄か分からない。しかし色んなものが燐から零れ落ちていく。
「……やめて。頼む…っ。」
 燐は膝から崩れ落ちる。それでも手は離れてくれない。
「私の朴にっ。この!」
「わーい。男の子の胸ってけっこう揉めるもんだね。」
 正確には楽しんでいるのはしえみただ一人だった。
「燐。肩揉みって気持ちいいけど、胸を揉まれるの気持ちいい?」
「お前が揉まれてろ!」
 女子相手に馬鹿力を出して怪我させるわけにもいかないので、燐はひたすら耐えながら床を息も絶え絶えにのたうちまわっていた。
 
「何やっとんやお前ら!」
 
 ぜーぜーと息を吐きながら燐の悲鳴を聞きつけたらしい勝呂が教室に駆け込んできた。
「女二人で男をセクハラ! さいて……いやいや。なんかちゃうやろ! 今すぐやめえ!」
「駄目だよ。勝呂君。出雲ちゃんは今試練の最中なんだから。」
 涼しい声が勝呂の耳を掠める。振り向くといつかと同じように朴がいた。
「私まだ鍵返してなかったんだよね。」
 しれっと言ってのける笑顔の少女。勝呂は顔を引きつらせる。
「朴さん。試練って……。いや、あんたが神木や杜山さんをけしかけたなら、すごく話が分かりやすくなったわ。」
「えー? しえみちゃんのことまで私は関わってないよ。」
「でも結果的にはあんたが根本や。」
「私はだから止める気はない。出雲ちゃんは私への気持ちを証明する為に、恋敵とも言える奥村君に接触した。これだけでも試練は達成。しえみちゃんに援護を頼んじゃったけどね。だけど十分に合格範囲内だよ。」
「だったら、今すぐやめさせえ。」
「だから。私の気は済んだけど、出雲ちゃんが奥村君に対してまだアレでしょ? 私はそれについては出雲ちゃんに甘んじるしかないから。」
「いや。絶対あんたが神木けしかけたせいで、こうなっとるよな。最初から終わりまで奥村はあんたらの被害者でしかないよな!」
 ふーんと朴は目を細める。
 燐の背後で出雲は尻を揉みながら泣きじゃくっている。やっていることとは正反対の滑稽な姿だった。朴はそんな出雲が可愛くて仕方ない。ではそれに報いる為に朴が取るべき行動は決まっていた。
「じゃあ、勝呂君も奥村君と同じ気持ち味あわせてあげる。」
 朴が素早く背後に回り、その手で勝呂を蹂躙した。
「ぎゃあああああああ!」
「勝呂君。君の言っていることは正論。でも人間の感情はそんなもんじゃないよ。君は理屈で、常識でものを言ってばかりだ。私という加害者を説得する前に君は――。」
 今度は後ろから勝呂に抱きついた朴は勝呂の胸をまさぐり始める。
「いやや……。やめ……。」
 
「君は間髪入れず、問答無用で、奥村燐君を助けるべきだった。」
 
 そうしていれば、君までも女の子に陵辱されることはなかっただろうね。
 
 そんな囁きは二人分の悲鳴に掻き消える。男二人は少女達に存分に嬲られた。
 
 二人だけの甘い世界なんて幻想。
 そう朴は嘯く。
 この世は愛する人たった一人が対象の快楽や幸せに満ちているわけじゃない。それでもたった一人に定めたいならば、それ相応の覚悟が必要だ。朴の浮気はいつもその確認の役割があった。たった一人の少女を愛するために。
 勝呂は朴に抱えられたまま、せめて喘ぎ声を出さないように両手で口を押さえ込んだ。ゴリラの癖に健気だなと朴は思った。
「敢えて他人に迷惑をかける覚悟。それが好きな人だとしても。なーんちゃって。」
 人間はそこまで簡単じゃないよ。
 
 少女の一人は無邪気に巻き込まれ。
 少女の一人は愉悦をもって企み。
 少女の一人は憎しみをぶちまけた。
 
 最後に少女達は「ごめんなさい」と一言告げて教室を去っていった。
「奥村……大丈夫か?」
「女こええええ! でも。気持ち良かったかも。」
「ちゃっかりやけど、俺もや。ほんま。すまん。」
 涙目の男二人はそれでも思わぬ僥倖には見舞われたようだ。
「奥村。忘れよう。」
「そうだ。忘れよう。それが一番いい。」
 燐は立ち上がってズボンについた埃を払う。勝呂も同じようにした。
「えーと。忘れる前に言っとくわ。助けられんで、ごめん。」
「え? なんで謝るんだ。しょうがねえだろ。女子相手なんだから。俺だってあいつら相手に抵抗出来なかったんだから。それが普通だろ。」
「普通なん!」
 女子の暴走の前では男子の貞操なんぞゴミかと言わんばかりの燐の言い草だった。その言葉は男らしいが、肝心の自分の気持ちというものを見失っている。
「万が一にも神木やしえみや朴に、怪我させたら駄目だろ!」
 勝呂は絶句する。この馬鹿には本当に言い聞かせなければならないと思った。
「いや。やっぱり言わして貰う。お前な、暫くあの三人には気をつけるんやで。これは彼氏の命令やからな。」
「うん、わかった。俺は絶対にあの三人相手には背中見せねえから。」
 
     *   *   *
 
 出雲は泣いていた。あんなふうな復讐まがいのことをしても全然気が晴れないのだ。泣きながら歩く出雲の手を朴は取って引っ張っていく。噴水のある中庭まで歩くと朴は立ち止まった。
「朴ぅ。わたし朴の言うとおりにしたよ。だから……」
「もういいよ。大丈夫。出雲ちゃんは頑張った。だからね。」
 朴は両手を広げ異様な動きをする。バレエのようでもあり、能狂言のようでもあり、コサックダンスでもあり、現代アートのわけのわかんない舞踏のようでもあった。暗い中庭に月明かりの舞台照明。朴はわけのわからない動きで踊っていた。
「朴? なにそれ?」
 朴は飛び跳ねながら出雲の前に着地する。そしてくるりと回って、自らのスカートの裾を摘んでお辞儀した。
 
「求愛のダンスだよ。出雲ちゃん。」
 
 出雲は何も言わず、朴の胸に飛び込んだ。







けいりんさん、まだ待っていてくださってますか? やっと長すぎる前座が終わりました。まさか2カ月またぐとは思っていませんでした。次回からまじ本編です。でもこれって燐を盛りたてたことになるんかな。

拍手[7回]


☆ss「究極鬼畜神木出雲」勝燐+朴出 リクエスト序曲第二幕

けいりんさんすみません。前座第二幕です。




 朴朔子は恋人持ちの男を甘く見ていた。少年漫画の男が読者の少年達に見せる爽やかさを、そのまま信じていたのかもしれない。朴は少年漫画なんぞは読まないが、アニメ化されたテレビの画面をちら見する限りではそのようになっていた。だからなのか、男は些細なことでは動じない生き物だと思い込んでいたようだ。特に女子に対しては多少の理不尽や無法も許されるものだと、心の片隅で思い上がっていたのかもしれない。
 要するに朴は男を侮っていた。
 その証拠に――。
「ぱーくー。」
 頬を膨らませ顔を真っ赤にして涙を溜める出雲が目の前にいた。
「あんた。奥村燐の尻触って、ちょっと気になってたって言ったって、勝呂から聞いた。私が一番大事って言った癖に。」
 勝呂が出雲に先日の出来事をちくったようだ。出雲の言葉からは何らかの誇張表現もない。事実そのままを伝えてくれたようだ。しかしそんなものは何も有難くもなかったが。
「出雲ちゃん。私と勝呂君の言うこと、どっち信じる?」
 柔らかい笑みを引っ込めて少し真剣なふりをしてみる。出雲はじゃあと問い直す。
「勝呂の言ってたことは嘘……」
「じゃないけど。」
「やっぱり奥村に手を出してるってことじゃない!」
 ヤキモチやいた出雲を眺めているのは楽しいが、こじれてしまったら手がつけられないかもしれない。
「ごめんね。おなかが空きすぎたのと同じ感覚だったのかもしれない。だって出雲ちゃんと最近会えないこと多くなったし。」
「時間取れなくなったのは私の所為かもしれなかったけど。それ差し引いても納得出来ない。」
 出雲は相変わらずふくれっ面だ。朴は「困った」と「出雲ちゃん可愛い」が二対八くらいの割合で思案していた。つまりあまり困っていなかった。
じゃあと朴は出雲に提案してみる。その提案を聞いて、出雲が本気で泣きじゃくり始めた。
「やだよ。朴。私男なんて……。」
「出雲ちゃん。私達のことを小学生の頃から続く惰性にしたくなければ、それは必要なことなの。」
 何の屁理屈だと出雲は思った。開き直るにしても、もう少しどうにかならないものかとも思った。
出雲の両手は朴に捕まえられてしまっている。でもその手は出雲を無理に拘束するような力はなかった。まるで振りほどいても構わないというような、どっちつかずさで、そういえば朴はいつもそうだった。あとくされの無い女の子を見つけては、出雲に隠れて遊んでいた。たったひとつ違うのは、今回朴が手を出したのは男だということだった。これは出雲にとって救われることなのか、より一層不安を掻き立てるものなのか。そして朴はそんな出雲に繰り返し告げる。あることを為せと。
「朴……。」
 繋いだ手は朴のほうから離れていく。それを今度は出雲が引き止めてしまった。
「駄目だよ。出雲ちゃん。ちゃんと結論を出してからじゃないと。」
「結論、すぐに出せるから。待って……。」
「すぐに出せる結論なんて意味がないんだけどね。ま、いっか。出雲ちゃん、頑張ってね。」
 
     *   *   *
 
 背中に気配がすると思ったらでかい巨体(日本語的におかしい)が立っていた。またお前かよと出雲は自然と眉間の皴が深くなる。
 
「しつこいようやけど。俺と奥村は実は付き合っとるんや。」
「ちゃんと朴には釘を刺しておいたわよ。これで私は義務は果たしたわけだし、それ以外のことだったらあんたらのことに興味無いし。」
 勝呂もそれはわかっているらしく、溜息をついて頷くだけだった。
そのときの出雲は適当な鍵穴から塾の扉を開ける前のことだった。
 出雲にとってはそんなに親しいわけではない男子のしつこいカミングアウトなど、授業前に聞きたくなどない。
「そないな嫌そうな顔せんでくれ。」
「だからちゃんと朴には言ったってば。私に会えなくてお腹が空きすぎたせいらしいわ。」
「だから言うて、デパ地下の試食やないんやで。奥村は。」
「私も朴にデパ地下の試食で腹を満たされるのは心外なのよ。」
「だから奥村はデパ地下やない!」
「あんたが先に言ってきたんでしょうが! あんたにとっちゃ奥村は、家に用意されてある愛情たっぷりのごはんかもしれないけど、朴にとっちゃ帰り道に簡単につまみ食い出来る程度の扱いなのよ。どう? 安心したでしょ?」
 勝呂は顔を引きつらせたあと、ほっとしたように胸を撫で下ろした。彼の中で何かの落としどころが見つかったらしい。
「すまん。俺はあいつが女にも意識されとるなんて、今までいっこも考えたことはなかったから。」
「私も信じたくなかったわよ。朴がまさかあいつに、手を出すなんて。」
 苦々しげな出雲の口調に勝呂はまあまあと宥めている。
「あんたの用事は把握したわ。もう二度とあんなことにはならないように、朴を監督してくれって言いたいんでしょ。」
 そうやけど、と勝呂は小さな声で呟いたあと、身長差があるというのに屈んで上目遣いでこちらを見てきた。妙に威圧感を感じさせた。本人はそのつもりはないだろうけど。
「なあ。奥村って、女の目から見ても可愛いと思うか? その、特殊な趣味の女から見たら。」
 なんだかんだで出雲は加害者側の関係者なので、そのくらいの被害者からの素朴な疑問は親切に答えてやろうかと思った。
「あんたみたいにごつくないしね。身長と体重の比率の割には、どこもかしこも小作りでまあまあ整ってるし。」
「なんか玄人並みの鑑定やな。」
「褒める筋合いの無い男を褒めようと思ったら、それなりに曖昧で無難なとこを選ぶわよ。可愛いなんてはっきり言いたくないし。」
 勝呂はやっぱりなあと呟きながら、眉間の皴を深くする。出雲は言い返す。
「私に恋人自慢しようとしても無駄よ。どんな男にだって興味ないから。」
「お前はそう言うやろうと思ってた。」
 その言葉に出雲はかちんときたが、勝呂は気づく様子はないので続けて訊く。
「でもあいつに、男女で共通するようなええところがある場合、どうやろ?」
「男女で共通?」
 確かに出雲は消極的に軽くではあるが、奥村燐の可愛さを認めた。しかしそれを勝呂に額面どおりに受け取られるのは、少し納得がいかないところだった。
「正直言うてくれや。奥村は可愛いか?」
「可愛いでいいわよ。あんた私にそう言わせたいんでしょ?」
 可愛いと認め口に出すのは癪だが、この話の流れでは可愛くないと否定するほうが難しくなっていた。否定したら無限ループに陥りそうな気がした。
「神木。お前猫好きやろ? 奥村はな、なんか触ったら猫みたいに柔らかい感じなんや。目かてちょっと釣り目で……。」
「あんた何時の間に人の嗜好を嗅ぎつけてんのよ。そんなこと言ってたら気になってくるじゃないの。あいつが。」
 出雲にとって猫に例えられてしまうと、ちょっとふらふらと引き寄せられるような気がする。勝呂は再び「やっぱりな」と言いながら一人で納得している。
「誘導尋問っぽくやって一人で納得しないでよ。鬱陶しい。」
 勝呂は俯いた目を今度は天井に向けて、はあっと溜息を吐いた。
「ごめん。志摩や子猫にはよう言わんというか、知られとうないから、お前に話すしかないんや。」
 そんな宛てのされ方は嫌だ、それになんだか上から目線が入っていると思った。しかし前触れが無さ過ぎる二度目のカミングアウトの理由が分からない。しかし困ったことに勝呂の話を嫌だという気分になれない。こいつも意中の相方のことで悩んでいる奴なんだと、不覚にも共感しそうになる。
 それを認めるのが嫌で、出雲はここぞとばかりに釘を刺す。
「勝呂。私はあくまであんたを振り切れないから、こうやって話を聞いているだけ。恋人自慢がこれ以上長く続くようなら。」
「どうするんや。」
 勝呂は怖気づいたように少し後ずさる。そして出雲は言う。
「まあ、聞いてやってもいいわよ。だけど長くなればなるほど、私の中のあんたへの評価が、知らない内にだだ下がりするだけだからね。」
 冷たく言い放ったつもりでも勝呂はほっとしたような顔をしている。心証などどうでもいいようだ。
「せやな。もうそろそろ本題いかんと。――お前のように奥村を可愛いと思っとる女子いうて、結構おるんかな? ほんで、女子に限らずやけど、やっぱり、あいつのこと可愛い思う男もおると思わへんか?」
「うざ!」
 これだけは幾らなんでも言うまいと思っていた一言が、うっかり口をついて出た。自分の意思にまるで背いて出た。
「あんた自分の彼氏のこと、かいかぶりすぎてるんじゃないの!」
「やって、俺、奥村先生に言われたことがあるんや。実の兄が好きやて。」
 出雲はふらふらと眩暈がしたようにドアに凭れる。奥村雪男の兄に対する態度も薄々は怪しいと思っていたが、まさかのまさかだった。
「あんたそれ口外厳禁な秘密なんじゃないの。」
「いや。ええわ。どうせ奥村先生には、俺とあいつのことをやっかんで言われたことやから。」
「あんたの人間関係もややこしいわね。そうね。ただの恋人ののろけを聞かされるよりは、気分は悪くないわ。……とりあえず。歩きながら話しましょう。じゃなきゃ優等生が二人揃って遅刻する羽目になるわ。」
 出雲は鍵を使って塾の中に入る。勝呂もそれに続いた。しかし今日に限って塾の教室の中には誰も来ていなかった。背後にはまだ何か言いたそうな勝呂の気配がする。
「もう少しだったら、あんたの愚痴ぐらい聞いてやるわよ。」
 朴が勝呂に気の毒な思いをさせたことには、わずかながら申し訳ないと思っている出雲だった。うざいうざいとは思っていても、そんなうざくとも心配性な彼氏を持つ燐が羨ましく思えた。それにしてもデリケートすぎる。目の前のゴリラは。
「おおきに……。奥村先生のことが吹っ切れたと思うたら、今度は朴さんやから。」
「朴のほうが奥村先生より手ごわいと思うわよ。手が早くて油断がならないって点では。でも私がさせないけどね。」
「頼む。そうしてくれ。」
 勝呂は椅子に凭れてぐったりしている。よほど溜め込むものがあったらしい。
 やっぱり男同士の付き合いも爽やかじゃないようだ。それを知っただけでも出雲はなんだか楽になれるような気がした。あの優等生な奥村雪男と勝呂竜士からして、そうなんだから。
「男子のことなんか眼中にないけど、女子界隈で言えば、やっぱり燐のほうは、優等生な弟である奥村先生の評判の影に隠れちゃってるところはあるわね。朴が奥村燐に目をつけたのは、たまたま私が朴を塾に誘ったせいもあるし。塾に通っていない女子なんて言う及ばずだわ。あんたにとっては安堵して良いとは思うわよ。女子に関しては。あんたにとってのお邪魔虫が、いい感じに隠れ蓑になってくれているから。男子にしても高身長で高成績で好感度高い奥村先生のほうが注目されやすいでしょ。奥村先生は有名人だしね。」
「どっちにしろ奥村先生のお陰か。」
 最後のほうではどうしても複雑な心境になってしまうらしい勝呂だった。口を歪めて苦笑いしている。
「ほんで。これは俺のことになるんやけど。燐は俺のかっこいいとこ好きや言うんやけど、お前は俺のことかっこいいと思う?」
 出雲は腹からせりあがってくるマグマのような衝動を覚える。勝呂のはにかんだような顔がそれに拍車をかける。そしてそれは堪えきれずにドロドロに融けた溶岩やら水蒸気やらガスが言語に変わり、出雲の口の中で暴れている。悩み相談かと思えば今度はのろけかよ。出雲は勝呂の前で足を踏み鳴らし、指を突き出して宣言する。
「かっこいいですって? あんたが? 寝言は寝てから言って欲しいわ。さっきまでのあんたの言動のせいで、奥村燐の言うかっこいいところが全部台無しになったわよ!」
「うわああああ!」
 勝呂の断末魔の声に出雲は冷笑を浮かべる。
「奥村先生が、あんたと私のここ十数分の会話を聞いていたとしたら、どう思うかしらね?」
「そ、それは……」
「言われたくなきゃ今度の詠唱の小テスト、わざととちりなさい。」
「えー。そんなこと出来へんわ。というか、まだ気にしとったん!」
「あったりまえでしょ。あんたみたいなゴリラに負けた私の気持ちなんて。実はさっきの会話、録音してたの。私のとこだけ音声を加工して、旧寮のポストに匿名で投函しても良くてよ。」
 出雲はスカートの脇のポケットに手を突っ込んでいる。そこにレコーダーがあると勝呂に主張しているようだ。
 
 勝呂は明らかに顔色を失くしている。その足元に目をむけてみたら、小刻みに震えていた。
「う、うそやろ。そんなことせえへんよな。神木は。」
「私性格悪いからー。あ。それと蝦蟇との鬼ごっこも兼ねた体力テストも私に負けるのよ。ふふふ。これで私が塾で随一の秀才になれるわ。」
「俺みたいなゴリラに体力で勝って嬉しいんか? お前は?」
 出雲はにやりと笑う。
「やるの? やらないの? どっち?」
 出雲の顔はさっきまでの親身さを完全に投げ捨てていた。代わりに酷薄な笑顔を向けている。勝呂が詠唱のテストでとちって、追いかけっこに敗北すれば、確実に祓魔塾は出雲の天下だ。この小テスト二つをピンポイントで狙ったのは、この二つこそが一番確実に勝呂の面目を潰すことが出来るテストだからだ。
「お前は顔に似合わず、いや、顔どおりのいけずな性格やったんやな。」
「馬鹿ね。私の貴族的な麻呂眉はね、権謀術数に長けているという相という意味よ。」
「麻呂眉にそないな意味があったんか!」
 勝呂が目を回している。凄く可哀相で愉快な光景だった。
「ふふふ。日本では仏教より神道のほうが歴史が古いのよ。新参のあんたら坊主なんかに、巫女の血統の私に負けるわけにはいかないわ。」
 そこまでして勝ちたいのか、しかも宗教を持ち込むかと勝呂は思った。
「そこまでして勝ちたいわけじゃないわよ。そっちの方向に性格悪いわけじゃないから。」
 出雲はポケットから手を出して広げてみせた。そこには何もなかった。
「さっきまでの言動を奥村先生にちくるつもりは、はなから無いわ。詠唱もとちる必要もないし、追いかけっこも全力出していいわよ。感謝することね。」
「え? 全部冗談やったん?」
「確認しないでよ。それよりも、何も条件なしで愚痴聞いたりのろけ聞いたりした私に、何か言うべきことがあるんじゃない?」
「すまん?」
「謝るくらいなら、最初から言わなきゃいいじゃない。」
「わ、わかった。おおきに。やな?」
「やな? が余計。」
「お……おおきに。」
 勝呂は足早に出雲から離れるといつもの自分の席について、ひどくお行儀よく座っていた。しかし出雲はそれを見てさして何も思わない。恋心には罪がないからだ。
 そんな哀れな心配性うざかっこ悪い奥村燐の彼氏を見ていると、朴に課された課題をこなすのに、ほんの少し躊躇する理由が出来てしまった。しかしやらねばならないと出雲は思った。
 
     *   *   *
 
神木出雲が自分とは異性であるところの男を意識したのは、実に十五年の人生に於いて初めてのことだった。
「奥村燐……。」
 今は祓魔塾の授業中なので奥村燐は前方の席で教師にテキストで頭をはたかれている。馬鹿には後頭部にも表情があるのか、またやっちまったというような軽い反省が窺えた。教師もいつものことなので「しっかりしろよ~」などと慣れた口を聞いている。高くも低くもない声で「すみませ~ん」と返す燐の言葉に周囲は、苦笑しながらもほのぼのとした空気が漂う。
「先生! 燐は、ちゃんと頑張ってるんだよ。」
 しえみが大真面目に燐を庇うのもいつものことだった。出雲はそんなのは学期の初めには気にもならなかったのに、今日になって今更のようにイライラしてしまう。小学校の低学年ですら男子女子の間には壁があるはずなのに。燐としえみの間にはうす膜くらいしか見えない。
『どいつもこいつも……。』
 そんなお子チャマコンビのしえみと燐を暖かく周囲は見ている。まるで幼い孫を見守る好々爺の眼差しじゃないかと出雲は思った。こいつらはそんな心に余裕のある奴らだったのかと疑問が沸いてくる。でもいつのまにか、教室の雰囲気はそんなふうになってしまっていた。
 呆れながらも小声で燐に答えを教えようとしていた勝呂竜士の気配にも出雲は気づいていた。今回はその手助けが間に合わなかったようで、彼のわずかな落胆がまた教室の空気を微笑ましくさせている。
 そういえば、最初の頃は奥村燐に噛み付く勝呂竜士に、わずかながらに同感するところのあった出雲だった。多かれ少なかれ目的があってこの正十字学園に来た自分や勝呂にとっては、奥村燐のような、どこの学校の一般クラスにも一人や二人はいるような落ち毀れの存在が塾にあることに辟易するのは、どれにおいても専門職を志す者にとっては当たり前な心理だろう。
しかし。自分と同意見だったはずの勝呂が燐に篭絡されたと聞いたとき、『まあ、あいつは顔は可愛いからな。』とか『馬鹿で稚拙な子ほど可愛いってことだろう』とか『自分と違って勝呂は世話が焼ける馬鹿は可愛いんだろう』とか、自分のなかのもやもやを誤魔化した。
 奥村燐は可愛い。
自分の性格の悪さを自覚すればするほど、燐の言動や人間性の可愛らしさが浮き彫りになる。でも燐の場合は、可愛げが人間的な甘さや要領の悪さに通じるところがあって、詰まるところ自分のような摺れた人間には、ある意味眩しくて直視に耐えない。
 直視出来ないから斜めに見る。でも上手くいかない。今まで他人のことなど知ったことではないと思っていた自分が、特定の人間について、今更粗捜しめいたことなんか出来ない。そういうのは、友達と連帯感を深める道具として他人を異質がって笑いものにする連中と同等になってしまうからだ。
『そうよ。私は元々、そんな連中に異質がられて笑われるほうの人間だったじゃない。』
 悔しいがそれが幼い頃から心に留めていたアイデンティティの一つだった。滅多なことでは他人に興味を持たずに済んで、詮索せずに済む言い訳みたいなものだった。
 
『神木さんは他人に構って欲しいから、見えるはずがないのに「わざと」悪魔が見えるなんて言っちゃうんだ。』
『おっかしー。』
『そんなこというから誰にも相手にされなくなっちゃうんだよ。』
 
 嫌なことを思い出した。
あの頃は縋るような気持ちで誰かに分かって欲しかったのかもしれない。その「わかって欲しい」と思うことが、かっこ悪くて惨めであるという陰口を他人から引き出してしまうと知ってから、神木出雲は孤独をしょうがないと諦めた。朴以外のことに関しては。
『私は奥村燐が羨ましいだけよ。』
 この塾にいる人間は全員に当てはまると言っていいほど、やはり多かれ少なかれ、人とは一風違うものを抱えている。奥村燐にも、そういうところがあるのかもしれない。「かも」というのは消極的に見積もった結果で、あの男が一般生徒の中に溶け込んでいるところなんか想像出来ない。黙って普通にしていても浮いたように見える。
 反対に祓魔師の中でも最年少という異彩を放つ彼の弟は、ごく普通に優等生で普通の社会に溶け込めている。出雲は一般に溶け込める彼こそを羨ましく思うべきじゃないのかと、いつも思っていた。
一般に溶け込める彼も祓魔師になるくらいだから、出雲のように尋常でない過去を過ごしたに違いない。でもそれは幾重にも塗り固められた笑顔で完全に隠れてしまっている。それはそれで努力の賜物で尊敬せずにはいられない。でも正直、前述の感想を裏切ってとても羨ましいとは思えない。 
何故ならそんな変わり者集団の祓魔塾生達の心を一つにしているのは、燐やしえみのような、人間的馬鹿甘な連中だったりするのだ。出雲だって、馬鹿のように他人を信じる人間を進んで裏切りたくないと思ってしまう程度にはあの馬鹿たちに毒されていた。
純粋な善に対して、条件付の偽善のほうがよっぽど楽なのにと、出雲は苦々しく思う。たぶんあの志摩廉造あたりは同じことを考えている同類じゃないかと、出雲は勝手に想像を膨らませていた。
ふと机の上を見ると、誰かからのメモが置いてあった。志摩がにこにことこちらを見ている。
『気が合うってわけじゃないんだから。』
 メモには『あんじょう堪えたってや。』と書いてあった。同類だとこちらが思っていると、志摩はそれを嗅ぎつけるタイプらしい。同性だったら、うっかり友達になっているような存在かなと出雲は溜息が出る。
 またいつの間にかメモがある。今度は『思うとることが、顔にものすご出とるよ。』だった。思わず出雲は手で顔を覆った。
 すごく複雑な心境だった。同じ女子同士なのに分かって貰えなかった自分の悩みを、まさか自分とは相容れないと思っていた、不真面目そうに見える男子に察して貰えるとは思わなかった。
『朴が試してみてって言ったのって、こういうこと?』
 対抗意識や偏見だけで男を見るもんじゃないと叱られた。朴が急に奥村燐に接触したことで出雲が目くじらを立てたからだ。我ながら思い出すと異常だったと思うヒステリーだった。
でも朴はいつものように穏やかに、そんな出雲を受け流して悪びれもしなかった。
『出雲ちゃんは私が男子に興味を持ったのが、わけわかんないわけだよね。でも私は意味のないことはしないよ? これは出雲ちゃんのためでもあると思うんだ。』
 何が私のためだよと出雲は怒鳴りたくなる。しかし言い返せなかった。感情的なことばかり言って朴に嫌われるのが怖かった。ならば朴に騙されたつもりで、朴と同じことをしてみるほうがマシだと思った。
 今はやはり朴の言ったことは正しかったと認めるのは癪だ。意識を変えて見れば、本命の奥村燐の他に志摩にさえ、自分に相容れる部分を見つけてしまった。
 
 授業が終わるチャイムが鳴る。彼はきっと今日も弟としえみと三人で帰路に着くだろう。それか勝呂らと勉強会でもするのだろうか。
「私はそんなのに参加するわけじゃないし。」
 どうせ誘われないしと自らに言い訳しながら教室を出る。そのとき一歩先んじて宝が先に出た。宝と目が合う。宝は出雲に向けて人形を翳した。
『言いたいことがあるなら、さっさといえ!』
 宝の人形の指は燐のほうを指差していた。あいつにと言わんばかりに。
「言うだけじゃ済まないから悩んでんのよ。」
『そうか。』
 宝はそそくさと廊下を小走りで進んでいった。
「はあ……。やっぱり実行しなきゃいけないかしら。」
 もやもやする気持ちを晴らすには、斜めから見ているだけでは駄目だということは明らかだった。正面から奥村燐に対峙するしかない。
 
 


次回完結予定です。前座のですが。次回予告「最終回・完全鬼畜杜山しえみ」。

拍手[4回]


☆ss「最終鬼畜朴朔子」勝燐+朴 リクエスト前哨戦

けいりんさんのリクエストで、「意外ともてる燐で勝燐」の前哨戦です。まだこれが本チャンではありません。肩慣らしというか、狼煙です。





 笑顔の良い人間は、ひょっとしたらとてつもない悪を孕んだ人間かもしれない。人に見せる笑顔に長けているということは、他人を信用させることにも長けているということだ。彼女はすこぶる良い笑顔とそれに感じ良さも兼ね備えた少女だった。
 
 そんな彼女こと、朴朔子は彼、奥村燐を見て「惜しい」と強く思う。
 
 誰よりも善良で素直で優しくて真っ直ぐな彼のことを。彼はとにかく不器用で要領が悪いのだ。でも朴からすればそれは、彼を厭う理由にはならない。寧ろ彼の性別が女ならば、朴にとって彼は恋愛対象にもなっただろう。
 朴は実は女好きだった。
 しかも一般的に面倒臭いと言われる物件にほど食指が動く。
「小学校の頃から出雲ちゃん一筋だった私だけど。」
 いや。それは嘘かもしれない。寧ろ一筋だったのは出雲のほうで、別出版社の昔の漫画の主人公のように節操がないのが朴だった。
 脱線してしまった。彼の話に戻ろう。彼はけして器量が悪いわけでもない。性格は前述したとおり、申し分ない。正十字学園での素行はそれほど悪くない。成績は悪いが。しかし彼の弟に目を惹かれる女子たちは口を揃えて言う。
『奥村君のお兄さんって……不良っぽいから怖い。あんまり近づきたくない。』
 何を言ってるんだと、笑顔は崩さないままでも朴はこめかみがひくついてしまう。近づいて見ないから、あの天然記念物的な魅力が見えないんだと。
 まあ、先のようなことを言う彼女達の事情も鑑みなければいけない。彼女達が好きなのは彼の弟のほうだ。彼の弟は十五歳にしては物腰穏やかで大人っぽい。そして成績優秀で品行方正。一般女子の目から見れば将来有望な旦那様筆頭だろう。そんな彼の弟の隣で奥様が出来るならば、女の子の夢の五十パーセントくらいは叶えてしまっているようなものだ。 
 そんな男子を求める女子からすれば、やはり彼は「ハズレ」になっても仕方ない。それは責められない。責めてはいけないのだ。
 それでも彼の良さをかき消すことは出来ない。ただし彼の良さはまだまだ未発掘な部分が多すぎる。意外と彼の一番の特技と言える、料理上手も塾の仲間の間でも知られていない。でも朴は大分前に気づいていた。燐からは料理好きな女の子から漂う独特のいい匂いがしていた。お菓子のような分かりやすい甘い匂いじゃなくて、家庭料理のかすかな匂いだ。そんなものに彼自身も気づいていない。料理好きな子には無意識に清潔さにも気を遣う。彼の爪が不潔に伸びていたり間に黒い汚れが挟まっていたことはない。袖口が黒ずんでいたり、襟の裏が黄ばんでいたこともない。本当に女の子だったら朴好みの、家庭的で素朴な女の子だっただろう。しかも性格が男勝りだろうと予測されるので、前述した側面のギャップが生きてくる。
一番に朴の心を占めている出雲に匹敵する可能性は無きにしもあらずだっただろう。惜しい惜しいと思いながら朴はそこにたどり着いた。
「ちょっとくらい、いいよね。」
 相手はどうせ男なんだから。出雲に対しても罪悪感は少ないほうだ。
 そうと決まったら朴の肝は据わっていた。
「一回だけ。」
 
 よし。朴は意を決して目の前の教室(もう辞めてしまった祓魔塾)の前に立つ。そのドアを開けると一番前の席で一人、奥村燐が課題を居残り勉強していた。いつも側にいそうな勝呂は少し席を外しているようだ。風の噂に勝呂と奥村燐は付き合っているらしいということは聞いている。ちょうどいい頃に来れたと、自分の勘に惚れ惚れしてしまう。
「奥村君。」
 何気なくさりげなく朴は忘れ物を取りに来たついでのように声を掛けた。
「朴? 久しぶりだな。元気してたか?」
 名前を呼んだ瞬間の語尾の上がり具合で、朴は自分の印象の薄さを痛感する。しかしそれは元から分かっていたことだ。
「もー。同じ学校じゃん。元クラスメイトの動向くらい、いつも気に掛けてくれてもいいでしょ。私は特進科じゃないし。」
 その燐の気の利かなさ加減も朴は承知していた。
「お前何しにここ来たの?」
 朴のさりげなさに燐はすっかり騙されている。しかし熟練を極めた笑顔に警戒しろというのを十五歳の素朴な少年に求めるというのも酷だろう。
「んー。ちょっとやり残したことがあって。」
 燐は首をかしげている。朴がここでやり残したことの心当たりが無いからだ。だいたい思いつくことと言えば、出雲を迎えに来たのかなと思うくらいだった。それにしてもやり残したとは言わないだろう。
「神木はもういねーぞ。」
「あ。惜しいっ。ここで出雲ちゃんがいてくれたら、三割り増しくらい楽しいことが起きたんだけど。」
 燐はますます分からない。
「なんだったら俺が手伝ってやろうか? 神木ほど役に立たないと思うけど。」
 燐の申し出に朴はほくそ笑む。
「ありがと。お言葉に甘えて……奥村君。その席立って、ちょっとこっちに来てくれるかな。」
 燐は無造作に席を立って、朴に歩み寄る。
「こうでいいか?」
 朴は燐の頭からつま先までを舐めるように観察する。やっぱり女の子と違って、少々の骨っぽさは気になるところだ。胸はもちろん平らだし、首も若干太く見える。女の子に比べて身体のパーツも大きくてごつい。しかしまだ残っている幼さのお陰で、そのような特徴がこれでもかと強調されているわけでもない。ほどほどよりまだ子どもっぽいような感じだ。特に奥村燐は顔が童顔で体型もどことなく幼い。十五歳だからまだまだ成長途中だろうが。
 朴はじろじろ見るのはやめて、「うん」と呟いて燐の後ろに回る。燐は振り返ろうとするが、その頭を朴の手で固定されてしまう。
「大人しくしててね。奥村君。すぐに済むから。」
 女の子に顔の両側面をホールドされてどぎまぎしている燐がこくこくと頷く。右手が外されて背後の朴のくすくすという含み笑いがもれ出ている。次の瞬間――。
「のわああ! 朴! なにやってんだよ!」
 燐は惜しみなく叫ぶ。それは燐にとって思いも寄らない出来事だった。何の覚悟も無く前触れも無く、朴朔子は燐に接触した。何が接触したかと言うと、朴の右手が燐の尻を撫で繰り回していた。
「ぎゃあ! ぎゃああああ!」
 逃げ回り尻を庇う燐。しかしそれを掻い潜って朴の右手は燐の尻を撫でている。
「ぱく! いい加減にしろ!」
「うーん。けっこう柔らかいね。奥村君のケツ。」
「女がケツ言うな!」
 二人がなんとも言えない追いかけっこをしていると、一時席を外していた勝呂が帰ってきた。
「なにやっとんや。」
 逃げ回る燐を見て、教室に帰ってきた勝呂は呆然としている。自分が席を外した五分弱。その短い間に、なんで燐が女子に追い回されて尻を撫でられているんだろうか。燐は何回かのタッチのあと足に力が入らなくなったのか、教室の床に身体を投げ出してはあはあと息を吐いている。その頭を朴が撫でてやっている。
「なんなんだよ……。もうっ……。」
 強がりなことは言っているが、朴の右手は言うところのゴールドハンドなので、その手に撫でられると大抵の女の子は今の燐のように身体から力が抜けてしまう。数多の女の子に対して実証済みだった。朴も男に試したのは初めてだったが、なかなかに芳しい成果と言えよう。
「あ。勝呂君おかえり。」
「朴さん。あんたやったんか。奥村がけったいなことになっとるから、誰やお前と思うてしもうたわ。」
 燐は床に座り込んで目に涙を溜め、勝呂に助けを求めている。勝呂は駆け寄って燐の肩を支えてやっている。
「朴が俺に協力してほしい、やり残したことがあるっていうから。だけどこいつ、いきなり尻を撫でてきたんだよ。」
 あらあらと朴は思う。お母さんに告げ口するいじめられっ子かと。勝呂は相手が女子なのでどうしていいか分からない。しかし被害者は明らかに燐であるっぽい。それでも朴からは何の害意も感じない。
 だいたい勝呂が朴に抱いている印象というのは、いつも隣にいた性格の悪い神木出雲の友達にしては、穏やかで優しくて性格良さそうというくらいでしかない。まさか男の尻を撫で回すような女子とは思えない。しかしそれを目撃してしまったのだから、気のせいで済ませられない。
「えーと……。朴さん。」
 なんで奥村の尻なんか――。
聞くべきなのは、燐にした行為の動機なのだが。それを口にすると勝呂こそが朴にセクハラをしているような気分になってしまう。朴はにこやかに勝呂の後ろに必死に隠れようとしている燐に近づく。
「ごめんね。」
「う……うー……。あう……。」
 燐は勢い余って若干の幼児退行っぽい。
「初めてだったんだね。女の子にケツ触られたの。」
「だからケツ言うな!」
「女の子だったらお尻って言うけど、男はケツでいいんじゃない?」
「どういう男女差別だ。」
 勝呂は何回か頷いて確信する。このあっけらかんとケツケツ言う朴相手だったら、動機を訊いてもセクハラになりはしないと。
「朴さん。なんでこいつの尻、触ったん? なんかの冗談のつもりやったん?」
「いや。一応本気だけど。」
 朴の返事を聞いて燐はまた怯えたように勝呂の足にしがみつく。まだ足に力が入らないようだ。
「奥村君が女の子だったら、これだけじゃ済まなかったよ。」
 何気に怖いことをやはりにこやかな笑顔で朴は言うのだった。これだけじゃないというのは、場合によっては行き着くとこまでやりたいという意思が見え隠れしていた。
「朴さんは奥村のことが好きやったんか。」
 さすが真面目な勝呂は朴の言葉を真剣に受け取ってしまう。朴は顔の前でひらひらと手を振る。
「そこまではいってないよ。ただ奥村君のことがずっと気になってただけ。塾にいる間は、大抵私は出雲ちゃんと一緒にいたし、奥村君は杜山さんや勝呂君達とつるんでいたから。声掛けるチャンスが無くてずっと惜しいと思ってたんだ。」
 普通の女子から言われたら十分告白と受け取っていいような言葉だった。朴はさらに続ける。
「なんだかんだあって私は塾辞めたし。それで。まだ塾やめて間がないうちに、奥村君と接触してみようかなー。なんて。しかも私ってぱっと見は、地味で大人しそうな女の子のイメージしかないと思ったから、奥村君の中の印象は薄そうだったし。」
 掛け値なく燐も勝呂も朴のことをそう思っていた。この本性を見るまでは。
「だからインパクト重視で今回に至りました。ごめんなさい。」
 ぺこりと朴は頭を下げる。
「お……。おう。そういう事情なら、仕方ねえのかな。」
 女専門の性癖の女からだとはいえ、女に意識されていたという事実は燐の中ではとてつもなく大きかった。結果は散々だったが、朴に対する心証は悪くは無い。勝呂も事情を聞いた燐がそれでいいというなら、仕方ないと思うしかない。
「奥村君のケツ、ちょっとおっきめだったけど。柔らかくって可愛かったよ。」
「知っとる。」
それでも少しは釘を刺しておこうかと、勝呂は控えめに燐に対する所有権を主張した。勝呂の答えに朴は思わず口元を隠す。
「ぷ。ぷぷぷ。」
 上目遣いの朴がその割りにはと言いたそうに勝呂に笑っている。
いつも触ってもくすぐったがるしか反応のない燐が、あそこまで半狂乱の腰砕けになっているのだから、この朴の技量に負けたとうなだれたかった。
「奥村君って初心だね。」
「そうやな。」
「ほんと。女の子だったら食べちゃいたいね。だけど勝呂君だったら、それこそ宝物みたいに大事に大事にしちゃうんだよね。それも分かる気がする。」
 朴は軽やかに教室から去っていく。取り残された勝呂は燐を足元にしがみつかせたまま、赤面して立ち尽くしていた。
「奥村が女やなくて良かった。いうか、朴さんが男やなくて良かった。ちゅーか、朴さんには既に神木がおって良かった。」
 燐を抱き起こして椅子に座らせる。
「これからは女だからいうて、油断せんほうがええで。お前けっこう狙われとんかもしれへん。物好きから。」
「なるべく気をつけてみることにするから。」
 勝呂は燐に近づいて尻に手を伸ばす。
「きゃっいん。く、くすぐったいって。」
 やはり朴のようにはいかないが、こっちの反応のほうが可愛いと思えた。






はいまさかの朴さん無双でした。ほんとうにこれがリクエストの本チャンではないのでけいりんさん安心してください。ちゃんとあとで真面目に書きますから。ちょっと魔が差した朴さんssでした。
 
 

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けいりんさん
 お返事遅れまくってすみません。
 意外ともてる燐ですか。ここでは別軸で総受けに近い状態なので、もてもてという発想はあまりなかったので挑戦しがいがあります。ひょっとしたらまた回りくどい前置き話とかあるかもしれません。本題にたどり着くまでお時間を頂くかもしれませんが、気長に待ってくださると助かります。
 京都編・・・・・・。確かに終わらないと次の段階に進めないというのが本音としてあります。しかし一番のネックになっていたのは、雪男の安否のみでしたので、先月の柔造乱入にてほとんど無事だと確定しているような感じで、あまり私たちにとって問題はなかったんです。でも気を遣っていただいて、ありがとうございます。
 やはり雪男に万一のことがあった場合、うちの勝呂や燐は今までどおりラブラブというわけにはいかなくなると思っていたので、ちょっと京都編以後を保留にしていました。京都編以後は1月以降に話を書くとは思います。
 リクエストありがとうございました。

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50000hitとクリスマスと燐雪誕生日と忘年新年おめでとうリクエスト企画

サイト始めてのリクエスト企画が、様々なおめでたいこと重なるという事態に陥りそうです。なのでその準備として前倒しでリクエストを募集したいと思います。
絶対こいつはネタが欲しいだけだろうと確信されているでしょうが、皆様のネタふりをお待ちしております。では要項など。

募集期間12月18日~12月25日24時まで
ジャンルは青エク、忍たま(文次郎受け、伊雑、伏尊、すみませんうちの既存のカップリングです。)
簡単なシチュエーションやあらすじを添えてくださったらありがたいです。

元旦には何かリクエストにお答えできたらいいな。でも三が日ギリギリでスタートダッシュするかもしれません。それでは皆様のリクエストをお待ちしております。

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柴仲達
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忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

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