幸福雑音
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☆「ポケモンデイズ③」前篇 R18 主♂N
NがまだNと呼ばれる前のこと。
Nは一度だけ人間に嘘をついたことがある。森でポケモンと生活していたところを彼に保護という名の確保された、その日のことだった。彼はNが物語るまでもなく、Nの能力をNよりも理解していた大人だった。それを踏まえた上で彼はNに問うてきた。
『君はポケモンの心の声が聞こえるらしいが、人間の心の声は聞こえるのかな。』
まだ男はNに現在ほど恭しくはなかった。無機質な声だったが出来る限り優しく話そうとしているような不器用さが窺えた。繋がれた手は大人特有の乾いた感触だった。溶け込めない意識と皮膚による隔絶を実感させた。だがゲーチスは幼い子どもに出来る限りの歩み寄りを見せていた。
なのにNは、その不器用な優しい問いかけに誠実には答えなかった。
『ぼくがきこえるのは、トモダチの声だけ。ぼくがニンゲンと話せるのはことばだけ。』
『そうなのか。』
それは都合がいい。
言外の言葉が聞こえた。やはりNは正直に話さなくて良かったと思った。遠い未来で思えば却って悪かったかもしれない。だが、幼かったNは、その時はポケモンの心の声が分かると同時に、同じように心を持っている人間の心の声もわずかに探知できることは、この彼、のちの義父であるゲーチスには永遠に隠すことになった。利用されることが嫌だったわけではない。だがNはゲーチスの手に引かれるままあの城の中に入った。
ゲーチスの本当の思惑をNは知っている。だけど彼の表向きの目的を、自分ならゲーチスが率いるプラズマ団の真の目的に引っ繰り返せるかもしれないと考えるから、Nは彼ことゲーチスの傀儡に敢えてなった。まるで古の戯曲で語られたとある国の王子ように、自らの目的とは反対の世界に留まり続けている。
『N様。ポケモンの解放、五匹ほど成功しました。』
「ありがとう。」
Nはライブキャスターごしの相手に小声で感謝して微笑みかける。同じ服を身に着けていながら、プラズマ団は密かに真っ二つに割れていた。彼女はN側の人間だった。
トウヤは今、Nのあとからシャワーを浴びている最中だった。その隙にNは同志の一人である人間とゲーチスには秘密の会話をしていた。
『本当なら全部解放したいのですが』
「僕も気持ちは同じだ。だけど今それをしたら反動が大きいからね。彼らが見過ごす程度の成果で今は満足しておこう。」
『いつか引っ繰り返せるんですかね? 戯曲を元にしたゲームのような戦略で、全て白に塗りかえるか。それとも黒にしてしまえるか。』
「君の言葉の喩えは相変わらず美しいな。」
『私はN様とは違って数学が苦手なんですけどね。』
大昔の古典の知識をライブキャスターごしの団員が教えてくれたことがある。優れた文学はNが好む数学と並んで美しいとNは思った。計算され尽くした描写や物語の展開は、いつまで経っても褪せない普遍を思わせた。
ただし美しさは感じてもNがやり遂げなければならないのは、もっと現実的なことだ。正しさは勝利せねばならない。破滅の美は無意味である。
「君はこのまま次の彼らの隙を待つんだ。いいね。絶対に無理をしちゃいけない。」
『はい。私が手解きしたN様が、このように頼もしいことを言って下さる日が来るとは。』
Nにオペレーターとしての手解きをしたのは、画面越しの彼女だった。Nは呼ぶことは少ないが彼女は名前をハッサクと言った。頭に炊事用の手拭いを被った中年の小母さんで、プラズマ団の中では団員の生活部分の指揮者である。プラズマ団は外部からの雇用者を呼べない集団なので内部で生活部分も団員に分担させている。家事のエキスパートの彼女はそんなプラズマ団の食堂のおばちゃんでもあり、生活部分の責任者でもあった。一見家庭的で見た目はプラズマ団とは思えないが、彼女は古典の戯曲を諳んじ、様々な経歴を持つ優秀なオペレーターでもあった。
Nは彼女に色んなことを教えてもらい、そのお蔭でプラズマ団内の様子を知ることが出来た。だからNも彼女に彼女がずっと探している人物の情報を提示する。
「君の探している女子高時代の友人は、ライモンのアンダーグラウンドでポケモンバトルをしているらしい。君への土産話としてはどうかなと思うけど、君の目的の一つはこれで達成できると思うんだ。」
『……アマナツが。相変わらず馬鹿なやつだよ。』
「どうする? 今すぐ彼女のところに行ってみるかい?」
ハッサクは首を振る。
『それはまたいつかの機会にしたいと思います。それではN様も良き旅を。』
ライブキャスターの画像と音声はそこで途切れた。Nはけだるい身体を再びベッドに横たえる。水音が止み物音を立てながらトウヤがシャワールームから出てきた。
「N。調子は……まだ戻ってなさそうだな。」
Nは半ば気まずそうな素振りを見せるトウヤに対してベッドに顔を伏せたまま返事をする。
「君があんな滅茶苦茶するとは思わなかった。」
「ごめんよう。」
済まなそうな声とは裏腹に顔はすっきりしているんだろうとNは思った。Nは相変わらず人間の心の声もうっすらと読み取ることが出来た。トウヤが最中に何を考えていたのかもわかってしまう。トウヤの一部がNの中に入っていたのだから、余計にいつもの感応力が強化されていたような気がする。
『もともとのトウヤの執念が強いのもあるんだろうけど。目の前の相手通り越してチェレンのことしか考えてないんだから。』
肉声のようにはっきりとNの脳に響いてきたのは、トウヤがここにはいないチェレンを呼ぶ悲鳴とも思えるような声だった。
チェレンが本命なことは、それはあらかじめ提示されている事実だったからしょうがないかとNは思い直して顔をあげた。
「N。さっきの間に君だけ服を着てるなんて随分と薄情なんだな。」
ライブキャスターは実際の画像も相手に送ってしまうので、まさかの裸姿を晒すわけにはいかなかった。Nはしまったと少し焦る。
「こういうのは薄情に思われるのか。そうか。」
Nはわざと無神経な世間知らずを装った。なんだかこの男と出会ってから嘘をつくまではいかないが、なにかと誤魔化す癖が出来つつある。少し悪い兆候かなとNは思った。
トウヤはまだ少し滴の残った髪の毛のままベッドに座った。
「君こそ服着ないのかい? 風邪ひくよ。」
腰にバスタオルを巻いているだけのトウヤにNは言う。トウヤはまだ暑いからと軽く流した。トウヤの身体はいかにも思春期から未発達といった加減を絵に描いたような身体だった。はっきり言って貧弱の一歩手前。痩せぎすで節々だけがごつく見える。背もNより低い。三十代の成熟した肉体とは呼べない気がする。
「なんだい?」
「トウヤって少しやせ過ぎなのかなって。」
「あのねえ、男の真価は体格の良さじゃないんだぜ。過去の英雄でも小男が天下を取ったという事実はごまんとある。」
「だけどそういう人って小狡いというか、頭で伸し上がった人たちだから。」
そういう英雄の裏話は、英雄らしい英雄だった男たちに比べて多かったようにNの記憶には残っている。だからトウヤに反論してしまった。
「だけどその反面、彼らはロマンチストな側面を持っていた。いつも恋をしていた。」
「沈着と情熱は彼らの内側では両極端ではないんだね。往々にしてそれは融合し彼らはその思念とも感覚ともつかぬものに突き動かされていたということか。だけど、彼らのその恋は大抵叶っていないような気がするんだけど。」
「そうかな? まあ器のキャパシティは体格に比例しないってことだよ。」
トウヤは自分の矮躯を弁護したいようだが、どうしようもない空しさを伴っているような気がするのは、Nがその裏を掻きすぎなのだろうか。Nは情事の余韻とは別にやはり好奇心が優先する人間であることを、自分自身で再確認した。そして今もっともそぐわないことをトウヤに問いかける。
「ねえトウヤ。君はジムに挑戦するつもりなんだろ。」
トウヤはさも当たり前のように頷いた。頭の切り替えの早さは身に着けた事務的な処世術のようだった。抱いた抱かれたの関係から、また一対一の男同士の関係に戻ってしまった。
「そりゃそうだろう。君もだろ。ポケモントレーナーなら。ちなみに君はチョロネコで挑むつもりなんだろうね。わかるよ。苦労しているのは。」
「え? チョロネコは頼りになるよ。」
「え?」
トウヤがNに身を乗り出してきた。
「その……君のチョロネコ。彼はちゃんと使えるのかい?」
「使えるって言い方やめてくれない。」
「いや会社員時代の癖で、人間に対しても使ってたから。じゃあ、レベルかなり上げているんだね。それならなんとかなるよね。」
「あのね。君はどうしてチョロネコが頼りにならないとか弱いとかという前提で話を進めているんだい?」
Nが本格的に怒りそうなのでトウヤは質問攻めを一旦やめた。
「ごめん。やっぱり彼女が使えないのは僕の努力不足っぽいな。」
トウヤはこれでチェレンのチョロネコも使えると聞いた日には、本当の意味で落ち込んでしまいそうな顔色をNの前で晒す。
「トウヤ。最初の話にもどるけど。僕もサンヨウのジムに挑戦するんだ。そして勝ってジムバッジが取れれば、また次の町のジムに行く。そしてまた町を移ってジムバッジを集めるよ。」
「熱心なことだね。」
「最終的にはポケモンリーグに挑戦したいから。それでチャンピオンに到達したいから。」
「僕が知ってる君にしては好戦的な目標だね。」
「やらなくちゃいけないことだから。」
「やりたいことじゃないわけだね。」
「やりたいことに必要なことだから。」
トウヤは溜息をつく。やらなくちゃいけないこと。このイッシュの頂点に立つチャンピオンに勝つことも相当な目標なのに、その上にやりたいこととはいったいどれほどの壮大な目的なのか。トウヤには皆目見当がつかない。
「まあ君はまだ若いからね。いくらでもやれる歳だから。」
「君こそトレーナーになりたてなのに、どうしてそんな他人事なんだ。」
「その理由を言ったらまた君が怒る。」
そうかとNは食いついてこなかった。なんだか嫌に察してもらえてしまったようだとトウヤは苦笑する。トウヤが行く先々のジムに挑戦するのは、チェレンと同じ場所にいたいという動機が一番だ。そのような動機でジムに挑戦するなんて、不純だとまたNに怒られてしまうのは必至だった。だから今回は前回の反省として、お互いにそれ以上はそのことには踏み込まなかった。
「ちょっと僕らしくないこと言うけどいいかな?」
「なにかな。」
トウヤはふっと目を閉じて手のひらを何かを包み込むような形で胸の前に翳す。Nはその仕草がモンスターボールを握っている感じだな眉を顰めた。
「ただの入れ物のこれが、日に日に僕の中で存在感を増していく。彼らが強くなっていくのが僕の強さだと錯覚するくらいに。」
「それは単に君に彼らの能力に対して指揮権が保証されているが故じゃないの?」
トウヤは目を閉じたまま首を振った。
「違うよ。そんなんじゃない。わかるんだ。僕が強くなければ彼らは強くなれない。」
Nはその言葉だけには反発はしなかった。なぜかは自分でも釈然としないが、その言葉を否定すれば自分の考えた理想郷が一瞬の間に虚構に落ちると察したためだ。トウヤの言葉が核心を突く前にトウヤの神掛かった言葉を現実に引き戻そうとした。
「君はこの先もしチェレンとそれなりの関係になれたとしたら、君は君の旅をどうするつもりなんだい。」
「チェレン次第だな。彼にとって僕が必要なら僕はずっとポケモンと旅をするよ。たぶんそうなる可能性は高い。彼は子供のときに身体が弱かったんだ。トレーナーになることだけが病気と戦うモチベーションを保っていたようなものだった。やっと念願が叶ったし、彼なりに身体も鍛えているけど、やっぱり昔から彼を見てきた僕には彼の身体のことが心配なんだ。本当に傍にいて、僕が彼を支えられたらいいなと思ってる。」
Nはトウヤの言葉を聞いて色んな意味で合点がいった。男が男に入れ込むトウヤの現状には、チェレンの肉体の脆弱さが強く関わっていた。保護欲が所有欲になり性欲も加わっているとなれば、この男はどれだけ貪欲になれるか、Nはその身を以て先ほど知ったばかりだった。
トウヤのけして逞しくはないが強かな身体が、自分に絡みついてきた感触をNは自分の腕で自分の身体を掻き抱くことで反芻していた。身体は少年のようなのに節くれだった指は、大人のそれそのものだった。自分の内部を穿ってきたそれも大人そのもので、少しNを混乱させる。Nはトウヤをまるで同世代みたいに呼んだり接しているところがあるが、要所要所で相手が大人だという事実を突きつけられる。
だいたいトウヤは童顔のくせに声は異様に低く渋い。普段明るくしていれば明るくしているほど、真剣な言葉は真剣な声に相まって心に刺さる。もしかしたら自分はその声音が与えてくる言葉のストレスに振り回されているだけなんじゃないかとNは分析紛いのことを考えた。そうすれば楽に考えられるかもと思ったから。
トウヤはちらっとNを見てぶきらぼうに気が済んだかなと問いかけてくる。
「え?」
ふいを突かれたNは何を尋ねられているのかと首を捻った。
「その…セックスして性欲解消したかったっていうの。」
「あ、ああ……。なんだかんだでスッキリしたし。」
「そう。良かったよ。」
Nがトウヤを巻き込んだ形だったとはいえ、トウヤの言葉の歯切れが悪い。
「トウヤ?」
トウヤはいきなりNのほうに身体を傾けてきたと同時に、Nを巻き込んでベッドの上に倒れこんできた。
「N。恥を忍んで頼むんだが、もう一回してもいいかな?」
「え? え?」
トウヤの腰のバスタオルが不自然に浮き上がっているのがNにはわかった。
「と、トウヤ。勃起して……るの?」
「ほんとに何て君に謝ればいいかわかんないんだけど。まだ収まらないんだ。一回だけって言ったのに……一回だけじゃ済まないみたいなんだ僕、年甲斐がないって軽蔑してくれてもこの際いいよ。僕も僕自身が情けない。こんな歯止めの利かない男が僕だなんて僕が認めたくないよ。」
情けなさに泣きそうなトウヤの頭をNは衝動的に撫でた。
「だ、大丈夫だよ。」
「助けてくれるかい? N?」
涙が滲んでいるトウヤの背中をぽんぽんと叩きながら、Nは今この男を助けてやれるのは自分しかいないと、男の癖に母性的な感情が生まれつつあった。
「だから泣かないでね。しょうがないよね。それがオスの生理だからね。ポケモンもニンゲンも同じことだよね。」
トウヤはNの言葉を聞きながらNの足に硬くなった自分自身を押し付けた。
チェレンが佇んでいる場所は屋根も壁もない森の中だった。日はもう暮れなずんでいるし、街が近い森なのにこんなところで、この時間に好き好んで留まっているのはチェレンくらいのものだろう。街から街の移動の際に野宿をするというのはポケモントレーナーにとっては日常なのだが、街で泊まれるポケモンセンターや宿があれば当然彼らは自分の身のためにそこに宿泊する。ポケモンもボールに入っているのだから特にトレーナーの寝泊りする場所について気にする者はいない。人間の住居に慣れているポケモンならボールに入っていなくてもトレーナーと一緒ならその場所に馴染める。
だがチェレンは己が考えすぎる性分故に極端な選択肢を取ってしまった。
チェレンはポケモンセンターに泊まったことがない。この旅に出てから他の宿泊施設を利用したこともない。いつも街の外れのポケモン達が落ち着くであろう森の中や草原で野宿をしていた。
理由は単純だった。子どもの頃から自分のポケモンを手にすることを夢見ていたチェレンは、ポケモンをモンスターボールに閉じ込めっぱなしにするのは避けたいと思った。というかそんなことをするのが惜しいくらいにポケモンと触れ合いたかったのだった。チェレンにゲットされたポケモンはまだ人間がいる場所に慣れていないだろうとチェレンは思っている。宿の中でモンスターボールから出せば彼らは落ち着かないだろうと思ったし、ポケモンセンターだと他のトレーナーもうじゃうじゃいる。人見知りする癖のあるチェレンは自分でそこからあぶれてしまうことにした。
「ツタージャ。薪ありがとう。」
野外の炊事には慣れてきていた。ツタージャはチョロネコやヒヤップをよくまとめてくれているし、新しく入ってきたマメパトも早々に馴染もうとしている。
癒されるという言葉では筆舌に尽くしがたいほど、チェレンは目の前のポケモン達の姿に胸の内を熱くしていた。だけどそんな幸せを顔に出してしまったらトレーナーとしては三流であることをチェレンは知っていた。ポケモンにはあくまで頼れるトレーナーでなくてはいけない。だからチェレンは笑顔を押し殺してツタージャの頭を撫でた。
「けほっ。」
チェレンは自分の咳に慌てて口を押えた。ツタージャを恐る恐る見るがツタージャはその咳に気づいていないように火の中に薪を入れている。他のポケモン達も気づいていない。チェレンは胸を撫で下ろす。ポケモン達をモンスターボールから出して一緒にいられるように野宿を続けているが、元々が身体が丈夫でないチェレンにとって野外で夜を明かすのは普通のトレーナーより身体に負担がかかっていた。ただ弱かった頃の自分を晒したくないチェレンは、ふいに出てきた軽い咳一つにも動揺してしまう。身体的に弱いトレーナーだとポケモン達に思われたら、心配をかけてしまう。そんなことは避けなければならない。トレーナーの優秀さは頭脳が明晰なだけでは駄目だ。ポケモン達が最終的に頼らざるをえないのはトレーナーなのだから。自分がしっかりしなければ。
「少年。シチューが焦げるぞ。」
後ろから声を掛けられる。慌ててチェレンは声に釣られて鍋をかき混ぜようと身体を起こしたが、その拍子に連続した咳がチェレンを襲った。
「よいよい。儂が代わりにやってやる。」
チェレンの前に現れた偉丈夫とも呼べる赤毛の男は片手でおたまを持って鍋をかき回し、もう片手でチェレンの背中を摩った。服の上からでも感じるごつくて温かい手のひら。チェレンは憧憬を覚えると同時に自分と遥かに違いすぎる男の造作に軽い反発心を持った。
咳を収めてチェレンは男の手からおたまを引っ手繰る。
「いいです。自分でやります。」
「そうか。」
チェレンは改めてその男を一瞥する。気さくそうな好々爺の二歩か三歩か手前の年齢っぽく見える。人が好さそうなのに、どこか人を喰ったかのような印象を覚える。どうしてチェレンに声を掛けてきたかは分からないが、そのまま男はチェレンの横に座り立ち去る気配がない。
「なんなん、ですか。」
「いや。風邪をこじらせているなら街に泊まれば良いのではないかと思ってな。」
さっきの咳でなんだか色々推測されたようだとチェレンは眉間に皺を寄せる。男が言った通りチェレンは少し風邪をひいていた。そしてそれは野宿続きの毎日で完治が長引いていた。薬を飲んで症状は抑えているが、どうしても軽い咳は出てしまう。
「少年よ。トレーナーも生身だからな。あんまり無理はせんほうがよい。身体が資本じゃからな。」
「余計なお世話です。僕は無理なんてしてない。勝手に僕のことを推測して口を出さないでください。」
男は困ったように眉を下げた。
「少年……」
「ちなみに!」
チェレンは声を荒げる。
「トレーナー初心者だと思ってあなたは僕を少年と呼びますが、僕はこう見えても年齢的には成人してるんです。だからその呼び方ははっきり言って不快です。」
「なら名前を教えてくれんか? ちなみに儂はアデクという。」
何処かで聞いた名前だなとチェレンは思ったが唐突に思い出した。しかしチェレンが知っているアデクならこんなところにいるはずがない。なら彼と同名の別人の可能性のほうが高い。チェレンはぶっきらぼうに言う。
「先に名乗って頂いてありがとうございます。僕はチェレンって言います。見ての通りのトレーナーですが。」
「儂もトレーナーじゃ。ていうか知らんかのう。アデクと言えばイッシュのチャンピオンなのじゃが。」
「はあ。チャンピオンのアデクさんと同じ名前なんですね。」
「本人なのだがなあ。」
チェレンはえっと身が竦んでしまった。
「し、失礼しました……。バッチ一つやっと取れた僕が、まさかチャンピオンに会えるとは思わなかったから。」
語尾がだんだんと掠れて小さくなっていくチェレンにアデクは笑顔を見せた。
「そこまで畏まることはない。儂もうん十年前にはバッチ一つがやっとの身じゃったからな。みんなそこから始まるんじゃ。」
でもチャンピオンになれるのはただ一人だろうと、少し卑屈な気分で心の中で呟いた。よく見ればアデクはチャンピオンという肩書に相応しい男に見える。逞しい身体や包容力のある気質を窺わせる笑顔やオーラ。チェレンにはまだ無いものだった。この先も手に入れられるかどうか定かではない憧憬するものだった。
「チャンピオン。ほんとにさっきは失礼しました。」
「しらん人間から後ろから声かけられれば警戒するじゃろ。ニンゲンに慣れてないポケモンと一緒じゃ。」
「それはそうですけど。」
「ところでそれはそうと、その鍋のシチューをご相伴させてもらっていいかな? 儂は実は腹が減っていたんじゃ。」
シチューの匂いに釣られたんだなとチェレンは呆れながら納得した。スプーンはともかく皿は余分に無いので自分の大き目のマグカップにシチューをよそってやる。本来なら次の朝食のつもりで二人前以上は作っていたのだが、欲しいというならしょうがない。
チェレンはポケモンたちのためにフードを用意したあと、やっと自分の分のシチューをよそう。アデクはチェレンを待っていたかのようにいただきますと言って食べ始めた。
「お口に合いますか?」
「儂のようなジジイに染み入る言葉じゃな。腹が減っているときにはなんでも美味いというが、このシチューは絶品じゃ。世の男はこんなシチューを毎日食べたいと思うんじゃろうな。疲れて帰った家にこんなシチューが待っておったら、ああ明日も頑張ろうなと思うじゃろう。そしてそのシチューを喰っている様子をニコニコと笑って見てくれる作り手がおったら、まさに至福とか桃源郷という言葉がぴったりじゃろう。」
「僕みたいな男が作ってごめんなさいね。」
「ほれまたそんな眉間に皺寄せて捻くれた受け答えをする。儂は素直に美味しいと言っておるじゃろ。年寄りの数少ない褒め言葉を引き出したのじゃから素直に得意になっていればよい。」
いやあんたはこんな風に誰にでも褒め言葉を連ねるんだろうと、チェレンはあくまで無表情で受け流していた。少し嬉しいと思うのが癪だった。誰かに手料理を振る舞うなんて初めてだったから。
そういえば旅に出て人間と喋ったのは、カラクサタウンでトウヤと話したきりだったと思い返す。他はポケモンに話しかけるだけだったり、ジムリーダーと一言二言何か言ったような言われたような記憶しかない。
「せっかく旅に出てるんじゃから、ポケモンばかりだと息が詰まるぞ。ポケモンだって自分のトレーナー以外の人間に会わんといつまでたっても人間に慣れっこない。」
チェレンも思い返せばポケモンを強くするということにしか頭が回ってなかったように思う。二十四年間ほぼ閉じられた世界の中で過ごした自分と同じような境遇に、ポケモン達を置こうとしていたかもしれないという現実に気が付いて、チェレンはスプーンを持つ手を止めて呆然としてしまった。
「今日ここであなたと出会わなかったら僕は……」
「いや。そんなたいしたことじゃないじゃろ。儂は森の中では珍しいシチューの匂いに釣られただけじゃ。まあ明日からは風邪が治るまではちゃんとした宿に泊まることじゃ。今は気づかれないようにしても、お前さんが無理をしていることはそのうちポケモンも気づく。いや、既に気づかれているのかもしれん。お前さんがゲットしたポケモンは、進化はしていないが年季が入っていそうな気がする。」
「わかるんですか。そんなこと。ツタージャは研究所で貰ったばかりだし、他のポケモンもそこまでレベルが高くないですよ。」
「年季というのは言い間違いかもしれん。単に歳を喰ってるだけじゃ。こやつら見かけは幼くて可愛くて、レベルも低いが、レベルが低いまま歳を喰って、弱いまま老獪になってるからのう。そんな奴らをお前さんがたまたまゲットしたんじゃろう。ツタージャもなんらかの事情で歳を喰ったのがお前さんに巡りあったんじゃろう。ちなみに儂の特技はポケモンの歳を当てることじゃ。今まで約七割五分の確率で的中させてきたわ。」
それはかなり微妙じゃないかとチェレンは思ったが、思い当たる節はあった。さっき咳をした時もツタージャに気づかれていないと思ったが、実は気づいていない振りをしていたのかもしれないと思った。咳とは思わなくても変な音がした方向を向いてしまうのは人間も変わらない。しかしツタージャは単なる音でさえも悟った様子もなかった。それは人間の咳の音だと分かっていながら、それでもその人間に駆け寄らなかったのは、チェレンの性格と裏に隠れた事情を察して何も聞こえなかった振りを自然としていた可能性がある。アデクの言うように見かけの可愛らしさに騙されていたが、本当にポケモンとしては歳を重ねた個体なのかもしれない。
「おじいちゃんおばあちゃんぐらいでしょうか。」
「いや。まだおじさんおばさんぐらいじゃろう。まだまだやれる歳じゃ。儂のようにな。少しくらい無理させたほうが身体のためじゃし、こういうポケモンのほうがバトルで勝負強くなる。若い個体ほどパワーはないかもしれんが、その分粘り強く細かい芸が出来るようにもなるしな。」
「ポケモンのおじさん達は気難しいということはないでしょうか?」
「お前さんの性格のほうが余程気難しいと思うぞ。」
チェレンは一本取られてしまった。それにしてもアデクという壮年の男は、精神が捻くれることなく真っ直ぐに歳を重ねた理想の年寄りの姿っぽいなとチェレンに思わせた。他の地方ではもっと若いチャンピオンがいると聞く。やはり実力と最強の象徴たるトレーナーとしては若いほうがイメージの通りがいいのかもしれない。だけどやはり重ねた年輪の深さや厚さを目の当たりにすると圧巻されてしまう。
例え口数が多くて、距離なしで、通りがかりに若者のメシをたかるという現実があったとしても。
今日この時に会っていなかったら、自分は自分のポケモンたちの真実の姿を知ることなく、意固地な思い込みの世界に閉じこもっていたのかもしれない。
「ちゃ……アデクさんも今夜は野宿ですか?」
チェレンは自分でも驚くほど他人に立ち入ったような問いかけをした。ただの一言だったがチェレンにとってはもの凄く勇気が必要なことだった。
「うん。そうじゃよ。」
なんてことないようにアデクは答えた。その、と口籠るチェレンを先越してアデクは今日はお前さんと、お前さんのおじさんおばさんポケモンと一緒に寝るかのうと誘ってきた。
「え。ええ! ぼ…僕がちゃ、アデクさんと。初めて会ったばかりじゃないですかっ。」
「同じ釜の飯を食ったじゃろう。あ。ついでに儂、ライブキャスターを最近買ったのじゃ。番号交換せんかのう。」
「えええええ?」
チェレンは混乱しながらも浮足立ったように大急ぎで自分のバッグからライブキャスターを取り出した。断る理由はなかった。天の上の人間が自分のような駆け出しと交流しようと言ってくるのは、どんな棚から牡丹餅だ。もう二度とない機会に衝動的に飛びついてしまった。
「えーと…これをこうして、赤外線は出来るんかの?」
「か、貸してください。やります。」
「そうじゃのう。機械は若いもんに任せたほうがいい。」
最新テクノロジーの前では普通の可愛いじいちゃんになってしまうチャンピオンだった。
チェレンが互いに登録し終えるとおずおずとアデクにライブキャスターを返した。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
世代を越えた微笑ましいトレーナー同士の交流を見ていたのは、見た目とは裏腹のおじちゃんおばちゃんポケモン達だった。その静かな目線は自分より幼いトレーナーが一皮剥けた瞬間を祝福しているようだった。
後半に続く
Nは一度だけ人間に嘘をついたことがある。森でポケモンと生活していたところを彼に保護という名の確保された、その日のことだった。彼はNが物語るまでもなく、Nの能力をNよりも理解していた大人だった。それを踏まえた上で彼はNに問うてきた。
『君はポケモンの心の声が聞こえるらしいが、人間の心の声は聞こえるのかな。』
まだ男はNに現在ほど恭しくはなかった。無機質な声だったが出来る限り優しく話そうとしているような不器用さが窺えた。繋がれた手は大人特有の乾いた感触だった。溶け込めない意識と皮膚による隔絶を実感させた。だがゲーチスは幼い子どもに出来る限りの歩み寄りを見せていた。
なのにNは、その不器用な優しい問いかけに誠実には答えなかった。
『ぼくがきこえるのは、トモダチの声だけ。ぼくがニンゲンと話せるのはことばだけ。』
『そうなのか。』
それは都合がいい。
言外の言葉が聞こえた。やはりNは正直に話さなくて良かったと思った。遠い未来で思えば却って悪かったかもしれない。だが、幼かったNは、その時はポケモンの心の声が分かると同時に、同じように心を持っている人間の心の声もわずかに探知できることは、この彼、のちの義父であるゲーチスには永遠に隠すことになった。利用されることが嫌だったわけではない。だがNはゲーチスの手に引かれるままあの城の中に入った。
ゲーチスの本当の思惑をNは知っている。だけど彼の表向きの目的を、自分ならゲーチスが率いるプラズマ団の真の目的に引っ繰り返せるかもしれないと考えるから、Nは彼ことゲーチスの傀儡に敢えてなった。まるで古の戯曲で語られたとある国の王子ように、自らの目的とは反対の世界に留まり続けている。
『N様。ポケモンの解放、五匹ほど成功しました。』
「ありがとう。」
Nはライブキャスターごしの相手に小声で感謝して微笑みかける。同じ服を身に着けていながら、プラズマ団は密かに真っ二つに割れていた。彼女はN側の人間だった。
トウヤは今、Nのあとからシャワーを浴びている最中だった。その隙にNは同志の一人である人間とゲーチスには秘密の会話をしていた。
『本当なら全部解放したいのですが』
「僕も気持ちは同じだ。だけど今それをしたら反動が大きいからね。彼らが見過ごす程度の成果で今は満足しておこう。」
『いつか引っ繰り返せるんですかね? 戯曲を元にしたゲームのような戦略で、全て白に塗りかえるか。それとも黒にしてしまえるか。』
「君の言葉の喩えは相変わらず美しいな。」
『私はN様とは違って数学が苦手なんですけどね。』
大昔の古典の知識をライブキャスターごしの団員が教えてくれたことがある。優れた文学はNが好む数学と並んで美しいとNは思った。計算され尽くした描写や物語の展開は、いつまで経っても褪せない普遍を思わせた。
ただし美しさは感じてもNがやり遂げなければならないのは、もっと現実的なことだ。正しさは勝利せねばならない。破滅の美は無意味である。
「君はこのまま次の彼らの隙を待つんだ。いいね。絶対に無理をしちゃいけない。」
『はい。私が手解きしたN様が、このように頼もしいことを言って下さる日が来るとは。』
Nにオペレーターとしての手解きをしたのは、画面越しの彼女だった。Nは呼ぶことは少ないが彼女は名前をハッサクと言った。頭に炊事用の手拭いを被った中年の小母さんで、プラズマ団の中では団員の生活部分の指揮者である。プラズマ団は外部からの雇用者を呼べない集団なので内部で生活部分も団員に分担させている。家事のエキスパートの彼女はそんなプラズマ団の食堂のおばちゃんでもあり、生活部分の責任者でもあった。一見家庭的で見た目はプラズマ団とは思えないが、彼女は古典の戯曲を諳んじ、様々な経歴を持つ優秀なオペレーターでもあった。
Nは彼女に色んなことを教えてもらい、そのお蔭でプラズマ団内の様子を知ることが出来た。だからNも彼女に彼女がずっと探している人物の情報を提示する。
「君の探している女子高時代の友人は、ライモンのアンダーグラウンドでポケモンバトルをしているらしい。君への土産話としてはどうかなと思うけど、君の目的の一つはこれで達成できると思うんだ。」
『……アマナツが。相変わらず馬鹿なやつだよ。』
「どうする? 今すぐ彼女のところに行ってみるかい?」
ハッサクは首を振る。
『それはまたいつかの機会にしたいと思います。それではN様も良き旅を。』
ライブキャスターの画像と音声はそこで途切れた。Nはけだるい身体を再びベッドに横たえる。水音が止み物音を立てながらトウヤがシャワールームから出てきた。
「N。調子は……まだ戻ってなさそうだな。」
Nは半ば気まずそうな素振りを見せるトウヤに対してベッドに顔を伏せたまま返事をする。
「君があんな滅茶苦茶するとは思わなかった。」
「ごめんよう。」
済まなそうな声とは裏腹に顔はすっきりしているんだろうとNは思った。Nは相変わらず人間の心の声もうっすらと読み取ることが出来た。トウヤが最中に何を考えていたのかもわかってしまう。トウヤの一部がNの中に入っていたのだから、余計にいつもの感応力が強化されていたような気がする。
『もともとのトウヤの執念が強いのもあるんだろうけど。目の前の相手通り越してチェレンのことしか考えてないんだから。』
肉声のようにはっきりとNの脳に響いてきたのは、トウヤがここにはいないチェレンを呼ぶ悲鳴とも思えるような声だった。
チェレンが本命なことは、それはあらかじめ提示されている事実だったからしょうがないかとNは思い直して顔をあげた。
「N。さっきの間に君だけ服を着てるなんて随分と薄情なんだな。」
ライブキャスターは実際の画像も相手に送ってしまうので、まさかの裸姿を晒すわけにはいかなかった。Nはしまったと少し焦る。
「こういうのは薄情に思われるのか。そうか。」
Nはわざと無神経な世間知らずを装った。なんだかこの男と出会ってから嘘をつくまではいかないが、なにかと誤魔化す癖が出来つつある。少し悪い兆候かなとNは思った。
トウヤはまだ少し滴の残った髪の毛のままベッドに座った。
「君こそ服着ないのかい? 風邪ひくよ。」
腰にバスタオルを巻いているだけのトウヤにNは言う。トウヤはまだ暑いからと軽く流した。トウヤの身体はいかにも思春期から未発達といった加減を絵に描いたような身体だった。はっきり言って貧弱の一歩手前。痩せぎすで節々だけがごつく見える。背もNより低い。三十代の成熟した肉体とは呼べない気がする。
「なんだい?」
「トウヤって少しやせ過ぎなのかなって。」
「あのねえ、男の真価は体格の良さじゃないんだぜ。過去の英雄でも小男が天下を取ったという事実はごまんとある。」
「だけどそういう人って小狡いというか、頭で伸し上がった人たちだから。」
そういう英雄の裏話は、英雄らしい英雄だった男たちに比べて多かったようにNの記憶には残っている。だからトウヤに反論してしまった。
「だけどその反面、彼らはロマンチストな側面を持っていた。いつも恋をしていた。」
「沈着と情熱は彼らの内側では両極端ではないんだね。往々にしてそれは融合し彼らはその思念とも感覚ともつかぬものに突き動かされていたということか。だけど、彼らのその恋は大抵叶っていないような気がするんだけど。」
「そうかな? まあ器のキャパシティは体格に比例しないってことだよ。」
トウヤは自分の矮躯を弁護したいようだが、どうしようもない空しさを伴っているような気がするのは、Nがその裏を掻きすぎなのだろうか。Nは情事の余韻とは別にやはり好奇心が優先する人間であることを、自分自身で再確認した。そして今もっともそぐわないことをトウヤに問いかける。
「ねえトウヤ。君はジムに挑戦するつもりなんだろ。」
トウヤはさも当たり前のように頷いた。頭の切り替えの早さは身に着けた事務的な処世術のようだった。抱いた抱かれたの関係から、また一対一の男同士の関係に戻ってしまった。
「そりゃそうだろう。君もだろ。ポケモントレーナーなら。ちなみに君はチョロネコで挑むつもりなんだろうね。わかるよ。苦労しているのは。」
「え? チョロネコは頼りになるよ。」
「え?」
トウヤがNに身を乗り出してきた。
「その……君のチョロネコ。彼はちゃんと使えるのかい?」
「使えるって言い方やめてくれない。」
「いや会社員時代の癖で、人間に対しても使ってたから。じゃあ、レベルかなり上げているんだね。それならなんとかなるよね。」
「あのね。君はどうしてチョロネコが頼りにならないとか弱いとかという前提で話を進めているんだい?」
Nが本格的に怒りそうなのでトウヤは質問攻めを一旦やめた。
「ごめん。やっぱり彼女が使えないのは僕の努力不足っぽいな。」
トウヤはこれでチェレンのチョロネコも使えると聞いた日には、本当の意味で落ち込んでしまいそうな顔色をNの前で晒す。
「トウヤ。最初の話にもどるけど。僕もサンヨウのジムに挑戦するんだ。そして勝ってジムバッジが取れれば、また次の町のジムに行く。そしてまた町を移ってジムバッジを集めるよ。」
「熱心なことだね。」
「最終的にはポケモンリーグに挑戦したいから。それでチャンピオンに到達したいから。」
「僕が知ってる君にしては好戦的な目標だね。」
「やらなくちゃいけないことだから。」
「やりたいことじゃないわけだね。」
「やりたいことに必要なことだから。」
トウヤは溜息をつく。やらなくちゃいけないこと。このイッシュの頂点に立つチャンピオンに勝つことも相当な目標なのに、その上にやりたいこととはいったいどれほどの壮大な目的なのか。トウヤには皆目見当がつかない。
「まあ君はまだ若いからね。いくらでもやれる歳だから。」
「君こそトレーナーになりたてなのに、どうしてそんな他人事なんだ。」
「その理由を言ったらまた君が怒る。」
そうかとNは食いついてこなかった。なんだか嫌に察してもらえてしまったようだとトウヤは苦笑する。トウヤが行く先々のジムに挑戦するのは、チェレンと同じ場所にいたいという動機が一番だ。そのような動機でジムに挑戦するなんて、不純だとまたNに怒られてしまうのは必至だった。だから今回は前回の反省として、お互いにそれ以上はそのことには踏み込まなかった。
「ちょっと僕らしくないこと言うけどいいかな?」
「なにかな。」
トウヤはふっと目を閉じて手のひらを何かを包み込むような形で胸の前に翳す。Nはその仕草がモンスターボールを握っている感じだな眉を顰めた。
「ただの入れ物のこれが、日に日に僕の中で存在感を増していく。彼らが強くなっていくのが僕の強さだと錯覚するくらいに。」
「それは単に君に彼らの能力に対して指揮権が保証されているが故じゃないの?」
トウヤは目を閉じたまま首を振った。
「違うよ。そんなんじゃない。わかるんだ。僕が強くなければ彼らは強くなれない。」
Nはその言葉だけには反発はしなかった。なぜかは自分でも釈然としないが、その言葉を否定すれば自分の考えた理想郷が一瞬の間に虚構に落ちると察したためだ。トウヤの言葉が核心を突く前にトウヤの神掛かった言葉を現実に引き戻そうとした。
「君はこの先もしチェレンとそれなりの関係になれたとしたら、君は君の旅をどうするつもりなんだい。」
「チェレン次第だな。彼にとって僕が必要なら僕はずっとポケモンと旅をするよ。たぶんそうなる可能性は高い。彼は子供のときに身体が弱かったんだ。トレーナーになることだけが病気と戦うモチベーションを保っていたようなものだった。やっと念願が叶ったし、彼なりに身体も鍛えているけど、やっぱり昔から彼を見てきた僕には彼の身体のことが心配なんだ。本当に傍にいて、僕が彼を支えられたらいいなと思ってる。」
Nはトウヤの言葉を聞いて色んな意味で合点がいった。男が男に入れ込むトウヤの現状には、チェレンの肉体の脆弱さが強く関わっていた。保護欲が所有欲になり性欲も加わっているとなれば、この男はどれだけ貪欲になれるか、Nはその身を以て先ほど知ったばかりだった。
トウヤのけして逞しくはないが強かな身体が、自分に絡みついてきた感触をNは自分の腕で自分の身体を掻き抱くことで反芻していた。身体は少年のようなのに節くれだった指は、大人のそれそのものだった。自分の内部を穿ってきたそれも大人そのもので、少しNを混乱させる。Nはトウヤをまるで同世代みたいに呼んだり接しているところがあるが、要所要所で相手が大人だという事実を突きつけられる。
だいたいトウヤは童顔のくせに声は異様に低く渋い。普段明るくしていれば明るくしているほど、真剣な言葉は真剣な声に相まって心に刺さる。もしかしたら自分はその声音が与えてくる言葉のストレスに振り回されているだけなんじゃないかとNは分析紛いのことを考えた。そうすれば楽に考えられるかもと思ったから。
トウヤはちらっとNを見てぶきらぼうに気が済んだかなと問いかけてくる。
「え?」
ふいを突かれたNは何を尋ねられているのかと首を捻った。
「その…セックスして性欲解消したかったっていうの。」
「あ、ああ……。なんだかんだでスッキリしたし。」
「そう。良かったよ。」
Nがトウヤを巻き込んだ形だったとはいえ、トウヤの言葉の歯切れが悪い。
「トウヤ?」
トウヤはいきなりNのほうに身体を傾けてきたと同時に、Nを巻き込んでベッドの上に倒れこんできた。
「N。恥を忍んで頼むんだが、もう一回してもいいかな?」
「え? え?」
トウヤの腰のバスタオルが不自然に浮き上がっているのがNにはわかった。
「と、トウヤ。勃起して……るの?」
「ほんとに何て君に謝ればいいかわかんないんだけど。まだ収まらないんだ。一回だけって言ったのに……一回だけじゃ済まないみたいなんだ僕、年甲斐がないって軽蔑してくれてもこの際いいよ。僕も僕自身が情けない。こんな歯止めの利かない男が僕だなんて僕が認めたくないよ。」
情けなさに泣きそうなトウヤの頭をNは衝動的に撫でた。
「だ、大丈夫だよ。」
「助けてくれるかい? N?」
涙が滲んでいるトウヤの背中をぽんぽんと叩きながら、Nは今この男を助けてやれるのは自分しかいないと、男の癖に母性的な感情が生まれつつあった。
「だから泣かないでね。しょうがないよね。それがオスの生理だからね。ポケモンもニンゲンも同じことだよね。」
トウヤはNの言葉を聞きながらNの足に硬くなった自分自身を押し付けた。
- * *
チェレンが佇んでいる場所は屋根も壁もない森の中だった。日はもう暮れなずんでいるし、街が近い森なのにこんなところで、この時間に好き好んで留まっているのはチェレンくらいのものだろう。街から街の移動の際に野宿をするというのはポケモントレーナーにとっては日常なのだが、街で泊まれるポケモンセンターや宿があれば当然彼らは自分の身のためにそこに宿泊する。ポケモンもボールに入っているのだから特にトレーナーの寝泊りする場所について気にする者はいない。人間の住居に慣れているポケモンならボールに入っていなくてもトレーナーと一緒ならその場所に馴染める。
だがチェレンは己が考えすぎる性分故に極端な選択肢を取ってしまった。
チェレンはポケモンセンターに泊まったことがない。この旅に出てから他の宿泊施設を利用したこともない。いつも街の外れのポケモン達が落ち着くであろう森の中や草原で野宿をしていた。
理由は単純だった。子どもの頃から自分のポケモンを手にすることを夢見ていたチェレンは、ポケモンをモンスターボールに閉じ込めっぱなしにするのは避けたいと思った。というかそんなことをするのが惜しいくらいにポケモンと触れ合いたかったのだった。チェレンにゲットされたポケモンはまだ人間がいる場所に慣れていないだろうとチェレンは思っている。宿の中でモンスターボールから出せば彼らは落ち着かないだろうと思ったし、ポケモンセンターだと他のトレーナーもうじゃうじゃいる。人見知りする癖のあるチェレンは自分でそこからあぶれてしまうことにした。
「ツタージャ。薪ありがとう。」
野外の炊事には慣れてきていた。ツタージャはチョロネコやヒヤップをよくまとめてくれているし、新しく入ってきたマメパトも早々に馴染もうとしている。
癒されるという言葉では筆舌に尽くしがたいほど、チェレンは目の前のポケモン達の姿に胸の内を熱くしていた。だけどそんな幸せを顔に出してしまったらトレーナーとしては三流であることをチェレンは知っていた。ポケモンにはあくまで頼れるトレーナーでなくてはいけない。だからチェレンは笑顔を押し殺してツタージャの頭を撫でた。
「けほっ。」
チェレンは自分の咳に慌てて口を押えた。ツタージャを恐る恐る見るがツタージャはその咳に気づいていないように火の中に薪を入れている。他のポケモン達も気づいていない。チェレンは胸を撫で下ろす。ポケモン達をモンスターボールから出して一緒にいられるように野宿を続けているが、元々が身体が丈夫でないチェレンにとって野外で夜を明かすのは普通のトレーナーより身体に負担がかかっていた。ただ弱かった頃の自分を晒したくないチェレンは、ふいに出てきた軽い咳一つにも動揺してしまう。身体的に弱いトレーナーだとポケモン達に思われたら、心配をかけてしまう。そんなことは避けなければならない。トレーナーの優秀さは頭脳が明晰なだけでは駄目だ。ポケモン達が最終的に頼らざるをえないのはトレーナーなのだから。自分がしっかりしなければ。
「少年。シチューが焦げるぞ。」
後ろから声を掛けられる。慌ててチェレンは声に釣られて鍋をかき混ぜようと身体を起こしたが、その拍子に連続した咳がチェレンを襲った。
「よいよい。儂が代わりにやってやる。」
チェレンの前に現れた偉丈夫とも呼べる赤毛の男は片手でおたまを持って鍋をかき回し、もう片手でチェレンの背中を摩った。服の上からでも感じるごつくて温かい手のひら。チェレンは憧憬を覚えると同時に自分と遥かに違いすぎる男の造作に軽い反発心を持った。
咳を収めてチェレンは男の手からおたまを引っ手繰る。
「いいです。自分でやります。」
「そうか。」
チェレンは改めてその男を一瞥する。気さくそうな好々爺の二歩か三歩か手前の年齢っぽく見える。人が好さそうなのに、どこか人を喰ったかのような印象を覚える。どうしてチェレンに声を掛けてきたかは分からないが、そのまま男はチェレンの横に座り立ち去る気配がない。
「なんなん、ですか。」
「いや。風邪をこじらせているなら街に泊まれば良いのではないかと思ってな。」
さっきの咳でなんだか色々推測されたようだとチェレンは眉間に皺を寄せる。男が言った通りチェレンは少し風邪をひいていた。そしてそれは野宿続きの毎日で完治が長引いていた。薬を飲んで症状は抑えているが、どうしても軽い咳は出てしまう。
「少年よ。トレーナーも生身だからな。あんまり無理はせんほうがよい。身体が資本じゃからな。」
「余計なお世話です。僕は無理なんてしてない。勝手に僕のことを推測して口を出さないでください。」
男は困ったように眉を下げた。
「少年……」
「ちなみに!」
チェレンは声を荒げる。
「トレーナー初心者だと思ってあなたは僕を少年と呼びますが、僕はこう見えても年齢的には成人してるんです。だからその呼び方ははっきり言って不快です。」
「なら名前を教えてくれんか? ちなみに儂はアデクという。」
何処かで聞いた名前だなとチェレンは思ったが唐突に思い出した。しかしチェレンが知っているアデクならこんなところにいるはずがない。なら彼と同名の別人の可能性のほうが高い。チェレンはぶっきらぼうに言う。
「先に名乗って頂いてありがとうございます。僕はチェレンって言います。見ての通りのトレーナーですが。」
「儂もトレーナーじゃ。ていうか知らんかのう。アデクと言えばイッシュのチャンピオンなのじゃが。」
「はあ。チャンピオンのアデクさんと同じ名前なんですね。」
「本人なのだがなあ。」
チェレンはえっと身が竦んでしまった。
「し、失礼しました……。バッチ一つやっと取れた僕が、まさかチャンピオンに会えるとは思わなかったから。」
語尾がだんだんと掠れて小さくなっていくチェレンにアデクは笑顔を見せた。
「そこまで畏まることはない。儂もうん十年前にはバッチ一つがやっとの身じゃったからな。みんなそこから始まるんじゃ。」
でもチャンピオンになれるのはただ一人だろうと、少し卑屈な気分で心の中で呟いた。よく見ればアデクはチャンピオンという肩書に相応しい男に見える。逞しい身体や包容力のある気質を窺わせる笑顔やオーラ。チェレンにはまだ無いものだった。この先も手に入れられるかどうか定かではない憧憬するものだった。
「チャンピオン。ほんとにさっきは失礼しました。」
「しらん人間から後ろから声かけられれば警戒するじゃろ。ニンゲンに慣れてないポケモンと一緒じゃ。」
「それはそうですけど。」
「ところでそれはそうと、その鍋のシチューをご相伴させてもらっていいかな? 儂は実は腹が減っていたんじゃ。」
シチューの匂いに釣られたんだなとチェレンは呆れながら納得した。スプーンはともかく皿は余分に無いので自分の大き目のマグカップにシチューをよそってやる。本来なら次の朝食のつもりで二人前以上は作っていたのだが、欲しいというならしょうがない。
チェレンはポケモンたちのためにフードを用意したあと、やっと自分の分のシチューをよそう。アデクはチェレンを待っていたかのようにいただきますと言って食べ始めた。
「お口に合いますか?」
「儂のようなジジイに染み入る言葉じゃな。腹が減っているときにはなんでも美味いというが、このシチューは絶品じゃ。世の男はこんなシチューを毎日食べたいと思うんじゃろうな。疲れて帰った家にこんなシチューが待っておったら、ああ明日も頑張ろうなと思うじゃろう。そしてそのシチューを喰っている様子をニコニコと笑って見てくれる作り手がおったら、まさに至福とか桃源郷という言葉がぴったりじゃろう。」
「僕みたいな男が作ってごめんなさいね。」
「ほれまたそんな眉間に皺寄せて捻くれた受け答えをする。儂は素直に美味しいと言っておるじゃろ。年寄りの数少ない褒め言葉を引き出したのじゃから素直に得意になっていればよい。」
いやあんたはこんな風に誰にでも褒め言葉を連ねるんだろうと、チェレンはあくまで無表情で受け流していた。少し嬉しいと思うのが癪だった。誰かに手料理を振る舞うなんて初めてだったから。
そういえば旅に出て人間と喋ったのは、カラクサタウンでトウヤと話したきりだったと思い返す。他はポケモンに話しかけるだけだったり、ジムリーダーと一言二言何か言ったような言われたような記憶しかない。
「せっかく旅に出てるんじゃから、ポケモンばかりだと息が詰まるぞ。ポケモンだって自分のトレーナー以外の人間に会わんといつまでたっても人間に慣れっこない。」
チェレンも思い返せばポケモンを強くするということにしか頭が回ってなかったように思う。二十四年間ほぼ閉じられた世界の中で過ごした自分と同じような境遇に、ポケモン達を置こうとしていたかもしれないという現実に気が付いて、チェレンはスプーンを持つ手を止めて呆然としてしまった。
「今日ここであなたと出会わなかったら僕は……」
「いや。そんなたいしたことじゃないじゃろ。儂は森の中では珍しいシチューの匂いに釣られただけじゃ。まあ明日からは風邪が治るまではちゃんとした宿に泊まることじゃ。今は気づかれないようにしても、お前さんが無理をしていることはそのうちポケモンも気づく。いや、既に気づかれているのかもしれん。お前さんがゲットしたポケモンは、進化はしていないが年季が入っていそうな気がする。」
「わかるんですか。そんなこと。ツタージャは研究所で貰ったばかりだし、他のポケモンもそこまでレベルが高くないですよ。」
「年季というのは言い間違いかもしれん。単に歳を喰ってるだけじゃ。こやつら見かけは幼くて可愛くて、レベルも低いが、レベルが低いまま歳を喰って、弱いまま老獪になってるからのう。そんな奴らをお前さんがたまたまゲットしたんじゃろう。ツタージャもなんらかの事情で歳を喰ったのがお前さんに巡りあったんじゃろう。ちなみに儂の特技はポケモンの歳を当てることじゃ。今まで約七割五分の確率で的中させてきたわ。」
それはかなり微妙じゃないかとチェレンは思ったが、思い当たる節はあった。さっき咳をした時もツタージャに気づかれていないと思ったが、実は気づいていない振りをしていたのかもしれないと思った。咳とは思わなくても変な音がした方向を向いてしまうのは人間も変わらない。しかしツタージャは単なる音でさえも悟った様子もなかった。それは人間の咳の音だと分かっていながら、それでもその人間に駆け寄らなかったのは、チェレンの性格と裏に隠れた事情を察して何も聞こえなかった振りを自然としていた可能性がある。アデクの言うように見かけの可愛らしさに騙されていたが、本当にポケモンとしては歳を重ねた個体なのかもしれない。
「おじいちゃんおばあちゃんぐらいでしょうか。」
「いや。まだおじさんおばさんぐらいじゃろう。まだまだやれる歳じゃ。儂のようにな。少しくらい無理させたほうが身体のためじゃし、こういうポケモンのほうがバトルで勝負強くなる。若い個体ほどパワーはないかもしれんが、その分粘り強く細かい芸が出来るようにもなるしな。」
「ポケモンのおじさん達は気難しいということはないでしょうか?」
「お前さんの性格のほうが余程気難しいと思うぞ。」
チェレンは一本取られてしまった。それにしてもアデクという壮年の男は、精神が捻くれることなく真っ直ぐに歳を重ねた理想の年寄りの姿っぽいなとチェレンに思わせた。他の地方ではもっと若いチャンピオンがいると聞く。やはり実力と最強の象徴たるトレーナーとしては若いほうがイメージの通りがいいのかもしれない。だけどやはり重ねた年輪の深さや厚さを目の当たりにすると圧巻されてしまう。
例え口数が多くて、距離なしで、通りがかりに若者のメシをたかるという現実があったとしても。
今日この時に会っていなかったら、自分は自分のポケモンたちの真実の姿を知ることなく、意固地な思い込みの世界に閉じこもっていたのかもしれない。
「ちゃ……アデクさんも今夜は野宿ですか?」
チェレンは自分でも驚くほど他人に立ち入ったような問いかけをした。ただの一言だったがチェレンにとってはもの凄く勇気が必要なことだった。
「うん。そうじゃよ。」
なんてことないようにアデクは答えた。その、と口籠るチェレンを先越してアデクは今日はお前さんと、お前さんのおじさんおばさんポケモンと一緒に寝るかのうと誘ってきた。
「え。ええ! ぼ…僕がちゃ、アデクさんと。初めて会ったばかりじゃないですかっ。」
「同じ釜の飯を食ったじゃろう。あ。ついでに儂、ライブキャスターを最近買ったのじゃ。番号交換せんかのう。」
「えええええ?」
チェレンは混乱しながらも浮足立ったように大急ぎで自分のバッグからライブキャスターを取り出した。断る理由はなかった。天の上の人間が自分のような駆け出しと交流しようと言ってくるのは、どんな棚から牡丹餅だ。もう二度とない機会に衝動的に飛びついてしまった。
「えーと…これをこうして、赤外線は出来るんかの?」
「か、貸してください。やります。」
「そうじゃのう。機械は若いもんに任せたほうがいい。」
最新テクノロジーの前では普通の可愛いじいちゃんになってしまうチャンピオンだった。
チェレンが互いに登録し終えるとおずおずとアデクにライブキャスターを返した。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
世代を越えた微笑ましいトレーナー同士の交流を見ていたのは、見た目とは裏腹のおじちゃんおばちゃんポケモン達だった。その静かな目線は自分より幼いトレーナーが一皮剥けた瞬間を祝福しているようだった。
後半に続く
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