幸福雑音
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☆ss「高砂4」勝燐夫婦ネタという名の、勝呂家ギャグ
勝呂竜士はストレスで今にも倒れそうだったが、自分の妻である燐が右側に寄り添ってくれている為に意識を飛ばすことはなかった。
ことは京都に行く朝方に起こった。幼馴染の志摩が里帰りの途中の竜士に電話を掛けてきた。
『奥村先生。今日休み取って京都に朝早く新幹線で行く言うてたけど、一緒やあらへんの?』
「まず質問や。どうしてそれ知っとん?」
『えー……。事務にいるうちの姉ちゃんが、先生が京都行きの切符手配しとったって。』
竜士の側には燐しかいない。しかも自分達は確実に雪男より遅い時間の新幹線に乗って来ている。となれば先回りされたとしか考えようがない。
ただでさえ恋人として付き合っている当初から、暗に燐の弟として交際に反対していた雪男。結婚してからもその姿勢は変わらなかった。寧ろより一層反対の度合いが高くなっている。
「志摩。奥村先生は寺のほうにに行ったんか?」
『えーとな、そこまではよう分からん。』
燐が竜士のシャツを引っ張る。
「クロは『とらや』に行くって独り言を聞いたって言ってたけど。」
「なんやそれ。いきなりっ。つか、クロの言葉信じられるかっ。」
「だってクロがそう言ってるし。なあ?」
クロはそうだと言っているらしいが、竜士には「にゃあ」としか聞こえない。しかしよく考えてみれば、クロは勝呂夫妻の家と雪男の家を行き来している。雪男が独り言を言っている時に、クロが気付かれずに接近するのは不可能ではない。
「奥村先生、先に行っとるって。はよせなっ。」
雪男は絶対、世間で言うところの姑根性を利用して竜士の母親を味方にしようとしている。しかしそれは初対面なことが災いするだろう、とんだお門違いな考えだ。あのおかんに常識は通用しない。あの奥村先生みたいな人だったら、絶対にあのおかんのペースに呑まれる。そしてとんでもないルートに突入してしまう。
勝呂は燐の手を引いて走る。どうか間に合ってくれと寺の息子の癖に神に祈った。
しかし遅かった。雪男はにこやかに虎子の横に座っている。
「……雪男?」
燐もどう反応していいか分からないらしい。竜士もどうしていいか分からない。母親の虎子が何か言い出すまでは。
「竜士。さっきなあ、騎士団本部に話つけてなあ、雪ちゃん明日付けで転勤することになったんや。ほんでな、雪ちゃんに付いてくる部下いうことで、あんたと燐ちゃんも転勤になったからな。」
「おかん。俺は最初から京都には戻るつもり言うたやろ?」
虎子はそないなこと言うたかて、と横にいる雪男と顔を見合わせる。
「勝呂君。兄さん。急にいろいろ決まったことでびっくりしたかもしれないけど。」
「いや。もうなんかいろいろと予想は付いとったけど。びっくりした言うのは、急だったということだけや。明日やて? 引越しどうするん? 俺も燐もちょっと実家に顔見せるつもりで帰ってきただけやのに、いきなり明日から京都の出張所で仕事やと?」
「ええやん。雪ちゃん鍵持っとるから、引越しは鍵つこうて、ぱぱっとやってまえばええんやん。」
「そんなことに鍵使うたら、理事長がヴァチカンから煩く言われてしまうやろ。嫁の後見人だった人なんやから、あんまり迷惑かけるわけにもいかないんや。」
勝呂はささやかな抵抗を試みてみたが、やはり虎子には通用しなかった。
「まあええわ。志摩君に頼めばなんとかしてくれるやろ。」
身内やから迷惑もたいしたことあらへんし。そう言われれば竜士も「あいつにはそれくらいの迷惑をかけてもええやろ」と思えてしまう。結局、燐と竜士は帰ってきたその瞬間から、とらやに住むことが決まってしまった。
「雪男。お前とこうして寝るのって久しぶりだよな。」
「そうだね。幼稚園の頃、同じベッドで寝ていたとき以来だよね。」
燐と雪男は布団を並べてほのぼのと昔を懐かしんでいる。雪男の向こう側で竜士が苦笑いを浮かべていた。
「どうして、先生と俺ら川の字やっとるんやろ。」
せめて燐が(身長差からして)真ん中の線を担当してくれればと願うが、真ん中は早々に雪男が占拠していた。
「川の字か……」
「何か不満ですか? 勝呂君。」
「いや、介の字よりはいいです。」
とりあえず上司であること以前に雪男には逆らわないほうがいい。この状況はおいおい虎子に掛け合ってどうにかしようと竜士は思った。
三人が寝ているのは広さだけは五十畳敷きの座敷だった。虎子曰く荷物さえ入ってくればそんなに広さも気にならんと言っていたが、そんなことは全然あり得ないと竜士は思う。今まで燐と暮らしていたのは、六畳二間がいいところだったので、いきなりこんなだだっぴろいところは勘弁して欲しかった。
『ここって宴会場やろ。不景気やから使わんようなったんで俺らに丸投げしよったな。』
ぶつぶつ言っている竜士の横で、雪男と燐はきゃっきゃとはしゃいでいる。
「こんばんわあ。」
襖を開けて入ってきたのは、虎子と亭主の達磨だった。どういうつもりか分からないが、後ろにいる達磨は二組ほどの布団を抱えている。
「おとん。おかん。どないしたん? 俺らもう寝るつもりやけど。」
息子を無視して虎子は燐に話しかける。
「燐ちゃん。今日あたしらもここで寝させて貰うわ。ええやろ。なあ、雪ちゃんもええやろ?」
「おかあはん。もちろん良いですよ。」
雪男は立って達磨から布団を受け取ると、甲斐甲斐しく二組の布団を敷き始めた。何を勝手にと竜士も半身を布団の上に起こす。何気にまだ新婚ほやほやな燐と竜士なのに、新居の第一夜から嫁の弟が川の字でもやもやしているところに、親までが押しかけてくるなんて、わけがわからなすぎる。
「思い出すわあ。竜士が中学卒業するまで親子三人で川の字で寝てたんよなあ。」
そんな恥ずかしい過去を今言わんでもと竜士は顔が赤くなる。親子はこれが普通やと騙され続け、それに従った黒歴史を暴露されてしまった。上京したあと、志摩は兄弟が多い癖に一人で寝ていたという事実を聞かされて初めて、自分がおかしいと気づかされてしまった。
「だから竜士君は一人っ子なんですね。」
「いややわあ、雪ちゃん。そないなおぼこい顔で下ネタやなんて、よういうギャップってやつ?」
「おかあはん見習って、ちょっとはっちゃけてみようなんて思ったんです。」
雪男の虎子に対する尊敬じみた念を竜士は感じ取る。このままでは雪男が虎子二号と化す不吉な未来が見えてしまう。
「ま、まあ。来たもんはしょうがないわ。もう寝ようや!」
とにかく寝てしまえば朝は来る。なんやかんやの修正はそれからだと竜士は思った。しかしそれは許されなかった。
「なんか普通に並んで寝るのもつまらんわあ。」
「そうですか。おかあはん?」
「おかあさん。普通に並ばない寝方ってなんかある?」
「燐まで乗るなや!」
「そうやねえ。」
「おかん。今日は普通に並んで寝よう。最初から奇を衒う必要はあらへん。」
雪男が竜士のほうをぎろりと睨む。
「竜士君。おかあはんが折角提案しているんだよ。」
自分の上司はすっかりおかんの手下に成り果てている。味方になってくれそうな父の達磨はそれをにこにこと見ているだけだ。
「そうや。みんなで竜士を囲んで、「日」の字で寝ようや。」
それじゃ席替えだと竜士を除いた四人が布団を持って立ち上がる。そして絶妙なチームワークで布団による「日」の字が完成してしまった。もう竜士は何もツッコミが浮かばない。この為にこんな部屋に入れられたのかもしれないと、虎子の遊び心に辟易した。
「わあ! 楽しいわあ。やっぱり家族が増えるのってええわあ。」
「おかあさん、俺も楽しい。」
「修道院にいたころは人数いてもやらなかったからかもしれないね、兄さん。」
「だって修道院には座敷無かったからな。」
みんなのはしゃぐ声を聞きながら、日の字の横棒担当の竜士はなんとも言えない溜息をついた。
本編の虎子さん見ると、いろいろと寂しかったんじゃないかと思います。だから京都編が終わったらはっちゃけるんじゃないかとも。しかし息子は大迷惑です。今回少しはほのぼのしたかな? と思っています。達磨さんはきっとにこにこと奥さんと嫁と嫁の弟の大暴れを見守る優しい舅になると思います。ちょこっとサロンパスのCMネタをパクリました。
ことは京都に行く朝方に起こった。幼馴染の志摩が里帰りの途中の竜士に電話を掛けてきた。
『奥村先生。今日休み取って京都に朝早く新幹線で行く言うてたけど、一緒やあらへんの?』
「まず質問や。どうしてそれ知っとん?」
『えー……。事務にいるうちの姉ちゃんが、先生が京都行きの切符手配しとったって。』
竜士の側には燐しかいない。しかも自分達は確実に雪男より遅い時間の新幹線に乗って来ている。となれば先回りされたとしか考えようがない。
ただでさえ恋人として付き合っている当初から、暗に燐の弟として交際に反対していた雪男。結婚してからもその姿勢は変わらなかった。寧ろより一層反対の度合いが高くなっている。
「志摩。奥村先生は寺のほうにに行ったんか?」
『えーとな、そこまではよう分からん。』
燐が竜士のシャツを引っ張る。
「クロは『とらや』に行くって独り言を聞いたって言ってたけど。」
「なんやそれ。いきなりっ。つか、クロの言葉信じられるかっ。」
「だってクロがそう言ってるし。なあ?」
クロはそうだと言っているらしいが、竜士には「にゃあ」としか聞こえない。しかしよく考えてみれば、クロは勝呂夫妻の家と雪男の家を行き来している。雪男が独り言を言っている時に、クロが気付かれずに接近するのは不可能ではない。
「奥村先生、先に行っとるって。はよせなっ。」
雪男は絶対、世間で言うところの姑根性を利用して竜士の母親を味方にしようとしている。しかしそれは初対面なことが災いするだろう、とんだお門違いな考えだ。あのおかんに常識は通用しない。あの奥村先生みたいな人だったら、絶対にあのおかんのペースに呑まれる。そしてとんでもないルートに突入してしまう。
勝呂は燐の手を引いて走る。どうか間に合ってくれと寺の息子の癖に神に祈った。
しかし遅かった。雪男はにこやかに虎子の横に座っている。
「……雪男?」
燐もどう反応していいか分からないらしい。竜士もどうしていいか分からない。母親の虎子が何か言い出すまでは。
「竜士。さっきなあ、騎士団本部に話つけてなあ、雪ちゃん明日付けで転勤することになったんや。ほんでな、雪ちゃんに付いてくる部下いうことで、あんたと燐ちゃんも転勤になったからな。」
「おかん。俺は最初から京都には戻るつもり言うたやろ?」
虎子はそないなこと言うたかて、と横にいる雪男と顔を見合わせる。
「勝呂君。兄さん。急にいろいろ決まったことでびっくりしたかもしれないけど。」
「いや。もうなんかいろいろと予想は付いとったけど。びっくりした言うのは、急だったということだけや。明日やて? 引越しどうするん? 俺も燐もちょっと実家に顔見せるつもりで帰ってきただけやのに、いきなり明日から京都の出張所で仕事やと?」
「ええやん。雪ちゃん鍵持っとるから、引越しは鍵つこうて、ぱぱっとやってまえばええんやん。」
「そんなことに鍵使うたら、理事長がヴァチカンから煩く言われてしまうやろ。嫁の後見人だった人なんやから、あんまり迷惑かけるわけにもいかないんや。」
勝呂はささやかな抵抗を試みてみたが、やはり虎子には通用しなかった。
「まあええわ。志摩君に頼めばなんとかしてくれるやろ。」
身内やから迷惑もたいしたことあらへんし。そう言われれば竜士も「あいつにはそれくらいの迷惑をかけてもええやろ」と思えてしまう。結局、燐と竜士は帰ってきたその瞬間から、とらやに住むことが決まってしまった。
「雪男。お前とこうして寝るのって久しぶりだよな。」
「そうだね。幼稚園の頃、同じベッドで寝ていたとき以来だよね。」
燐と雪男は布団を並べてほのぼのと昔を懐かしんでいる。雪男の向こう側で竜士が苦笑いを浮かべていた。
「どうして、先生と俺ら川の字やっとるんやろ。」
せめて燐が(身長差からして)真ん中の線を担当してくれればと願うが、真ん中は早々に雪男が占拠していた。
「川の字か……」
「何か不満ですか? 勝呂君。」
「いや、介の字よりはいいです。」
とりあえず上司であること以前に雪男には逆らわないほうがいい。この状況はおいおい虎子に掛け合ってどうにかしようと竜士は思った。
三人が寝ているのは広さだけは五十畳敷きの座敷だった。虎子曰く荷物さえ入ってくればそんなに広さも気にならんと言っていたが、そんなことは全然あり得ないと竜士は思う。今まで燐と暮らしていたのは、六畳二間がいいところだったので、いきなりこんなだだっぴろいところは勘弁して欲しかった。
『ここって宴会場やろ。不景気やから使わんようなったんで俺らに丸投げしよったな。』
ぶつぶつ言っている竜士の横で、雪男と燐はきゃっきゃとはしゃいでいる。
「こんばんわあ。」
襖を開けて入ってきたのは、虎子と亭主の達磨だった。どういうつもりか分からないが、後ろにいる達磨は二組ほどの布団を抱えている。
「おとん。おかん。どないしたん? 俺らもう寝るつもりやけど。」
息子を無視して虎子は燐に話しかける。
「燐ちゃん。今日あたしらもここで寝させて貰うわ。ええやろ。なあ、雪ちゃんもええやろ?」
「おかあはん。もちろん良いですよ。」
雪男は立って達磨から布団を受け取ると、甲斐甲斐しく二組の布団を敷き始めた。何を勝手にと竜士も半身を布団の上に起こす。何気にまだ新婚ほやほやな燐と竜士なのに、新居の第一夜から嫁の弟が川の字でもやもやしているところに、親までが押しかけてくるなんて、わけがわからなすぎる。
「思い出すわあ。竜士が中学卒業するまで親子三人で川の字で寝てたんよなあ。」
そんな恥ずかしい過去を今言わんでもと竜士は顔が赤くなる。親子はこれが普通やと騙され続け、それに従った黒歴史を暴露されてしまった。上京したあと、志摩は兄弟が多い癖に一人で寝ていたという事実を聞かされて初めて、自分がおかしいと気づかされてしまった。
「だから竜士君は一人っ子なんですね。」
「いややわあ、雪ちゃん。そないなおぼこい顔で下ネタやなんて、よういうギャップってやつ?」
「おかあはん見習って、ちょっとはっちゃけてみようなんて思ったんです。」
雪男の虎子に対する尊敬じみた念を竜士は感じ取る。このままでは雪男が虎子二号と化す不吉な未来が見えてしまう。
「ま、まあ。来たもんはしょうがないわ。もう寝ようや!」
とにかく寝てしまえば朝は来る。なんやかんやの修正はそれからだと竜士は思った。しかしそれは許されなかった。
「なんか普通に並んで寝るのもつまらんわあ。」
「そうですか。おかあはん?」
「おかあさん。普通に並ばない寝方ってなんかある?」
「燐まで乗るなや!」
「そうやねえ。」
「おかん。今日は普通に並んで寝よう。最初から奇を衒う必要はあらへん。」
雪男が竜士のほうをぎろりと睨む。
「竜士君。おかあはんが折角提案しているんだよ。」
自分の上司はすっかりおかんの手下に成り果てている。味方になってくれそうな父の達磨はそれをにこにこと見ているだけだ。
「そうや。みんなで竜士を囲んで、「日」の字で寝ようや。」
それじゃ席替えだと竜士を除いた四人が布団を持って立ち上がる。そして絶妙なチームワークで布団による「日」の字が完成してしまった。もう竜士は何もツッコミが浮かばない。この為にこんな部屋に入れられたのかもしれないと、虎子の遊び心に辟易した。
「わあ! 楽しいわあ。やっぱり家族が増えるのってええわあ。」
「おかあさん、俺も楽しい。」
「修道院にいたころは人数いてもやらなかったからかもしれないね、兄さん。」
「だって修道院には座敷無かったからな。」
みんなのはしゃぐ声を聞きながら、日の字の横棒担当の竜士はなんとも言えない溜息をついた。
本編の虎子さん見ると、いろいろと寂しかったんじゃないかと思います。だから京都編が終わったらはっちゃけるんじゃないかとも。しかし息子は大迷惑です。今回少しはほのぼのしたかな? と思っています。達磨さんはきっとにこにこと奥さんと嫁と嫁の弟の大暴れを見守る優しい舅になると思います。ちょこっとサロンパスのCMネタをパクリました。
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趣味:
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自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12
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