幸福雑音
女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。
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☆ss「カバティーナ」青エク 雪燐「トスカ」の翌朝
「雪男。起きろよ。」
身体を揺さぶられて薄目を開けると、制服に着替えた燐がベッドの脇にいた。そんな燐の姿がはっきりと目に映るほど、もう夜は明けきっていた。
「兄さん……。」
昨夜、激昂して泣き崩れたあと、兄を床の上に残したままベッドに倒れこんだのは覚えている。そのあと、あまりにも急激に神経を高ぶらせたせいか、反動でそのまま熟睡してしまったらしい。朝になって兄に起こされたことも含めて、今までだったらありえない醜態を晒してしまったと後悔した。
「兄さんに起こされるなんて初めてかも――。」
言いかけて気がついた。燐の目が赤くてねむそげに伏せられている。
「もしかして、寝てないの?」
燐はいやと否定するが、どう見ても十分な睡眠を取ったような顔には見えない。
「あんまり眠れなかったけど、雪男が心配するほどじゃないから。ちょっと早いと思ったけど。一人で手持ち無沙汰だから起こしちゃっただけだし。」
そう言って、はいっと雪男の分の弁当を手渡してくる。弁当を作って着替えて本当にやることがなくなったから、自分を起こしたんだろうと雪男は推測した。燐は雪男の顔を見つめている。自分も見つめ返す。
昨夜のことを思い返してみると、普通の兄弟仲ならお互いに当分の間は避けたりされても可笑しくないのにと雪男は思う。このへんが兄のトンチンカンで不器用なところだ。
弟の顔をかなぐり捨てた男に組み敷かれて、暴力的な言動を取られて恫喝的に愛してると言われた兄。それなのに一夜明ければ懲りずに自分からそんな男の手の届く距離に近づいてくる。兄の頭は防衛本能が仕事をしないのだろうか。しかしそれも違うと雪男は判断する。
「ありがとう。起こしてくれて助かったよ。兄さん。」
普通に答えるとなんだか安堵したような表情をされた。やはり少しは警戒された上での接近だったということか。
雪男が上半身を起こしたところで、安堵したように笑うと燐はベッドサイドから離れようと身体の向きを変えた。
「!」
雪男は燐の腕を掴んでベッドに引きずり込む。壁をくりぬいた構造のベッドなので、一旦引きずりこめば燐はなかなか脱出出来なくなる。
「蒸し返すようで悪いんだけど、夕べ勝呂君と何をしていたの?」
「何をって?」
今までのやりとりから油断していた燐は、突然の質問の意味が分からなくて雪男に訊き返した。雪男は至極冷静な態度で質問に補足する。
「心のネジが緩んだように時間にルーズになるのは、それなりの理由があるからだよね? 真面目な勝呂君までが兄さんに毒されたとなると、疚しい事情を考えるのも当然じゃないか。」
「疚しいって……。ただ離れるのが寂しくて、俺が駄々こねただけだよ。」
ぶっきらぼうに答えてはいるが、言葉の端々に甘さが潜んでいる。初心な兄が恥らっている様を見て、雪男の執拗な独占欲がなおさら膨れ上がる。
「駄々をこねて、それで?」
壁際に追い詰められて腕を押さえ込まれた燐はろくに抵抗する気配がない。雪男のことより昨夜の勝呂とのことに酔いしれているのか、この朝初めての穏やかな笑みが口元に浮かぶ。
「ギリギリまで一緒にいてくれて、俺を門限破りしてたまるかって言って、この部屋まで送ってくれた。俺が引き止めてたんだ。勝呂は悪くない。」
今まで見たことのない兄の甘やかな笑みに、何故か吐き気を催した。だからささやかに皮肉を吐き出す。
「そうだね。兄さんは甘ったれだから。」
燐は顔を歪めて唇を噛んでいる。これで良いと雪男は溜飲を下げた。
甘やかさないと言ったのは自分だが、まさかその甘え心が他に向かうとは思わなかった。でも予測してしかるべきだったと雪男は臍を噛む。
子どもの頃からいつも周りには反抗的だが、人恋しさを滲ませていた。それをどれほどの人が気付いていたかは、分からない。でも気付く人間は気付く。そして絆されるのだろう。兄の危うい気配に。
自分だってその毒に当てられている。そうでなければ兄弟仲を越えて愛したりはしない。それは兄が危うければ危ういほどエスカレートしている気がする。エスカレートさせたのも自分だろう。兄に父の死を突きつけて、拘束し監視し、行動を極端に抑制しようとした。豹変した弟に対し、精神状態が不安定になっていたので、同じ塾に通う勝呂に惹かれてしまった。
まったく自分にしては失態の数々だろう。もう子どもでもないのだから、兄が色気づくのを計算に入れてなかった自分に笑えてくる。友達さえ作れた試しのない兄が恋人なんてと、侮っていたのかもしれない。でもまだ挽回出来る。次の兄に対して尋問する言葉を選ぶ。
「こんなことを訊くのはどうかと思うけど、身体を見せるようなことはしてないよね?」
「身体を見せるって?」
「セックスとか。」
燐はたちまち真っ赤になる。そして必死に反論し始める。
「そんなの、出来るわけねーじゃねえか。尻尾のこともあるし……。」
「暗いところならある程度誤魔化せるかもしれないじゃないか。そういう体位もあるし。」
「体位って……。」
ますます顔に血を上らせて燐は雪男から目を逸らそうとする。どうやら本当に身体の交渉は無いようだと雪男は確信して、燐には気付かれないようにほくそ笑んだ。
「キス、だけ。」
「は?」
「キスだけは、してくれる。デコとかほっぺたとか。……く、く………くちびるとか。」
思わず腕に力を込めそうになったが、すんでに脳がやめろと命令する。雪男の腕はその命令になんとか従った。大きく息を吐いて、そうかと呟く。
「それを僕に信じさせたいなら、一つして欲しいことがあるんだけど?」
「何をすればいい?」
雪男は燐の腕から手を放すと、結ばれたネクタイを緩めて抜き取った。
「服を脱いで僕に兄さんの身体を見せてくれないか? 何の痕跡も無かったら、とりあえず信じてあげるから。」
手を伸ばす雪男に燐はされるがままになるしかなかった。信じて貰う為に。
どんどん状況がやばくなっているような気がします。とりあえずもう少し続きます。
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忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
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