忍者ブログ

幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

[221]  [220]  [219]  [218]  [217]  [216]  [215]  [214]  [213]  [212]  [211

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


☆ss「夏の任務はお疲れサマー」燐雪

 サタンの落胤隠匿発覚、その後ヴァチカンに召喚され審問、それから数日経たないうちの京都出張所での不浄王事件。間に日本支部にて悪魔落ちした上級生祓魔師が謀反ともいえる騎士団離脱があった。
 青い夜以来の未曾有の事件だった。
 しかしそれは悪魔の息子の忌むべきはずの炎によって、被害は最小限に抑えられた。
 メフィストは一人きりの部屋で背もたれに体重を預けている。その長身を包んでなおあまりある荘重な椅子だった。
「やっとひと段落つきました。」
 誰に言うでもない一言。
「おい。ひと段落って……。」
「いえ。あれ……いたのですか?」
「お前が呼び出したんだろ。」
 メフィストは開けておいたドアの前に立っている燐に目を細めた。
「そうでした。でも貴方を呼んだのは二時間前ですよ。いつまでも来ないのですっぽかされたと思いましたよ。」
 燐は少し口をへの字にした後、雪男が帰ってくるのを待ってたんだよと言い訳した。京都から正十字学園に戻ったあと、雪男は作成した報告書を提出するために日本支部の事務部に向かった。燐はすることも勿論なかったので、仲間と別れたあとに旧寮の自室に帰り雪男が戻ってくるのを待っていた。そこにメフィストからのメールが届いたのだが、携帯を鞄に入れっぱなしの上にメールを頻繁に確認する癖のない燐は、メフィストの呼び出しに気づかないという間抜けなことになった。
「で。奥村先生は帰ってきたんですか?」
「四時間待っても帰ってこねえし、ひょっとしたらお前のとこに隠れているんじゃねえかと思ったけど、いねえし。」
「奥村先生がここに来てると邪推しなかったら、来るつもりはなかったんですね?」
 燐はぎくりと顔をこわばらせたが、頬を膨らませてそっぽを向く。
「なんかお前。京都の件では、ろくでもないこと企んでただろ。ほんでそれって、俺がらみだったんだろ?」
 メフィストは深く溜息をつく。
「いいじゃないですか。あのことがあったからこそ、貴方は仲間と自然な形で打ち解けられた。炎のコントロールもマスターした。処刑も回避できるほどの活躍も認定試験を受ける前に成し遂げた。いいことずくめじゃないですか。」
「良かったことは今度の件で誰も傷つかなくて済んだってことだよ。そうじゃなけりゃ俺は、……。」
「私が企んだことって分かってるのなら。そういう貴方にマイナスに働くものの可能性は潰しているに決まっているでしょう? ん? 違いますか?」
 燐は上目遣いにメフィストを見上げている。
「他にも気に食わなかったことがある。」
「なんですか?」
「……雪男だ。お前は俺とあいつをわざと引き離してただろう。」
「あー……。そこですか。そこは弁明させてもらうと、右目を強奪した悪魔落ちした祓魔師である犯人と、あの時接触したのが奥村先生でしたから。」
「俺もだっただろ。あのオッサンと接触があったのって。」
「ああ。そうでしたね。しかし貴方の立場では犯人の目撃者程度でしかない。少人数で動く奪還部隊に入れるには足手まといのお荷物になってしまう。」
「確かにあの時の俺は、お荷物だっただろうけど。俺、任務の時には雪男と一緒だとちゃんとやってたじゃねえか。一緒にいたってたぶん大丈夫だったよ。」
「それが本音ですか。要は奥村先生と一緒にいたかったわけですね。」
 メフィストは呆れたように燐を指差す。燐はその手を握って下に下ろさせた。
「シュラを増援部隊の隊長にするんだったら、雪男だってこっちに入れときゃ良かったじゃん。あのオッサンの追っ手には元部署の奴らでも良かったはずだろ。一回こっきりしか会ってない雪男よりは、そいつらに任せておいたほうが良いに決まってんだろ。要は俺たちに対する嫌がらせだったんだろうが!」
「はい。貴方達兄弟を離したほうが、面白いことになると思って。とはいえ、そんなこと考えなくても、貴方は弟と一時的に離れて正解だったようですね。」
 燐は「は?」と大声を上げる。メフィストは説明するのも疲れるとばかりに気だるげに語り始める。
「あんたら兄弟はべたべたし過ぎなんです。」
「えええ! 俺、この学校に来てから、あいつに余所余所しくされた覚えしかねえんだけど。ていうか、教会にいたときはあんなに兄さん兄さん言ってくれた雪男が、手の平を返したように冷たくなったし。俺のことクソ呼ばわりするし。」
「それは教会にいた時から貴方のことをそう思っていたが、それを今までおくびにも出さなかったせいでしょう。貴方に隠すことが無くなったから、それを今全開にしているだけで。私からすれば未だに目を覆いたくなるほどの、べったべたあまあまな兄弟関係を築いています。」
「覚えがなさ過ぎて、どういうことか説明して欲しいです。フェレス卿ぉー。」
 弟の物真似をして悪態をつくチンピラ悪魔に対して、悪魔はこめかみが疼くのを耐えていた。
「あれだけおモテになるのに浮いた話のひとつもなく、中学時代から交友のある娘さんとは未だに友達同士。その癖兄とは寝食を共にして、放課後になれば塾や寮で飽きるほどに顔を合わせている。あんたらに自覚は無いんでしょうけどね、周りの大人から見ればね、互いに意識しまくってんのがモロ分かりなんですよ。」
 燐は未だに納得していない。メフィストはもう何も言う気はなかった。
「まあ貴方の中の兄弟関係の考察は横に置いて。」
「いや置けねえそれはっ。こりゃ勘だけどよ、俺の側にいなかったときに雪男になんか起こってた気がしてしょうがねえ。」
「確かに起こってましたけど。ちゃんと救助されてましたよ。」
「そんなんじゃなくて。あいつの中で俺に対するなんかが……動いちまったというか。変わっちまったというか。今更ながらに覚醒したというか。」
「へえ。頭の内容がお粗末な割には、そういうことは考えつくんですね。」
 でもそれは私が貴方たちを引き離したお陰で感じたことなのでしょうとメフィストは腹の中で思って、口には出さなかった。
「思いついてもそれが具体的にわかんねえから。あいつ俺のこと殴ったくせに、またいつもどおりに戻ってるし。京都タワーで写真撮ったときも普通にいたし。」
「貴方も弟に殴られる前、どや顔でしてやったりだったでしょう。だからむかつかれただけでしょうが。」
 燐はいきなり動揺したようにメフィストに掴みかかった。
「ひょっとして、俺はあいつに嫌われてんの?」
 メフィストは長い腕で燐の首根っこを掴むと、そのまま吊るし上げてソファに投げ飛ばす。
「嫌われるような見に覚えでもあるんですか? 貴方のことだから虚勢じみた兄貴風は吹かしていたでしょうけど。」
 燐はソファの上でもんどりうっていた。
「そうか。ひょっとしたら、お前は雪男に頼まれて俺と別行動にさせたのか。そして持ち前の悪魔的な振る舞いで、その真実を隠してたのか。ひでえ……。ひでえよ……。ありえねえ。そんなひでえ話があってたまるか……。」
 メフィストはお前の勘はただの被害妄想かとつっこんだ。メフィストが想像するに、弟があの事件で頼みごとをするとしたら、『兄の暴走のストッパーに一緒に行動を共にさせて欲しい。』という、これまたべたべたしたものだと想像する。それでは面白くないからメフィストは奪還部隊にまず雪男を指名してから、候補生の増援部隊への参加を決定したのに。
 しかしながらここで誤解を解かないと、雪男がとんでもない悪役になってしまう。いや。燐に対して帰ってから雪男に直接真偽を正せというべきだろうが、被害妄想で疑心暗鬼なこの悪魔の息子が再三騙されている弟の言うことを信じるわけがない。
「俺は、俺は……ずっとあいつが、雪男が可愛くて。可愛くて。なのに……。やっぱ思春期の弟って難しいよお!」
「あんただって思春期のめんどくさい兄でしょうが! 私は貴方の弟にそんなこと頼まれてません。ていうか、赤の他人の私に、そんな弟への生々しい思いを吐き出さないで下さい。」
「うう……。じゃあ、京都での俺とあいつを分断したのは、お前の裁量だけだったのか?」
「はいそうです。もう……。なんで意外なところでめんどくさくなるんですか。」
 燐は幾分かほっとしたようにソファに突っ伏していた。
「よかった……。これで雪男が帰ってきても大丈夫だ。」
 何が大丈夫なのだろうとメフィストは首を捻る。
「兄弟仲良くするのは別にいいですけど。それなりの距離はあったほうがいいですよ。軽い隠し事の一つや二つ出来る程度の。」
 燐が顔を上げるとメフィストはその眼前に顔を近づけた。
「燐。ようやく用件が言えるんですけど、これ。」
 メフィストはの顔の上に封筒を置く。燐はそれを手にとって中身を検めると、短く叫んだ。
「小遣い日ってまだだったよな。」
「小遣い日にはちゃんとあげます。これは臨時のボーナスです。」
 燐は封筒から取り出した二千円札を広げてソファから降りる。
「それでたまには貴方がSQでも買ってあげて、ミネラルウオーターでも奢ってあげなさい。」
「ありがと!」
 燐は頭を下げて手を振りながらメフィストの部屋を去る。メフィストは再び豪奢な椅子に腰掛けた。
「あの弟にメロメロ。それ故の疑心暗鬼か。」
 割と鋭いところを突いてきたと思ったら、それが全ての真相だった。メフィストはやってらんねえよと悪態をついた。




京都編終了で少し安心したので書いてみました。

拍手[3回]

PR

☆ss「Esperanza特別編―まむしメデューサ―」蝮柔金 | HOME | ☆ss「白と黒」勝燐前提の雪燐、朴出「廃獄ラブソング」からの微妙な続き

-Comment-

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カレンダー

05 2026/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

フリーエリア

最新コメント

[08/16 木音]
[07/16 木音]
[07/09 木音]
[06/06 さくむ]
[06/04 ニルグス]

最新トラックバック

プロフィール

HN:
柴仲達
性別:
女性
職業:
会社員
趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

バーコード

ブログ内検索

P R

カウンター

忍者アド

忍者アド

フリーエリア


忍者ブログ [PR]
template by repe