幸福雑音
女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。
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☆ss「24」 雪燐、ほんの序盤戦
「今期の奥村先生の業績ですが。申し分ないと思います。一人を除いた塾生を候補生に昇格することも出来ましたし。」
「それは僕一人の成果ではありませんよ。理事長。」
「それは知ってます。それを承知で敢えて言ってるんです。」
土曜日の早朝に、理事長室に呼び出された雪男はメフィストの慇懃な褒め言葉に、こっそりと肩を竦める。
「では本題です。今期の貴方にボーナスを与えたいと思いますが、何か叶えたいことはありませんか?」
雪男は金じゃねえのかよと内心毒づいたが顔には勿論出さなかった。
「金品が相場だと思うのですが。」
「でも貴方の場合、貯金にしてしまって銀行の肥やしにしてしまいそうでつまらないのですよ。貴方自身が貴方の労苦に対して報われたと実感して頂けるようなものがあったとしたら、貴方が何を望むかにも興味はありますし。」
何を夢のようなことを言っているんだ。このオッサンはと、雪男はこめかみあたりが痛くなるような気がした。ただでさえ兄を守るという目的の三割も達成出来たと思えない状況なのに。そしてやはり出来るなら、金が欲しいとも思う。
雪男が強く言えば、メフィストは渋々ながら金を渡してくれるかもしれない。ボーナスとは本来、常識的にはそうやって支払われるものだから。
「失礼ですが、やはり僕は現金が――」
「笑止!」
メフィストは雪男を指差す。
「私はボーナスという言葉を賞与とは訳しませんよ。」
「いや。組織なんですから賞与と訳すべきでしょう。」
「貴方ねえ、多感な十五歳が金で買えるものしか興味ないなんて、なんて無味乾燥なんでしょう。しかも貴方はさっき私が言ったとおり、金で手に入るものすら興味がないような気がして心配なのですよ。日本がどうしていつも不景気なのか知っていますか? 日本人はお金を使わずに、箪笥か銀行に必要以上に貯めこんでしまうという性質も原因だそうですよ。貴方はそんな日本人の典型だ。」
「いや僕は日本人ですから。それに景気はいまいちですけど、国内が安定しているのはそういった国民性の成せるわざなんですよ。」
「私は貴方と天下国家を語りたいから呼び出したわけじゃないんです!」
悪魔が駄々をこねている。
「さあ、言ってごらんなさい。金で買えるだろうが買えないだろうが、貴方が望むものを。」
雪男は一つ深呼吸をしてメフィストの目を正面から見据えて言う。
「サタンの首。」
ほおとメフィストは溜息をつく。
「そうきましたか。でもそれは無理です。」
「でしょう。」
メフィストは机上で指を組んで考え事をしている。何が欲しいと尋ねておきながら、それを却下してしまったため、この悪魔なりに後ろめたくなったらしい。雪男としても上司の言わんとしていることは汲んでいる。要は雪男にたまにはやりたいことをやればいいと、そう勧めているんだろう。
雪男の日常はやらなければいけないことだらけなので、やりたいことがそれに埋もれてしまっている。雪男は今現在はそれを苦に思っていない。苦に思わないように努めている状態だ。雪男は上司の意を汲んでつらつらと独り言を言ってみる。
「休みの日に普通に休んでいると不安になるんですよね。どんどん仕事とかやるべきことが後回しにされて、溜まってしまうような気がして。そしてついつい休みの日にも仕事に手を付けてしまうんです。」
「そう。私はそれを心配していたんです。」
メフィストは先ほどの不名誉な言葉を払拭するかのように言う。雪男は独り言を続ける。
「普通に有給休暇頂いても、僕はその時間にさえも仕事をしてしまうと思います。仕事とかやるべきことを忘れられないと思います。その忘れている時間さえも、時間として過ぎてしまいますから。」
自分は仕事と余暇の区別がついていない。雪男はそれに自分で気づいていなかった。独り言では自覚しているようなことを言っておきながら、その実は他人事のようだった。他人から忠告された言葉を繰り返しているようなものだ。
「十五歳と言えば、時間が無限にあると錯覚するようなそんな時期じゃないんですか?」
「はっきりいうと有限ですね。一日が四十八時間になって欲しい気分です。」
メフィストは首を横に振る。
「流石に太陽と地球のリズムバランスを崩す力は私にはありません。」
本当に一日が四十八時間になって欲しいと思っているわけじゃない。四十八時間あれば、せめて一時間くらいは普通に兄の燐と過ごせるかもしれない。
「えっと、こんなこと言ってもたぶん無理だって言われるかもしれませんけど。」
「なんですか?」
「僕と特定の人間の時間だけ、別に今この世界の時の流れから切り離すことは出来ますか? 二十四時間の外というか。浦島太郎に起きたことの逆を起こせないかと。」
「特定の人間というのは、お兄さんですか?」
「そうです。あと出来れば、その時の記憶は僕にあっても兄には無いようにして欲しいんです。」
「そのときの思い出を、二人で共有したいと思わないんですか?」
「今の僕たちの関係を崩したくないんです。」
「それで関係がどうこうなるとは思いませんけどね。」
雪男は机に手を置いて、屈みこんでメフィストに迫る。
「今のやりとりから貴方から反論はありませんでしたね? そしたら出来るということですね?」
「私の得意分野ですよ。時間と空間のことについては。まあ貴方から別の願いをこれ以上引き出すのは無理そうですし。どうです? 束の間の無限の休日を与えましょうか?」
「無限と銘打っても、実際は有限でしょうが。というか、一日分の時間で結構です。」
とにかく現実に反映されない休日が欲しい。
「金を要求してきたときにはケチ臭い方だと思いましたが、奥村先生はケチだとしても欲張りじゃないところが好感が持てるんですよね。」
「欲張りは悪魔につけこまれますからね。」
暗にメフィストに対してあまり恩を着たいと思わないのが正解かもしれない。しかしメフィストという悪魔は実際に無限の休日を現実にする力があるらしい。そして今、雪男にはそれに取って代わる願い事はない。
「それでは確認しておきます。この願いはボーナスという名目で、これは僕が受け取る正当な報酬ということでいいですね?」
「いいですよ?」
「そして、この休暇は現実には何にも反映されず、奥村雪男にしか記憶されない一日ということでよろしいでしょうか?」
「お兄さんにとっては貴方と過ごした一日は無かったことにして欲しいと?」
雪男はそれに頷くのに数秒かけた。
「そうです。あくまで僕があげた業績に対する対価なんですから、僕以外にも影響があってはいけないと思います。」
メフィストの表情を窺う。雪男はこの上司に対してはどういうわけか突っ張る態度を取りがちになる。でもそれを上司に指摘されていないので、そこの所はやめどころがついていない。さぞかし青臭いと思われているかもと雪男は歯がゆくなる。
「せっかくのお兄さんとの楽しい時間を、自分だけが抱え込んでしまうんですね。」
「少々くどいですよ。理事長。」
「それもそうですね。では、いつごろがいいですか?」
「そうですね。今日がちょうど土曜日ですから、今五時三十分ですね。僕が寮に帰って六時からスタートということで。」
メフィストは目を丸くしている。隈がちょうどよくパンダのぬいぐるみじみていた。いつも人を食ったような悪魔が本気で驚いている。
「すぐ過ぎやしませんか? もうちょっと準備とかなんかあるでしょう。」
「ノープロブレムです。僕にとっては貴方の心変わりのほうにリスクを感じていますから。」
そんなふうに上司を皮肉っていても、内心は待ちきれないのだろうとメフィストは顔に出さないようにほくそ笑む。堅物を装っていても、やはり十五歳のガキだとメフィストは思った。
雪男は一礼すると理事長室のドアを開け退室する。その姿が消えたあと、メフィストは高速移動でドアの前に移動し耳を澄ますと回廊を走り去る足音が聞こえた。
「あの奥村先生が廊下走ってますよ。どんだけー。」
メフィストに呆れられながらも雪男は寮の六○二号室の前まで一気に走ってそのドアの前に立つ。右手の腕時計で時間を確認すると、五時五十七分三十秒。
あと二分と少し。六時になったらこのドアを開けよう。そして兄を起こして楽しい一日を始めよう。今までの息苦しかった数ヶ月を取り戻せるかどうかは分からないが、悪魔の気まぐれに今は感謝しよう。
「あと一分。五十九秒。五十八秒。………。」
どうせ兄の記憶には残らないけど――。
それでもいい。そのほうがいい。この休日は誰のどんな現実にも波紋を残すところがない。自分の胸の中にひっそりと仕舞い込まれる。
「三。二。一。兄さん――。」
このあと雪男は楽しい休日を過ごすことになる。しかし悪魔の気まぐれな魔法は、雪男の望むまま履行されるわけではない。
はい。まだ始まってもいません。とりあえず雪男と理事長の攻防ということで。これから雪ちゃんははじけまくる予定です。ほかにもシュラアサで海外ドラマタイトルパクリssを画策中。(ぱくるのはタイトルだけです。)
「それは僕一人の成果ではありませんよ。理事長。」
「それは知ってます。それを承知で敢えて言ってるんです。」
土曜日の早朝に、理事長室に呼び出された雪男はメフィストの慇懃な褒め言葉に、こっそりと肩を竦める。
「では本題です。今期の貴方にボーナスを与えたいと思いますが、何か叶えたいことはありませんか?」
雪男は金じゃねえのかよと内心毒づいたが顔には勿論出さなかった。
「金品が相場だと思うのですが。」
「でも貴方の場合、貯金にしてしまって銀行の肥やしにしてしまいそうでつまらないのですよ。貴方自身が貴方の労苦に対して報われたと実感して頂けるようなものがあったとしたら、貴方が何を望むかにも興味はありますし。」
何を夢のようなことを言っているんだ。このオッサンはと、雪男はこめかみあたりが痛くなるような気がした。ただでさえ兄を守るという目的の三割も達成出来たと思えない状況なのに。そしてやはり出来るなら、金が欲しいとも思う。
雪男が強く言えば、メフィストは渋々ながら金を渡してくれるかもしれない。ボーナスとは本来、常識的にはそうやって支払われるものだから。
「失礼ですが、やはり僕は現金が――」
「笑止!」
メフィストは雪男を指差す。
「私はボーナスという言葉を賞与とは訳しませんよ。」
「いや。組織なんですから賞与と訳すべきでしょう。」
「貴方ねえ、多感な十五歳が金で買えるものしか興味ないなんて、なんて無味乾燥なんでしょう。しかも貴方はさっき私が言ったとおり、金で手に入るものすら興味がないような気がして心配なのですよ。日本がどうしていつも不景気なのか知っていますか? 日本人はお金を使わずに、箪笥か銀行に必要以上に貯めこんでしまうという性質も原因だそうですよ。貴方はそんな日本人の典型だ。」
「いや僕は日本人ですから。それに景気はいまいちですけど、国内が安定しているのはそういった国民性の成せるわざなんですよ。」
「私は貴方と天下国家を語りたいから呼び出したわけじゃないんです!」
悪魔が駄々をこねている。
「さあ、言ってごらんなさい。金で買えるだろうが買えないだろうが、貴方が望むものを。」
雪男は一つ深呼吸をしてメフィストの目を正面から見据えて言う。
「サタンの首。」
ほおとメフィストは溜息をつく。
「そうきましたか。でもそれは無理です。」
「でしょう。」
メフィストは机上で指を組んで考え事をしている。何が欲しいと尋ねておきながら、それを却下してしまったため、この悪魔なりに後ろめたくなったらしい。雪男としても上司の言わんとしていることは汲んでいる。要は雪男にたまにはやりたいことをやればいいと、そう勧めているんだろう。
雪男の日常はやらなければいけないことだらけなので、やりたいことがそれに埋もれてしまっている。雪男は今現在はそれを苦に思っていない。苦に思わないように努めている状態だ。雪男は上司の意を汲んでつらつらと独り言を言ってみる。
「休みの日に普通に休んでいると不安になるんですよね。どんどん仕事とかやるべきことが後回しにされて、溜まってしまうような気がして。そしてついつい休みの日にも仕事に手を付けてしまうんです。」
「そう。私はそれを心配していたんです。」
メフィストは先ほどの不名誉な言葉を払拭するかのように言う。雪男は独り言を続ける。
「普通に有給休暇頂いても、僕はその時間にさえも仕事をしてしまうと思います。仕事とかやるべきことを忘れられないと思います。その忘れている時間さえも、時間として過ぎてしまいますから。」
自分は仕事と余暇の区別がついていない。雪男はそれに自分で気づいていなかった。独り言では自覚しているようなことを言っておきながら、その実は他人事のようだった。他人から忠告された言葉を繰り返しているようなものだ。
「十五歳と言えば、時間が無限にあると錯覚するようなそんな時期じゃないんですか?」
「はっきりいうと有限ですね。一日が四十八時間になって欲しい気分です。」
メフィストは首を横に振る。
「流石に太陽と地球のリズムバランスを崩す力は私にはありません。」
本当に一日が四十八時間になって欲しいと思っているわけじゃない。四十八時間あれば、せめて一時間くらいは普通に兄の燐と過ごせるかもしれない。
「えっと、こんなこと言ってもたぶん無理だって言われるかもしれませんけど。」
「なんですか?」
「僕と特定の人間の時間だけ、別に今この世界の時の流れから切り離すことは出来ますか? 二十四時間の外というか。浦島太郎に起きたことの逆を起こせないかと。」
「特定の人間というのは、お兄さんですか?」
「そうです。あと出来れば、その時の記憶は僕にあっても兄には無いようにして欲しいんです。」
「そのときの思い出を、二人で共有したいと思わないんですか?」
「今の僕たちの関係を崩したくないんです。」
「それで関係がどうこうなるとは思いませんけどね。」
雪男は机に手を置いて、屈みこんでメフィストに迫る。
「今のやりとりから貴方から反論はありませんでしたね? そしたら出来るということですね?」
「私の得意分野ですよ。時間と空間のことについては。まあ貴方から別の願いをこれ以上引き出すのは無理そうですし。どうです? 束の間の無限の休日を与えましょうか?」
「無限と銘打っても、実際は有限でしょうが。というか、一日分の時間で結構です。」
とにかく現実に反映されない休日が欲しい。
「金を要求してきたときにはケチ臭い方だと思いましたが、奥村先生はケチだとしても欲張りじゃないところが好感が持てるんですよね。」
「欲張りは悪魔につけこまれますからね。」
暗にメフィストに対してあまり恩を着たいと思わないのが正解かもしれない。しかしメフィストという悪魔は実際に無限の休日を現実にする力があるらしい。そして今、雪男にはそれに取って代わる願い事はない。
「それでは確認しておきます。この願いはボーナスという名目で、これは僕が受け取る正当な報酬ということでいいですね?」
「いいですよ?」
「そして、この休暇は現実には何にも反映されず、奥村雪男にしか記憶されない一日ということでよろしいでしょうか?」
「お兄さんにとっては貴方と過ごした一日は無かったことにして欲しいと?」
雪男はそれに頷くのに数秒かけた。
「そうです。あくまで僕があげた業績に対する対価なんですから、僕以外にも影響があってはいけないと思います。」
メフィストの表情を窺う。雪男はこの上司に対してはどういうわけか突っ張る態度を取りがちになる。でもそれを上司に指摘されていないので、そこの所はやめどころがついていない。さぞかし青臭いと思われているかもと雪男は歯がゆくなる。
「せっかくのお兄さんとの楽しい時間を、自分だけが抱え込んでしまうんですね。」
「少々くどいですよ。理事長。」
「それもそうですね。では、いつごろがいいですか?」
「そうですね。今日がちょうど土曜日ですから、今五時三十分ですね。僕が寮に帰って六時からスタートということで。」
メフィストは目を丸くしている。隈がちょうどよくパンダのぬいぐるみじみていた。いつも人を食ったような悪魔が本気で驚いている。
「すぐ過ぎやしませんか? もうちょっと準備とかなんかあるでしょう。」
「ノープロブレムです。僕にとっては貴方の心変わりのほうにリスクを感じていますから。」
そんなふうに上司を皮肉っていても、内心は待ちきれないのだろうとメフィストは顔に出さないようにほくそ笑む。堅物を装っていても、やはり十五歳のガキだとメフィストは思った。
雪男は一礼すると理事長室のドアを開け退室する。その姿が消えたあと、メフィストは高速移動でドアの前に移動し耳を澄ますと回廊を走り去る足音が聞こえた。
「あの奥村先生が廊下走ってますよ。どんだけー。」
メフィストに呆れられながらも雪男は寮の六○二号室の前まで一気に走ってそのドアの前に立つ。右手の腕時計で時間を確認すると、五時五十七分三十秒。
あと二分と少し。六時になったらこのドアを開けよう。そして兄を起こして楽しい一日を始めよう。今までの息苦しかった数ヶ月を取り戻せるかどうかは分からないが、悪魔の気まぐれに今は感謝しよう。
「あと一分。五十九秒。五十八秒。………。」
どうせ兄の記憶には残らないけど――。
それでもいい。そのほうがいい。この休日は誰のどんな現実にも波紋を残すところがない。自分の胸の中にひっそりと仕舞い込まれる。
「三。二。一。兄さん――。」
このあと雪男は楽しい休日を過ごすことになる。しかし悪魔の気まぐれな魔法は、雪男の望むまま履行されるわけではない。
はい。まだ始まってもいません。とりあえず雪男と理事長の攻防ということで。これから雪ちゃんははじけまくる予定です。ほかにもシュラアサで海外ドラマタイトルパクリssを画策中。(ぱくるのはタイトルだけです。)
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職業:
会社員
趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
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