幸福雑音
女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。
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☆「誰も突っ込んではならぬ」ミカエレ
アルミン・アルレルトは友人の言動には寛大なほうだった。エレンが無鉄砲なことをしようとも、それを収拾するためにミカサが手段を選ばず女の子離れした身体能力を見せようとも。彼はいつも二人を羨みはするかもしれなかったが、離れたいという衝動に襲われることはなかった。
そんな彼が一方の友人への違和感を感じ始めたのは、一週間ほど前からだった。そしてまた一週間経った現在、その違和感は続いている。それどころかその違和感は日ごとに強くなっていた。
アルミンの幼馴染のエレンもその異変に気付いた。そしてアルミン以上にその違和感を気にしだしていた。
幼馴染三人組・ウォールマリア内シガンシナ区の路地裏。エレンとミカサとアルミンはいつものように集まったが、エレンはミカサのほうをしきりに気にしていて、しばらくしてからやっと口を開いた。ミカサの首元を指差して。
「ミカサ。それ、ずっとそうやってるのか?」
ミカサはこくんとエレンの問いかけに頷いた。無表情ではあるがそれが嬉しそうだとエレンはなんとなく察知する。しかしその嬉しそうな表情がエレンにとってはまずかった。
「あ、あのさ……。ちょっといい加減にしろよ。」
エレンにしては婉曲的な言い方を選んでいた。それでも少し声音にはたからアルミンが聞いて棘を感じる。
「いい加減?」
ミカサは今度は首を傾げていた。季節は冬になろうとしていた。
ミカサの白い額に似合わない眉間の皺が現れ始めていた。アルミンはまずいと思った。
「ミ、ミカサも近いうちにちゃんとすると思うよ。この前エレンの喧嘩を止めに行ったとき、少し汚れちゃったし。」
「わたし、糞ガキの鼻血のあとくらい気にしないけど。」
赤色で紛れているが、少しばかりくすんだ色になっている部分がある。
「気にしろよ。というかこの前って言えば三日くらい前じゃねえか。既に染みになってるぞ。母さんに頼んでなんとかして貰えよ。」
ミカサのまだ地面を向いている拳がぶるぶると震えている。エレンが指摘してきたことだから従いたい気もするが、どうしても譲れないなにかがあって葛藤しているようだ。ミカサにしては子供っぽい反応だ。
「エレン。どうしても駄目?」
「そうだ。なんとかしなくちゃいけないんだよ、それは。」
それは遠い未来に調査兵団に入る時の決意と同様の強い意志を伴っていた。その割には言い方はひどく抽象的だ。なんとかというのもひどく限定した行為を指しているが、それそのものとそれに連なる原因を口にすることは躊躇われたようだった。
ミカサは顔立ちはエレンたちとは異なって異質な風貌をしているが、間違いなくの美少女なのだから。エレンなりに気を使っているが故だった。
「だって。エレンがこれにしてほしいをすると消えるから。」
「消える? なんだそれ?」
消えるという言葉にエレンは顔をしかめていた。ミカサもエレンと同じように口に出せない言葉と理由がある風だった。アルミンは踏み込めない何かに踏み込もうとするエレンを止めようと、腕を掴んだ。
「アルミン。どうしたんだよ。」
「い、いや……。」
アルミンの背中あたりから冷や汗が噴き出てしまう。
ミカサはけして非常識な少女でもなければ、幼児性も強くない。
ただエレンに対する変質的な執着だけがネックなのだ。しかもエレンその人がいまいちそれを理解しきれていないところがある。平均的な男の子だから女の子の微妙なこだわりが理解できるはずがない。エレンは精々のところ、ミカサが自分に過保護なのが時々鬱陶しいという程度にしか思っていない。
しかしミカサはエレンに対して口やかましいわけではない。熱っぽい目で見ることもなければ、周りに対してエレンの所有権を主張するわけでもない。時々物騒な言葉を吐くことはあるけれど、エレンの危機やそれに準ずる事態の時にさえ、ただ黙ってその拳を振るうのみだ。拳を振るうほどでなければ、エレンの後ろに控えていじめっ子を威圧して追い返す程度に留める冷静さを持っている。
なんとまあ、一人の男の子に執着する少女にしては控えめでさりげない過保護だった。実力行使でいつも無鉄砲に飛び込むエレンに身を以てわからせることも出来るはずなのだ。しかし彼女はそれをしようとしない。
呼吸をするようにエレンを助けることが、彼女にとって愉悦だとか至福だとかもあまり思っていないはずだ。呼吸によって酸素と二酸化炭素を交換する行為をいちいち重要だと意識していないように、彼女の生命活動において、ごく自然にエレンに関することが必須で不随意的な動作であるのだろう。
だからエレンもミカサと出会ってから生活を共にしだして、今になって気づいてしまうしかなかったのだろう。
「ミカサ。もう一年経ってるんだ。わかるよな? 俺はお前がそれを……はっきり言うぞ。洗濯しているところを見たことがない。」
エレンはやっとそれとかなんとかとかしか言えなったもの、そのものずばりを口に出した。ミカサは首元を摘まんで言う。
「そうね。半年くらい前からまずいかなって思っていた。だけどエレンもおばさんもおじさんも何も言ってこないから、まあいいかなって思ってたの。」
アルミンもエレンが何も言わない様子だから、いいのかなと思っていたのが本音だった。しかしそれはアルミンにあるまじき楽観視だった。
「そういえば。首のあたりが少し痒いかなって思ってたの。」
「あたりまえだろ。ちょっと見せてみろよ。……あーあ、汗疹になってるし。このさい洗濯して綺麗にしような。アルミンだってそう思うだろ。」
ミカサの冷たい目がアルミンを射抜く。アルミンはミカサが何に対して拘っているかに気づいているが、それをエレンがいるこの場で言ってしまうと、エレンの気性からして最悪それをミカサから取り上げてしまいかねない。それをみすみす取り上げさせるミカサではないだろうから、イエーガー家内に巨人が入り込んだ規模の騒乱が起こることは必至だった。
アルミンは二人の主張を、当事者同士以上に理解していた。しかしアルミンは頭の中で考えるのが精一杯で、彼らが同時に了承してくれるような案が見当たらない。
「わかった。エレンの言うとおりにする。」
ミカサが折れてくれた。アルミンはほっと胸を撫で下ろす。アルミンが野暮なことを考えなくても、ミカサにとってその品は洗濯して染み込んだ全てが洗い流されても、大事なものであることは変わらない。ミカサがその真実を分かってないはずがないのだ。考えてみればそういうことなのだ。エレン自身の願いを無下にするほどのことではないのだ。
「だけど、エレンも私のお願い一つだけ聞いて。」
「わ、わかったよ。」
アルミンは二人の交渉を見守って思わず息を詰まらせてしまった。
「……」
アルミンは初夏の空を見上げながら取り留めもなく昔のウォールマリアが崩壊する前のことを思い出していた。座学を終えて昼食を取りにいく途中だった。サシャがダッシュで横を走り去る。
「なんでこんなこと思い出したんだろ。」
あの時、エレンとミカサが二人で穏便に了承し合って決めたことなのだから、強烈な思い出になるはずがないのだ。アルミンは頭をかりかり掻きながら歩いていた。今日、ミカサの首にマフラーは巻かれていなかった。そのマフラーには曰くがあって、ミカサがイエーガー家に引き取られることになったきっかけの事件の際に、エレンからもらったものらしい。
マフラーであるのだから、その素材はきっと毛糸か何か保温が利くものだろう。だから真夏になれば用がなくなるものだ。春先からして要らない。しかしミカサは本当にほぼ一年中と言っていいくらいそれを首に巻いている。時折それを鼻先までずり上げる癖があった。そのあと深呼吸をしているのもアルミンはよく目にしていた。
「五年前のあの日まで、あれに意味があるなんて思ってもなかったけど。」
それは今のエレンにとっても同様だろう。アルミンの後ろをミカサとエレンが並んで歩いている。
「ああ……」
今日はあのマフラーはエレンの首に巻かれていた。その違和感にアルミン以外は気づいていないようだった。
「ミカサもういいだろ。もうこれ首から外していいよな?」
エレンは暑いマフラーに辟易したようにミカサに伺いを立てていた。ミカサは無言で首を振る。
「駄目。一日じゅう着けてなきゃ。まだ石鹸の匂いしかしない。」
「いや。石鹸の匂いがするうちにさあ。」
エレンが外しかけたマフラーを、ミカサはエレンの手をやんわりと払いのけてまたぐるぐると巻きなおした。
ミカサがエレンからもらったマフラーを洗濯する条件。あのマフラーからエレンの匂いを消し去ることを許せる条件。それは洗い立てのマフラーをエレンが一日首に巻いて、エレンの匂いを再びつけること。
ミカサにとってマフラーは単に寒さから身を守ることではない。かつてのそのマフラーの持ち主の匂いを、何の不自然もなく感じるためのもの。それならば訓練生随一の実力の行使でエレンから直接嗅げばいいのだろうが、最初にエレンの匂いを感じたのは、そのマフラーが最初だったのだ。それがミカサのエレンへの想いの反芻だった。
「奥ゆかしいって言うのかな? いや。その……ミカサの趣味というか、こだわりというか。」
その嗜好に名を付けるなら、一番相応しい言葉は変態だろう。だけど周りにいる誰も彼もそれを咎めたり揶揄したり、嫌悪の眼差しを向けていない。アルミンも二人にそんな眼差しを向けることなんて考えられない。他ならぬエレンが、普通に考えれば不自然なミカサのお願いを了承し続けているのだから。
夕刻になって夕食を終えたらエレンは少し怒ったような顔をして、ミカサにマフラーを差出すのだろう。ミカサはそれを受け取り鼻にそれを当て、匂いを確かめたあと、自室にそれを持ち帰り明日からまたそれを首に巻き続けるだろう。ミカサがエレンに乞うてエレンがそれを了承して、また何度でも可能な限り同じことを繰り返すつもりなのだろう。
「あーあ。それでも恋じゃないんだね。」
だけどアルミンはエレンにもミカサにもとやかく言うつもりはなかった。アルミンはそんな二人の関係が好きなのだった。
「まあ。エレンは靴下とか下着とか強請られたわけじゃないし。エレンがいいよって言ってくれる程度のお願いで済んで良かったとしか言いようがないね。」
もどかしい二人を見て歯がゆいアルミンは、いっそのことミカサがエレンに靴下とパンツでも要求してくれりゃあわかりやすいんじゃないのかと、一〇四期生に君臨する静かなる女傑に心の中で突っ込んだ。
「だけどそんなミカサはミカサじゃないよね。」
恋する変態は奥ゆかしいのが良いのも確かだった。
進撃にはまりましたので書いてみました。初めての進撃がミカエレとは思いませんでした。
そんな彼が一方の友人への違和感を感じ始めたのは、一週間ほど前からだった。そしてまた一週間経った現在、その違和感は続いている。それどころかその違和感は日ごとに強くなっていた。
アルミンの幼馴染のエレンもその異変に気付いた。そしてアルミン以上にその違和感を気にしだしていた。
幼馴染三人組・ウォールマリア内シガンシナ区の路地裏。エレンとミカサとアルミンはいつものように集まったが、エレンはミカサのほうをしきりに気にしていて、しばらくしてからやっと口を開いた。ミカサの首元を指差して。
「ミカサ。それ、ずっとそうやってるのか?」
ミカサはこくんとエレンの問いかけに頷いた。無表情ではあるがそれが嬉しそうだとエレンはなんとなく察知する。しかしその嬉しそうな表情がエレンにとってはまずかった。
「あ、あのさ……。ちょっといい加減にしろよ。」
エレンにしては婉曲的な言い方を選んでいた。それでも少し声音にはたからアルミンが聞いて棘を感じる。
「いい加減?」
ミカサは今度は首を傾げていた。季節は冬になろうとしていた。
ミカサの白い額に似合わない眉間の皺が現れ始めていた。アルミンはまずいと思った。
「ミ、ミカサも近いうちにちゃんとすると思うよ。この前エレンの喧嘩を止めに行ったとき、少し汚れちゃったし。」
「わたし、糞ガキの鼻血のあとくらい気にしないけど。」
赤色で紛れているが、少しばかりくすんだ色になっている部分がある。
「気にしろよ。というかこの前って言えば三日くらい前じゃねえか。既に染みになってるぞ。母さんに頼んでなんとかして貰えよ。」
ミカサのまだ地面を向いている拳がぶるぶると震えている。エレンが指摘してきたことだから従いたい気もするが、どうしても譲れないなにかがあって葛藤しているようだ。ミカサにしては子供っぽい反応だ。
「エレン。どうしても駄目?」
「そうだ。なんとかしなくちゃいけないんだよ、それは。」
それは遠い未来に調査兵団に入る時の決意と同様の強い意志を伴っていた。その割には言い方はひどく抽象的だ。なんとかというのもひどく限定した行為を指しているが、それそのものとそれに連なる原因を口にすることは躊躇われたようだった。
ミカサは顔立ちはエレンたちとは異なって異質な風貌をしているが、間違いなくの美少女なのだから。エレンなりに気を使っているが故だった。
「だって。エレンがこれにしてほしいをすると消えるから。」
「消える? なんだそれ?」
消えるという言葉にエレンは顔をしかめていた。ミカサもエレンと同じように口に出せない言葉と理由がある風だった。アルミンは踏み込めない何かに踏み込もうとするエレンを止めようと、腕を掴んだ。
「アルミン。どうしたんだよ。」
「い、いや……。」
アルミンの背中あたりから冷や汗が噴き出てしまう。
ミカサはけして非常識な少女でもなければ、幼児性も強くない。
ただエレンに対する変質的な執着だけがネックなのだ。しかもエレンその人がいまいちそれを理解しきれていないところがある。平均的な男の子だから女の子の微妙なこだわりが理解できるはずがない。エレンは精々のところ、ミカサが自分に過保護なのが時々鬱陶しいという程度にしか思っていない。
しかしミカサはエレンに対して口やかましいわけではない。熱っぽい目で見ることもなければ、周りに対してエレンの所有権を主張するわけでもない。時々物騒な言葉を吐くことはあるけれど、エレンの危機やそれに準ずる事態の時にさえ、ただ黙ってその拳を振るうのみだ。拳を振るうほどでなければ、エレンの後ろに控えていじめっ子を威圧して追い返す程度に留める冷静さを持っている。
なんとまあ、一人の男の子に執着する少女にしては控えめでさりげない過保護だった。実力行使でいつも無鉄砲に飛び込むエレンに身を以てわからせることも出来るはずなのだ。しかし彼女はそれをしようとしない。
呼吸をするようにエレンを助けることが、彼女にとって愉悦だとか至福だとかもあまり思っていないはずだ。呼吸によって酸素と二酸化炭素を交換する行為をいちいち重要だと意識していないように、彼女の生命活動において、ごく自然にエレンに関することが必須で不随意的な動作であるのだろう。
だからエレンもミカサと出会ってから生活を共にしだして、今になって気づいてしまうしかなかったのだろう。
「ミカサ。もう一年経ってるんだ。わかるよな? 俺はお前がそれを……はっきり言うぞ。洗濯しているところを見たことがない。」
エレンはやっとそれとかなんとかとかしか言えなったもの、そのものずばりを口に出した。ミカサは首元を摘まんで言う。
「そうね。半年くらい前からまずいかなって思っていた。だけどエレンもおばさんもおじさんも何も言ってこないから、まあいいかなって思ってたの。」
アルミンもエレンが何も言わない様子だから、いいのかなと思っていたのが本音だった。しかしそれはアルミンにあるまじき楽観視だった。
「そういえば。首のあたりが少し痒いかなって思ってたの。」
「あたりまえだろ。ちょっと見せてみろよ。……あーあ、汗疹になってるし。このさい洗濯して綺麗にしような。アルミンだってそう思うだろ。」
ミカサの冷たい目がアルミンを射抜く。アルミンはミカサが何に対して拘っているかに気づいているが、それをエレンがいるこの場で言ってしまうと、エレンの気性からして最悪それをミカサから取り上げてしまいかねない。それをみすみす取り上げさせるミカサではないだろうから、イエーガー家内に巨人が入り込んだ規模の騒乱が起こることは必至だった。
アルミンは二人の主張を、当事者同士以上に理解していた。しかしアルミンは頭の中で考えるのが精一杯で、彼らが同時に了承してくれるような案が見当たらない。
「わかった。エレンの言うとおりにする。」
ミカサが折れてくれた。アルミンはほっと胸を撫で下ろす。アルミンが野暮なことを考えなくても、ミカサにとってその品は洗濯して染み込んだ全てが洗い流されても、大事なものであることは変わらない。ミカサがその真実を分かってないはずがないのだ。考えてみればそういうことなのだ。エレン自身の願いを無下にするほどのことではないのだ。
「だけど、エレンも私のお願い一つだけ聞いて。」
「わ、わかったよ。」
アルミンは二人の交渉を見守って思わず息を詰まらせてしまった。
「……」
アルミンは初夏の空を見上げながら取り留めもなく昔のウォールマリアが崩壊する前のことを思い出していた。座学を終えて昼食を取りにいく途中だった。サシャがダッシュで横を走り去る。
「なんでこんなこと思い出したんだろ。」
あの時、エレンとミカサが二人で穏便に了承し合って決めたことなのだから、強烈な思い出になるはずがないのだ。アルミンは頭をかりかり掻きながら歩いていた。今日、ミカサの首にマフラーは巻かれていなかった。そのマフラーには曰くがあって、ミカサがイエーガー家に引き取られることになったきっかけの事件の際に、エレンからもらったものらしい。
マフラーであるのだから、その素材はきっと毛糸か何か保温が利くものだろう。だから真夏になれば用がなくなるものだ。春先からして要らない。しかしミカサは本当にほぼ一年中と言っていいくらいそれを首に巻いている。時折それを鼻先までずり上げる癖があった。そのあと深呼吸をしているのもアルミンはよく目にしていた。
「五年前のあの日まで、あれに意味があるなんて思ってもなかったけど。」
それは今のエレンにとっても同様だろう。アルミンの後ろをミカサとエレンが並んで歩いている。
「ああ……」
今日はあのマフラーはエレンの首に巻かれていた。その違和感にアルミン以外は気づいていないようだった。
「ミカサもういいだろ。もうこれ首から外していいよな?」
エレンは暑いマフラーに辟易したようにミカサに伺いを立てていた。ミカサは無言で首を振る。
「駄目。一日じゅう着けてなきゃ。まだ石鹸の匂いしかしない。」
「いや。石鹸の匂いがするうちにさあ。」
エレンが外しかけたマフラーを、ミカサはエレンの手をやんわりと払いのけてまたぐるぐると巻きなおした。
ミカサがエレンからもらったマフラーを洗濯する条件。あのマフラーからエレンの匂いを消し去ることを許せる条件。それは洗い立てのマフラーをエレンが一日首に巻いて、エレンの匂いを再びつけること。
ミカサにとってマフラーは単に寒さから身を守ることではない。かつてのそのマフラーの持ち主の匂いを、何の不自然もなく感じるためのもの。それならば訓練生随一の実力の行使でエレンから直接嗅げばいいのだろうが、最初にエレンの匂いを感じたのは、そのマフラーが最初だったのだ。それがミカサのエレンへの想いの反芻だった。
「奥ゆかしいって言うのかな? いや。その……ミカサの趣味というか、こだわりというか。」
その嗜好に名を付けるなら、一番相応しい言葉は変態だろう。だけど周りにいる誰も彼もそれを咎めたり揶揄したり、嫌悪の眼差しを向けていない。アルミンも二人にそんな眼差しを向けることなんて考えられない。他ならぬエレンが、普通に考えれば不自然なミカサのお願いを了承し続けているのだから。
夕刻になって夕食を終えたらエレンは少し怒ったような顔をして、ミカサにマフラーを差出すのだろう。ミカサはそれを受け取り鼻にそれを当て、匂いを確かめたあと、自室にそれを持ち帰り明日からまたそれを首に巻き続けるだろう。ミカサがエレンに乞うてエレンがそれを了承して、また何度でも可能な限り同じことを繰り返すつもりなのだろう。
「あーあ。それでも恋じゃないんだね。」
だけどアルミンはエレンにもミカサにもとやかく言うつもりはなかった。アルミンはそんな二人の関係が好きなのだった。
「まあ。エレンは靴下とか下着とか強請られたわけじゃないし。エレンがいいよって言ってくれる程度のお願いで済んで良かったとしか言いようがないね。」
もどかしい二人を見て歯がゆいアルミンは、いっそのことミカサがエレンに靴下とパンツでも要求してくれりゃあわかりやすいんじゃないのかと、一〇四期生に君臨する静かなる女傑に心の中で突っ込んだ。
「だけどそんなミカサはミカサじゃないよね。」
恋する変態は奥ゆかしいのが良いのも確かだった。
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柴仲達
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会社員
趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12
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