幸福雑音
女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。
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☆ss「キリエ」藤本とメフィスト 獅燐風味
藤本獅郎は息子達の通う中学校へ保護者向けの進路相談の為に足を運んでいた。最初が長男の燐。しかし三者面談にも関わらず、燐は教室に姿を現さなかった。仕方が無いのでとっさに思いついた就職先の幾つかを教師に提案し、ついでに日頃の燐への対応について教師を労った。
「いやあ。すみませんねえ。あの馬鹿息子ときたら捻くれたもので。」
「奥村君についてはこちらの力不足で……。」
諦め顔を通り越して無表情に教師は言った。確かにそうだなと内心では思う獅郎だったが、この教師は燐を責めない分だけましだと思った。幼稚園の頃のことを思えば、こうしてスルーしてくれるだけでも有難い。例えそれが見て見ぬふり、触らぬ悪魔に祟り無しの方針だとしても、数ある正解の中で比較的無難な対処をしてくれているこの教師には、獅郎としては労うのに十分なことをしてくれたと思っている。
獅郎は一礼して席を立つ。次は弟の雪男だった。
「本当に雪男君はうちのクラスの誇りですよ。進学は正十字学園の特進科で良かったですね。」
こちらは打って変ってのにこやかさだった。教師はおうちが教会なのでさぞや環境的なものが雪男君の資質に影響しているのでしょうねと、諸手を挙げての褒めっぷりだった。
「兄のほうは全く逆なことを言われましたよ。兄の担任の先生にね……」
「あ……。燐君ですか。えーと……」
もしこの教師に当たったのが燐だったとしたら、この教師は今どんな顔をしているのだろうか。想像が容易すぎて胃の辺りがムカムカしてきた。隣に座っている雪男も顔では笑っているが、親にだけは分かった。これは相当、この教師に対して怒りを覚えていると。ライトブルーの瞳が鈍く光っている。教師は誤魔化すように再び雪男を絶賛し始める。
この後は聞きたくも無いお世辞の羅列に終始しそうなので、適当なところで獅郎は雪男を促して教室を後にした。雪男の次に当たる親子に会釈をして廊下を歩く。
「兄さんは来なかったですね。」
「来れないんだろう。まあしょうがないさ。」
獅郎はカラカラと笑う。
雪男はこのあと委員会の仕事があるからと廊下の曲がり角のところで別れた。獅郎は滅多にこない息子の学校の片隅に取り残される。
「いつ来ても無駄に疲れるなあ。」
そこらへんの奥様方と保護者同士の親睦でも深めにお茶でも誘おうかとも思ったが、奥様がたは娘息子の進路ばかりに夢中だし、お茶をしたとしても燐の悪評を聞くか雪男への褒め殺しになりそうなので、廊下を行き交う少し身奇麗にした人妻の美しさを目に留めるだけだった。
「シングルファーザーって、まだまだ市民権を得てないなあ。誰か俺に構ってくれよ。」
シングルでなおかつファーザー(神父)。この取り合わせはちょっと悲しい。どうしてカソリックは独身男じゃないと駄目なんだろう。
「構って欲しいなら、私が構ってやりましょうか?」
思わずそこらへんにある自販機を投げたくなる声が聞こえてきた。しかし如何せん公立の中学には自販機が置かれているはずがない。
「おいおい。メフィスト。お前みたいな天上人がこんなちんけな中学校になんの用だ?」
「こんなちんけな中学にも、名門正十字学園の受験生はいるものですよ。ちなみに貴方の息子さんでしたけどね。貴方は保護者としてここに来たのでしょうが、私は進路の受け入れ側の立場で今日この中学に足を運んだわけです。」
「そうかい。用事はまだ終わってるわけ、ないよな?」
「もう終わってますよ。受験生はいるけど少ないですからね。」
メフィストの返答を聞いて、獅郎は頭を掻いた。今日のお茶の相手はこの胡散臭い悪魔になりそうだった。
男二人が向かい合ってのお茶は気まずいというか、美味しいと思わなかった。お茶もお菓子も。
「私達の末弟は未だに炎を発現させてないのだな。」
「一生出さなくてもいいだろうが。ああいうの。」
そしてこの話題である。サタンの息子の燐の話。
「大丈夫です。貴方が死んだら、この私が責任を持って彼を引き受けます。」
責任を持つということは、燐を対サタンの兵器にするということだろう。それだけならいいが、この男のことだから燐を体のいい玩具にしかねない。昔の自分ならさして気にしなかったけれど、燐を育てていく内に簡単に死んでこの男に任せてたまるかと思うようになってきた。でもそんな意地も、意味が無くなる日も遠くないのは、獅郎だって予測がついている。
「貴方にしては姑息なやり方でしょう。大人しい弟まで巻き込んで、私が直に彼の全てを支配する構図を防いだ。雪男君が祓魔師を目指さなければ、私が貴方亡き後、燐君を引き取って私のやり方で思う存分やれたのですが。そこだけは残念でしたねえ。」
「お前をヒギンズ教授にしないさ。精精足長おじさんが似合ってるぜ。」
「今に貴方は私をプロフェッサー・ヒギンズにしなかったことを後悔しますよ。親に対しての子どもというのは、ものすごく残酷なことを平気に言いますからね。例えそれが愛の裏返しでも。」
嫌な予言だった。嫌がらせにしては獅郎の胸を抉り取りそうだった。だからこの悪魔に一矢報いたくなる。
「あと五年したらな。俺はあいつを……」
これは遺言になるかもしれない。死ぬ前の告白にしては、生臭くて聞くに堪えないかもしれない。でも自分の胸の内を無いことにはしたくないので、敢えてこの悪魔に言ってしまおう。なのにメフィストは水を差すように言葉を紡ぐ。
「そうそう。カッコウの雛を育てるのは勝手ですけど。」
「何が言いたい?」
「貴方こそ。先に貴方が言葉を発したのですから、先に貴方が言いたいこと言って下さい。」
「俺はあいつを大切だと思っている。たぶん育ての親として俺は失格だ。あいつを、いつまでもまともな社会に解け込めさせることは出来なかった。あいつにそれを強制出来なかった。何故なら――。」
メフィストは残った紅茶を派手な音を立てて啜り上げる。
「では。私の言いたいことです。カッコウの雛を育てるのはアホなモズの勝手ですけど、その雛が育ったからといって、交尾をするのは流石に駄目です。」
悪魔の癖にと獅郎は苦笑う。でもそれは道理だった。
「貴方の燐君への思いはそのまま墓の中に持って行きなさい。吐き出したい時は懺悔室で神様にか、美味しい店で悪魔にでも愚痴りなさい。」
こうやって書くと良い奥さんっぽく思えてくる。というか愛人? 二号?
またカップリングが増えてしまいましたが、うちのサイトでは最初の青エクカプは獅燐を考えていたので、やっと出すことが出来て感無量です。燐はファザコンというより、本当はお父さんが好きだったんだよ! でも本人は気付いていないから、結局結末は第一話になってしまうわけですが。勝呂に対しての思いも、雪男に対しても、根っこには獅郎がいます。
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忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
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