幸福雑音
女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。
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☆ss『色の授業前夜』(留文。注意:本番なし。ほのぼの?)
「忍術学園には女装の授業はあっても、色の授業はないなあ。」
留三郎が何気なく呟くはずもないことを呟くと、文次郎はびくりと体を震わせた。
「お前……。なんかそれは含むところがあるのか。」
留三郎は首を振る。
「含むところって。単に忍術として房中術って言葉は習うけど、実際の講義なんかうちには全然ないから。」
文次郎は突然留三郎から今までの会話から何の脈絡もない「色の授業」などという言葉が飛び出したので、何かの前振りかと身構えたのだがそんな自分を少し恥ずかしく思った。
「諜報活動用なら女装と所作を教えるくらいでいいというのが、忍術学園の方針らしい。それ以上のテクニックなんて教えたら、そこから変な方向に行く奴が出てくるかもしれないというので、学園では色の授業については、あまり積極的じゃないって聞いたことがある。女装程度でも教員の山田先生のように中毒じみた癖になる人もいるくらいだから、ダイレクトに快楽を主体に置いた房中術なんて――。まあ、知りたい奴がいるなら自主的に調べろってことだな。」
文次郎は、俺はそんなのには頼りたくないから勉強していない、と付け加えた。留三郎はお前らしいなと笑みを浮かべている。
「でも忍術学園って授業の進み方によっては、六年生の後半くらいで教えることがなくなった時に、しょうがないから座学で教えてみようかって企画が上がることもあるらしい。っていう話は昔の先輩から聞いたことがある。今の俺たちのカリキュラムからすると、ひょっとしたら色の授業とやらに遭遇するかもしれないな。」
「留三郎は受けてみたいのか? 色の授業。」
真顔で問いかける文次郎の顔には戸惑ったような色が見える。留三郎は慌てて手を横に振って否定する。
「あったら逆に、なんか……。どうしようって思って。講義だけって聞いてても、なんか隣に同級生がいて、教えてくれるのも土井先生とかだったら気まずいじゃん。」
「……なんとなく、わかる。」
文次郎は深く頷くのに留三郎はやはり頷いてみせた。
文次郎は思った。誰しも性的なことに多大な感心を、表に出す連中ばかりではない。自分たちは忍者にしては青臭いことを考えているのかもしれない。
仙蔵辺りに言わせればプロ根性が無いとか、細かいことを気にしすぎるとか、そんなに心に制限があってどうするかとか、とにかくどういうことに対してても知識は尊いとか、無知は罪だとか、そんな説教が飛び出るところだろう。
留三郎の隣の男は、学園で一番忍者していると言われている。だけど付き合い始めてからは、こうやって普通の微妙な年頃らしいところを垣間見せてくれるようになって、とても嬉しい。文次郎は自分のそんな未熟なところを、恥ずかしく思って重く捉えてしまいがちだけど、留三郎からしてみればそんなに気にしなくてもいいと思っている。
「まあ。山田先生だって、エッチのテクで忍者として大成したわけじゃないし。学園長もそうだし。」
「そうだな。女装さえ出来れば、大概のことが出来るよな。」
恩師の前例を以って、二人は根拠の無い結論を出した。それで納得がいくらなら、そしてそれが正解ならいいのだが。やはり理論に数々の大きな穴がある。しかしこの場にそれを指摘するであろう仙蔵がいない。
「良かった。」
文次郎がぽつりと言う。
「何が?」
留三郎の問いかけに、文次郎はしばらく黙ってから答える。
「お前が色の授業って言い出したとき、内心すごく焦った。俺が今までそういうことをお前にさせなかったから、授業の話にかこつけて俺を詰っているのかと思った。」
「え? 気にしてたのお前?」
留三郎にとっては青天の霹靂な言葉だった。留三郎は文次郎を、潔癖でくそ真面目で天然だから、自分たちの恋愛関係においてそういう進展が無いのだと思い込んでいた。まさか文次郎が意識的にソッチ方面を避けていたというのは、本当に寝耳に水だった。
だとすればこれから自分の出方次第で、念願の初・××までに漕ぎ着けるかもしれない。(××はせいぜい手を繋ぐとか、デコチューに留まるかもしれないが。)とにかく、今までろくに触ることさえ叶わなかった文次郎に触れる可能性が見えてきた気がして、留三郎の心臓は煩いくらいに高鳴った。高鳴りすぎて次の一手が一向に決まらないくらいに。
「いいよな? 俺達このままで。」
清清しいまでの声音で文次郎が言った。
「え? このまま?」
「だってお前も、苦手とか言ってたじゃねえか。」
それは違うんだと言いたいところだが、今までの文次郎からの共感がぶち壊しになるのが惜しすぎる。しかし。このままでは文次郎は留三郎からしてみれば膠着状態の進展しない関係を全肯定して、そのまま続けていきそうな気配がひしひしと伝わってきた。
『だれか、俺に勝機を――。神でも仏でも悪霊でも、仙蔵でもいいから……。』
「おーい。お前ら!」
そこに顔を出したのは仙蔵だった。留三郎の願いを聞いていたわけではないのだろうが、とにかくそこに仙蔵が降って沸いてきた。
「仙蔵。どうした? なんだかやけににやにやというか。」
「いやあ。カリキュラムでやることが無いと先生方が嘆いていらして、結果特別講義が入ることになった。」
「それってひょっとして……」
文次郎の怪訝そうな声に反して、仙蔵はこれだと一枚のプリントを二人に差し出した。それはまさしく二人が話していた『色の授業』の講義日程だった。
「参加は希望者のみらしいが、お前らはどうする。私は尋ねるまでもないだろう。参加するぞ。」
「俺も参加するつもりだ。」
え? 留三郎の間髪入れない返答に、文次郎は開いた口が塞がらなかった。それでも仙蔵の問いかけは文次郎にも容赦なく向いた。
「文次郎。お前も当然参加するよな?」
留三郎が参加しないと思い込んでいて、自分も参加せずとも恥ずかしくないと思っていたが、留三郎が少しの躊躇も見せずに参加すると言ったので、文次郎はもう縦に首を振るしかない。
「そうか。毎年あるとは限らない講義だからな。我々にとって収穫になればいいな。」
仙蔵はばしばしと文次郎の肩を叩く。
「そうだよな。無知は罪だからな。なんでも知っておいて損はないよな。」
仙蔵が言い出しかねない言葉が、何故か留三郎の口から出てきた。白々しくならないように留三郎はあくまで知的好奇心だと付け加える。
「そうか。お前らは実生活に即役立つしな。」
仙蔵が言わなくてもいい事を、さも良いことを言ったとばかりに言う。文次郎は苦笑いを浮かべて曖昧に頷くしかない。
「それじゃあ明日の午後の授業だからな。お前ら絶対に来いよ。」
仙蔵は足取り軽やかに部屋を出て行く前に、文次郎と留三郎を振り返る。文次郎は留三郎に手をとられて、その握られた手で仙蔵に手を振ることになってしまった。
仙蔵の姿が見えなくなった後、文次郎は留三郎のほうを向き直った。
「留三郎……。お前やっぱり――。」
文次郎の疑わしげな眼差しに敢えて留三郎は目を背けなかったが、その顔はけして本当の笑顔ではなかった。
「出るって言わなかったら、いろいろとねちねち言いかねないだろ。あいつは。」
「それはそうかもしれんが、お前、興味が無いって。」
「興味は無いけど。そうだ、これは付き合いなんだ。そう考えれば気が楽だろ? 明日はたぶん伊作も長次も小平太も参加するだろうし。俺達二人だけ参加しないのも不自然な話だろ?」
そういいながら、やけに鼻が膨らんで鼻息の荒くなる留三郎に、うそ臭いと思いつつも言い返せない文次郎だった。
(授業編に続くかもしれない)
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忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12
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