忍者ブログ

幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

[79]  [78]  [77]  [74]  [73]  [72]  [71]  [70]  [69]  [68]  [67

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


☆ss「ジークフリート」志摩燐 アサ燐 「アラベスク」の前話。全ての発端

京都から帰還した燐は再び学園生活に戻った。シュラからは相変わらずの魔剣の手ほどきを受けているし、祓魔師としての勉強も以前の五割増しくらいには頑張っているが、所詮実践から離れたところでは、目に見えるような成果は現れていなかった。燐の脳裏にはあまり現実味を帯びていない死という片方の未来が迫っている。認定試験まであと数ヶ月。
 
 燐はメフィストと面会するために学園の中心部への回廊を歩いていた。それまでに何人かの祓魔師とすれ違って胡乱な目で見られたり、覚悟は出来ているんだろうなと言いたげな睨みつけにも遭遇した。しかし、この学園に来るまでに多くの不良や、自分を怖がる一般人の視線に慣れているせいか、そんなことは屁とも感じていない燐だった。それでもある一点で燐の足は止められる。
「やあ。サタンの息子。」
 前方でにこやかな青年に声を掛けられる。目下のところ燐にとってはラスボスサタンより、心証としては最悪な男。アーサー・オーギュスト・エンジェル。燐の義父・藤本獅郎の死後に聖騎士に任命された男。
 見た目は青二才だが、なかなかどうして実力はあるらしい。元ヤンの燐でもなんとなくそんな雰囲気を察してしまう。今までの自分からすれば別世界の人間だ。関わりたくない人種の最もたる代表選手とまでは言わないが、ここで遭遇したのは不運と言わずなんとしようか。ぶっちゃけこいつは、自分の生殺与奪の権を握る騎士団の上層部の一人なのだから。しかも、燐は殺されるべき存在だと考える側の人間なのだから。
「………。」
 燐が黙っているとアーサーは勝手に話しかけてきた。
「相変わらず成績は芳しくないようだな。」
 どっかで聞いて回ったのかよと燐は心の中で舌打ちする。哀れむような口調がほっといてくれと言いたくなる。だから燐は自分が今胸を張って言える材料を口にした。
「京都行った時に炎の使い方はマスターした。」
「あのおぞましい炎が使えることと、祓魔師になれることは全く別だよ。」
「でもあんたには使えないよな。」
「使いたくも無いね。あんなもの。」
 さわやかにシンプルに燐の心を抉る。だからこういうエリートという人種は嫌いだ。
「………」
「何傷ついたような顔してるんだい? あ。傷つけたといえば、この間は君の足を傷つけて済まなかったね。病院には行ったか?」
「病院行く必要はねーよ。すぐ繋がった。」
「オレの剣は切れ味がいいからねえ。」
 人の足をぶった切っておいて、恩着せがましく言ってくる。
 これでよくわかった。こいつが嫌いな理由が。エリートとかそういうのは関係ない。こいつは自分を息でもするように見下してくる。怖がってるからとか。怯えているからとか。自分が燐によって傷つけられるかもしれない危機感からとか。異質だから排除したいとか。そういうふうに燐にも求められる過失があって、燐にそういう態度を取っているわけじゃない。幾ら燐が感情を押さえ込もうが、青い炎を制御出来ようが、関係ない。本当に、奥村燐というサタンの息子は認めるに値しない存在、だと決め付けている。悪気無しに。
 頭の中でぐるぐる考えている内に気分が悪くなってきた。どこかに座り込みたい衝動に駆られるけど、こいつの前でそんな真似は死んでも出来ない。しかし視界の端から靄がかかってくる。よろめくより先に、アーサーが動いた。
「調子が悪いなら言ってくれよ。」
 これまた勝手に燐の肩を抱いて支えにくる。触れてくる手の平から、嫌な体温が伝わってくる。
「あんたが離れてくれたら、治るから。」
 嫌味ではなく本当だった。
「サタンの息子は聖騎士が嫌いかい? いや――、そんなことはないか。何せ君を育てた父親は聖騎士だったしね。」
「お前と一緒にするなっ。」
「おっと、失敬。失敬。」
 アーサーは宥めるように燐の肩をぽんぽんと叩く。さっきからやけに自分に触れてくる男に燐は首を傾げたくなる。
「結局何の用だよ。声掛けてきたのは。」
「偶然だよ。でもオレに関してはあらゆることが必然になってしまうんだ。偶然近いうちに君に会えたら話しておきたいことがあるなと思ったら、君が向こうからやってきたんだよ。」
「さっさと話してくれよ。俺は理事長に会いに行くんだから。俺だってお前が嫌いだし、お前だって俺が嫌いなんだろ。これってなんて言うんだっけ? えーと……」
「不毛なやり取り、だろうね。」
 アーサーは燐の肩から手を離すと、その手を燐の顎にかけて燐に自分を直視させる。
「あれから君の行動に関する色々なことを調べさせて貰ったよ。悪魔だからかどうか分からないけど、相変わらず頭の悪い行動の数々だね。感情と行動がすぐに結びついてしまう。神妙にしていなければならない立場なのに。」
「うるせーよ。お前は俺がどうなろうが知ったこっちゃねーだろ。」
「オレは基本人情家なんだ。君のそんな未熟ながら微笑ましい姿には思うところがあるんだよ。」
 人情家が聞いて呆れると思った。アーサーの手は相変わらず燐の肩を支えている。顎に添えられた指が、燐の唇をなぞる。
「サタンの息子だという一点を除けば、君は少し学が足りない良い子なんだよ。だからオレは少し君を好きになった。」
 そういうとアーサーは顔を寄せてきたが、燐は必死の接近してくる顔から逃げようと横を向こうとする。まあ良いというようにアーサーは耳元で囁く。
「こう見えてもオレは聖職者でね。妻は持てないんだ。しかし愛人は幾らでも持てる。」
「は?」
 妻を持たないとイコールで愛人も持てないのではと燐は思った。それにそれが自分と何の関係があるのだろう。混乱している燐にアーサーは追い討ちのように囁く。
「君はオレの公然の愛人になるんだ。」
「なんでだよ!」
 今度こそアーサーを突き飛ばして離れようとしたが、そんな行動を予測していたのかアーサーは引き離されないように燐の両手首を掴んでいる。
「悪い話じゃないだろ。君は今まで前・聖騎士の庇護を受けて生きながらえていた。それがこれからもそうなるだけだ。」
「だけど愛人ってアレだろっ。エッチなことして、世話してもらうっていう……アレだろ。」
 限りなく偏った視点だが、限りなく一般人なものの見方で燐は言う。アーサーはにこやかにそうだよと返してきた。
「俺をそんな目で見てるのかよお前は!」
「おや? 君は悪魔の子にしてはそういう経験が無いのかな。」
 あるわけないだろと叫びたかったが、人通りのある回廊だったのと話題が話題なので羞恥心が先に立ってしまい真っ赤になった。
「君は初めてを好きな人に捧げたいと思うなら、君がオレを好きになればいいよ。」
 愛人になれと言ってくるような男に対して、そんな気になれるものか。その心中を察したのかアーサーは燐に言い聞かせてくる。
「焦る必要はない。オレに優しくされればその気になるに決まっているよ。今はまだあの審問の時のわだかまりが記憶に新しいから、互いにギスギスしてしまうんだ。君の言うエッチなことは、せめて十六歳になるまでは待ってあげられるよ。君のタイムリミットとちょうど合致するし。」
 とんでもないことを提案してくる男だと燐は思った。あくまで言っていることはアーサーの都合ばかりで、燐は口を挟めない。
しかし燐らしくもなく、小狡い考えも浮かばないでもない。どうせ自分はこの男が嫌いなんだ。嫌いな奴に対してズルをしても心は痛まないはずだ。自分の未来は百の内九十九は閉ざされたのも同然なのだ。たった一つの希望が祓魔師になることならば、この愛人契約は二つ目の希みになるかもしれない。この男の言う通り、唯々諾々と可愛い愛人を演じれば、自分の限界に絶望することもない。
「愛人前提ってのが気に入らないけど――。」
 とりあえずこの提案が死ぬよりはましかもしれないと思った。この男から言ってきたことなんだ。自分はそれに乗っただけ。この男が先に言ってきたんだと、燐は必死に言い聞かせる。それでもたった一つだけ、恨み言が出てしまった。それをアーサーは拾い上げて告げる。
「正妻というのはおこがましくないかい? 君の出自で。悪魔の子なら愛人のほうが世間的にも納得されやすいと思うよ。オレは君の負担も考えていたつもりだけど、気を悪くしたかな?」
 どんな正論を吐こうとも、その裏には見下しが見え隠れする。そして燐に対する欲も。
「じゃあ、愛人で仕方ないんだよな。」
 仕方ないと言った途端、胸がずきっと痛んだ。
祓魔師になって、サタンをどうにかした後には、ごく平凡な幸せな家庭を――なんて、夢見ていたはずなのに。だけどアーサーの申し出を受けたほうが安全だと理解している自分もいる。
「わかった。俺は……。」
 
「奥村君! それだけはあかん!」
 
 まるであつらえられた舞台のように、志摩廉造が燐が歩いてきた方向から一目散に走ってきた。
「理事長から連絡があってん。あんまり遅いから探してくれえと頼まれたけど、そこの兄ちゃんとそないな話してたんかいっ。」
「オレはこの内緒話を、そんなに大きな声でしたはずはないけどね。」
 考えもしなかった登場にアーサーは苦笑いを浮かべる。ここで志摩を追い払うのは得策ではない。あの(自販機を投げたくなる)メフィストの名が出たのだから。聖騎士と名誉騎士の立場の拮抗は他人が思うよりイーブンなのだ。しかもこちらは(表では)ごく普通の祓魔候補生されている少年を、公然とは言いながら愛人に据えようとしているのだから。あまり世間体の良い話ではない。
 この愛人契約は、燐をメフィストサイドから離脱させる算段でもあるので、あくまでアーサー単独で済ませておきたかった。しかし同じ候補生の志摩が現れたのは都合が悪い。
「デビルイヤーは地獄耳や。あんた偉いさんの癖に、なんちゅーことを奥村君に言ってくるんや。奥村君も奥村君や!」
 燐はびくりと背中を震わす。こんな剣幕で怒る志摩は初めて見るからだ。
「ははっ。まあいいや。オレのほうからはもう言わない。でもまだ君にその気があるなら、この番号にいつでも掛けて欲しい。携帯電話は買ったばかりで他人に番号を教えるのは君が初めてなんだよ。……なるべく良い返事を聞かせてね。」
 アーサーは燐に耳打ちした後、燐の手にメモを掴ませて颯爽と去っていく。志摩は燐の手からメモを奪うと、びりびりとその場で破り捨てた。燐がそれに手を伸ばそうとする。
「あかん言うたやろ。奥村君。」
 腕を取られて燐は勢いをつけて志摩の薄い胸板に引き寄せられる。
「奥村君には俺がおるっ。奥村君は、お……俺と………。」
「俺と?」
 志摩の喉がごくりと鳴るのを燐は聞いた。
「俺と結婚したらええんや。」
 真っ暗になっていた目の前に、何故か光が差したような気がした。
 





原因はアーサーでした。教会上層部としてはアーサーに燐を取り込ませて、燐をメフィストから引き離そうという作戦を取ったという設定です。さあこれから熱海に逃避行です。
なんか「だいたいアーサーのせい」です。

拍手[7回]

PR

☆ss「パドドゥ」勝燐前提の雪燐 「カバティーナ」後の二人 | HOME | ☆ss「ロマンス」雪燐 「アラベスク」の続き 子ども生まれてます

-Comment-

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

この記事へのトラックバック

この記事にトラックバックする:


カレンダー

05 2026/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

フリーエリア

最新コメント

[08/16 木音]
[07/16 木音]
[07/09 木音]
[06/06 さくむ]
[06/04 ニルグス]

最新トラックバック

プロフィール

HN:
柴仲達
性別:
女性
職業:
会社員
趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

バーコード

ブログ内検索

P R

カウンター

忍者アド

忍者アド

フリーエリア


忍者ブログ [PR]
template by repe