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幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

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☆ss『it`s show time!」(伊雑、留文前提で6は。自慰話注意)


「う……うぅ……ん。」
 裸足の足の裏が汗ばんで、乾いた敷布に足指が皺を作っている。
「く……。そ、そこ………。」
 伊作は既に灯火の消えた自室の布団の上で、仰向けに寝転がって悩ましげな声を上げた。右手は股間の立ち上がった愚息に添えられており、左手には何故か、一巻きの包帯が握られている。
「あ……雑渡さぁん……。」
 左手の包帯を鼻先に持っていくと、それに染み付いた匂いを嗅ぎ、鼻を擦り付ける。汗と、傷から染み出た白血球の死骸や血小板の匂いがするが、大方は傷薬のメンソレの匂いが伊作の、情欲に満たされた脳内に一つの映像を映し出す。
「雑渡さん――。」
 口からついて出る言葉は、伊作にとって可愛くて可愛くて可愛くて仕方の無い、二周り年上の恋人の名前だった。息を吸い込むごとに身体の中にその薄荷の匂いが入ってくる。それに刺激されたように右手の動きが早くなる。伊作の状態はいわゆる、一人エッチに入り込んでいるリアルな十代の姿だった。
目の前にはいないが、瞼の裏には、夜目を凝らして目に焼き付けた、自分だけに見せてくれた姿があった。
 その姿は伊作がタソガレドキに行かなければ見られない。見たと言っても、雑渡は昼日中の行為に対して抵抗があるとか、夜でも部屋の中は真っ暗でなければいけないとか、行為は雑渡の邸宅の寝室にのみ限るとか、やたら条件が厳しい。つまり光が差さない場所でのかなりおぼろげな映像。伊作の妄想の中の雑渡は、昼間に包帯を換えるときに見た裸と、夜に自分の下でかすかに自分に揺さぶられている雑渡を重ね合わせて、脳内で合成したものだった。
 それでも思春期真っ只中の伊作には十分だったと言いたいところだが、忍術学園に帰ってきた後の途方も無い欲求不満に時には、このように自分で慰めることになる。
「あー……はぁ…。は、は、はぁ……。」
 妄想するだけ妄想して伊作はもう少しだと思った。しかし――。
 
「伊作くーん。」
 衝立の向こうから留三郎の声がする。突然の、しかもらしくないくん付け。伊作は最後の大きな波を思い切り外してしまった。頬を引きつらせながら返事する。
「なあに。留三郎?」
 腹立たしさを抑えて、伊作はつとめて穏やかに言う。
衝立の向こうを意識してなかったわけではなかったが、同室者は熟睡しているか、それとも気を利かせて伊作のせわしないあえぎ声を知らん振りしていると思い込んでいた。まさかそんな最中に声を掛けてくるなんて。日ごろは荒っぽく見える癖に、人情家で気遣いが細やかな留三郎らしくないと伊作は思った。それ以前に同じ男なんだから、こんな時に声を掛けるのは非常識なんじゃないかとも思った。しかし自分に非がもしかしたらあるかもしれないので、ここは穏便にとりあえず下手に出てみることにする。
「えーと、なんか……僕の声。うるさかったかな? なるべく声を出さないようにして気を遣ったつもりだけど、駄目だった?」
 伊作の問いに留三郎はいやと返してきた。
「それほどじゃない……。」
 伊作は心の中で舌打ちする。じゃあ、邪魔すんじゃねーよ。イライラする自分を押さえ込んで、無理やり穏やかに相槌を打つ。
「そっか。留三郎に声かけられると思わなかったから。びっくりしちゃったよ。」
 衝立の向こうから、はははと力の無い笑い声が聞こえてくる。なんだか様子がおかしい。というか留三郎らしくない。気になるがあまり触れたくない。
「じゃあ。僕はもう寝るから、留三郎も寝たら?」
 留三郎の息が詰まる音が伊作の耳に入る。
「伊作くん。オナニーの途中だったんじゃないの?」
 伊作はうっと声を詰まらせる。
「わ、分かってたんだね。でも、こういう時はそんな風に声を掛けないのがお約束じゃなかったっけ? 一般的にはそうだよね?」
「それは、分かってるんだ。でも。俺、伊作くん。」
「その伊作くんって言うのやめてくれる? 僕を伊作君って呼ぶのは雑渡さんだけでいいんだけど。」
 今まで押さえに押さえてきたものが、わざとらしいくん付けの呼び方で、表に出ずに大人しくしていることが出来なくなった。声が刺々しくなっているのが伊作自身でも分かっているが、止められない。
「ごっご、ごめん。わざとじゃないんだけど、気がついたらくん付けしちゃったって感じ。」
 伊作の声の棘に気がついた留三郎が、気弱に弁解する。ますます伊作の言葉の棘が鋭くなる。
「本当にどうしちゃったんだよ。君は。僕が雑渡さんのこと考えながら、オナニーするのがそんなに不快? 邪魔せずにはいられないほどだったの?」
 忍術学園の生徒の交際としては褒められたものではないかもしれない。けれども伊作なりに、世間の逆風に対して覚悟して踏み出した恋愛であり交際なのに。別に誰かに深刻な迷惑を掛けているわけじゃないし。事情の分からない第三者に咎められるもんじゃないと、半ば開き直っている。
それでも身近な友達の留三郎にとって気に触る物件なのだったら、この先のこいつとの付き合いも考え直さなければならないなと、伊作は自分の腹を括ろうとしていた。六年間の友情より、数ヶ月の恋愛のほうが伊作にとっては重大で、友人より恋人の肩を持つということが、今の伊作にとっての正義だった。それは勿論、間違った正義であったが。
「お前の気持ちは分かるんだっ。」
 留三郎は衝立から身を乗り出してきた。伊作は股間を掛け布団で隠す。その伊作の所作を見て、留三郎が複雑な表情をする。しかめられた眉。少し噛まれた唇。嫌悪の表情なのだろうか。いや、なにか違うような気がする。いろいろと頭の中で考えてみたが、ふと思いついたのは、惜しいというかもの欲しそうな表情だった。
「じゃあ。なに?」
「お、俺は……!」
 語気の割には口篭っている。
「俺はってなんなの? 留三郎。」
 留三郎は顔を真っ赤にして吐き出すように言う。
「あの、俺の見てる前でオナニーしてくれないかな? ――どひゃっ。」
 伊作の枕が留三郎の顔面にヒットした。
「それってどういうプレイなんだい! 僕が君にそんなことしてあげる義理なんて無いだろうが!」
 伊作は立ち上がって股間を左手で押さえながら、今にも衝立を蹴飛ばす寸前だった。
「い、いいじゃないかっ。ちょっとくらいおすそ分けしてくれたって。」
「おすそ分けって何のおすそ分けだよ。」
 激昂している伊作の迫力に押されまいとしているのか、留三郎は歯を食いしばって衝立を押し返す。
「お前のネタって、あのプロ忍と休みの時に良い思いしたのを思い返してんだろ!」
「そうだよ! だからどうだってんだよ!」
 伊作の口調は完璧に元片思いの相手・潮江文次郎の留三郎への怒声をなぞっていた。
「だから、だからっ。羨ましいんだよ!」
「はあっ?」
「俺はな、文次郎をネタにしてセンズリ掻こうにも、ネタになるようなことひとっつもしたこと無いんだよっ。」
「嘘つけえ!」
「嘘じゃねえ!」
 留三郎は衝立をどんと伊作側に押す。しかしそれを伊作も負けじと押し返す。伊作と留三郎の間で火花が散った。
「同じ敷地でのうのうと一緒にいるじゃねえか! ふざけんなこの野郎! 誰がそんな不自然な状況、信じられるってんだよ! お前がまだ文次郎に手ぇ出してねえだって? じゃあ、文次郎は未だにバージンってことかよ。」
「そうだよ。文次郎はバージンで俺はまだチェリーだよ! 信じられないかもしれねえが、考えてもみろっ。文次郎と俺がいつ、二人きりになる機会があったよ? 授業だの補習だの自主練だの委員会だの就職活動だの実習だの後輩の世話だの、それで朝から晩まで埋まっちまうんだよ。それに一番にネックになってるのは、お前らとの付き合いだよ! それが楽しくないわけじゃねーよ。文次郎だって喜んでるし。あいつが喜んでるのに、俺がなんかぶつくさ言うのも可笑しいじゃねーか。」
「そうだね。留三郎だって、なんだかんだ言っていっつも楽しそうに僕らに付き合ってくれるよね。」
 留三郎の長い愚痴に、伊作は口を挟めなかった。さっきまでの文次郎口調は収まり、それと入れ替わりになんだか留三郎に申し訳ないと思う伊作が浮上してきた。
「たまーに二人になってもさあ。前みたいにどつきあう事もなくなって、顔を見合わせて笑いあうなんて、以前には思いもしないような感じになっちゃって。後輩の前で喧嘩するのも、あいつはどうか知らないけど、俺は実際それがパフォーマンスとかポーズみたいな感じになってるし。要するに満ち足りてるんだけど、その分あんまり激情っていうのかな? 衝動的なものがなくなっちゃったんだよ。次の段階に突き動かすきっかけがなくなちゃったんだよ。」
「君たちすっかり丸くなっちゃったんだ。」
 留三郎の言葉を伊作は反芻する。確かに思い当たる節ばかりだ。忙しいのは伊作も同じだが、留三郎と文次郎はその上に、基本的に付き合いが良いという性格もある。伊作のように休みごとに校外に出て雑渡とデートなんてことは、本当に留三郎にとって羨ましいことかもしれない。
「だから。別にそういう毎日に不満があるわけじゃねえんだよ。俺と文次郎が好きあってるのは確かなんだし。だけど欲求不満だきゃあ、充実した毎日でも如何ともしがたいんだよ。だから抜こうと思ったわけだけど、妄想に出てくるのはほんわかした笑みを浮かべる文次郎ばかりなんだよ。」
「文次郎のほんわかした笑顔って! それこそ羨ましいよっ。」
 自分の頭で合成した雑渡の痴態とどちらが逸品かはわからないが、甲乙付けがたいと思う伊作だった。しかし留三郎は涙ながらに語る。
「そんな眩しいもんで抜けるわけないだろうが……」
「まあ確かにね。」
「だからね。伊作くん。」
 留三郎はどっこいしょと衝立を持ち上げると、その重たい壁を脇にどかした。
「伊作くんがオナニーしているところ見て掻いたら、なんとか抜けるんじゃないかなって? いいだろ? 人助けだと思って。保健委員だろ。伊作くん?」
 伊作としては、お前は素直にいやらしい文次郎を頑張って妄想してくれと言いたい所だが、留三郎が告白した自分はまだ童貞という事実が、頭に引っ掛かって言えなかった。
「そ。そんならいいよ……。」
「ほんと! 伊作くんありがとう!」
 伊作の態度が軟化したせいか、留三郎の「くん」付け呼びが復活している。伊作はまた苦々しく留三郎を見る。目を潤ませる留三郎に、伊作は一言だけびしっと釘を刺した。
「その伊作くん呼び禁止! それと、今度は絶対に途中で声掛けないでね! 集中出来ないんだからっ。」
 

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柴仲達
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読書、二次創作
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忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

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