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幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

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☆ss「why or why not」後編R18 燐雪

「兄さんなんなんだいっ。」
 塾を終えて職員室から出てきたところで雪男は兄に手首を掴まれ拉致された。
「いやあ。お前に見せたいものがあるんだよ。」
 兄はきょきょきょと笑いながら鍵を使って旧寮へ足早に駆け込む。手を繋いで階段を上がり廊下を進む。燐が足を止め部屋のドアを開けようとした。
「そこは空き部屋だろ。六○一号室だ。間違ってるよ。」
「ここでいいの。」
 燐はへへへと笑ってドアノブを回し、ドアを開け電気をつけ雪男に部屋の内部を示す。
「なんじゃあこりゃあ!」
 部屋のど真ん中にあったのは、天蓋つきのキングサイズのダブルベッドだった。白いシーツやレースの装飾は、なんだか新婚さん仕様で、用意した人物の皮肉が込められているようだった。何処からともなく芳しい花のパフュームが香る。
「お前があのせまっくるしいベッドじゃ、セックスする度に痣とか作るから。」
「僕のために……。」
 雪男は言葉を詰まらせる。燐はそんな雪男を見て、嬉しそうに雪男の横に立った。いきなり腕が伸びてきて燐の尖った耳を掴む。
「いてえ! いてえよ!」
「で? 誰に用意して貰ったんだこれ? 言ってみろよ糞兄貴。」
 弟のドスの利いた声に怯えながら燐は気まずそうに答える。
「め、メフィストに交渉しました。」
「そうだろうね。この趣味は明らかにフェレス卿の嫌味だろうね。」
 雪男は額を押さえて細く長く溜息を吐く。その手の甲にはつい最近出来たであろう青い痣が痛々しく残っていた。
「うん。僕の体格がアレだからね。それに僕は最中に結構わけわからなくなるっぽいから。知らないうちに何処やかしこをぶつけてるよ。朝になってかなり痛かったりして、またやらかしたと思うこともあったよ。そんな痛みが気にならないくらい、最中にどんだけ自分が夢中なのか我ながら呆れるよ。」
「そうだろう。お前、痣見ながら溜息ついてたから、すごく辛いのかなって思ってた。」
「それは自分自身に対する自嘲だよ。まさかそんなことを兄さんに気にされてて、それをフェレス卿に相談するとは思わなかった。兄さんのことだから、馬鹿正直に僕らのことを喋っただろうし。……どうしようもないな。」
 雪男が推理したのは今日の事実そのものだった。
「だ、だからさ。こんくらい大きなベッドだったら雪男どこもぶつけないじゃん。やってる時にでんぐり返ししたり、足を上げるのも楽そうだし。」
「兄さんも頭ぶつけないでいいよね。」
 雪男はベッドに腰掛けてみる。スプリングの利いたベッドのシーツはひたすら白く、何の用途で用意されたか露知らずといった風情だった。
「馬鹿か……」
 本当に愚直な兄だった。道徳や倫理に背いた心の痛みや快楽より、目の前の弟の怪我に目が行くなんて。 それに対して誠実に答えてしまう上級悪魔も、やはりお人好しとしか言いようが無い。雪男自身でも心の片隅では、畜生のような行為を兄としているんだという感覚がなくもなかった。陰惨な自分の痣を見るたびに、兄に良い様にされたらしいという事実に心震えた。兄との行為の副産物はほぼ全て、そんな隠微な悦びを引き出すものになりつつある。まるで悪魔の心のように。
 しかし目の前の白いベッドは御伽噺に出てくるものみたいで、まるで自分たちのことを言祝いでいるようだった。あの悪魔なりのアイロニーを込めた祝福の仕方なのかもしれない。少なくともこの地上に一人だけでも、この歪んだ恋を認めてくれた存在がいてくれたことに、雪男はその当人に対し静かに口の端だけ上げて笑ってみせた。
「兄さん。フェレス卿はなんて言ってた?」
「幸せならいいんじゃないですかって。」
「あ。そう。」
 雪男は傍らに立っている兄を引き寄せてイタズラっぽく顔を摺り寄せる。
「で? 兄さん。今日からこのベッドって使うつもり?」
 燐はどうしようかと小声で言っている。
「おとついしたばっかだよな。」
「そうだね。二回目だったよね。」
 二人は無言になる。先に口を挟んだのは雪男だった。
「僕たちってまだ何度目って数えられるしかしてないよね?」
「一週間だったら、そんなもんじゃね?」
 燐はなんとなしに部屋を出ようかと腰を浮かせている。メフィストに頼んだものが即日で来たことに十分に驚かされているのに、その来たばかりのベッドで早速というのも気が引ける話だった。しかもまだ学校から帰ってきて間もない。ここでは雪男にベッドのお披露目だけのつもりだった。だから、燐はこのあとは普段どおりに夕食を食べて風呂に入って、そこからどうするかというモチベーションだった。
「そんなもん、で済まさないでよ。」
 兄の明後日な方向の気遣いを野暮だとは思いながらも、その裏に隠れてしまっている自分を思いやる心は素直に嬉しい。だからこそ、その思いやりの結果が早く欲しい雪男だった。
「本当に痣一つ作らずにやれるか、試してみようよ。今。すぐ。」
「え! 今すぐ?」
 即物的な要求に燐は頭がついていってないようだった。ならば身体に訴えればいいというばかりに、雪男はベルトに手を掛け、素早く燐のズボンと下着を半分下ろした。
「雪男……。」
「兄さんがその気になるように先に口でしてあげるよ。」
 身じろぎしながら逃げようとする兄。しかし雪男はそんな兄を無理やりベッドに押し倒した。間髪いれずに足も抱えてベッドに転がす。反対側に逃げようとした兄だが、その退路を雪男は腕を伸ばして阻止した。手をベッドについて身体の下に兄を閉じ込め見下ろしてみる。
「いつも無理やりでごめんね。兄さん。」
「いや無理やりなんて思ってねえけど。」
「そうだよね。兄さんは遠慮してるだけだよねえ。」
 まだ行為に慣れていない兄は、雪男の身体に負担を掛けたくなくて、そんな野暮な理由で回避しようとばかりする。そんなところばかり理性的なのが雪男には歯痒い。二日前も雪男が半ば強引に迫ったようなものだ。雪男にとっては、兄に抱かれたあとの身体の気だるさや疲れすら愛おしいのに。それを子守唄のように求めてやまないのに。
「兄さんには骨身に染みて分かって貰いたいんだよ。僕が兄さんにして欲しいこと。」
「なにを?」
 雪男はにんまりと兄に婀娜っぽく微笑んでみせる。
 
「もっと滅茶苦茶にして。今までより容赦ないくらい。」
 
 燐の瞳孔が開いて全身が固まっている。
そんな男側にばかり都合のいいシチュエーションはあるわけがないと。そんなものはエロ本の中でしか有り得ないと。
雪男は中途半端な口だけ発言だと受け止められたのだと思い、自分のコートのボタンを外し始める。扇情的に兄に見せ付けるように。次第に肌を晒していく。
「ねえ? 兄さんも脱がしていい?」
 燐はなんて答えたらいいか分からない。しかし兄の下半身は確実に雪男の序の口な挑発に乗せられて煽られているのを雪男はそれとなく気づいて心の中で嗤った。
雪男の指がくすぐるように燐の首筋を辿り、ネクタイを緩めて解く。そして燐の顔にキスしながらワイシャツのボタンを外していった。
「雪男だめだ。そんなエロい脱がせかたしたら、俺は……。」
 燐が雪男の指を絡ませて抵抗を試みているが、その声は掠れている。
「少しは慣れようよ。セックスっていうのはそういう行為なんだよ。」
「二回しかしてねえのに、そんなん分かるかよ。」
 雪男は、そういう燐の口とは反対に既に理解の範疇を超えている足の間のモノを見て、微笑ましくなる。
「なあ雪男。俺ほんとに駄目だから。」
「何が駄目なの? こんなベッドまで用意しといて。今更僕のこと抱けないって言うの?」
 雪男は息を荒げている。火照った頬や高ぶった感情が、緑がかった青い瞳を潤ませて、生理的な涙が目じりに滲む。雪男はそれを指先で拭った。
「雪男お前泣いてっ……るのか?」
 仔細なところに反応する兄だと雪男は思った。だがこれは利用できるかもしれないとも考えた。
兄が肩を抱いてくる。取り乱しているように見える自分を宥めようとしているのだろう。本当に馬鹿な兄だ。この涙にはそんなしおらしい意味はまるで無いのに。
「ごめん。そんなつもりでお前にベッド見せたわけじゃねえんだ。でも考えてみりゃ俺の下心っぽいよな。露骨過ぎるよな。誤解させてごめん。」
 雪男は手で顔を覆って兄の罪悪感を惹く。
「そう言えば、僕がこの場で兄さんと一緒にこの部屋を引き上げるとでも思ってるの?」
 ぐすっと雪男は鼻を啜る。
「さっきも言ったじゃない。僕のこと滅茶苦茶にしてって……。兄さんこそ僕をどんだけ誤解してるんだよ。そんなつもりないってどういうことだよ。そっちのほうが理不尽だよ。そうだよね。兄さんは僕が二回目に誘った時も、なんだか嫌々っぽく見えて悲しかった。僕がどっかぶつける度に、そっちの方にばっかり気が行ってたみたいだし。途中で止まられたり、変に僕のこと窺うように見たりして、どんだけ僕が焦らされたんだか。それなのに兄さんは――。」
「しょうがねえじゃねえか! お前色白いから痣とか目立つんだよー。」
「だからってそっちばっかりに意識を散漫にしないでよ……。僕の傷なんかじゃなくて、僕のことちゃんと見てよ。」
「いや。俺の性分からしてそれ無理!」
 意外と兄は強敵だった。雪男は「わあ!」とここぞとばかりに泣き崩れる。
「兄さんの馬鹿! かっこ悪いこと堂々と言うなっ。」
「なあ雪男。いい子だからとりあえず、服着ようぜ。」
 燐は雪男の脱ぎ捨てたコートに手を伸ばす。雪男もそれに手を伸ばして兄と引っ張り合いになる。
「いやだ。」
「なに意地になってるんだよ。」
「意地にもなるよ。」
 泣き脅し作戦はなんとなく失敗に終わりそうだ。あのままお色気路線を貫いたほうが余程マシな結果が望めそうなくらいに。泣き脅しはどうも、小さい頃の力関係の再現になってしまって兄の土俵になり易くなるらしい。
「ねえ。どうしても駄目なの?」
「駄目ってわけじゃねえけど。今はここにアレとアレが無いだろ。このままなだれこんだら、なあ……?」
 雪男は「ああ」と思い当たった。回数を重ねていない自分たちはまだ、潤滑剤的なものの助けがないと、挿入時の時は特に心許ない。雪男が兄を鬼気迫る様子で掻き口説いているときでさえも、兄はそんな心配ばかりをしていたらしい。
「俺もベッドが来たからって舞い上がってたけど。お前だって迂闊だろ。それを言おうとするごとにお前が急かしてくるし。」
 雪男は頭の中が真っ白になりそうだった。そんな初歩的ミスを自分がしてしまうとは思わなかった。
だけどここで隣の部屋まで行ってくるというのも、気持ち的には屈辱的だった。それに今回も消極的な兄のことだから、雪男のいない間に服を元通りに着直して、一旦インターバルを取る方向に転換するつもりだろう。
 以上をもって、この部屋から出てはいけないという前提が打ち出される。しかし兄のネックとなっている、必要条件である雪男の身の安全というか、潤滑剤入手は――。
「いや。兄さん。僕多少切れたって大丈夫だから。切れた時の血の滑りでどうにかなるかも。」
「おいおいおいおい! 痣でも気になるのに、血なんか出た日にゃあ俺は、一生禁欲するくらいの覚悟しちまうよ!」
 雪男は冷静さを欠き、思わずやけくそのようなことを口走ってしまった。当然、兄の態度が余計に頑強になるに決まっている。
「今日はちょっと落ち着こうぜ。マジでお前らしくねえ。」
 雪男はきっと兄を睨みつける。
『血ぐらいで怖気づきやがって。てめえは僕の何倍もいままで出血してるじゃねえか。』
 幾ら傷の治りが早いと言っても、毎回そんな出血大サービスを見せられるこっちの身にもなれと思う。しかし兄は自分のことにはまるで無頓着だ。これを引き合いに出しても意味がない。俺は悪魔だから大丈夫、お前は違うと返されるのが関の山だ。
「な。雪男。」
 燐が雪男の頭を撫でて落ち着かせようとしている。弟を宥める兄貴面の兄に、雪男はますます頑固になる。
「やだ。」
「いつもは俺を窘めてくれる雪男だったら、自分が何言ってるか分かってるよな?」
「でもやだ。今すぐ抱いて欲しいもん。」
 燐はほとほと困り果ててしまった。雪男の言っていることは、どう考えてもワガママだ。しかもかなり自分が後押ししてしまった感じの。
 もっと違う状況なら、好きな子にワガママを言われて強請られたら何でも叶えてやりたくなる。でも今そんなことをすれば、確実に雪男の言うように血を見る他なくなる。
「僕はちゃんと傷薬だって持ってるし。後でちゃんと手当てすれば済むことだろ。」
 そんな言葉を素直に受け取れたら、どれだけ楽だろうか。もうこうなってしまえば弟を気遣うというより、いかにこの場を回避しようと逃げているような気がする。
『いや俺は、実践派だったはずだろ。』
 実践か、と燐は深く息を吐く。
「いいぜ。抱いてやるよ。」
「え。ほんと。」
 ただし、と燐は付け加える。赤面しながら。
 
「お前の後ろを……俺に舐めさせろよ。」
 
 雪男は誰もいやしない周囲を見回しながら動揺している。
「いやいやいやいやいや。いや。いやいや。何言ってるの! 兄さんがそこまでする必要は。僕が、僕が……我慢すればいいだけの」
「駄目だ。ちゃんと舐めて、湿らせて、ほぐしてやるから。俺は雪男が我慢するのが、我慢ならないんだ。」
「でも恥ずかしいじゃないか!」
 燐は吼える。
「恥ずかしいのがなんだよ! セックスはそういうのだって、言ってたのはお前だろ! 痛いのを我慢するのと、恥ずかしいのを我慢するのは同じようなもんだ!」
 雪男はぐっと押し黙る。そしてわざとらしい笑顔を見せながら提案する。
「じゃあこうしよう。僕が兄さんのアレを口でして。そのあとなら。」
「お前のことだから、俺の余裕を無くさせてうやむやにするつもりだろう。恥ずかしいのを回避するつもりだろう。」
 燐は雪男の腕を掴む。
「やめて! 兄さん!」
 燐はかつて雪男が言ったことを復唱する。
「容赦なく、滅茶苦茶にして。そう言ったのはお前だったよ?」
「い…、いやっ……。」
 兄の馬鹿力で身体をひっくり返され尻を上げた状態でうつ伏せにさせられる。広いベッドで前に逃げようとしたが、ズボンと下着を一緒に引き下ろされ、腰を強く掴まれてしまった。
「やだ。兄さんっ。ごめん……。許して……。」
「駄目。許さん。」
 雪男の今までの態度への報復というよりは、多分、逃げる雪男に興奮して、まるで肉食獣が子羊を蹂躙するような兄の悪魔の本能を煽り立てているのだろうか。
「いや! 兄さんっ。う……うぅ……。」
 雪男の途切れ途切れの訴えなどもう聞こえないとばかりに、湿った感触が雪男の後孔に触れる。
「……あ……ああ……」
 触れるというような生易しい感触じゃない。周りを舐められ、その後には突きたてられるように尖がらせた舌先で、雪男の閉じた秘部をこじ開けるようにほぐされてしまう。その動きの一つ一つが雪男の羞恥を掻き立てるのに、殊更にその羞恥を煽るのは。
「や……あ…。兄さん……そこ……。」
 拒否しているのか、甘えておねだりしているか区別が付かない自分自身の声。しかし時折我に帰って兄の腕から逃げ出そうと雪男は試みたが、そうすると兄は、前に回した片手で雪男のペニスに触れ、陰嚢を揉みしだいてそんな抵抗を封じてしまう。
「気持ちいい?」
 舌を引き抜かれて問われると、雪男は背中を震わせた。
「ひどいよ…。兄さん。僕が嫌がってるのに。」
「あー……。それはすまん。」
「もういいんじゃないの! 十分舐めたろ?」
「いや。まだだ。」
 雪男はそれに呻き声で抗議するが、何故かこれ以上強く言えない。何せ自分が容赦しないで良いと言ったし、滅茶苦茶にしてとも言った。
兄は何一つ、弟の究極的な所でのお願いに反故していない。それどころか、命一杯それを実践している。
 燐は粘着質に執拗に雪男の後ろを舌で犯している。自分が納得するまでこの行為を続けるつもりらしい。
「ひんっ……。もういいだろっ。……あんた僕を、おかしくするつもりだろっ……。」
 初めての時から淡い自覚はあったのだが、どうやら本格的に自分は後ろを責められるのが弱いらしい。それを決定的に、誰よりも好きな兄に、自覚させられている現実に耐えられそうにない。
「だって雪男を気持ちよくさせてあげたって思えたの、これが初めてなんだもん。」
 そんな奉仕の精神は要らないと雪男は叫びたい。好きな人にだからこそ、そんなはしたないことこの上ない性感帯に気づかれたくなかった。そんな矛盾した心理を兄はちっとも認めてくれない。相変わらず無邪気に弟を攻めている。弟の望んだように。弟の気も知らずに。
このまま限界が来るまで甚振るつもりかと睨みつけようにも、姿勢からして兄と目が合いようがない。だから声で訴えてみる
「もう変になる……。変に、なっちゃうから……。」
「いや。俺よりお前はもつはずだから。」
 燐はしれっと薄情なことを口にする。
「いちいち、僕の言葉に舌抜いて反応しないでっ。というか、返事しないで! それ……苦手なんだから……。」
「わかった。気をつけるわ。」
 燐はいつまで経っても雪男の望むものは与えてくれない。
まだ雪男のその部分の状態に納得がいってないのだろうか。それとも弟を良いように喘がせる快感に目覚めてしまって、その行為に夢中になっているのだろうか。
燐の甘くて惨い仕打ちに散々泣かされたあと、もう恥ずかしさやら抵抗しようという気がなくなって、雪男は虚脱状態に陥った。
「兄…さん……。」
「これくらいかな。」
 雪男の身体がまたひっくり返される。雪男の視界がうっすらと暗くなって、目の前に兄の顔がある。
「やっと柔らかくなったから。」
「え?」
 次の瞬間、初めての時のように何の前触れもなく兄は押し入ってきた。今度は「いくぞ」という言葉掛けすらなかった。ずっとあの恥ずかしさが継続されるものかと思っていた雪男は、その言葉の意味を悟ったころには、やはり性急で間の無い兄の行為に悲鳴をあげていた。
「あ。……や!」
 兄が丹念にほぐしたそこは、兄の熱いモノをなんなく受け入れて感じ始めている。
「雪男。」
「兄……さ…。あうっ。」
 さっきまでの甘い前戯も雪男には堪らなかったが、やはりこの快感には程遠い。それを自覚するのが尚更羞恥と敗北感を募らせる。
「良かった。気持ちよさそうだ。」
 自分の仕事ぶりに満足してなのか、弟のとろけた表情に心底嬉しそうな顔をしている兄がいる。本当に。場違いなくらいに慈しむような微笑ましい表情だった。
 
     *   *   *
 
「…………。」
 雪男は終わってからずっと、一時間近く、布団を頭から被って、ごろごろと寝返りを打っていた。
 兄は今頃遅い夕食を作っているのだろう。自分としては、さっさと起き上がって部屋にいくなり食堂に行くのが身のためなのに、雪男は何故かそれが出来ない。恥ずかしくて部屋から出られなくなっている。
 兄とメフィストの心づくしのベッドのお陰で、今日はどこも痛まない。そして疲れた身体を包み込むのに、これ以上ないくらいの柔らかい寝床だった。
 背徳的な感情やら、陰惨なものが一気に浄化される。こんなのは無いだろうと雪男は煩悶する。こんなんじゃないはずだと。今がここまでご都合主義だと、後からしっぺ返しを食らうに違いないと。必死に都合の悪い想像を掻き立てている。そうしないと今の幸せ状態に釣り合わないと言わんばかりだった。
「兄さんがそんなこと考えないんだから。僕が考えてあげないと。」
 真逆な兄弟だから均衡が保たれるんだと雪男は信じている。兄とまるで逆な自分だから兄を守れるんだと言い聞かせる。必死に目の前の幸せを見ない振りして。
 
 いきなり六○一号室のドアの開く音がする。
「お食事ですよ。お姫さま!」
 雪男はその台詞にかちんとくる。兄が自分の知らないところで、別の誰かを確実にそういうふうに呼んでいる気がしたからだ。
燐はというと、そんな雪男の気も知らずにどこから調達してきたのか分からないが、簡素なワゴンに食事の食器を並べてほくほくしている。
「いやあ。このベッドでお前と寝て、朝には寝たままここで朝飯を食べようかと思ってたんだけど。ちょっと予定が狂って晩飯になっちまったよ。」
「どこの欧米人だよ!」
 雪男は兄の満足げな声に腹が立って飛び起きる。燐はワゴンをベッドに近づける。雪男の目の前にちょうど料理が来るように。ワゴンだと思っていたのは、実はベッドテーブルだった。
「それじゃ。いただきます。」
「いただきます。」
 雪男は兄と目線を逸らしたまま、もそもそと料理を口に運ぶ。
 幸せならいいじゃないかと悪魔は言ったらしいが、本当にセックスしたあと美味しいご飯を食べるというのは、幸せなことに違いないだろう。しかしその幸せ感がこそばゆくて不安になる。
「雪男ぉ。」
 兄が間延びしたように弟を呼ぶ。
「なに?」
「俺は。お前がセックスに対してがっつく気持ちも分からなくはないぜ。でも俺はお前とこうしているだけで、本当に幸せだから。」
 雪男はそうだねと気のない返事を返す。でも、それが嬉しいのは真実だ。兄には絶対に悟られたくはないけれど。
 兄は自分の料理に「うん。美味しい。」と納得している様子だ。美味しい料理を作るのも弟に究極的に恥ずかしい行為を強要するのも、まったく同じ感覚なのだから始末におけない。でもそれが兄なのだから。
「あーもう。僕が馬鹿みたいじゃないか。」
 本当に自分は一度落ち着いてものを考える必要あると、雪男は溜息と同時に自覚した。







はいR18です。良い子は見てませんよね? ほんとに見ちゃだめだからね。前編までなら見てもいいからね。

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☆ss「セレナーデ」アラベスクシリーズ 志摩燐R18 | HOME | 50000hitとクリスマスと燐雪誕生日と忘年新年おめでとうリクエスト企画

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柴仲達
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職業:
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趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

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