幸福雑音
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☆ss『御茶の子さいさいではいかないこと』(仙文。食事風景)
御茶の子さいさいではいかないこと
立花仙蔵は合理主義者だった。例えば複数の作業をする時は、それぞれの作業に均等に手をつけ、けして待機時間を作らないように配分しながら、無駄な時間を作らないように終了させる。また例えば、食事にしてもご飯と汁物とおかずを交互にバランス良く口に運び、最後には一口ずつで終了させる。しかも、おかず、ご飯、汁物の順序が狂ったためしがない。最後に汁物で〆るという、実に理にかなった食事法だった。
とまあ、いつも物事の最終形を頭に置いた行動の数々だが、立花仙蔵は、そのもろもろを人に見せ付けるだけ見せ付けて、けして強要しようとはしない。
「むう。」
「どうした文次郎。あと二口ほどじゃないか。」
文次郎は茶碗に残った白飯を睨みつけている。おばちゃんが作って配膳したという、仙蔵とまったく同じ条件なのに、最終形がアンバランスになってしまう。
いや。別に。仙蔵の真似を文次郎がわざわざする必要はないのだが。文次郎の日常是鍛錬気質によって、成績最優秀とも言える仙蔵の行動パターンの真似こそが、いつの間にか擬似鍛錬となっていた。
「いや別に。悩むことはないじゃないか。臨機応変だろ。そういうときは漬物か佃煮をご飯に載せて茶をぶっかけて、お茶漬けにして喰えばいいじゃないか。」
文次郎は仙蔵の提案に眉を歪める。
「食事とはいえ、一定の動作を正確に行う訓練だと思っていたんだがなあ。仙蔵にとってはそうでもないのか。」
「えーと、そんなこといちいち思って食べていると、味なんてしないだろ?」
ただでさえ文次郎の食事の仕方は傍から見ても、料理の味わいだとか、匂いにそそられるとか、触感を楽しむことを度外視しているのに。仙蔵はそんなことは口に出さない。しかし仙蔵としてはせめて、隣の席同士で食うときくらい何かしら会話ぐらいはあってもいいのにと思った。あくまで文次郎には言わないが。
「ひょっとして、お前は何も考えてないまま、精密機械のような三角喰いをしているのか?」
仙蔵は目を丸くする。文次郎の仙蔵を尊敬するような視線に。
「私の食事をそういうふうに思っていたのか。まるで精密機械みたいだと。」
仙蔵は文次郎から目を逸らす。そして一言ぼそりと呟いた。
「そういうとこばっか見ずに、もっと別のとこ見てくれればいいのに……」
文次郎はまだ茶碗の中を睨みつけている。仙蔵は溜息をつくと、漬物の容器から梅干を一つ、文次郎の茶碗の中に放り込んで、急須の茶をその上から注いでやった。
文次郎は仙蔵を見上げて、ありがとうと言う。それでも納得がいかないような顔をしながら、残りの飯を掻きこんだ。
文次郎の日常は常に鍛錬ということで。
文次郎が仙蔵の無駄のない日常の所作を真似していたら、ちょっと可愛いと思いませんか?
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忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
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