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幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

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☆☆リクエスト企画「廃獄ラブソング」勝燐

 嵐のような女子三人組が去ってから、勝呂と燐は呆然としたまま教室の床に座り込んでいた。女子達は口々にごめんなさいと言っていたが、ごめんなさいで済んだら警察はいらんのやと勝呂は心の中で一人ごちていた。しかし去り際の朴の五割り増しの笑顔が怖くてそれは言葉では言えなかった。気配もなく自分の背後に忍び寄ってきた朴の手練ぶりを見せられていたので、ただものではないということだけは分かっていたからだ。今後はどんなことがあっても敵に回したくなかった。
「……。」
「……。」
 教室の外の廊下を通る塾生も講師も誰もいない。だから暗い教室の中の床に座りこんでいる男二人は、取り残されたように世界の片隅に放置されたままだった。
「そろそろ帰ろうか?」
 勝呂は燐に呼びかけてみるが別にそれは燐を急がせているわけではない。女子たちの傍若無人な所業が互いに身体に精神に堪えていた。忘れよう宣言してもなかなか忘れられるものでもない。そして何よりも無言の燐の勝呂に向けられる視線が、勝呂をその場に引き止めていた。
 勝呂はそれを察して言う。
「燐。お前。なんかまた変なことを考えとるやろ?」
「別に……お前を責めるようなこと思ってねえし。」
「そうか?」
「言っただろう。俺も勝呂もあいつらに対して、あれはしょうがなかったんだって。」
 勝呂は燐の肩に手を置くと、少し距離を詰めた。だけど眉間に皴を寄せた無愛想な顔をする。もちろん燐に見せるためわざとだ。
「いや。そんなことは分かっとるんや。俺が訊きたいんは、お前が今頭ん中で考えとることや。」
「……。たいしたことじゃねえから。それに、今話すことでもねえし。」
 ぶっきらぼうに言うが、勝呂を見つめる目は少しも逸らされることなく凝視していた。明らかに今の自分の状態を勝呂に気にしてくれと言わんばかりに。そして、念を押すように続ける。
「不謹慎だって叱らないって約束してくれるなら、話せるけど。」
「つまり。不謹慎なことを考えとるんやな。」
 叱らない約束は出来る。しかし何故、目の前の馬鹿は確認を取っているのだろう? それにも答えは出ている。昨日や今日の付き合いではないのだから。
 教室は照明は点けられていない。お互いの輪郭がぼんやり見える程度だ。そして薄暗闇を透かしてお互いを窺っているような状況。でもいつも慣れた相手の気配で、相手が何をしているかは悟れる。燐はずっと勝呂を見ていた。そして勝呂に何か言おうとしている。勝呂からの許可が出たならば、燐は当たり前のように口を滑らせるだろう。
「勝呂ぉ。」
 唐突に燐の甘えるような声が勝呂の耳をくすぐる。吐き出される息が首筋に当たったような気がした。
今は勝呂と二人きりで誰もいない。そして、適度に羞恥を覆い隠せる視界。そんな条件が揃ってしまえば、甘えたがりの燐から出てくる発想は予想がついた。
「あー。ああ。ああ、ああ、ああ!」
 勝呂はひとしきり首を縦に振りながらやけくそになって、相槌で燐の次の言葉を遮っている。
「わかった! わかった。」
「俺何も言ってない。」
「ほんでもわかったわ。そないな、はしたない顔しよって。」
 別に燐の表情がはっきり見えているわけではないが、なんとなく察せられた。
「杜山さんや神木に触りまくられたせいで発情しとんやろが。お前は。」
「発情って猫や犬かよ。さわりまくられたのは勝呂だって同じだろ。」
「俺は頭ん中で般若心経唱えとったから平気や!」
 否。勝呂は正直に言うと平気なわけではなかった。事実、後ろから抱きつかれて胸を弄られたので、背中に当たる朴の胸の柔らかさを感じてはいた。
 しかしそれを燐に悟られるのは駄目だと思った。この馬鹿は勝呂のことを真面目だと言う割には、それとは正反対の行為を強請ってくることがある。「勝呂は真面目だから」という建前のせいではっきりと要求はしないが、燐の本音はやはり真面目とは言いがたい。それでも女がきっかけでその真面目だという誤解が解けるのは、いかにも露骨で誠実ではなかろう。そこがやはり勝呂竜士の真面目たる由縁だった。
「平気? 本当に?」
「お前は俺に何言わせたいん?」
「俺だって、しえみや神木相手にああいう形だったけど、かなりドキドキしたし。なんていうかあいつら、けっこう乱暴だったし。だけどそれがかなりいいかもって思っちゃったし。だけどそれを思うと、勝呂には申し訳なくてしょうがないし。」
 言わなくていいことをペラペラと口にしている。敢えてツッコミを入れるのも野暮だったが、勝呂は言わずにはいられない。
「申し訳ないって。いや。お前は、泣きそうな顔してた割には、かなり楽しんどったいうことやろ。ああもう。」
 乱暴なんが好きなんかこいつは。暗がりの中なのに勝呂は手の平で顔を隠す。変な妄想をしてしまった。
「勝呂は、気持ちよくなかったのか? 女子の手って小さいし。ぎゅっとされてもあんまり力入ってないし。それがなんとなく。その……。そういうのって全然かんじなかったのか? 勝呂は?」
「いや、そりゃあそうやけど。女子からあんなことされたんやから。普通の男やったら気持ちええくらい思うても仕方ない。やけどな。お前は神木と杜山さんやったから、まだ叫んだりするような余裕あったやろうけど。」
 勝呂は思い出した感触を反芻してぶるっと身体を震わせた。
「俺はあの朴さんやで。お前が前回一発で腰砕けになった、あの朴さんや。そんな人に抱きつかれて胸揉まれたんやで。俺ちゃんと立てとっただけでも奇跡やと思うたわ。そうや。まるで、耳元で誰かにこのまま身を任せてしまえ、そうすれば楽になれるんやと、囁かれとるようやったわ。」
「気持ち良かったんだ。要するに。」
「うわあ!」
「楽しんでたんだ。勝呂も……」
「ちゃうわ!」
 とんだ墓穴だった。洗いざらい言い訳という名の懺悔だった。燐の切なげな眼差しが否応なく勝呂の胸を突きしている。
「朴相手に気持ちよくなっちゃったこと、気にしなくてもいいから。ぶっちゃけちゃうけど俺は、女子二人がかりだったから、怪我させちゃいけないとかも思って抵抗出来なかったんだ。おまけにお前が見てるし。恥ずかしくて。でも、しえみがマジで無邪気に楽しそうに、なのに、時々気持ちいいとこに手がいくから。お前が見てるのに、俺こんなに気持ちよくっていいのかなって。……神木は痛いばっかしだったけど、だけど。」
「なんや?」
 燐は勝呂の反応を窺っている。
「ちょっと想像しちゃったんだ。お前に対して俺が抵抗したら、あんなふうにされちゃうのかなって。」
 勝呂は後ろにばたんと倒れて、再び起き上がる。引きつったような笑い声を上げていた。
「それは変態の発想や。お前の場合ただのうかっり気持ちええって思ってしまっただけで、話は終わるやろ。そこまで考えるわけ?」
「そこは俺を責めるとこなのか? あいつらにやられてる最中でも、俺はお前のこと想像してたのに。」
「いや! その発想が変態やから。」
 燐は猫背になってしゅんとしていた。勝呂は相変わらず両手の平で顔を隠して、今は小刻みに震えている。
「俺は変態でしょうがない奴だけど。そんな俺のこと、勝呂は嫌?」
 うっと勝呂は詰まる。それでも顔を隠す手はどけない。
「女子にああいうセクハラされて、だけど妄想は男のお前相手で。そんな俺は嫌なのか? 軽蔑もんなのか? お前にとっちゃ。」
 勝呂の手の平の隙間からくぐもった声が漏れる。
「気には、なるなあ。そういうのは。個人的に。」
「そっか……。やっぱり。」
 燐は半ば落ち込みかけていた。そして床に尻をぺたんとつけたまま、尻と足で身体を移動させて後ろを向こうとしている。その肩を勝呂は掴む。
「あのなあ。燐。さっきから言うとることを纏めると。お前は俺に激しく乱暴にされたい、いうことかな?」
 燐は眉間に皴を寄せたあと、こくんと頷いた。
「されたいけど。さっきお前に変態って言われたし、あいつらにされた時も怖いって思わなかったわけじゃないし。」
「でも気持ち良かったんやろ? 感じたんやろ?」
「うわっ。そういうこと言わせる……。お前は真面目なんじゃないのかよ。」
 勝呂はいつも言われて聞き流している真面目の三文字に何故かこの瞬間だけはカチンときた。
「俺からいままで真面目やいうことを申告した覚えはあらへん。お前が勝手に決めつけとっただけや。ほんで、今までの俺のそういうとこがが物足りん思うてたんやろ?」
「……。」
 燐が泣きそうな顔になって無言になる。すぐに噛み付いて反論してくると高を括っていた勝呂が思っていたより、燐の反応が淡白で大人しい。
「あ、あのなあ。燐?」
 ほんの少しだけ焦る。結論を出すのを急ぎ過ぎたのかと。真面目でへたれで進展がないことを残念がられてはいなかったが、それと同時に期待もされていなかったという現実も突きつけられた気分だった。
『どうせ俺は朴さんのようにテクニシャンやあらへんわ。童貞やし。真面目のレッテル貼られてるし。それさえもどうにかしようと努力してきたわけやなかったし。経験値を上げようにも燐以外と浮気する気あらへんし。そないな理由で浮気したら最悪やし。でも朴さんやったら、そないな理屈は言い訳やと一笑するやろうな。』
 なんだか弱気な自分が背後で泣き言を言っている。勝呂はそれを聞き流そうと必死だった。「ごめん。言いすぎやった。」と言って結論を覆すのは容易い。しかしそれでは何かが終わる。
「……勝呂ぉ。」
 自分の一人思いに没頭して燐を置き去りにしていたことにはっと気がついた。そういえば、こいつ発情していたんじゃなかったのかと思い出すが、それも自分の思い過ごしかと疑ってしまう。
「あ。なんや?」
「物足りないって思ってたわけじゃねえよ。勝呂が俺に優しいのを、一方的に真面目だと決め付けていたのは、済まなかったって思ってる。実際俺は怖がったこともあるし、京都に行く前までは正体がばれちゃいけないって思って、お前にそういうことされるの困るって言ったこともある。」
 勝呂は数ヶ月前の燐の不自然さを思い出す。甘えて自分を挑発してくる癖に、決定的な恋人同士の行為を拒絶していた燐。その原因にわざと目を逸らしていたような数ヶ月だった。燐は情けなさそうに続ける。
「だから勝呂は俺に気を遣っていてくれたんだって。わかっていたんだ。なのに茶化すように真面目だからって言われたら、腹立つよな。」
「そこまで重く捉えんでええから。」
 殊勝な言葉とは裏腹に、燐は勝呂に接近してくる。
「乱暴にされたいっていうのは無いわけじゃない。んと……やっぱり俺、勝呂が言うとおり変態なんだ。」
 燐の吐息が勝呂の肌に触れる。
「どうしたら、ええんかな?」
 勝呂の問いに燐は口ごもっている。「されたい」のはどうやら確定だが、なにやら迷っているようだ。その迷いが気になっているうちは、勝呂は真面目のレッテルどおりの男でしかないのかもしれない。
 
「わかった。言う。」
 
 勝呂にばかり要求するのはフェアじゃないと馬鹿なりに思ったのだろう。燐が重い口を開いた。そして立ち上がる。勝呂はそれをぼーっと見上げていた。
「俺、お前から逃げようとするから。お前は後ろから俺を捕まえて。」
 脱兎の如く燐は机の間を走り出す。勝呂は一瞬呆けたがはっと我に返り、燐の背中を追いかけた。燐が教室の立て付けの悪い扉に手を掛けて勝呂を振り向く。勝呂は燐に追いついて、扉にどんっと手を置いた。扉にはまっているガラスが震えて不穏な音を立てる。
「追いついたで。」
 急に動いたせいで心臓が不自然に高鳴っていた。燐の腕を掴んで強引に扉から引き離す。
「どうしよう。それから先は考えてなかった。」
「それで済む思うとんか、お前は。」
 そう言いながら勝呂は燐の腰を掴んで引き寄せる。燐はあっと声を上げた。言いだしっぺの法則もくそもなく、今日この時も煽るだけ煽って放置されるのは想定内だった。
 後はまる投げされるんだなと勝呂はぼんやりと思った。
 頭の中で激しくとか乱暴にとかテロップが流れ出すが、そんなものに踊らされるのは良くないと理性がブレーキをかけようとするが、腕を強く掴まれて燐が上げた短い声が一瞬でそれを吹き飛ばした。
「あっ……。勝呂。い……」
「痛いんがええんやろ。」
 抱きこんで馬鹿の頭にゴリゴリと自分の頭を擦り付けて至近距離で見つめる。
「あ。あう……。」
 燐が困ったように上目遣いでいながらも勝呂から目を逸らそうとしている。
「もう付き合って五ヶ月や。」
「そんな、経ってた?」
「なんなら日単位で言ったろうか? 今日でお前と付き合って百四十一日や。」
「こまか!」
「そんくらい細かく覚えておかないと、お前と一緒にいた毎日がめまぐるしすぎて、記憶が飛んでしまいそうなんや。そういや。お前におとんのことで殴られたこともあったなあ。」
 燐は黙って勝呂の頬を撫でる。
「あんときは……」
「ええんや。」
 勝呂は燐を腕の中に抱き込む。何かを予感しているかのように燐の身体はがちがちと音を立てそうなくらい固まっていた。身体の中に溜まったものを外に吐き出そうとするように燐は深く息をついた。
頬に当たる尖った耳が勝呂を挑発するように熱を帯びていた。ゆっくりとそれに口を近づけ前歯で食む。
「ぎゃっ……。」
 あまり色気のない短い悲鳴が燐の口から上がる。
「もうええんやろ。お前に手出しても。付き合って五ヶ月やし、お前にもう隠し事はあらへんし。」
 燐はもぞもぞと勝呂の胸板に顔を擦り付けている。
「んなこと言ったって、学校が始まって二週間くらい経ってるじゃんか。その間なーんにも手出してこなかったじゃんか。」
「いやまだちょっと暑かったしな。俺汗かきやし。」
「なんだよそれ。俺は女の子じゃねえから、そんなの気にしねえよ。」
 勝呂は燐の背中に回していた手を脇に移動させる。そのまま裾を出しているシャツを掴んでたくし上げた。シャツの隙間から入ってきた手は勝呂が言うとおり汗ばんでいた。それは彼のいう体質のせいなのか、それとも別の理由があるのか燐には分からなかった。ただいつものよりその手は強引に燐の肌をまさぐっていた。
「ほら。あんまり気持ちええもんやないやろ? 汗でべたついとる男の手なんか。」
 勝呂の手から与えられる生々しい感触に耐えようとするように燐は勝呂に抱きつこうと腕を伸ばしたが、勝呂はそれを許さず燐を扉に再び追いやる。
「勝呂。抱きついちゃ駄目なのか?」
 涙目で燐は勝呂に訴える。勝呂の手は燐の身体の両脇から差し入れられ、上と下で燐の胸と尻の肉を遠慮なしに触っている。勝呂は「駄目だ」と燐に告げた。
「今日のところは最後までやらんといてやるわ。やけど、俺だって女子に負けたままや嫌やから。」
 ちょっとだけ泣かせてもええやろ。
勝呂は今までの甘やかしぶりが嘘だと言わんばかりに執拗に燐に意地の悪いことを言った。
「杜山さんにどこ触られて気持ちよかった?」
「覚えてねえよ。」
 勝呂はわざとらしく燐の胸の一点を凝視する。そこにそっと手を触れると燐の身体に電流が流れたようにびくんと震えた。胸部にあるそこだけ色彩が異なった部位で、普段はそれがあるということさえ忘れるような部品だった。燐のそこも勝呂の目に薄暗闇の中でわずかに判別出来るくらいでしかなかったが、指の腹で触れてみれば周囲の皮膚とは違う感触を主張している。
「す、勝呂ぉ。」
 湿った指でそこを撫でていると、だんだんと燐の声音が甘いようで怯えたような色を帯びてくる。やっぱりと勝呂は確信する。
「嘘やろ? お前は覚えとってもよう言わんだけやろ。気持ちええとこ言うてもここしか無いよな。ほらここ。どういうんかな? ここは?」
「う……うう……。」
 勝呂は燐の胸の突起を摘んで指の腹で擦ったり押しつぶしたりしている。その度に燐は喉の奥で堪えるように声を上げた。
「ほら。言うてみいや。彼氏の前であられもなく女に触られて感じとったんやろ? 懺悔や思うて言ってみいや。お前の気持ちいいここはなんや?」
「ち……ち、あう……。」
「ち。ってなんや?」
 燐は消え入りそうな声で何かを呟いた。それに勝呂は聞き耳を立てたが、現実として聞き取れなかった。だから正直に聞こえないと勝呂は言う。
「嘘だぁ……」
「本当やもん。もう一回聞こえるように言うんや。ほれ。……もっとこうしたら言えるんやないか?」
 勝呂は今にも泣きそうな燐に底意地の悪い笑みを見せて、たくし上げた燐の胸に今度は自分の口を近づける。燐は勝呂の湿った下の感触にびくりと身を震わせた。胸の突起は片方ずつ勝呂の指と舌に苛まれて、恥ずかしげもなく硬くなっていた。
 しばらく燐を弄んだあと、勝呂は急に口も手も放して燐を見下ろした。
「まだ言えんのかな。強情なんは俺に対して何かあるんやないか?」
 わざと脅すような言葉を選ぶ勝呂。燐は絶え絶えに息を吐きながら、首を横に振った。
「これで終いでするで。燐。そやから正直にどこが気持ちよかった言ってみい?」
「一箇所しかしてない癖に。」
「なら尚更言えて当然やろ。気持ちええとこなんて。」
 燐は再び勝呂に縋ろうとしたが、勝呂はそれを許さず燐の手首を掴んでそれを拒んだ。身体も精神も追い詰められて燐は、無意識に涙を頬に伝わらせてしまった。
「あぐっ……。ち……ちくび。気持ちよかったの……。」
「なんや。言えるやないか。ほんまにとろいなお前は。」
「うわあ! 勝呂のあほう!」
 燐は馬鹿力で勝呂の拘束を自力で解いた。勝呂は一瞬虚を突かれたように後ろに倒れこむ。そこで抵抗に遭うとは思ってもみなかった。燐はいつも以上に大人しくて無抵抗だったので、つい調子に乗りすぎたのかもしれない。燐は倒れた勝呂の上に馬乗りになる。
「馬鹿。バカ。ばかーぁ! なんでそんなに急に意地悪になるんだよ!」
「お前はえげつないのがええって言うてたやん。」
「そんなスケベジジイみたいな迫り方してくるとは、思ってなかったんだもんっ。」
「え? あかんかったん?」
「えげつない、っていうか。ちょっとワイルドっぽいぐらいで良かったのに。なんだよ。恥ずかしいこと言わせんのが、お前の趣味なのかよ!」
「せやかて。お前がまる投げするから。」
 お互いの脳内のイメージというか、シチュエーションがいまいち合致していなかったらしい。勝呂はこんなところで意思疎通がままならなくなるとは思わなかった。
「あのなあ。俺はエロ本かて表紙くらいで中身はまともに見たことないんやで。」
「なんだよ。無理させちゃった俺が悪いって言うのかよ。」
「責めとるわけやない。そうか。お気に召さんかったか。スケベ親父っぽいのは。」
「そうだよ。今度は歳相応にしてくれよ。」
「お前ももうちょいアドリブ利くようにしてな。」
 燐は涙をぼろぼろ零しながら、「うん」と勢いよく頷いた。自分がはっきりと要望を言わなかった結果が「スケベジジイな勝呂」だったので、この失敗が余程骨身に染みてしまったようだ。
「勝呂ぉ。」
 燐は今度こそ勝呂に抱きついた。
「うわあ。燐!」
 すぐに引き剥がされそうだったので、燐は根限りの力で勝呂にしがみつく。
「はな……離せえ!」
「なんだよっ。もう意地悪すんなよ。」
 勝呂の手が床をばたばたと叩く。
「お前の乳首勃っとるから。胸に擦れて気色がええんや!」
「はあ? なに! 勝呂がたたせたんだろ!」
 燐はお返しとばかりにぐりぐりと勝呂に胸板を擦りつける。
「ああ……。あー……。やめい!」
「はあっ。勝呂? 気持ちいいのか? 俺の乳首?」
「乳首乳首言うなっ。」
 燐は今まで流していた涙を引っ込めて、くすくすと身悶える勝呂を嘲笑う。
「なあ? 俺と乳首と朴のおっぱいどっちが気持ちいい?」
 実はかなり燐も朴の名前を聞いてやきもきしていたらしい。
「……お、お前。」
 燐はにっかりと満面の笑みを浮かべて、「よく出来ました」と勝呂の頬にキスをした







けいりんさん散々お待たせいたしました。実はもうSQで先が見えてきたし、雪ちゃんは生存しているし、勝呂たちとの和解も先延ばしにならなそうなので、この一連のssは京都編後ということに急遽設定変更しました。
一応違和感のないようにしたつもりですが、何かありましたらご連絡ください。というかこれから勝燐は何やっても原作の設定に反しようがないんだなとにやにやものです。今回はちくびまでしか進みませんでしたが。
リクエストありがとうございました!

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柴仲達
性別:
女性
職業:
会社員
趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

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