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幸福雑音

女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。

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☆ss「ザ ハッター」 志摩燐(和解編)、メフィ燐。「ハンプティダンプティ」の一応完結編

 

「あなたは落ち込んだ格好をしていれば、私が声をかけてくれると思ってるんですか?」
 
 そう言いながらもメフィストは燐の前に現れた。ここで時刻を確定させるのは既にお約束になっている。十八時四十三分三十八秒。ちょうど日が地平線に(そんなもんあるんか)沈んだ直後の黄昏時だった。これから夜が始まる。
「俺は俺で勝手に落ち込んでるだけだから。」
 そう言いながらも、地面に座っていた燐はスライドするように横にずれて、メフィストが座るスペースを作る。メフィストは渋々というように燐の隣に少し離れて腰掛けたが、その脇にぺったりと燐がくっついてきた。少しメフィストに対して寄りかかるように。メフィストははあっと溜息をつくと、燐を引き離すようにその肩を押した。
 燐は迷惑がられていることに気付いたのか、メフィストに寄りかかった肩を離して妙に姿勢良く座っている。
「中学の時と違って、お友達は上手いこと出来てるようですね。」
 メフィストはいっちょまえに保護者らしいことを言ってくる。燐は戸惑いながらも頷いた。
「普通のお友達ですよね。同性交遊とか宿敵と書く関係じゃないですよね?」
 え? と燐は言葉を詰まらせる。どうやら一つかそれとも両方か、該当する誰かがいるらしい。狭い人間関係でよくそんなことになるものだ。やはり悪魔の血統の成せる業か。
「私はそのことについては雪男君ほど煩くは言いませんよ。上辺だけの付き合いで済ませられるほど、あなたは器用じゃないし合理主義でもないですからね。」
「どうせ俺は不器用な馬鹿だよ。」
「で。それが落ち込んでいるのと何か関係があるのですか?」
 燐は関係ないかもと前置きを入れて話し始める。
「俺は料理が得意で、それなりにポリシーがあったんだ。ここで出来た友達に料理作ってくれって頼まれて、作ったんだけど。そいつがマヨラーだったんだ。俺はそれが許せなくて、そいつを怒鳴ってしまったんだけど。だけどしばらくして、そいつは俺の料理の間違いを指摘してきた。サンマの塩焼きは内臓を取らないのが常識だって。その時は雪男のフォローでうやむやになったんだけど。」
 メフィストは苦笑いを浮かべる。奥村先生は兄馬鹿だからと口の中でもごもごと燐に聞こえないように言った。
「つまり互いに間違いがあったというわけですね。いや。どちらも正解だけど、噛み違って喧嘩になってしまったのですね。」
「喧嘩ってほどじゃないけど。先に怒鳴っちゃったの俺だから。」
「あなたが怒鳴りたくなった気持ちは分かりますよ。でも、その友達が仕返しに来た気持ちも分かります。」
 燐は脇に置かれたメフィストの手に手を重ねてくる。メフィストはぱしっとその手を払った。
「ほら。また隙があったら私に甘えようとする。あなたそうやってちょっとずつ接近していって、仕舞いには膝の上が指定席になるのが常套手段でしょうが。」
「俺そんなことしたっけ?」
「自覚ないんですか。勝呂君とか勝呂君とか、勝呂君にやらかしてるでしょ。でも魔性の男にならないのが、あなたなんですよね。精精天然ボケとしか言われない。だけど私には気安く甘えないで下さいよ。あなたは納得しないでしょうが、私はあなたの兄なのですから。」
 燐は首を傾げている。しかし兄という言葉から何か拾い上げたようだ。
「兄ちゃんって言うくらいなら、少しくらい……」
「あなたは弟に甘えて欲しい兄なのでしょう。しかし私は雪男君ほどと言うわけじゃないですが、自立した弟のほうが好ましいのですよ。」
「けち。」
「けちで結構。」
 そんなことを言いながらも、燐からの相談事ならば、ほんの少し引き受けるつもりのメフィストだった。
「友達付き合いに不慣れなあなたに、考える杖だけは貸しておきましょう。あなたはマヨラーの子と穏便に折り合いを付けたいのですね。」
「うん。もう今じゃ俺の考え方が固すぎたってことが分かったから。」
「だからその折り合いをつけるきっかけを作ればいいのでしょう?」
 燐はうんうんと頷く。メフィストは一つ提案してみる。
「彼がマヨラーだということを逆手に取ったことをしてみては?」
「それじゃまた、俺からの仕返しってことにならないか?」
「なりません。」
 メフィストはチッチと指を振った。
「まあ、私の言う通りにしてみて下さいよ。」
 そう言ってメフィストは燐の耳にこそこそと囁いた。燐の顔がぱあっと明るくなる。顔を離したメフィストに燐は、どさくさに紛れて抱きついた。
「ありがとっ。メフィスト。俺、これからはお前のこと、ピエロなんて呼ばねえよ!」
「こら。離しなさい。」
 メフィストは淡々と燐の腕を解く。燐の名残惜しそうな顔を尻目にメフィストは背中を見せる。
「では、健闘を祈ります。」
 
     *   *   *
 
「うまあ。これ最高やわ。」
 志摩は元々垂れ目な目を余計に垂れさせて、燐が抱えたタッパーの中身を頬張っていた。添えられたレタスのグリーンの上には、ピンクのソースの掛かった鶏のから揚げ。ソースの色は奇しくも志摩の頭の色と同じだった。
「から揚げのオーロラソースがけだぜ。マヨネーズとケチャップを混ぜて作ってみたんだ。隠し味にマスタードと生クリームも混ぜてみたんだけど。」
「う……。マヨラーの俺のためにこんな――。」
「俺だって作ってくれって頼まれたのに、食い方一つに頭ごなしに怒鳴ったから。料理に対して融通が利かなかったこと、反省してたんだ。」
「いや。俺もそれについては相当子猫さんや坊に呆れられてたんや。気にすることなかったのに。」
 燐はその割にはリベンジに来たよなお前、と心のなかでツッコんだ。でも志摩が手放しで喜んでくれるので、これでいっかとも思った。志摩はあぐあぐとから揚げを頬張っている。燐はそれを子供に対する母親のような微笑みを浮かべながら見ていた。
「今度はタルタルソースに合うなんかを作ってやろうか?」
「ありがとう! 奥村君。俺らもう他人やないんやな。」
「いや、他人だけど。でも、友達だよな。」
 
 その光景を苦々しく物陰から見ている眼鏡がいた。
「あの悪魔。兄さんに余計な知恵をつけやがって。」
 最愛の兄の得意料理が、このままじゃこってり系になってしまう。雪男の前に新たな脅威が待ち構えていた。
 




ちょっと「フレーズ」の設定を流用してみました。メフィストは本当の意味で燐を甘やかしません。しかし燐は藤本の面影をメフィストに求めています。
オーロラソースネタは書いた日の朝飯で思いつきました。

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柴仲達
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職業:
会社員
趣味:
読書、二次創作
自己紹介:
忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
柴はツイッターもしています。http://twitter.com/#!/hitsugi12

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