幸福雑音
女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。
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☆ss「マスカレード」青エク 雪燐 暗め
「ただいま……。ちょっと遅くなってごめんな。また、やらかしちまった。」
寄宿舎の自室のドアを開けると、不機嫌そうに腕組をしてドアの傍の燐を見る雪男がいた。燐はいつもどおり雪男に気まずそうな笑みを見せた。
青い炎とは関係なく、燐は色んなものに絡まれ易い。世の中の暗がりに隠れているべきものが、何故か燐の近くでは頻繁に現れやすい。そして燐はある種の真面目さなのか、それを見過ごすことが出来ない。真正面から相手をしてしまって、今日のように生傷を作って帰ってくることが日常茶飯事だった。
「塾に入って前よりマシになるかと思ったけど……。」
言葉のまだ冒頭だと言うのに、弟の雪男の口から出てきたのは辛辣で温度のない一言だった。
「はしたないよ。遅く帰ってきて言い訳ばかりする。」
弟の目はまるで燐の身体に汚いものが付いてないか確かめようとするように、身体中に視線をめぐらしている。特に、着衣の乱れから覗く肌の辺りとか。
「自分でもわかってるんだよ。こんなことしてる場合じゃないって。」
「だったらしばらく外出は控えさせようか?」
「弁当の買い物はどうするんだよ。」
今日の外出も燐と雪男の二人分の弁当の材料を買うためだった。いろいろと店を梯子して、安いものやタイムセールを狙って遅くなったのも確かだった。
「ちゃんと買い物のリストを作って、一番近い店だけで済ませればいい。お金は僕持ちなんだから気にして安く済ませようなんて必要ないだろ。」
言い返そうとした燐の言葉の続きが出る前に、雪男はドアの前で立ち止まっていた兄を椅子に座ったまま手招きする。
生前の義父にもよく叱られたがこんな風に燐に対して一方的に、燐のこれからの行動を決め付けるような真似はしなかった。義父は口では厳しかったが、あくまで決定の意思は燐に委ねてくれた。まあそれは、まだ燐がサタンの息子として覚醒する前だったので、そこまで抑制する必要がないというか、すれば可哀想だと思う人情もあっただろう。あの義父は自分にとってはあくまで親として接してくれた。
だが今目の前にいる弟は違う。弟という前提のその上に、監視者としての役目もある。だから義父と違って燐に対しての言葉も強制するような面もある。そこは燐も理解している。今更怒って、弟と争ってはならない。ただただ、祓魔師になることだけを考えるしかない。
自分の目の前まで歩いてきた兄を雪男は見る。その眉間には深い皺が寄っていて、燐が感じているのと同じ気配のする苦しみを、雪男も感じていることが燐にも読みとれた。
「まったく父さんが甘やかしたから、今になって僕が苦労するんだ。」
「俺はともかく、父さんを悪く言うんじゃねえよ!」
神妙にしていようと思ったが、義父の獅郎に当て付けるようなことを口にする弟には切れた。思わず腕を振り上げたが、雪男は微動だにしない。相変わらずその目は燐を真っ直ぐ見ていた。それは燐を厭うようにも見えた。燐の心が揺らぐ。結局、腕を下ろしてはき捨てるように雪男に告げる。
「確かに。俺が、父さんに、甘えてたよ。いつまでもまともにならない息子に、よく付き合ってくれてくれて。あの人がああやって優しくしてくれなかったら、それこそ俺はサタンの息子らしいクズでどうしようもない奴になって、お前に殺されていたと思う。」
雪男も流石に「殺されていた」という言葉には動揺を見せた。
「兄さん。」
燐の腕を取って、雪男は自分の胸に兄を引き寄せる。
「それがわかってるなら――。僕は兄さんのことを甘やかさないから。父さんと違って喧嘩の一つでさえ許すつもりもないし、俗世間のくらだないしがらみに捕らわれる隙は片っ端から潰すつもりだから。」
腕の中で燐が身じろぐ。自分のほうを見上げようとする頭を無理に胸に押さえつけて、両腕に力を込めた。そして燐の耳元で呪文のように繰り返す。
「兄さんの家族は僕しかいないから。僕が兄さんを守るから。」
抱きしめた燐の頭が頷く。兄の本来の性格なら、守ると口にした途端に突き飛ばされているはずなのに。
こんな時には父の名前は都合がいい。雪男はまた兄に対してのずるい対応策を一つ覚えてしまった。
他のジャンルでは絶対に書けなかった展開を書けて、嬉しいやら恥ずかしいやら。とりあえず言えることは、獅郎さんは(人間性的な意味で)弟のほうの教育が間違っていたようです。
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