幸福雑音
女性向け二次創作サイト。 イベント参加情報もここに載せています。 オフは忍たま、オンでは青エク中心。
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☆ss「カノン」勝燐
何故燐はいつも、ほんの少しだけ寂しそうな顔をするのだろうと勝呂はふと思った。同年代に比べて理性的で硬派過ぎる自分に物足りないせいかと思ったりする。でも燐は違うと言う。
「今のままの勝呂が良い。」
力強く言われれば言われるほどに、それで良いのかなと迷う。でもなかなか自分の元の性格は変えられそうにない。代々宗派を纏めてきた寺の跡取り息子が自分の一番の前提であるし、それを嫌だと思ったことはない。息をするように当たり前のことだった。
その自分にとっての当たり前を崩されそうになっている。目の前に罪の無さそうな顔をして、自分にとろけそうな笑顔を見せている男の恋人がいる。どうしてこうなったか、別にそんな言葉に逃げるつもりはない。自分だって望んだんだから、こうなっているに決まっている。
「そうなんか。」
「そうなんだよ。勝呂の真面目なところすごく好き。」
好きと口にした瞬間、燐は頬を染める。そんな表情を見る限り、勝呂の今の性格を好いてくれてるのは本当みたいだ。それに少し安心する。
「この前みたいに、もう誘うようなことは言わんのな?」
「えーと、あの時は……。」
自分に対して手を出してこないのかと燐に問いかけられたことがある。あの時はいきなりだったし、まだ早いと思ったから正直にそれを口にした。それっきり燐は何も言ってこない。
「あの時はあの時だ。ちょっとあの時は気になってただけ。勝呂君が我慢してないかなあー? とか。」
「我慢て……。あんとき勉強しとったんやぞ? お前、勉強しとってもそないなこと考えとん?」
「いやいやいやいやいやいや。」
焦ったように否定すればするほどに、燐の考えが透けて見えてくる。勝呂はそんな燐の額を手の甲でノックするように叩いた。
「わあったわ。」
「いや、ほんとに違うから。」
「はいはい。」
燐はうーっと唸っている。勝呂に呆れられたかもしれないという焦燥感でいっぱいになっている。勝呂としては呆れるというよりは、そんな姿がいじらしい。これも惚れた贔屓目というか、弱みというやつだろうか。
「お、俺は……。勝呂がキスしてくれるだけでいいんだ。他ももうちょっととか、思ってるわけじゃないからな!」
念押しするように言われても、全然説得力がない。勝呂は噴出しそうになるのを堪えて、燐を手招くと抱き寄せた。燐はうっとりと勝呂の胸に体重を寄せている。
「あのな、勝呂。」
「どないした?」
「今日は雪男、いないんだ。」
何を言い出すかと思えば、弟の不在を仄めかす燐に勝呂は首を傾げる。確かに今日の塾の雪男の授業の時間に別の講師が来ていた。
「雪男は任務で泊りがけらしいんだ。」
勝呂のシャツの布を掴んで燐は勇気を振り絞ったように言う。
「だから。今日、勝呂泊まりに来ないか?」
心臓が大きく跳ねる。この学園における寮生活の規則は割りと緩い。他の生徒の部屋への出入りも咎められることは、あまりない。(男子が女子寮に忍びこんできたり、その逆があったりする以外は。)ましてや燐の生活する旧寮は寮監が不在で実質、奥村兄弟しか住んでいない。勝呂が上手く寮を出さえすれば、燐の部屋に入って泊まるくらいは容易いことだった。
「駄目か?」
「なんや? 奥村先生が留守やったら、寂しいんか? お前は。」
「さ、寂しいわけじゃねーよ。」
「ならそれで泊まりに来い言うんは、なんか企んどるやろ。」
「企んでるというか。雪男いたら、お前を部屋に呼べそうにないし。」
真面目な勝呂が好きだと言った舌の根が乾かないうちに、勝呂を不真面目な方向に燐は誘っている。まあ自分達の歳相応の願望だろうと勝呂は判断した。燐は自分の返事をいかにもドキドキと待っている。この間手を出さないと言ったばかりなのに、泊まりの誘いに乗ると思っているのだろうか。でもなんだか、この誘いに乗らないと勿体無いような気もする。
「お前やっぱキスだけじゃ物足りんのやろ。」
「………。」
ドキドキが行き過ぎて顔が熱病みたいに紅くなる。燐も勝呂も。
「すまん。ちょっと言い過ぎた。」
「勝呂が気にする必要無いから。」
勝呂は燐の肩を掴んで言い聞かせるように告げる。
「わかった。泊まりに行くわ。そんで先生がおらん間、あんじょう俺が勉強教えたるわ。」
「ええええ!」
燐の口から悲鳴のように不満の声が出る。
「なんか文句あるんか?」
「文句なんかねーけど。」
「ほんならええやろ。」
なんだか結構きつい灸を据えたような気分に勝呂はなってくる。
「ちゃんと寮の鍵は開けとけよ。」
燐はうんと、泣き笑いのような顔で頷いた。
お泊り編に続くかもしれない。とんだ肩透かしを食らった燐でした。勝呂はなんとか失言を誤魔化せたと思ってます。
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忍たまで「幸福雑音」というサークルで、大阪のイベントに出没しています。
絵描きの竹さんと字書きの柴の二人サークルです。
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