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幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

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☆☆リクエスト企画ss「ロンド」勝燐 女体化注意

ニルグスさんからのリクエストで「勝燐←雪+志摩で燐総受、女体化」です。

目の前に本当に済まなそうな顔をしている女子がいる。勝呂は気にしないように振舞っては見るが、それ自体が白々しく思えてくる。
「ごめん。勝呂……。」
 ごめんとは言っているけど、何を自分が謝っているのか。この女子、奥村燐は自分でもわけがわかってないのだろう。それでも謝らずにはいられないらしい。もう一度燐が謝る小声を勝呂は聞いた。
「お前は悪うないやろ。サタンの娘って聞いて、……。正直俺……。」
「俺のこと嫌いになった?」
 深い青い瞳が涙で滲んでいる。幅の狭い華奢な肩も震えている。その癖胸だけは大きいけど、そんなところに目を付けている場合じゃない。
「俺は……、正直お前に関わるべきじゃなかったと思った。」
 途端に燐の顔がくしゃくしゃと歪む。歪められた口からは今にも泣き叫ぶ声が飛び出してきそうだ。勝呂は女に泣かれるのは苦手だ。
「それはサタンの娘として、やからな? 奥村燐個人のことやない。」
「だって……。だって、俺は、サタンの娘の奥村燐だからっ。」
「だからそれは置いとけやっ。」
「置いとけば嫌いじゃないって言ってくれるのか?」
「最初から嫌い言うとらんやろ。」
 これじゃあ口喧嘩だ。
「せめて奥村先生から聞かされるんやなくて、お前の口から聞きたかったわ。」
「ごめん……。」
「言えるわけないのはわかっとる。これは俺個人の恨み言や……。ほんま情けないわ。」
 
 
正十字学園は名門子女を生徒として多数抱えている学校だ。そして、祓魔師の養成機関でもある。その塾で勝呂と燐は出会っった。
 勝呂は同級生の燐の頭の悪さに苛立ってよく衝突した。黙って大人しくしていれば並み以上に可愛い容貌なのに、男言葉で頭の悪さをまるで隠さない燐に最初は良い印象を持たなかった。しかし、馬鹿なりに努力するし、喧嘩っ早い以外は性格もそんなに悪くないから、勉強を教えるついでの交流がいつのまにか始まった。
 当初燐は弟の塾講師・奥村雪男以外の男とは基本話さない奇妙な姿勢を持っていた。何を話しかけても、ぶっきらぼうに無愛想に上目遣いのキツイ目でにらみ返してくるのが出会った始めのころの燐だった。女子に対しては話しかけたそうにはしているが、いつもすんででその勇気が挫けるのか、いつも自分の席でもじもじしているのをよく見かけた。
 男子のほうにはと言うと、大人しくて穏やかな子猫丸以外には必ず、特徴的な前歯の牙を剥いて威嚇してくる。その行動の一つ一つが、ちぐはぐで無理をしているように勝呂には見えた。だからお節介を焼く気になったのかもしれない。
『お前なあ。野郎には何を思おうが勝手やけど。女子にはもうちょい気軽に話しかけてもええんやないの? 杜山さんも神木に何言われようと気にしてなさそうやし。』
 一度だけ余りにも女子の集団に対して物欲しそうにしてたのを見ていられなくて、燐をそこに引っ張って背中を押したことはある。そのお陰かは勝呂は知ったことではないが、今では人並みに女子同士の中に入っているようだ。そして、燐は少なくとも勝呂には恫喝するような顔を見せなくなっていた。
 そして徐々に接近距離も十メートルから半分の五メートル。そして一メートルから五十センチにまで縮まっていった。
『坊。燐ちゃん酷いんやで。』
 ある日、志摩が燐から奪い取った燐の悪筆が綴ってある紙を勝呂に見せてきた。《俺的カッコいい男ランキング》と書かれて、燐がかろうじて認識しているらしい男の名前の羅列があった。一位の亡父の呼び名のすぐ下に、自分の名前があった。
『俺はランク外なんやて!』
 燐に男をちゃんと見る目やらがあるとは思えなかった。あの完璧な弟が何故か最下位争いをしていて、何故自分が二位なのかがわからない。
『志摩君は何を見て騒いでいるのですか? 姉の字のようですけど……。』
側を通りかかった雪男が志摩が差し出す紙を見て苦笑いを浮かべたあと、視線を勝呂に向けてきた。
『あの姉さんが珍しく勝呂君には懐いているわけだ。』
 その声の響きは優しげだったが、なんだか急に重石を頭に乗せられたような重圧を感じる。しかし何も言わないわけにもいかない。
『あんじょう付きあわせて貰ってます……。友達として……。』
 雪男は意味深に笑みを見せた。それが予兆だったのかもしれない。
 
 その日の夕方。勝呂がいつもの自習がひと段落つくころ。急に自習質のドアを蹴破るようにして燐が飛び込んできた。
『勝呂っ。俺……。』
 血相を変えたように燐が駆け寄って来る。きょろきょろと周りに誰もいないことを確かめる。そしてほっと息をついた。
『どないしたん?』
『雪男に言われたんだ。男子に対して誤解を招くようなメモを作るなって。あのメモはそんなんじゃないから……。それだけ言いたかっただけなんだ。じゃあ!』
 それだけ言うと燐は元来たルートを走り去っていく。走り去る前に見せた顔は、頬が上気して小さな唇ははあはあと荒い息をついていた。まるで恋の告白をしに来たような顔だった。言ってることは逆なのに。不覚にも可愛いとさえ思った。
 それにしても――。
『奥村先生。わざわざ燐にそないなこと注意したんや。』
 どうにも違和感を感じてしょうがない。まるで姉が他の人間と交流を持つことを嫌がるような気配がする。あのメモを前にした時の笑みだって、目は笑っていなかった。
 
 それでも日常は過ぎていく。勝呂も燐も、あのメモが引き起こした出来事を忘れたように互いに友達として振舞っていた。だけどいつからか勝呂と燐は他の仲間達のいない所でも二人でいることが多くなっていた。そしてそれが十日ばかり続いた頃――。勝呂は奥村雪男に呼び出された。そこには今にも泣き出しそうな顔の燐も同席していた。
 奥村雪男は静かに、そして事務的に、奥村燐がサタンの娘で青の炎を受け継ぐ存在だということを勝呂に告げた。当の本人を目の前にしての、とんでもない暴露だった。
『姉は世間一般と交流を持つことがあまり望ましくない身の上です。僕は双子の弟ですが、姉と違ってサタンの炎を受け継いでないことが幸いでした。姉を悪魔と言って迫害しようとする連中に対して、僕は盾になることが出来るわけです。でも、それでも限界があります。そこで十八歳の三月、つまりこの学園を卒業したら、僻地の正十字騎士団の修道院に姉は身を寄せることになっています。そこで一生を過ごすことになりますが、祓魔師の資格を取ればある程度の自由は保証すると騎士団上層部の了解は取れています。まあ気休めですが、生命は保証されるのです。でも一般人のような生活は、たぶん許されないでしょう。ましてや同じ祓魔師候補生でも、恋愛は限りなく難しいと思われます。出来ないと言っても過言ではない。』
『俺と奥村…さん、はそんなんじゃ――。』
『それは幸いでした。姉は悪魔ですから、男の目を惹きつけてしまったのかと心配しました。』
 実の姉に対する言葉にしては辛辣もいい所だった。どうしてここまで心無いような言葉が吐けるかと、雪男の胸倉を掴みたくなる。でも『サタンの娘』という一言が頭を掠めると、それもしょうがないかもしれないと思う自分もいる。
 燐は冷ややかな雪男とは対照的に、必死に瞼を閉じて涙が出るのを耐えていた。
『姉が将来行く支部はたぶん、日本支部では最北端の網走支部ですかねえ。僕も半年経たない内に、そこに行くつもりです。精神的に支えが必要な姉ですから、側にいてやらなければならないですから。』
『その支部って、どのくらいの人間がいるんや?』
『今のところは一人もいないですよ。姉がそこに行けば姉が一人。僕が行けば僕と姉が二人ですね。』
『支部として、成り立つんか?』
『どうせ姉を閉じ込める為の支部です。姉にも了解は取っています。』
 
 
 あのとき、嘘だと叫びたかった。あんなに女子同士で仲良くしたそうにしていたのに。自分と嬉しそうに話していたのに。なのに、三年後には全てを捨てるように北海道の名ばかり支部で、弟と二人きりで一生を過ごすなんて望んでいるはずがない。
「お前、ほんとうにほんまに……あの条件を飲んだんか?」
「だって、しょうがないだろ? あの条件を飲まないと、俺殺されるから。死ぬの怖いから。」
「殺されんためなら、嫌々でもしょうがないんか。」
「祓魔師になれたら――、殺されないし、ちょっとくらい外には出れるかもしれないって言われたんだ。網走に行っても、任務で本土に帰れるかもしれないし。勝呂にだって逢えるかもしれないっ。」
「お前の頭でなれるんか?」
「がんばるから!」
 たとえ燐が頑張って祓魔師になったとしても、たぶん雪男は燐を網走の教会から一歩も外に出さないだろう。
 勝呂にもうすうす分かっていた。奥村雪男は自分の姉を独占するために、姉を殺させない上に姉をずっと自分の側に置く工作をした。そのカラクリに頭がついていかない燐は、健気にその約束を信じている。だがそんなことを勝呂の口からは言えない。言ってしまえば燐のわずかな希望をぶち壊してしまう。
 頼りなげな身体を勝呂は抱きしめてやりたい。だが踏み込むのが怖い。今なら引き返せると頭の中の悪魔が雪男の声で囁いた。
 




思いのほか暗い話にしてどうしようかと思いました。男女のルートが違おうと雪男がラスボスになってしまう。
リクエスト有難うございました。これに懲りずにまたお付き合い出来たらと思います。

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柴仲達
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女性
職業:
会社員
趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

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