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幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

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☆☆リクエスト企画「馬鹿と阿呆の為のセプテット後編」勝燐

りんさんすみません。ここからがリクエスト消化分です。楽しんでいただければ幸いです。




「ねえ燐。どうしたんだよ。」
 教壇直ぐ前の席で隣同士のしえみが燐に声を掛けて背中を揺らしている。燐はというと机に突っ伏して起き上がる気配がない。
「燐―。起きないと先生来ちゃう。」
 燐はのろのろと顔を上げる。
「どうしたんだよ燐! 目から鼻水が出てる!」
「いやこれ普通に涙なんだけど。」
 しえみは呆然と燐の返事を聞いた。そしていきなりわたわたと涙を拭い始める。
「なんでもねえから。」
「うん。そんなのは分かってるけど、とりあえずその鼻水……じゃなかった、涙をどうにかしなくちゃ。」
 流石は最近まで引きこもりだっただけある。人の気持ちがいまいち分かっていない。しかし今の燐にとってはそれが良かったりした。深刻に問題にされたりしたら余計に泣けてきそうだったので、しえみに涙を拭われたあとはなんとか追加の涙は出てこなかった。
 そしてそれを後ろのほうの席から勝呂は見ていた。
 
 塾が始まる前、燐は人懐っこく勝呂の腕にしがみついてきた。そして勝呂が肩を組んでくるという妥協案が為されるまでずっとくっつっきぱなしだった。少し前の勝呂ならうっとうしいとかふざけてるとか思いそうなものだが、先日雪男から聞かされた燐の事情から燐のするがままにさせておいた。
『ただの単細胞のアホやと思っとったけど、人恋しい奴やったんやな。』
 勝呂が拒否しないのを認識した燐は、本当に遠慮なく勝呂の腕に抱きついていた。まるで父親の腕にぶら下がる幼児のように。それには勝呂も照れくさいながら胸がほっこりした。
 しかし。教室に入る前、アホはいきなり元気がなくなり、らしくもなく言いかけた言葉を中断して口ごもった。   
勝呂は最初、アホでも言いかけてやめることもあるんだなと、妙な感心めいたものを感じていた。アホが言いかけた言葉は「俺、勝呂のこと……」だった。その先はそれが正解かどうか分からなかったが、ふいに頭に浮かんだ言葉をアホに問いかけてみた。
『好きなんか?』
 アホは頷いた。伏目がちに。
 
 そして今に至る。あれだけベタベタとくっついて来たんだから、好かれているというのは間違いないはずだ。そして燐もそれに頷いた。だけど――。
『好きにもいろいろあるやんか。』
 友達として好きとか。家族愛とか。心の拠り所を失ったばかりの子どもなら――。燐は周囲の人間が皆認めるところのガキっぽい性格だと思う。そして自分はかなり老けた外見をしている。
『やっぱり。父親か。父親なんか?』
 ならそれなりに構ってやったんだから。その矢先に泣くなと思った。そして女子に構われて泣き止むなと半ば無茶なことも思った。
 燐は泣き止んではいたが、授業中にふいにしゃくりあげて担当講師をぎょっとさせていた。その度にしえみが背中を擦ってやっている。
 ついに三時間目の講師が心配そうに声を掛けてきた。
「奥村。腹でも痛いのか?」
「そういうわけじゃ、ないです。」
 何故か燐の代わりにしえみが答えている。燐はその言葉のあとに頷いていた。
「そう。そんならいいんだけどね。」
「はーい。頑張ろうね。燐。」
 席順の都合でそうなっているのだが、しえみはよく燐のフォローをしている。マイペースでトンチンカンなところはあるが、野生の勘じみた察しの良さと侠気を持ち合わせたおなごやと勝呂は常々思っていた。わけもわからず泣き出している男を隣において、慌ても呆れも引きもしない態度に感心はするが、ならば自分はどうなんだろうと考えさせられる。
 どうも燐がいつもの調子でないのは自分に原因がるような気がする。優しくしたのになんでと思う。釈然としないし燐にいろいろ問いただしたいが今は授業中だった。仕方が無いので授業が終わるまで待つしかなかった。
 
     *   *   *
 
 授業が終わって勝呂はつかつかと前の席に歩み寄る。
「おい、奥村。男がメソメソしてどないすんや。」
 勝呂に振り返った燐が見せた顔は、目元が赤く染まった見ていられない顔だった。燐は近寄ってくる勝呂から顔を逸らそうとする。その態度に勝呂はかちんときた。
「なんやっ。なにがあかん言うんや!」
「勝呂君! ちょっと飛ばしすぎ!」
「杜山さん……。ちょっとこいつと話がしたいんやけど。」
 しえみは俯いている燐を庇おうと手を広げて勝呂と燐の間に立っている。勝呂は躍り出たしえみにぎょっとなって、ほんの少し及び腰になってしまった。志摩と子猫丸も恐々とその様子を窺っている。まだ間に入るには時期尚早だと思っているらしい。なにか揉めるようなら、もう授業も終わったところだし坊を回収して収めようと思っているようだ。長年の付き合いなのだから、そんな気配は容易に読み取れた。出雲や宝は既に教室からいなくなっていた。
「兄さん。大丈夫かい? 授業中ずっと様子がおかしかったらしいけど。」
 とうとう雪男まで教室に入ってきた。
「勝呂君。兄が何かしましたか?」
 雪男は勝呂と燐を見比べて勝呂に訊いてきた。多少その言葉に非難めいたものを感じた。これも先日のことだが、雪男に燐と仲良くさせてもらうと言ったばかりだというのに、また衝突していると思われるのは都合が悪い。思わず弁解じみたことを口走った。
「いや。違うんです。」
「……。」
 雪男は数秒の間勝呂に胡乱な目を向けていたが、溜息をついて兄の腕を取った。
「いいです。もう今日のところは引き上げさせます。ね。兄さん。」
 雪男が声を掛けると燐はほっとしたように目を薄く閉じた。勝呂はそれを見守るしかないと思っていた。
 教室を出て行く燐が勝呂を振り返る。何か言いたげにしているが、何故か言えないでいるようだ。勝呂は咄嗟に引きとめようかと手を伸ばしたが、さっきの雪男の態度を思い出して躊躇する。今日のところは話せそうにないと思ったその時。
「雪ちゃんっ。」
しえみの声に雪男が振り返る。
「どうしたんですか?」
「勝呂君と燐を、二人で話させてあげようよ。」
「しかし今の兄では……」
 しえみはつかつかと雪男と燐の側に寄って、燐の腕を掴んでいる雪男の手を引き離す。
「燐。行ってらっしゃい。」
「しえみ……。」
「勝呂君。さっきのようにいきなり怒鳴っちゃ駄目だよ。志摩君も三輪君も行くよ。」
「え?」
 しえみに呼び寄せられた二人は、そのまま背中を押されて教室を出て行く。そしてもう一度教室に戻ってきたしえみは、雪男の背中も押して教室に勝呂と燐が二人きりになるようにした。
「……。」
「……杜山さん。すご……。」
「雪男にまであんな強気に出るなんて、馬鹿だあいつ。」
 ずっと黙っていた燐がぽつんと呟いた。
「馬鹿言うたらあかん。お前の為を思ったんやろうが。」
「だってあいつ。雪男のこと好きなのに、俺のことで雪男に呆れられるのは……」
 勝呂はアホと言って燐の頭を小突いた。
「どうせ俺はアホだよ。だって俺が勝呂のこと好きだって勝呂に知られたら、急にわけがわからなくなったんだもん。」
「は? 好き言うのは恥ずかしいことやないやろ。お前、おとうはんが死んで心細くて、俺に甘えたかったんやろ。俺はこの通りオッサン顔だし。おとんがわりでもええかと思ってたんやで。それなのに授業前に泣き出すから、どうしたんかと思ったんや。」
「おとんがわり? ジジイはお前と全然顔似てねえよ!」
 勝呂は地雷を踏んでしまったと思った。義父の存在は燐にとって特別なのだから、それの身代わりになるというのはとんでも傲慢だったと気づかされる。しかし気落ちしている場合ではない。
「いや。ほんやけど、杜山さんのこと馬鹿呼ばわりするのはよくないで。先生からお前庇ったり、若先生にも勇気出して意見したり。それいうてお前のこと、ほんまに友達や思うとるからやってくれたことなんやで。」
 雪男の目を気にして燐に呼びかけるのを躊躇っていた自分とは大違いだった。燐は弱弱しく「そうだな」と返す。
「じゃなきゃ、今こうやって話せなかったもんな。」
 勝呂も頷く。
「ほんで。なんでわけわからんようになって泣けてきたんや、お前は?」
「勝呂を好きなこと一発でバレたから。」
「いやだからそれは、お前が心細くて……いや、おとうはんの代わりやない言うとったよな? ほんならどういうことや。好きって。」
 燐はいきなり吼えた。
「馬鹿! 俺はアホかもしれないけど、お前だって馬鹿じゃねえか! 好きって言ったら普通、好きって意味じゃねえか! それしかねえだろ!」
 勝呂は数秒間固まってしまう。そして思わず叫んだ。
「好きいうて、いろいろあるやんか! 友情とか家族愛とか、ただの好みとか!」
「俺みたいなアホがそんなにごちゃごちゃ考えられるか!」
「いや落ち着け。結論は急ぐなアホ。」
「じゃあ言うけどな、俺だって、気持ちのほうが後から来たかもしんねえ。でも身体は正直だったんだよ。いきなり胸が苦しくなったし、涙はぼろぼろ出てくるし。授業のあとどうしようってずっと考えてた。」
 燐は勝呂に手を伸ばす。でも授業の前のように抱きつくことが出来ないのか、その手は宙を彷徨っている。
「やっ。もうこんな状態続いたら、俺どうにかなっちまうから。いやならいやってこの場で言ってくれねえかな? せっかくしえみに、いや友達に勇気貰ったんだし。」
 なんの勇気やと勝呂は思う。そしてそれを燐に訊いた。
「お前に嫌われる勇気。」
「アホかっ。」
 勝呂は彷徨い続ける燐の手を取る。
「泣きそうな顔でそないなことになっとる奴を、嫌いって言えるか!」
「同情するなら、トドメ刺してくれよっ。そうしないとこれからも俺、お前と顔合わすたびに不審な態度取るから。そんでお前はそれを雪男に見られて心証悪くするかもなんて、いっつも怯えてなきゃいけなんだ。」
「お前何気に世間体気にする男の心理に疎そうな振りして、具体的に嫌がらせする魂胆やな。いやいや。ほんま同情やないから。」
「じゃあ。加害者意識だ。」
「せやからなんで、そないに俺に嫌われようとするんや?」
 興奮して勝呂に食って掛かっていた燐が大人しくなる。
「だって。俺アホだし、お前みたいに不良なのにかっこ良くって頭のいい奴に好かれるわけない。」
「俺は不良やないし。俺もお前好きやし。」
「それってどんな好きなんだよ?」
「好きは好きしか意味が無い言うたのはお前やないんか。」
「そうだったっけ?」
 目の前にはうっすらと顔を綻ばせかけているアホが立っている。アホの癖によくもここまで自分を誘導してくれたもんだと感心する。
「わかった。わかったから……。そういうふうな好きなんやな。そんなら辻褄が合うわ。」
 アホの言動にも自分の気持ちにも。勝呂は教室の中を見回す。自分と燐以外には当然ながら誰もいない。
「あー。誰も戻ってくることはないと思うんや。」
 前振りのように勝呂は独り言を呟く。
「そっ、そうだよな。もう誰も戻って……こ…こないよな。」
 燐も何気ないように呟くが、その目は泳いでいた。
「ほな。し、しようか……」
「そ、そうだな……」
 燐が勝呂の首にしがみついて伸び上がる。勝呂は燐の背中に手を回して燐の体重を支えていた。
「するのって、キスだよな。」
 十分に顔が近づいたところでアホがいきなり尋ねてきた。だから馬鹿としては答えてやる。
「あたりまえや。好き同士やからな。」






本当に長い間待たせた割りにこんなんですみませんでした。
正直言いますと、前回のけいりんさんとりんさんの名前が似ていたので、リクエストがごっちゃになりかけたことがありました。だからけいりんさんのほうに多少エロ表現が行ってしまい、その上ストーリーを従来のうちの勝燐の話にあわせてしまったせいで、どうしてもエッチが書けませんでした。
でも勝燐はしょっぱなから付き合っている設定で書き始めましたので、馴れ初めがようやく書けてよかったです。
本当にリクエストありがとうございました。またお付き合いいただければ幸いです。
 

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忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

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