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幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

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☆☆リクエスト企画「馬鹿と阿呆の為のセプテット前編」勝燐

りんさんからのリクエストで「 設定は付き合う前の前提切甘、しえみと燐が話していて、それに勝呂が嫉妬する話し…的な内容」です。お待たせしてすみませんでした。
結果だけ言わせていただければやはり「R-18」はハードルが高くてクリアできませんでした。あと、この話は前提話です。リクエストそのものは後編です。
毎度毎度前置きのある話ですみません。でわでわ。






 世話を焼かれるのが常だった自分が、何の因果か人の世話を焼く側に立ってしまった。祓魔塾の同級生の面々は個性は強い。しかしその反面、個人主義が強いところがある。勝呂は幸か不幸か、目上の者には気を遣う性格だったために、講師の片腕とも呼べる級長のような感じになっていた。勝呂が自発的にそうしなくても、取り巻き二人を抱えていたので、講師の面々はいずれは級長の役目を勝呂に頼んでいただろう。
 
 最初は些細なことがきっかけだった。
 重箱の隅とか魚群の一尾とかどうでもいいことが気になるほどになるとは思わなかった。
 
 勝呂としては、祓魔塾に不真面目な奴がいても、自分の目的に支障がなければそれで良かったはずなのに。
 とはいっても、最初の頃は自分でも必要以上に神経を張り詰めていたせいか、その存在がひどく疎ましかった。
 奥村燐。
 見るからに頭の悪そうな、勉強する以前に勉強する能力に欠けた奴だという印象で、しかもそれを深刻に考えていなさそうなところが「なめんとか。おんどりゃあ。」と怒鳴りたくなるような男だった。実際に「なめとんか。」は態度にも言葉にもした覚えはある。奴はそんな勝呂の嫌がらせじみた態度をそこまで気にしていなかった。そしてそんな周囲からの非難めいた態度に、やけに場慣れしているようなところが、余計に印象が悪かった。
「兄は筋金入りの不良でしたよ。」
 傍らの同い年の教師は、出来の悪い生徒である兄についてそう語った。
「でも身内だから弁護じみた言い訳をするんですが、なんていいますかね。本当はいい子なんですよ。でもあまり取り繕えるような性格ではなくてね。君のような堅実な努力に身を惜しまなくて、確実にものにしていくことが自然な人には、どうにも理解しがたい存在だとは思います。周りにもそうやって誤解されてきたんです。兄は。」
 テストの採点を勝呂に手伝って貰いながら、隣で不肖な兄の弁護をしているのは、その兄の同い年の弟の雪男だった。
「俺が誤解しとったのは認めます。先生の耳に入っているかどうかは分かりませんが、先生のお兄さんには大きな借りが出来ました。」
 雪男は勝呂の言ったことに思い当たることがあるのか、軽く頷いた。
「兄のやったことに、いちいち借りとかなんとか言わないで下さい。兄にはそんな、押し付けがましい魂胆なんてありませんから。」
 
 蝦蟇の実習で勝呂は燐に対する刺々しい私情故に、自らを窮地に追い込んだ。勝呂の弱い心を読んだ悪魔は勝呂に襲い掛かった。そんな時に飛び出してきたのが、自分が罵倒した奥村燐その人だった。勝呂を助けたあと頭の悪そうな啖呵を切ってくれたお陰で、自分が見せた弱さの根源が少し救われた。
 
「それでも、俺にとっては気負い過ぎていた自分を反省せずにはいられませんでした。俺は子どもの頃からの経験で、あまり人に素直に接することが苦手なんで、お兄さんにはあまりこの感謝の気持ちが伝わってないのかもしれません。」
 感謝の気持ちと一緒に髪留めを渡したときに「キモチワルッ」と言われたことを思い出す。雪男は苦笑を浮かべた。
「兄からすればそんなふうに構われたことがないので、驚いちゃった結果でしょうね。でも君が、兄の言動が不真面に見えることを指摘してくれたことには、教師として僕は感謝しています。身内の言葉だからか知りませんが、僕の言うことをろくすっぽ聞かないんですよ。あの兄は。」
「いや先生。さっきお兄さんのことを、弁護する言わはったやないですかっ。そんなふうに言うたらあきまへん。俺は先生が言うまでもなく分かっとりますから。あいつは、いや、お兄さんは、周りに誤解されても俺みたいに捻くれるような奴やなかったんでしょう。周りに誤解されることが悲しいと思っていても、それに当てつけるような真似はせえへんかったんやないですか?」
「そこまで健気な性分だって捉えられると首を傾げてしまいますが、本当に心は優しい子なんです。」
 勝呂はちょうど燐の答案を片付けようとしていた。点数を付ける前から惨憺たる結果が決まっているような答案だった。勝呂は赤ペンで間違った箇所に注釈を入れていく。あっという間に答案は注釈で真っ赤になった。
「すみません。兄の答案にそんな手間を掛けて頂いて。恐縮です。」
 雪男は勝呂の手元を見ながら、さっきまでの自分の言葉で勝呂が気を遣ってそんな手間を掛けたのかと思ったのか、頭をペコリと下げてきた。しかし勝呂にしてみれば、そんな言葉以前に、馬鹿なりに頑張っている燐にエールを送るような、そんな気持ちが気がつけばペンを走らせていた。隅っこに小さく「ちゃんと全部読め。次は頑張れ。」という言葉で締めくくられた答案を雪男に渡す。
「これ書いたの、俺だって教えないで下さい。あいつがやる気失くしたらいけませんから。」
「いや。言いますよ。」
「言わないで下さい。」
 同い年の教師は日頃は見せない意地の悪そうな笑みを浮かべている。
「僕は兄の身内ですからね。兄が喜ぶことなら聞かせるに決まっているじゃないですか。」
「喜ぶって……。そないなわけないでしょう。」
 
「そんなことないぞ! 勝呂!」
 
 勝呂は自分の目玉が飛び出すかと思った。開けられていた戸の前で燐が仁王立ちになっている。
「奥村。いつからおったん?」
 燐は顔を赤くして「お前らが俺の悪口の言い合い始めたところからだよ。」と告げる。
「見せてくれよ。どんだけすげえ答案なんだよ。」
 雪男は躊躇いなく燐に答案を見せる。燐は目を輝かせた。
「すげえ。勝呂が俺のために……。わぁ、頑張れって書いてある。」
「テスト返すときに見れるんやから返せ。」
 燐は名残惜しそうに答案を雪男に返す。返したあと勝呂にはにかんだような笑みを見せた。勝呂はその悪気なさそうな顔に毒気を抜かれて、そのついでに思わず馬鹿の頭に手を伸ばした。
「なんとか点数二桁いくようになったやんか。ほれ。かいぐりかいぐり。」
 頭を撫でてやる。その関西系のコミュニケーションのノリに雪男が少し頬を引きつらせていた。でも燐は何故か嬉しそうに、まるで喉を鳴らす猫のように目を細めている。
「兄さん……。僕と勝呂君はもう少し残るから、先に帰ってて。」
「お前らずるいぞ。」
「そういうんじゃないから。」
 雪男は立ち上がって燐の両肩を後ろから掴んで部屋から追い出した。燐のことだから再び入ってくるかと思いきや、大人しく帰ったらしい。気配のなくなった廊下を確認して雪男はまた机に戻った。
「父が亡くなってから、あんなふうに人に構われることがなかったものですから。子どもっぽいと呆れませんでしたか?」
 勝呂はきょとんとする。そして雪男の口から滑らかに出た言葉について思わず尋ねてしまう。
「そんなことはないですけど。って、お父さん亡くならはったんですか。」
 身内でしかも父親が死んだというのなら、もっと気を遣えば良かったと軽く反省したが、今まで微塵も知らなかったことなので仕方がない。
 雪男は横目で勝呂を見て、ぽつりと言う。
「正十字学園に来るちょっと前だったんですけど。急死したんです。」
 いきなりの重い家庭環境を聞かされて、勝呂はどんな顔をしていいのか分からない。雪男が妙にしんみりしているので聞きたくないなどとも思えなかった。
「兄は周りから少し疎まれていた子どもでしたから、父だけが甘えられる存在だったんです。唯一の心の拠り所と言いますか。そんな兄を血も繋がっていないのに義父は、我が子以上に慈しんでいました。そして心底、兄の将来を心配していました。もし義父が兄を見捨てるような言動を一言一挙手でも取ったとしたら、兄はそれだけで絶望してどうにかなってしまっていたかもしれません。」
 勝呂はそうかと深く頷く。今までのことのほとんどが腑に落ちた。
「そんなお父はんやったら、奥村が捻くれんかったのにも説明つきますね。」
 これは社交辞令ではなく素直な感想だった。
 奥村燐は素行はいまいちだが、人に対する感受性はまるで捻くれていない。だからこそ勝呂は突っかかったのかもしれない。小さな頃から人の目顔を見る癖がついてしまった勝呂にとって、燐は能天気な楽天家すぎるとイラついていたのかもしれない。
 でも今、雪男が語った燐は、慕っていた父親以外に心を許せる相手はいないらしかった。そしてそんな父親をつい最近亡くしたという。
「僕はどんなに兄に寄り添おうとも、絶対に父の代わりにはなれないのかもしれないな。」
 雪男が遠い目をしている。
「いや。奥村先生。あんたは弟なんやから父親の代わりになんてなる必要なんて、元からないんやないですか。」
 兄弟は親子とは全然違う人間関係なのだから当然だと、勝呂はそんな常識に従って言った。
「でも一生弟としてしか見られないのは歯痒いものなんです。そこにいてもいなくても兄になんの影響も与えられないなんて、兄を疎んできた人達とまるで立場は変わらないから。」
「えーと……。それは自分を卑下しすぎやないですか。」
「僕にとってのコンプレックスなんです。」
「コンプレックス……ですか。」
 雪男は「そう。コンプレックス。」と繰り返す。
「兄さんと義父の時間は義父の死の瞬間に停止しました。それでも僕はどれだけ時を費やしても兄の中で父親以上の存在にはなれないんです。弟は弟って感じでね。いつかは僕に手を差し伸べて欲しいとは思っているんですけど。」
 淡々とした口調なのに妙に感情が篭っている。
「最初に固定された立ち位置から動けない時点で、どれだけ大切に思っていてもどうしようもないんですよ。僕からすれば兄を嫌っていようが慕っていようが「弟」なんですから。」
「……。弟やいうことが、そんなに虚しさを覚えるもんなんですか。」
「僕に限ってはね。いや、あの兄を持つ弟に限ってですかね。」
 そういう考え方もあるのかと勝呂は今までの会話を反芻してみたが、いまいちよく分からない。頭が悪くて社会不適合な兄を持つ弟だからということか? しかしこの弟は兄の心の優しさはちゃんと認めている。それを兄に認知されていないと感じていないのだろうか?
 無理やり自分に置き換えてみた。
 自分と明陀に冷たい目を向けてきた地元の人間は、あまり心の隅にでも置いていたくない。でもそれがいつも心に重石をしているのは確かだ。燐や自分みたいな人間は、特別な人間が存在を全肯定してくれれば救われる。それ故に、その他大勢を一緒くたにするきらいがあるのかもしれない。いい人もわるい人も。
 そのその他大勢を雪男が自らに当てはめてしまうところに、どうしようもない矛盾を感じてしまうが、燐と最も接触の多い雪男だからこその感じ方かもしれない。特別な存在のはずなのに、その他大勢と一緒くたにされていると思い込む何かがあるのだろうか。
ささやかながらこの繊細な男に何か言いたくなった。
「奥村を誤解してた罪滅ぼしとは言いませんが、これからは仲良くさせて頂いてよろしいでしょうか? あいつなんだかんだで、ほっとけませんから。」
 雪男は俯いて口元だけ笑ってみせる。
「いいですよ。兄も喜ぶと思います。」
 
     *   *   *
 
 勝呂が添削した答案を返された翌日からの燐は、今までとは比べ物にならないくらい、勝呂に猛烈なアプローチを仕掛けてくるようになった。
 祓魔塾の時に限らず休み時間登下校の時間に顔を合わせようものなら、まるで飼い主を見つけた犬のように勝呂と志摩と子猫丸の三人組に駆け寄って来る。雪男にああ言った手前、それを嫌がる理由はなかった。
「よお!」
「あー奥村君。」
 志摩が間延びした返事を返すと、それに答えるかのように手を上げたあと、燐は勝呂と呼んだ。
「なんや。」
「一緒に塾に行こうぜ。」
「俺は構わへんけど……。」
 燐は身長差による不可抗力の上目遣いで勝呂を見上げる。男の上目遣いは志摩や子猫丸で十分に慣れているはずなのに、何かが違うと錯覚してしまう。
「お前見すぎや。首疲れるやろ。」
 燐は慌てて視線を逸らした。
 燐と勝呂が話している間に、志摩と子猫丸が前に並んで歩き始めている。燐はさりげない風を装って勝呂の横に並んだ。何かの拍子に手と手が触れ合う。
「あ。ごめん。」
「気にすることあらへん。男同士やし。」
 そして次に手が当たってきた時には、明らかに意識的なものだと分かった。何かの嫌がらせかと燐を睨んだら、にっこりと笑い返された。でもその笑顔はなんとなく弱弱しかった。
『ひょっとしたら、甘えたいんか。こいつ。』
 そういえばあの日に頭撫でくりまわしてたら、やけに嬉しそうだったような気がする。試しに腕を差し出したら、最初は遠慮がちに腕に視線を向けていたが、数秒後にはその腕に抱きついてきた。勝呂はぎょっとする。ふと後ろを振り返った志摩もぎょっとして、横にいた子猫丸を突つこうとしていた。勝呂はしっしっと志摩を前に向かせようとジェスチャーする。
 勝呂は志摩が何もせず前を向いたところで燐を振り払おうとしたが、燐は猫のように嬉々として腕にしがみついている。
「奥村。」
「うん?」
 脳裏に先日雪男から語られた燐の身の上が浮かんだ。父親を亡くしてかなり気落ちしているだろうことは容易に想像出来た。
 かなりの部分で精神的に張り詰めた生活を送っていたのかもしれない。しかしこれはどうだろう? 蝦蟇のことや髪留めのことや、昨日の答案のことで、勝呂に心を開いてしまったのだろうか? そうだとしたら、けして悪い気はしない。だけど男が男の人格を認めた時の行動としては、これはかなり違和感がある。比較するのに適当ではないが、あの大人びた奥村雪男に比べて、態度も表情も子どもっぽすぎる。
『どないしよう……。』
 しかしアホはアホなりに人目は気にするのか、通行人があるところではふいに腕から離れていく。そして人通りがないところで接触してくる。そんなにいちいちくっついたり離れたりするのは面倒臭かろうと勝呂は思うが、律儀にそれを繰り返されたら、ツッコミどころに突っ込まざるをえなかった。
「奥村。どっちかにせんか? くっついとるか、離れとるか。」
 人目は気にするアホだから、離れるほうを選ぶと思った。しかし燐は一瞬電気に感電したように身体を震わせたあと、より一層勝呂に密着してきた。
『そうきたか!』
 自分から言い出したので抵抗は出来ない。二択問題の明らかに間違いだろうというところを燐は選んできた。
 そろそろ塾の入り口がわりに使っている倉庫の前まできた。それでも燐は離れない。
「坊。鍵開けましたんで、一緒に入りましょ……。」
 勝呂と燐の有様を見て、志摩も子猫丸も無表情で無言になる。まさかずっとこんなふうに腕を組んで自分たちの真後ろで歩いてきたとは、想像出来なかったからだ。
 勝呂は何か言い訳しようかと口を開きかけたが、それより先に燐が志摩に告げる。
「勝呂が良いって言ったから。」
 ソレは事実だ。真実だ。
 しかしその事実に至るまでの過程がすっ飛ばされているので、あらぬ誤解やミスリードが大量発生していた。
 勝呂はめんどくさくなって、ぶっきらぼうに言う。
「こいつ。自力で歩くのがだるかったんやろ。ほれ俺に掴まっていれば、俺に引っ張られて楽やから。そんな理由やろ? な? 奥村。」
 燐は上目遣いで勝呂を睨んでくる。話が違うと言いたげに。
 そんならどんなつもりやったんやと言いたくなったが、それもはっきり聞いてしまったら墓穴を掘りそうな気がしたので、一旦燐の腕から自分の腕を解放すると、燐の肩に手を回した。
「勝呂……。」
「さっさと行くで!」
 腕を組むよりは男同士の友達同士に相応しい格好になった。志摩と子猫丸もお互いに目を合わせると肩を組んだ。わけがわからなくても、とにかく、なんでも坊に倣えという最終手段だった。
『すまん。二人とも。』
 しかし元凶の燐は、そんな京都三人組のことなど知らぬげに、勝呂に肩を抱かれて不良らしくない大人しい足取りで歩いている。そしてその足は志摩と子猫丸が教室入り口を通って視界から消えたとき、ぴたっと止まった。
「どうしたんや?」
 燐に関してはかなりイラつかなくなった勝呂が穏やかに訊いてくる。
「俺、お前のこと……」
 言いかけて燐は言葉を止める。勝呂は溜息をついて手を肩から頭に移動させる。勝呂の大きめの手は、燐の後ろ頭を軽く掴んでしまう。
「好きなんか? 俺のこと。」
 燐は目を伏せて頷いた。
 
「うん。」
 

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柴仲達
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会社員
趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

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