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幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

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☆「ポケモンデイズ 前日談」 主チェレ、主♂N、R18

注意事項
・かなり捏造設定(大人のポケモンです)
・トウヤ含めほとんどの登場人物が成人済み(公式通りの年齢はプラズマ団サイドのみ)
・今回にみモブNあり
・ポケモンの発情期についてオリ設定あり
これらが大丈夫なかたはスクロールどうぞ







君が大人になる日を待っていた。
 
 カノコタウンは海沿いの田舎町だった。イッシュ地方においてそんなに過疎ってるわけではなかったが、数年ほどポケモントレーナーの旅に出るこの町出身の子どもはしばらくいなかった。
しかし今年、アララギ博士の研究所には数年ぶりに「初めての」ポケモン三匹が送り込まれたらしい。それは小さな町の小さなニュースだった。
 
 呼び鈴が鳴ってチェレンが誰かと思いドアを開けると、見知らぬ少年が立っていた。
「誰でしょうか?」
「トウヤだよ。トウヤ。君のご近所の顔見知りのトウヤだよ。」
 なんてことないように言う少年とは反対にチェレンは玄関先で驚いて目を丸くする。目の前の外跳ね茶髪の帽子を被った少年は、チェレンの知っているトウヤではないからだ。
「からかってるのかい? 僕の知っているトウヤは三十歳の会社員で、普段からスーツ姿で七三分けのメガネをかけた、町のみんなが感心するような真面目な男なんだ。僕は君なんか知らない。」
 チェレンは失礼とか言い方とか考える暇もなく目の前の少年を拒絶している。トウヤと名乗る少年は力なく笑う。怒っているのでもなく悲しむでもなく。
「チェレンは十年以上もそんな僕を見てたから、しょうがないか。」
 少年は待ってと言って一方的にドアを閉める。チェレンがきょとんとしていると再びドアが開き、さっきまでの少年と同じ服装の、チェレンが慣れ親しんだトウヤの顔がそこにあった。チェレンが言ったような端正な顔の真面目そうな青年の顔なのに、カジュアルでそこらの旅の子どもがするような服装が不自然過ぎる。
「トウヤ……!」
「これからメガネを取って、七三を崩せば、ほら。」
 みるみるうちにメガネの会社員の顔から、チェレンがトウヤではないと拒絶した童顔の少年の顔にトウヤは変わっていく。
「……」
 チェレンは唖然としていた。サラリーマンな近所のお兄さんの素顔が、パッと見可愛らしくも見える少年の顔だと思わなかった。背はかなり高いが、サバを読んで十五歳と名乗っても誰もが納得するだろう。
「でも……トウヤが僕にそんな素顔を見せてくれても、わけわかんないんだけど。」
 でも何か僕に用があるんだろとチェレンは目顔でトウヤに問いかける。そしてそれを短い言葉で「どうしたの?」と吐き出した。
 トウヤはチェレンの問いかけを待っていたかのように嬉しそうに口を開いた。
「今日、会社を辞めてきた。」
「え?」
 チェレンは、トウヤはご近所の噂で部下や同僚から非常に信頼されている優秀な会社員だと聞いていた。自分とは全く逆の前途有望な近所のお兄さん。そんな彼が何を思って突然に職場を辞したのか、そしてそれを何故歳も違っている自分に嬉しそうに告げに来たのかわけがわからない。そしてその次の言葉にチェレンはますます驚愕するのだった。
「チェレンと一緒に僕は一週間後にポケモンを貰うんだ。せっかくだから一緒にトレーナーデビューするのを報告しにきた。」
 チェレンは、それはデビューというよりドロップアウトなのではないかと自分の立場を忘れて本気で心配になってしまう。しかし所詮それは他人ごとだ。本人は喜んでいるのだし、彼は既に自分のことを一緒にデビューする仲間だと認識している。
「お……おめでとう。」
 チェレンの戸惑い溢れる祝福にトウヤは本当に嬉しそうに破顔一笑した。
「うん。僕もチェレンもおめでとうだね。」
 チェレンは信じられなかった。この屈託なくおめでとうと自分に告げた大人が。
この十代前半そこらでポケモンを貰って旅を始めるのが当たり前な世の中で、その風潮に逆らい中学高校に通いポケモンを持たないまま社会人になったトウヤが、まさか三十歳の今になってトレーナーを目指すとは誰も考えなかっただろう。ついさっきまでのチェレンもそうだった。
普通の少年少女とは明らかに別の道を歩んでいたトウヤは、それでいながら今までの半生を振り返れば、一般的な道を進んできたポケモントレーナー達と比較すると結果として成功者と言えた。きちんとした高等教育を受け、就職し結婚し、一家を構え親にも孝養を尽くしていながら、その頭の中には自由な旅の権利を保留してしまったという後悔でもあったのだろうか。今更そんな思春期の感傷が彼に芽生えたというべきなのか。
でもチェレンは当たり障りのない言葉で、自分の正直な気持ちを仄めかしてみた。
「僕てっきり、トウヤは今までポケモンはいらなかったのかと。」
 そんなことなかったよとトウヤは自分のこめかみあたりを掻いた。トウヤ本人もチェレンに思われているようなことは他人に思われていると自覚があったようだった。
「まとまった貯金も出来たからね。良いころあいだと思ったんだ。」
 そういえばトウヤは母子家庭だったとチェレンはとりあえず納得する。たった一人の母親を残して旅をするトウヤというのも不自然だと、チェレンは自分なりに筋が通るように理由をつけた。
「ベルも旅に出るからそれも伝えとこうと思って。」
「夫婦で旅か。いいんじゃない?」
「いや。ベルとはもう離婚してる。」
 チェレンは絶句する。トウヤとベルがお似合いの夫婦だと思っていただけに、離婚の事実が衝撃的だった。
「チェレン。そんな顔しないで。ベルのことは嫌いになったわけじゃない。二人が自由に動けるための離婚なんだから。」
 チェレンはベルの家庭事情についても思い出した。ベルの父親は近所でも時々話の種にされるほど、娘に対して病的なほどの過保護で、正規の年齢で旅に出ることも許さず、二十歳になった当時にご近所で仲の良かったトウヤと、半ば無理矢理に仲人をして結婚させてしまったのだ。
「離婚したことはベルの親父さんには内緒だよ。」
 区役所の人にも固く言ってるんだからと、トウヤはチェレンに念を押した。チェレンも近所の優しいお姉さんの為に何回も強く頷くしかなかった。
「急に押しかけてきて、こんな話ばかりでごめんね。」
 チェレンはトウヤが来てから、トウヤの姿や話に驚いたり怪訝な顔ばかりしていた。しかし数分の間に、かなりこの童顔な元エリート会社員のお兄さんの、異様におめでたい雰囲気に慣れつつあった。
「いや。……でも嬉しいよ。トウヤとベルと同じスタートでトレーナーになれるなんて。」
 チェレンの口は嬉しいと言っているのに、顔はどこか俯いてしまってトウヤと違ってその嬉しさが傍からは感じられない。どこか後ろめたそうな気配すらも漂っている。
トウヤは後ろめたそうに何かに迷っているようなチェレンの顔を覗き込みながら言う。
「チェレンは僕らの事情なんか気にしないで。僕がここに来て言いたいのはたった一つだけなんだから。チェレン。トレーナーデビューおめでとう。」
「ありがとう…」
 その一言だけは本心から言えた。
じゃあと言ってトウヤは出て行った。そのドアが閉ざされるとチェレンはけたたましい足音を立てて、二階にある自室に駆け込んでベッドに飛び込んだ。布団をぎゅっと抱きしめトウヤの言葉を反芻する。
『おめでとう。』
 ずっと昔に聞くはずだったその言葉は、チェレンの乾ききった薄い胸の内に染み透る。
チェレンは今現在二十四歳。トウヤと同じく、トレーナーデビューするにしては遅い年齢である。
しかもトウヤと違って自発的にそうなったのではなく、幼いころから身体が弱く長患いによるものだった。
本人が幾ら望もうとも本来の年齢で旅に出ることは不可能で、その結果残された選択肢で中学や高校に進んでも、入院を理由に休学を繰り返しながらなんとか卒業した身だ。
それ故にチェレンのなかの他の同世代に対する嫉妬や劣等感は根深かった。しかしそのポケモントレーナーになった同世代も、この田舎町に帰ることは少なかった。帰ってきてはいても一緒に遊ぶ機会も少なく、友達とも言えないチェレンに顔を合わせる義理がないだけだったかもしれない。
さっきトウヤからチェレンに告げられた祝福の言葉で、二十四歳の身でトレーナーデビューをする居心地の悪さからチェレンは少し救われた。なんと言っても自分にとっては長年の夢だった反面、大人になってから旅に出ることに一番後ろめたさを感じていたのがチェレン自身だったから。
トウヤはけしてチェレンを慮ってトレーナーデビューするわけではないし、祝福の言葉だってチェレンがトウヤに告げた形ばかりのおめでとうのお返しだろう。それでも本当にタイミング良く、普通から遥かに遅れてトレーナーになる仲間がいて良かったと、チェレンは涙ぐみながらトウヤに感謝していた。
「……ありがと……」
 チェレンは布団をますますぎゅっと抱きしめた。
 
  •   *   *
 
 トウヤはチェレンに告げた通りベルとはもう夫婦ではないが、ベルの父親の目を誤魔化すために、ぎりぎりまでベルと夫婦をしていた。
「トウヤの家にいる限りお父さんは安心してくれているからって、今までごめんね。」
 ベルの軽い感謝にトウヤは首だけ後ろを向く。
「いいよ。僕もベルと結婚してなきゃ会社でも色んなこと言われそうだったし。ツーカーのベルとじゃなきゃ、他の女の子相手だとトレーナーになりたいからって脱サラも離婚もさせて貰えないだろうし。」
 トウヤとベルの間に性交渉はほとんどなかった。友達感覚のルームシェア感覚でこの二人は夫婦をやっていた。それを近所の人間は誰も知らない。
けらけらとベルは笑う。
「トウヤの場合、自分がトレーナーになるって言うより、好きな子がトレーナーになるからでしょ。」
 夫婦共通のベッドの上で寝転んでゲームをしながらベルはトウヤを揶揄した。トウヤはテレビを消してベルに近づいてベッドに腰掛ける。
「うん。チェレンのトレーナーデビューを狙ったね。」
「先輩トレーナーのほうがかっこつくのに?」
 トウヤは安直なベルの言葉にやれやれと肩を竦める。
 トウヤが本来の年齢でトレーナーデビューする年に、当時はトレーナーになること前提だったトウヤは何の用事で言ったか忘れたがチェレンの家で、彼の両親の内緒話を聞いた。
 
 それはチェレンの身体が弱すぎて、十歳の誕生日を迎えてもその年齢では旅は始められないことが確定しているような会話だった。近所のトウヤがポケモンを貰う年齢に達したので、わが子とトウヤを比べての行く末を悲観するような思いがチェレンの両親には感じられた。六歳下のチェレンはまだ幼児だったので、もしかしたら寿命すらも危ぶまれたのかもしれない。
『おかあさん。ぼく、トレーナーなるのやめる。』
 チェレンの家からチェレンの両親に盗み聞きを悟られないように帰ったトウヤは、母親にまずそのことを告げた。母親はうちはベルちゃんのおうちのように反対してないよとボケたことを言っていたが、トウヤは頑なに行かないと言い張った。そしてトウヤが行かないことを主張してしまったが為に、とばっちりのようにベルの父親の過保護は増長されてしまった。それはまあ、関係のないことだが、ベルの父親はよく吹聴していたらしい。
『あのしっかりしたトウヤ君が行かないって言うなら、うちの娘なんかますます旅に出させられないなあ。』
 と、鬼の首級を取ったような言いぐさだったという。数年間ベルにも恨めしそうな目で見られた。だから結婚したというわけではないが、ベルはトウヤのチェレンに対する健気さには同意してくれたのか、よく今まであの父親から家出同然に逃げ出さず、自分と夫婦をやって協力してくれたものである。
 
「まあ。私も三十だし、可愛い盛りは全部お父さんにあげちゃったわけだし。頑張ったよね、私。」
「ベルはよく頑張ったよ。ついでに年下の男の子が大好きな僕と仮面夫婦もしてくれてありがとう。」
「いやー。その仮面夫婦って言い方ものすごくファンタスティック。でも田舎でやることないのにね。」
「僕たちってほら、変り者だっていう自覚半端ないし。」
「そうだね。二十年間も親と世間を騙せるなんて、ほんと私たち変わりもんだよね。でも嘘つきでも無責任でもないよね。」
「うん。でも長かったな。」
「ほんと長かったよね。トウヤ。成長したあの子、トレーナーになって幸せになれたらいいね。」
 トウヤは無言で頷いた。そしてもしチェレンが不幸になりそうだったら全力で助けたいと思った。
 昔からチェレンが可愛かったトウヤは、チェレンのために自分のトレーナー人生を先送りにして、先に社会人になることを決めた。
 トウヤは今日のこの時をもって、先送りにした選択を良かったと満足していたのだった。
 
  •   *   *
 
 それはまだ物語の登場人物の主人公とライバルの二人が接点を持っていない場所でのことだった。
 トウヤとN。まだ見知らぬ同士の二人はしかし同時期に旅を始めたのだった。
 Nは一人で旅を始めてから行きずりのポケモンと話をして、これから自分が変えていく世界の在り様を模索していた。そして現在、Nはやはり行きずりの男と一つの部屋に一緒にいた。理由は年相応の性欲を発散させるためもあったが、Nは父親代わりの男の言葉も思い出す。
『N様はポケモンの痛みは誰よりも理解しておられますが、ポケモンを傷つける人間の生態には不可抗力ながら疎くなってしまったように私には思えます。人間は意識的にも無意識的にも、ポケモンを傷つけてしまう生き物で御座います。その意識と無意識を学ぶためにこのゲーチスは、N様は外の世界の人間のどうしようもない生態を見て頂きたいのです。N様にとっては吐き気を催すような唾棄すべき体験を強いることですが、正しいもの綺麗なものただ虐げられるだけのものを見ていたのでは、貴方の素晴らしい器をもってしても足りないこともあるのです。』
 まあようするにしばらくは組織から離れていて欲しいというのが暗に垣間見えるような進言だった。あくまで王様の手足を自負するようなゲーチスだから、何らかの都合や事情があるんだろうとNは思った。そして組織から離れ身分を隠し、各地のポケモンに少し「手伝ってもらい」ながら、Nは自分の出来る限りを見つけ出そうとしていた。
 Nと一緒に宿の部屋に入った男は、ベッドに腰掛けるNの横に座ってその頭を引き寄せ耳元で甘い声で囁く。Nがくすぐったそうに笑うとちゅっと音を立ててNの頬に唇を当てた。
 昼間、男が自分のポケモンにもそういう風にキスしていたのをNは見ていた。モンスターボールに、この男はトレーナーの常識に従いポケモンを閉じ込めてはいるけれど、あくまでそれはこの世界の常識が間違っているだけだろう。ボールをもってしなくてもポケモンとの絆を繋ぎとめられるとNが説き伏せられれば、この男ならば理解出来るかもしれないとほんの少しだけ考えた。そしてこの交渉がそのきっかけになればいいかと淡い期待も持っていた。
「初めて、じゃないよな?」
 Nから少し目を逸らした男は何気ない風を装ってNに露骨な質問をする。
「ん? 初めてだけど。」
 さらりとあっけなく言われた回答に男は驚いたようにNを見た。
「その割には大胆じゃないか。初めて出会った男に僕と性交しませんか、なんて。」
「そういうものなのかな。今までは自分で処理してきたんだけど、ポケモン以外の生き物の本能的な行動が知りたくてあなたに声をかけたんだ。」
 Nはの早口をかろうじて理解した男は笑うか呆れるか迷っているような笑みを見せながらNの腰を引き寄せる。
「なんか身もふたもないことを言うね。でも可愛いよ。しかも初めてだなんて、なんてラッキーなんだ俺は。」
 Nの全てが無意識という態度も演技なんだろうと男はそう踏んだ。こういう少し浮世離れを装った人間は意外と好きものじゃないのかという男の期待は、どぎついエロ本の内容そのものだった。もう頭の中では取り澄ました顔をしているNが乱れに乱れていた。
しかしNはにこにこ笑ったまま男の出方を待っている。男はさっきの思惑とは反対にとんだマグロかもと思案した。しかし初めて特有の勘違いというか変な思い込みによる余裕かもしれない。そうであれば、こちらがリードしてやればそれなりに楽しめそうだとも踏める。
「ノッポのお嬢ちゃん。ちょっと立ってくれる?」
「お嬢ちゃん? 僕は男なんだけど。」
 Nは正論を当たり前のように男にぶつけた。男は苦笑する。
「君は可愛いし、いわゆる雰囲気づくりのつもりだから、細かいことは気にしないで。」
「そういうものなんだ……。」
 ゲーチスにいつだったかさわりだけ教えてもらった、ユーモアというものかもしれない。Nは頭の中にある記憶と今の男の言い草に重なるそれを反芻したが、男はそんなNを待ってはくれず焦れたように言った。
「まあいいから、言うとおりにしてみてよ。」
 Nは腰掛けていたベッドから立ち上がってどうするのと目顔で男に問いかける。男は言葉ではなく、手をNの身体にかけNをベッドのほうへ向かせると、そのまま体重をかけて覆いかぶさるようにNをベッドに腹ばいに寝かせにかかる。Nは上半身だけベッドに俯せにされた。ちょうど腰のところで折り曲げられて足は床についたままの、男が腰回りに十分手が届くような態勢だった。
「お嬢ちゃんは背が高いから、こういう格好のほうがおじさんとしてはやりやすいんだよね。それに正面から見られるよりも恥ずかしくないでしょ。」
「恥ずかしいって、なに?」
「今からわかるから。」
 初心な無防備さに男は内心で舌なめずりをする。男はNのズボンのベルトのバックルに手を伸ばして外した。Nはかちゃかちゃという金属同士がぶつかる音にびくりと身体を震わせる。男はもうなんやかんや囁くのさえ面倒になったのか、性急にNの股間に手を這わせて、尻から前に掌を前後させる。
 Nは声を堪えるように両手で口を塞いでいるが、どうしても吐息が漏れ出てしまう。
「く……ぅ……」
 いい尻だと思ったのか男は執拗にNの尻を撫でている。
「お嬢ちゃん。いきなり突っ込まれるのはやっぱり怖いよね?」
 Nはうんうんと何回もわけがわからないまま頷いている。男はさっきまでの取り澄ましたようなNとの対比に興が乗り始めたのか、ズボンと下着を膝あたりまでずらして、手慣れたように性器に指を絡めてきた。
「あっ……。」
「他人に触られるのは初めてだよね。」
「うん……。」
 片手でNの先端を弄びながらもう片手はシャツの中に侵入して脇腹から胸を刺激する。Nは自己申告を偽ってなかったらしく、初めてらしい怯えが混じった表情を男に向けた。
「一回おじさんがイかせてあげるからそのあと、ね? ね?」
「…う、……うん。」
 シャツの背中側も捲り上げられ、Nの色白な肌も男の目に晒される。緑色の長い髪が男の指に梳かれる度に、Nは怯えが消えないままだけども、少しの安心感が芽生えたように身体を弛緩させた。
「あなた昼間、ポケモンにも優しく触れてたよね。」
「ポケモンにはこういうエッチなことはしないよ。」
「それはあたりまえのことだけど、そういう意味じゃないんだけどな。僕はニンゲンという自分と……ポケモンとの境が結構曖昧なんだ。……あ!」
 男はNの御託を遮るようにNの性器を強めに握った。
「僕にとってはポケモンは……トモダチで、あなたにとっては……ポケモンはトモダチなのかなっていうのも……問いかけてみたくて……。ねえ、あなたにとっては……あなたが昼間にキスしてあげて抱きしめてた……ミジュマルはどういう存在?」
「え? おじさん今そういうこと答えられないよ。だって君がほら、こんなに気持ちよさそうにしているのに。」
 男は目の前のNに没頭したいのに、Nは昼間自分が見かけた男のポケモンに接する姿に思いを馳せていた。Nが男に声を掛けるきっかけはそれだったが、今している行為には何の関係もない。少なくとも男にとっては人間とポケモンは別物だった。でもNはそんなことは理解することなく男に、ポケモンと人間は同じ世界を分かち合っている対等な存在であることを前提に話をしていた。
「お嬢ちゃん。それはあとでゆっくり話そう。今はおじさんと楽しむことだけ考えて。いいだろ?」
「……わかった……」
 Nは男がトモダチのことを片手間では語れないと読み取って男の成すままに今はいようと思った。そう思うまででもなく長身ではあるが華奢なNの身体は、旅で鍛えられた男の腕に抱きすくめられ、大きな手のひらで擦られ扱かれすっかり翻弄されていた。
「あっ……いやっ……。」
「気持ちいい? 気持ちいい? お嬢ちゃんもっとかな。」
「う、うう……。」
「ほら。いってごらん。」
「も、もっと……。」
 Nは股間で勃ち上がったものに全ての意識というか感覚が持って行かれるような錯覚を覚える。腰が床にずれ落ちそうになるのを男は無理矢理ベッドの上に押しやり、Nをベッドの上に四つん這いにさせた。
「すごく、可愛いよ。」
「か、かわいい……? や…これは恥ずかしいって言うべきなんじゃないのかい?」
「恥ずかしいのが可愛いんだよ。君の恥ずかしいところが丸見えで、このひくひくしてるとこなんか自分の意志でそうなってるんじゃないってわかるよね? 気持ちいいとね、こんなふうに身体が勝手にひくひくしちゃうんだよ。」
 Nはそれに小さく頷いた。こういうことは本を読んでもわからなかったことだ。自分で慰めているときは手の刺激だけで達していたせいで、その最中に何も思い浮かべることもなく機械的な作業になっていた。今男としていることは、いつものルーチンワーク的な作業ではなく、お互いの身体で相手を意識しあいながら行っている未知の実践だった。
「しゃ、射精しちゃう!」
「そういうときはね、イクっていうんだよ。」
「い、イク……。はあ……はあ……」
 男の追い上げはNの心拍数を上げ呼吸を乱れさせる。ついにはNは男の手のひらに白くてどろどろした液体を吐き出した。男は満足そうにNの背中に精液で濡れていないほうの手を這わせる。そして覆いかぶさってまたNの頬にキスをした。
「ねえ、続きしてみないかい? 今度は手で擦るだけじゃなくて、君の中に気持ちいいもの入れてあげるから。」
「…待って…息が…」
 Nは仰向けになろうと身体をよじる。男は察したように身体をNの横にどけた。男の目に射精したばかりで顔に赤みを帯びて、目も虚ろに潤ませているNの扇情的な姿が映る。
「良かったかな。」
「うん。……良かった。」
「お嬢ちゃんは自分が人間とポケモンの境が曖昧って言ってたけど、どんな発情して手の焼けるポケモンよりやらしくって可愛かったよ。」
 Nは上半身を浮かせて男に問いかける。
「発情したポケモンを見たことあるのかい?」
 男はNの息が整うまでピロートーク代わりにNの奇妙な会話に付き合ってやることにした。
「初めて進化させたポケモンのとき、一回限りだったな。ポケモンは進化するとすぐに発情期がくるんだよ。人間で言うと大人になるっていうことだからな。」
「そうなのか……、それで?」
 Nの雰囲気が熱に浮かされたものから、裁定者らしき冷静な雰囲気に変わる。男はそれを気だるげな態度と間違って受け取ってしまった。
「旅で連れているときに、しかもそれがトレーナーとしての仕事の旅だったりするとき、発情されちゃうといろいろと困るんだよね。バトルのときも言うこと聞いてもらえなくなるし。だからその子はブリーダーのところに連れて行ってそのままブリーダー用に預けた。その当時のおじさんはあの子をきのみだけで育ててたからなあ。」
「きのみだけで育てるとどうして駄目なことになるんだい?」
 男は事情通ぶってNに語る。
「市販のポケモンフードや傷薬の中には、ごく少量ずつ発情を抑える成分が入っているんだ。まあそれでも足りない子にはそれを抑制する専用の薬もある。人間の傍にいるポケモンには、人間のほうがどうにかしてあげなきゃいけないわけだからね。」
 男はそう言いながらNの肩を抱こうとしたが、Nは鋭い目を男に向けて男から露骨に距離を取った。
「薬漬けにして自然な生理も歪めて、それがトモダチの為になるって?」
「どうしたんだい? 急に?」
 いきなり初心な可愛らしい青年が、自分が少し目を離して話しかけていた間に豹変していた。
「あなたはそうやってトモダチにキスして愛情を注いでいる振りをしながら、食べるものや傷を癒すものに混ざっているトモダチを歪めるものを与え続けた。」
「いや。進化しなければそういう問題はないわけだから。薬とか使ってないから。進化キャンセルでどうにかなってるから。ね?」
「進化させないのも自分の都合ってわけだね。」
「いやポケモンは進化させないでいたほうが長生きするって、君は知らないよね。野生でよく進化しない状態でやたら強いやついるじゃん。あれは進化キャンセルし続けられたポケモンをトレーナーが逃がしたものなんだよ。」
「逃がすか……。言い方変えれば捨ててるんだよね。まあ、僕らの掲げているのは「ポケモンの解放」だから、そのへんの解釈はおいおいする必要はありそうだ。だけどポケモンの為じゃなくて、自分の都合でしたことが、運よくポケモンの為になったってあなたは言いたいだけなんだよね。そこにポケモンの意志なんてないじゃないか。」
 Nは早口で捲し立てる。もう男の耳はNの言葉についていけなかった。
「ご、ごめん。なんに怒ってるかよくわからないけど、ごめん。お詫びにおじさんすごく気持ちよくさせてあげるから。」
 Nは男を見下げ果てたように冷たい眼差しを向ける。男はすがりつくようにNを抱きしめて、Nが逃げないようにNが痛いと思うほど強い力で拘束する。押し付けられた身体の中心の硬さをNに知らしめるように。
「あなたのそういう状態を、発情してるって言わないかい? あなたもその抑制剤とやらでコントロールしてやればいいじゃないか。僕が発情した姿を見せたときは可愛いって褒めてくれたのに、トモダチが発情すると面倒臭がるのは何故?」
「だって、ポケモンと人間は違うじゃないか。君だって、ポケモントレーナーだからわかるだろ!」
 ポケモントレーナーというNの現在の身分を男は振りかざす。同じ立場にいるからわかるはずだと決めつけていた。
ところが男はあらゆる事実を見落としていた。ベッドサイドのテーブルには男のモンスターボールが荷物と一緒に置かれている。転がっているモンスターボールの中にNのものはない。
それの意味するところは。
「僕は確かに今、ポケモントレーナーと名乗っている。だから僕をあなたと同じ立場のニンゲンだと思ってくれているのかもしれない。だけど僕はあなたにけして共感できる立場じゃないんだ。」
 Nのポケモンはどこにいる? 答えは簡単だった。
「近くにいるなら来ておくれ!」
 
 花火のような音と共に宿の大きな窓ガラスが四散する。窓ガラスの破片が薄くNの頬を切るがNはそんなことを気にせず、窓から飛んできたポケモンに微笑みかけた。
「か、カビゴン!」
 男は目を見開いてその巨体に腰を抜かした。その隙にNはベッドから降りて身なりを整える。最後にトレードマークのキャップを被るとカビゴンをねぎらった。
「眠たいのに来てくれてありがとう。」
 カビゴンは頷いている。
「心配してくれたんだ。うん。」
 カビゴンはNを抱きかかえる。そして口を大きく開き、その中でオレンジ色の光弾が膨らんでいく。
「は、はかいこうせんっ。ウソだろっ。」
 男は慌ててベッドの反対側に降りた。荷物やらモンスターボールに構っていられなかった。
 ベッドを盾に身を隠したあと、そのすぐ上をはかいこうせんが通過し、壁を文字通り破壊した。恐る恐るベッドから男が顔を出すともうそこにNとカビゴンはいなくなっていた。
「こ、こえー。ポケモン怖えー。」
 男が久しく忘れていた感覚が蘇った夜だった。
この事件はこの町でニュースになるのだが、その後世の中を震撼させるプラズマ団のその王様が起こした事件なのに、この事件はのちの未来にもプラズマ団に結び付けられることなく埋もれてしまった。

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HN:
柴仲達
性別:
女性
職業:
会社員
趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

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