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幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

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☆ss「高砂6」勝燐+柔蝮+雪&藤堂 ギャグ

 ちゃっかり人間と仲良くしている悪魔もいる。その代表選手が猫叉だった。
 雪男は任務あとの埃で汚れた眼鏡を拭きながらぼんやりとした視界の中、一人と一匹の影を見つけた。「ああ。おかあはんとクロか。」とぼんやり思いながら、なかなか落ちない汚れにイラついてきていた。眼鏡は雪男の身体の一部といえるので、自らの身体に磨きをかけるが如くに愛おしそうに息を吹きかけ、念入りにレンズを拭く。その無機物は雪男にされるがままで何も応えてくれない。
 クロはとらやの厨房の勝手口外でちょこんと可愛らしく座っていた。そこへ虎子が通りかかったらしい。雪男の耳に会話らしき声が聞こえてくる。
「あらクロちゃん。お行儀ええわあ。ええもんあげようか?」
『やったあ。おかあはん好き。』
「うちもクロちゃんのこと好きやで。ほら。」
 虎子は着物の袂から饅頭を取り出してクロの口元に持っていくと、クロははぐはぐと饅頭にかじりついた。それを見て雪男は饅頭を猫にやるなんて傍から見れば非常識だよなと思った。人間の食べるものは猫の消化器官に負担をかけるかもしれないのにとか。しかしクロは獣医学とは無縁の猫なので、それは単に雪男の中の常識が悲鳴を上げているだけだった。
 饅頭を食べた後も虎子とクロはまるで会話をしているような応酬を続けている。当然クロはにゃあにゃあとしか言っていないわけだが、虎子とクロは気持ちが通じ合っているように見えた。
「ふうん。クロちゃんは消費税増税に反対なんやね。うちもなんよ。TTPも反対やな。」
「にゃあ。にゃあ。にゃあ。」
 あんたらお互いに適当なこと言っているんだろうとツッコミを入れたくなる。しかし雪男は一人と一匹に声をかけないまま通り過ぎる。今日はクロはとらやに来て間もないのにすっかりここの住人に好かれている。数年間過ごした正十字学園の日々をすっかり忘れたように、とらやの女将、番頭、仲居、板前、その他明陀宗の面々と仲良くしていた。
「悔しくなんか、ないんだからね。」
 雪男は一人呟く。三年前、雪男はクロを普通の猫として意図せず半ば侮辱紛いに扱ってしまったため、未だにクロに打ち解けてもらえてなかった。
「使い魔って言ったって、クロは神父さんが飼ってたときから別に祓魔に関わっていたわけじゃないし。人間の言葉が話せたりするわけじゃないし。ほとんどペット扱いだったじゃないか。それに猫叉は一般人からすれば普通の猫と遜色ないわけだし。形だけでもトイレとかペットフード用意しないと世間に示しがつかなかったわけだし。僕がやってきたことはけして間違ってない。そういうことに兄さんが気を回さなくて対等な友達感覚だったからしょうがないじゃん。なのにクロから悪者扱いとはいかないけど、分からず屋みたいに思われるのは釈然としない。」
 兄が勝呂と結婚して京都に一緒に移り住んでからは多少は丸くなった雪男ではあったが、新規の交流関係で自分の既存のわだかまりを解決出来るわけではなかった。その一番些細なところがクロとの関係だった。クロと兄の燐は自分の分からないところで意思を通じ合っている。要は雪男がクロに対して姑根性を表に出してしまうのは、そういうやっかみ的な意味もあった。そういう感情も込みだとすれば、クロが外で粗相をすれば兄が恥を掻くんだぞという根暗な脅し的な意味を、雪男の用意したペット用品に込めてしまったということも否定出来ない。
「僕はそんなんだから動物に好かれないんだろうな。」
 ふとまた勝手口に目を向けると、一人と一匹は雪男を見つけて「あら」「にゃあ」と声をかけてきた。
「雪ちゃん帰っとったん。」
「にゃあ。」
 雪男は気まずそうにごにょごにょと「ただいま」と言った。そして気まずさから口を滑らせる。
「帰ってきたところですけど、ちょっと散歩行ってきます。」
「そうなん? 散歩? まあええけどな。遅うならんようにな。雪ちゃん可愛えから、変なおっさんに絡まれたら大変なんやから。」
「にゃあ。」
 雪男は軽く手を振ってまたとらやの敷地から出る。暮れなずむ京都の町が雪男には侘しく見えた。そして時折見かける仲の良い飼い主と犬の散歩を見ると、幼少の頃受けた心の傷が抉られる。
「ムササビ……。」
 茶色の荒い毛並みの、短い間しか触れられなかった温かさが恋しくなる。
とらやの周りには同じような旅館が並んでいて、流石は観光地・京都と言わんばかりだった。まだ京都に移り住んでまだ日が経ってない雪男にとって、碁盤の目のような京都の地理で把握しているのはとらやから明陀本家の寺が見える範囲までだった。
「碁盤の目を完璧に覚えられたら凄く便利なんだろうけどな。」
 ありきたりな感想を言ってとりあえず迷子にならないように自分の見知った道を歩く。古都を売りにしているとはいえ自販機はあった。そこでミネラルウオーターを買おうと小銭を入れようとした。
「え?」
 しかしいきなり視界に入ってきたものにぎょっとする。自販機横のゴミ箱の横。何かが蹲っていた。それは不法投棄された粗大ゴミの類ではなかった。ゴミと言えばゴミかもしれないが、その風体は意外と整っていて、大人しくお行儀よく穏やかに鎮座していた。
 
 
     *   *   *
 
 雪男がそれと遭遇してから数日が経った。
「おかあさん。雪男を二三日見ないんだけど? あいつ任務に行くって言ってた?」
「いや。雪ちゃんはちゃんと毎日旅館には帰っとるよ。」
「でもあいつ、俺たちの部屋には帰ってきてないんだけど。」
 雪男は新婚の兄夫婦の五十畳敷きの元・宴会場に一緒に寝ていた。竜士はそれに辟易していたが、嫁の燐は別にそれを気にすることなく、寧ろ部屋に帰ってこない弟を心配する始末だった。竜士は不安そうな嫁の燐に「あの人のことやから本部から回ってきた野暮用でも引き受けたんやなかろうか。」とそれとなく言っていた。竜士の気持ちは燐には伝わらず、燐はわざわざ虎子に弟の所在を尋ねに行ってしまった。
 
 そして今、竜士は嫁の横で頭を掻いていた。夫婦の部屋で燐は虎子から聞いてきたことを夫に凭れながら話していた。
「おかんがそう言ってたんやな。あの構いたがりのおかんがほっといとるということは、そうや、大した理由はないわけや。大方一人で寝たいから他所の部屋で寝とるだけやろ。」
「そうかなあ。でも飯時でさえも会わないし。おかあさんがほっといてるから、俺が心配しても野暮ってことだよな。でもなんか変なんだよな。」
「いや。変なことはあらへん。あの人はしっかりしとる人やから。義理の兄に対して大人げなかったとか、もうそろそろ兄にべったりをどうにかしようとか、今まで自分は兄夫婦に対して義兄のおかんに同調してまで干渉しすぎたとか、色々思うところはあったんやないん?」
 それは全て竜士の願望じみた推測だった。燐はそれを否定することはない。
「それでも。いきなり距離を取るってのはねえよ。」
「いや。ある。あの人は高校時代から意外と口下手やったやん。」
「ええ! 雪男って口下手だったんだっけ? え? 口下手で講師だとか……。ちょっと……。」
「いや。そういう意味の口下手やなくて。なんちゅうかな。アレや。シャイボーイいうか、そんな感じ。」
「シャイボーイ。……ああ! って、シャイボーイってなに?」
 死語の世界を理解しない嫁は真っ直ぐな目で首を傾げていた。相変わらずトンチンカンな嫁ではあるが、冒頭の弟に関する懸念からは意識が逸れたようなので竜士は苦笑しながらもほくそ笑んだ。
 そのとき、障子の向こうに影が通り過ぎた。その影の背の高さからしてさっきまでの話題の人物を彷彿とさせた。動くものに対して悉く野生的に反応する嫁は、竜士が誤魔化す間も無く「雪男だ」と叫んで腰を浮かせる。
「雪男!」
 止める間も無く嫁は立ち上がって雪男を追う。仕方ないので嫁を竜士は追う。
 
 雪男は奥にある布団部屋の戸に手を掛けて燐のほうを振り返った。
「兄さん、久しぶりだね。」
「久しぶりって簡単に言うなよ。心配してたんだぞ。お前がこのところ部屋に帰ってこないから。なあ、勝呂。」
 燐は振り向いて竜士に問いかける。いかにも竜士と自分が同じ考えだということを疑いもしないような、断定っぷりだった。
 雪男はどうしようといった感じに布団部屋のほうに視線を投げていた。それがいかにもわけありそうで、自分達夫婦の仲に対して傍若無人に振舞っていた兄婿いびりの弟とは思えなかった。
「心配かけたんだね。ごめん兄さん。勝呂君。」
 しおらしかった。そのしおらしさが竜士には怖かった。ひょっとしたらこれは新たな災いの前兆ではないのだろうかという懸念が竜士の脳裏に暗く過ぎる。そして、無性に布団部屋の中が気になった。
「先生。今手に持っているもんは、どうするつもりですのん?」
 雪男の手にはお膳が抱えられていて、竜士がその上に見たのは笊に盛られた蕎麦と薬味とつゆ、そっして徳利とお猪口も乗せられていた。
「先生。そこで蕎麦食ったり酒飲むつもりやったんですか?」
「いやこれは……。」
 雪男はなんとなくそわそわとした様子で竜士から視線を逸らす。竜士はこれは追及しなければと思い雪男にさらに問いかける。
「蕎麦はともかく、日本酒は先生が嗜まれるとか聞いたことありまへん。」
「そうだよ。雪男が酒飲むって俺も知らないしって、雪男お前、十八だろ。未成年じゃん。学校行ってたとき散々俺に教師風吹かしといて、自分はそれかよ。」
「燐。ツッコミどころはそこやない。少し黙ってくれんか?」
「うー……。黙る。」
 雪男は相変わらず口ごもったまま、しかし時々布団部屋を気にしている。こっちに目を向けたとき何かを迷っている気配を漂わせていた。
「先生。飲酒そのもんは俺は咎めようとは思いません。先生のように管理職に就かれていては何かとストレスも溜まるでしょう。上からの圧力だとか、下からの突き上げだとか。家に帰れば義理の家族の関係だとか。自分のおとんの実家(虚無界)の連中のやんちゃとか。なんもかんも上手くいかん。これも兄ちゃんがサタンの落胤やからとか。若気の至りで思うこともあったやろうな。」
「えっ。雪男そんなこと思ってんの! 俺ってやっぱり。」
「違うから兄さん!」
 雪男は激しく首をぶんぶんと振る。
「なんだよ勝呂。雪男そんなこと思ってねえって言ってるよ。」
「やからな燐。先生はシャイボーイなんや。本音を言おうとしたら壊れてしまう、そんなガラスハートや。」
 雪男はひたすら首を振っていた。竜士は確信していた。もうすぐ今まで鉄壁だった難攻不落の城が攻略出来ると。今までのやり取りで外堀はすでに埋めた。雪男は防戦一方で、今になっては無言で首を横に振り続けているだけだ。雪男の態度はいかにもわけありそうで、そこに、付け込めば今までの家族関係におけるパワーバランスを自分のほうに傾けることが出来ると思った。名実共に燐を独占できると、勝利宣言は間近だった。
「先生。俺ら家族ですやん。変に隠し事したらあかんのやないですか? 燐もこうやって心配しとるし。そういえば先生は今、布団部屋に入ろうとしてましたね? 先生はそこに何か隠しとる。違いますか?」
「か、隠してるっていうか……。置かせてもらってるだけだよ。おかあはんにはちゃんと許可は取ってるし。」
 おかんが! と竜士は背筋に黄色い電気ネズミの電撃を食らったように衝撃を受けた。
『おかあさんは雪男はちゃんと旅館に帰ってるって言ってたし。』『おかあさんがほっといてるから、俺が心配するのは野暮ってことだよな。』
 しまった。ど忘れていた。雪男の隠し事には自分のおかんが関わっている。
過去の数々のパターンからして、今までの有利が一挙に崩れ去るような気がした。落城寸前の城には思わぬ援軍がいたようだ。というか竜士は丸分かりの援軍を、嫁の言葉から推察出来なかったということだ。このままでは城からの攻撃と援軍からの攻撃の挟み撃ちになるかもしれない。しかしこの流れは止められない。
 雪男はじゃあと言うと布団部屋の戸を開ける。そこには思いも寄らないものがにこにことこちらを見上げていた。
「紹介するね。兄さん。これは藤堂三郎太っていう魔が差して堕落したオッサン……」
「略してマ○オか!」
「そう。」
 雪男は藤堂の前に酒と蕎麦を乗せた膳を置くと、その頭を撫でていた。
「おかあはんが飼ってもええって言ってくれたから、ここで飼ってるんだ。まだ家に来て日にちが経ってないから僕も一緒にこの部屋に寝てたんだよ。」
「はじめまして。お兄さんと、そのお婿さん。僕はマ○オの藤堂と申します。この度は雪男君にはお世話になることになりました。今後よろしくおねがいします。」
「いやいやいやいや!」
 竜士は叫びながら雪男の両肩を掴む。
「何考えとんですか!」
「そうだぞ雪男! 餌なら酒と蕎麦じゃなくて、普通のもん食わせろよ。栄養偏るだろうが。」
「いや! 燐、そういう問題やない。」
 奥村兄弟にとっても明陀宗にとっても因縁の人物・藤堂三郎太が、よりにも寄って自分の実家と呼べる旅館に隠匿されていた。義理の弟で上司の雪男なんて、三年前の夏と言えばその藤堂が天敵とも呼べる存在だったのに。
 しかし藤堂はあの事件以来、なんか鳴かず飛ばずだったらしい。藤堂にとって利用出来るネタが不浄王しかなかったのかもしれない。明陀にとっての最大の厄ネタ不浄王は消滅しているし、それは藤堂が企んだことの結果としては明陀にとって重畳だったと言うしかない。滅多に蒸し返されない話にはなっている。事実、この三年経って大分忘れられた感があった。
 本能寺の変後、逆賊として討伐されたという明智光秀が僧天海として徳川幕府に尽力したとか、源義経が大陸に渡ってジンギスカンになったとかいう、仇花とも呼べる英雄に倣うというのが藤堂=マ○オという展開なのだろうか。
「いや! 何がオッサンがジンギスカンや天海やねん! 旅館の布団部屋で復活してくる英雄なんかありえへんやん! それになあ、奥村先生とかおかんやおとんや俺がこいつを許したとしても。志摩蝮(旧姓・宝生)のことはどうするねん! あいつ一度はこいつに関わったせいで除籍されたけど、騎士団に復帰しようと狙っとるんやぞ。簡単に想像つくやろ? まだお前のこと恨んどるんや。そうや。そうに違いないんや。座主のうちがそんな宗派の仇みたいなの匿えるわけないやろ。というか今回は見逃したるから、はよう京都から出て行き。」
「「えー……。」」
 燐と雪男が声を揃えて竜士を見る。
「先生。燐。分かってください。このままこいつを置いとったら、近いうちに蝮や柔造にもばれるんやで? せっかく先生が拾ったマ○オやけど、ここは心を鬼にして……。」
 捲くし立てる竜士の肩をぽんっと藤堂は叩いた。
「君の心配は分かるよ。京都にも雪男君にも未練があるけど。」
 藤堂は笑っていた。だけどその悲しげな言葉に涙腺の緩い燐が早くも目を潤ませていた。そして雪男も幼少の頃のようにマ○オとの別れを惜しんでいる。
「す……勝呂君。この餌、食べ終えるまではいいだろ。」
 雪男の震える声に竜士は気まずさのあまり小さく頷いた。藤堂は箸を取ると美味そうに蕎麦を啜り、お猪口に酒を注いでぐっと飲み干した。
 
「ありがとう。」
 
 お猪口を掲げた藤堂の姿をその場にいたみんなは忘れないだろう。そんな光景だった。
 
「柔造君。蝮ちゃん。雪ちゃんがなマ○オいう悪魔を拾って飼ってるんやで。こっちや。こっち来てみい。」
 全員に戦慄が走る。廊下に三人分の軽やかな足音が近づいてくる。あまりのことに誰もその場で行動できる者はいなかった。とうの藤堂も隠れる余裕はなく、蕎麦を啜る格好のまま、蝮を待ち構える形になってしまった。
「ほら雪ちゃん。志摩さんが雪ちゃんのマ○オ見たいって。」
「お邪魔しまーす。……」
 部屋の正面に立ったとき、虎子以外の全ての人間はその動きを止めた。藤堂は残りの蕎麦を啜りきった。一瞬のあと、静寂は蝮の「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」という声で破られた。
 
「藤堂三郎太! きさまあ、生きとったんか!」
 
 藤堂は「うん」と頷いた。蝮は怒りのあまり震えている。
「宝生君。あ、今は志摩君か。しばらく会わないうちに、」
「会わないうちになんや! 結婚して綺麗になったとか女らしくなったとか、人妻の色気が凄いとか、十年前に手を出しておけば良かったとか、利用して捨てるんやなかったとか、惜しい惜しい思うてももう遅いで! 私はもう柔造のもんやからな! へんっ。ざまあみい。この負け犬が!」
 それは聞かされる男からすれば悔し紛れの聞こえよがしや負け惜しみに聞こえるような言葉の数々だった。藤堂は困ったように首をかしげて「ごめん」と呟いた。
「幸せそうだね。良かったよ。」
「そうやあ。私はなあ、人生の勝ち組なんや。お前みたいなマ○オとは違うんや。なあ柔……いや、ダーリン。」
「蝮お前、キャラ違う……。でもダーリン呼ばれるのは嬉しいで。蝮。」
「嫌やわあ。ハニーやろ。あんたあっ。」
「ハニー♪」
「ダーリン♪」
 三年ぶりに変なものに再会したショックのせいか、柔造と蝮は変な小芝居を始めた。藤堂はそんな二人の様子を頭を掻きながら眺めていたが、蝮と柔造が手を繋いでくるくると踊ったあとにパチパチと拍手をしたあと、おもむろに口を開いた。
「いやあ。蝮君は全然変わらないな。」
「貴様。さっきさも年月で私が変わったのを感心したような言い回ししたやんか。そうやろオッサン!」
「僕が言いたかったのは」
「言いたかったってなんやねん!」
「それ。」
 藤堂が指差したのは蝮の眼帯で覆われた右目だった。
「これが……どないしたんな。」
「しばらく見ないうちに立派な独眼竜キャラになったよね。蝮君。」
 蝮はぐっと詰まると藤堂を睨み付けた。
「私は竜やない。蛇や!」
「蝮! ツッコミどころはそこか!」
 竜士は思わず年上の女性の頭をはたいてしまった。蝮は後頭部を撫でながら雪男に告げる。
「奥村上一級祓魔師殿。」
 雪男は身構える。もう三年前の共犯者兼被害者が現在の藤堂と対峙してしまったのだ。すっとぼけて逃がしてやったり、このまま隠れて飼ってやることも出来そうにない。先生と竜士に促されて、雪男は何を言われても構わないという覚悟を決めた。
 蝮は口を開く。
 
「藤堂。いや、オッサン。いや違った。マ○オやったな。そのマ○オ、ちゃんと世話してやってな。」
 
「え?」
 雪男が呆けていると蝮はくるっと踵を返す。
「魔が差して堕落したオッサンやからな。ちゃんと一から躾けたり。」
 そう言ってずんずんと廊下を引き返していく。慌てて柔造が後追う。そして虎子はうんうんと頷いていた。奥村兄弟はマ○オこと藤堂に飛びついて「良かった」と嬉しがっている。
 その中で一人、竜士はわなわなと震えていた。
「ほんま良かったわあ。志摩さんに了解取れて。」
 竜士の心を逆撫でするように虎子は言う。ほんまになんでもええ話にしてしまえばええんかこの腐主婦はと竜士は奥歯をぎしっと鳴らす。
「布団部屋だと狭いし埃っぽくて健康に悪いから、僕と一緒にマ○オも兄さん達の部屋に来てもいいよね?」
「当たり前だろ。マ○オ拾ったなら真っ先にソレを相談してくれよ。」
「雪男君のお兄さんは懐が深いなあ。お兄さんのお婿さんも僕と志摩君たちの橋渡しをしてくれたし。」
 そんなことはしていないと竜士は言いたい。しかもまた常駐する邪魔者が一人増えてしまった。夫婦二人きりの夜はまた遠くなってしまった。




(明陀の)なにもかもがキャラ崩壊する高砂シリーズでした。

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HN:
柴仲達
性別:
女性
職業:
会社員
趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

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