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幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

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☆ss「ザ フィッシュフットマン」 志摩燐で雪燐、「ハンプティダンプティ」の後日談

 

燐は塾が終わったあと、正十字マートのチラシを見ていた。
「サンマ一尾百円か……。魚は雪男の好物だし、ちょっと旬じゃねえけど塩焼きにして食べさせてやるか。」
 悩むまでもなく今夜の献立を確定させた燐は、チラシを片手に主婦さながらの機動力で学校から最寄のスーパーマーケットまで歩いている。それにどうにか追いすがろうとする影があった。
「奥村君。今日こそあの時の屈辱をはらしたるで。」
 
 夕方のスーパーは戦場だった。しかし家族四人分とかを揃えなければならない主婦たちに対して、燐は弟との二人分の食材を揃えるだけでいいので、それほどの苦戦はしなかった。最小限の安売りさえ確保出来れば素早く次の日の弁当の食材も揃える。
 燐は長蛇の列のレジに並んでいた。ふと目の端にピンクの頭髪が映って燐の首をかしげさせる。しかし別にそれが同じ塾に通う同級生だからと言って声をかける道理はない。どうせ晩飯が足りなくて買い食いでもしに来たんだろう。気楽なガキはいいよな、主婦の苦労なんて全然わかってねえと脳内で呟いて、レジのお姉さんの前にカゴを置いた。
 
 寮に帰ればウコバクが待っていた。燐の数少ない料理友達の悪魔だった。ウコバクは持っていた鍋を燐のほうに見せる。
「今日はサトイモの煮っ転がしか。薄味の雪男好みのやつだな。俺もサンマ買って雪男の好みに合わせてるからちょうどいいな。」
 シェアしあっている厨房で燐とウコバクはハイタッチをした。示し合わせたような気の合った献立がやけに嬉しい。
「じゃあ俺はサンマの用意をするか。」
 パックを開けてサンマをまな板に載せる。そしてその腹を燐は切り開いた。
 
「ちょっとまったあ!」
 
 厨房のドアを勢いよくあけて、ピンク頭の男が侵入してきた。ウコバクは慌てて食器棚に隠れる。燐はそれを確かめると、なんだよと闖入者を威嚇する。
「誰かと思えば、食に対する邪道いや外道のマヨラー野郎じゃねえかよ。何が待った、だ。俺は俺と雪男の分の晩飯作ってるだけだよ。」
「その晩飯のメインディッシュが問題なんや。今。自分、そのサンマをどうしようとしとったんや?」
 燐はきょとんとしている。
「内臓と取ろうとしてるんだけど?」
「ぶーっ。サンマの塩焼きというたらな、内臓はとらんとその苦味を味わうのが常識や。奥村君のいっぱしの料理人気取っとるつもりやろうけど、そないな非常識平気でやらかしといて、ヘソが茶ぁ沸かすわ!」
 うっ。と燐は詰まる。小さい頃から料理をしていることがここで仇になった。苦いのに耐えられない幼少時から料理をしていただけに、サンマを塩焼きにするときは必ず内蔵を取っていた。それに文句をいう大人もいなかったので、習慣からサンマの内臓を取ることが邪道だということを忘れていた。それを志摩に見破られていたのか。たぶん常日頃の行動から。変なところで観察眼のある奴だと思った。
「奥村君。俺が卵焼きにマヨネーズかけた時になんて言うたかな? やっぱりお前はランク外とか、そないなこと言うとらせんかったかな? でも料理に余計なものかけるのと、本来の料理に必要なもんを勝手に取り除くんは、どっちがどうなんやろうなあ? なあ、奥村君。」
 燐は唇を噛む。あの時は気にしなかったが、スーパーで志摩を見かけたのはこの場面を狙われていたのだという事実に今更気がついた。
「奥村君がチラシをチェックしている時に、今日があの日の雪辱の機会やと俺は思ってたんや。まあ、溜飲が下がったからもうええわ。今日は帰らして貰います。」
 志摩はあっさりと退くようだった。燐は内心ほっとしてその後姿を見送る。しかし出口で志摩はくるっと燐を振り向いた。
「と思うたけど、それで済むと思うたら大間違いやっ。」
「なんなんだよっ。」
 志摩は再び燐のつかつかと戻ってくる。
「お詫びと言ってはなんやけどな、俺のランク外発言を取り消して貰おうか燐ちゃん。」
 いつの間にか「奥村君」呼びが「燐ちゃん」に摩り替わっている。志摩の強気が窺われた。
「坊よりかっこええは流石におこがましいかもしれんけど、燐ちゃんに一矢報いたんやから、燐ちゃんの直ぐ下のクロの上くらいにはしてくれんとな?」
「えっ。クロの上っ?」
「嫌や言うても聞かへんで。明日の塾のときに更新されたランク表持って俺に見せるんや。ええな。燐ちゃん。」
 志摩は燐の肩に腕を回して囁く。燐は俯いてそれに頷こうとしたその時だった。
 
「ちょっとまったあ!」
 
 またもやドアが開け放たれる。ウコバクはうるさそうに食器棚から顔を覗かせている。かなり鬱陶しそうだ。三様の視線がドアに集まる。入ってきたのは申し合わせたような献立に一番満足しそうな人物だった。
「そのサンマはまだ塩をかけられてないっ。兄さん、志摩君に屈服するのは早いよ!」
 呼ばれもしないのに飛び出てきたのは、黒子と眼鏡が特徴的な奥村雪男だった。雪男はまな板の上のサンマの前に躍り出て、燐の手を取る。
「兄さん。サンマを三枚に卸すんだ。」
「雪男。どういうことなんだ?」
 首をかしげながら燐は内臓を抜いたサンマを器用に三枚に卸す。雪男はカバンの中から一本のビンを取り出すと、そのサンマにばしゃばしゃと振りかけた。
「雪男。これは蒲焼のたれじゃないか。」
「そうさ。内臓を抜いても蒲焼なら許される。」
「うっ。若先生そうきたか――。」
 献立変更まで志摩は頭が回っていなかった。
「見事な返しやわ。先生、最後まで勝負を捨てないその執念。」
「いや、お前の相手は俺だったよな? それよりも――、雪男。お前薄味が好きな癖にいいのかよ。せっかくのサンマを甘辛の蒲焼にしてっ。今日はお前の好物ばっかりだと、思ってたのに。俺のためにそんなことしなくていいのに。内臓抜いた塩焼きにしようとしたのは俺なのに。どうしてお前がそんな無理を通そうとするんだよ。」
 雪男はふふふと笑うと、どさくさに紛れて兄を抱き寄せる。
「僕は、兄さんの為なら大根おろしもスダチも我慢できるよ。いいんだよ。ご飯に乗せれば蒲焼丼じゃないか。」
「ゆきおぉ!」
 志摩はそんな二人を見て、負けたと呟いた。謎の感動がその場を包み込んでいる。ただ一匹だけウコバクがげんなりしている。厨房で何やってるんだこいつらと。
「ええもん見して貰ろうたわ。次の勝負までランキング更新はお預けや、奥村君。」
「次があるのかよ……。」
 
話は勝手にコンティニューしている。ちなみに勝呂はサンマの内臓は抜かずにポン酢をかける派でした。




志摩の逆襲編でした。ちなみに柴の家はサンマもアユも内臓は抜いておく派です。雪男ちゃんは今回、燐の中でポイントを上げました。よかった。よかった。

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柴仲達
性別:
女性
職業:
会社員
趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

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